騎乗と伝説の名を持つウマ娘   作:シグアルト

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伝説の名を持つウマ娘

 

 

 

 

 ─────ここはトレセン学園。

 

 

 数多くのウマ娘たちが夢のレースを目指して奮闘する聖地。

 今日も次なるレースでの勝利を目指し、北海道生まれの期待のウマ娘『スペシャルウィーク』は、仲の良いクラスメイト達と練習を行っていた。

 

 

 

「……ハァ、…………ハァ、……はぁぁぁぁぁ」

 

 

「ハッ……ハッ……、すごいわスペちゃん。前よりずっと早くなってるしコーナーでの加速も上手くなってる」

 

「あ、ありがとうグラスちゃん」

 

「イエース、今日の走りもサイコウデース!」

 

「あはは……、ありがとうエルちゃん」

 

 

 体力もやる気も絶好調。友人たちと共に行うトレーニングは、トレーナーと二人きりの時よりももっと強くなれる気がする。

 スペシャルウィークは少しづつ、だが着実に前に進んでいる自身の力を感じていた。

 このまま成長していけば、きっとなれる筈。

 

 

 自分が目指す『世界一のウマ娘』に! 

 

 

 

「やっほー! 皆、がんばってる~?」

 

「あ、テイオーさん!」

 

 

 そんなスペシャルウィーク達の所へやって来たのは、彼女と同じチーム【スピカ】のメンバー『トウカイテイオー』

 揺るがない自信と、それを裏付けする実力を持ったウマ娘である。

 

 

「すごいニュースがあるんだよ! 皆がグラウンドで模擬レースやってるって聞いてさ。戻ってくるの待ちきれずに来ちゃったよ」

 

「ニュース、ですか?」

 

「ホットなニュースはありがたいデスネー!」

 

「ニュースって何なんですか? テイオーさん」

 

 

 

 

「実はね……、ついにトレセン学園に“伝説(レジェンド)”がやってくるんだよ」

 

 

「“伝説(レジェンド)”?」

 

 

 スペシャルウィークは聞いた事のない言葉に頭を捻る。

 数多くのレースで勝利し、数多のライバルを打ち倒し頂点となったウマ娘を【レジェンドウマ娘】と皆が呼び讃える事は知っているが、彼女(テイオー)の口ぶりはそれとは違うように感じた。

 

 

「テイオーさん、伝説って?」

 

「うん! そういえばグラスさ、さっきの走りだけど……」

 

 

「話を聞いてください!!」

 

 

「も~、冗談だってばぁ」

 

 

 息の合った連携(コント)を見せるチーム【スピカ】の二人。だがグラスワンダーは一人、真剣な様子で顎に手を当てて思案していた。

 

 

 

伝説(レジェンド)……まさか」

 

「知っているのデースか。雷……いえ、グラス」

 

 

「えぇ、噂程度なら……。

 スペちゃんが入学してくる半年くらい前に、突如トレセン学園に現れたウマ娘。あの“皇帝”すら全く寄せ付けなかったと言われる強さを持った、まさに伝説のウマ娘です」

 

 

「えぇ?! 生徒会長がですか?!」

 

 

 グラスワンダーの言葉にスペシャルウィークが驚天動地といった顔を浮かべる。

 ここトレセン学園では、様々なウマ娘達が通っているが「最強のウマ娘は誰か?」といった問いを投げかければ多くの声が上がるだろう。だが、その中でもまず最初に名が出るのは皇帝『シンボリルドルフ』と言える。

 その卓越した技術、鋼の如き精神力、圧倒的なパワーとスピードは多くのウマ娘の憧れと目標になっている。

 

 

 

「その通りだよ。学校の規則か何かですぐには入学できなかったけど、とうとうソイツがやってくるのさ」

 

 

 不敵な笑みを浮かべるトウカイテイオー。

 何を隠そう、彼女こそがシンボリルドルフを目標と掲げるウマ娘の筆頭と言える。常日頃から彼女をライバル視しているテイオーにとって、『伝説(レジェンド)』の存在は無視できないものとなっていた。

 

 

 

「ボクより先に会長に勝っちゃうんだもん。そんな相手にワクワクするなっていう方が無理だよね」

 

「テイオーさん……」

 

 

 抑えきれぬ闘志が炎となって見えるようだ。少なくともスペシャルウィークにはそう感じた。

 彼女からは今まで見た事がない程の熱意を感じる。そして、新たに入学してくる伝説のウマ娘。

 

 

 この二人が走ったらどうなるんだろう……

 スペシャルウィークだけでなく、グラスワンダーもエルコンドルパサーも同じ思いを抱き、自然と胸が熱くなっていった。

 

 

 

 

 

 

 ─────そして、その時は誰もが予想しえない程にすぐ訪れる。

 

 

 

 

「ここがグラウンドだ。門限以降の利用にはトレーナーの許可が必要だ、注意するように」

 

「わかりました」

 

 

「ん? この声……会長?」

 

 テイオーの声に反応したスペシャルウィーク達が学園の方に目を向けると、グラウンドにやってくる数人の人影が見える。

 

 

 

 

 さきほど話題に上がっていた生徒会長、シンボリルドルフ。

 この学園の学園長、『秋川 やよい』。

 その秘書、『駿川 たづな』。

 

 そして最後の一人は──────────

 

 

 

 

「施設紹介は以上だ。何か質問はあるか? 『フェイトレジェンド』」

 

「いいえ、問題ありません」

 

 

 

 

 

「!! あの人って」

 

「『伝説(レジェンド)』……!」

 

「彼女が、例のLegendなのデスね」

 

 

 今、まさに話題の中心となっていた伝説のウマ娘、その名をフェイトレジェンドと言った。

 

 

 

 

 

 

(すごい……、綺麗な人…………)

 

 

 スペシャルウィークは彼女に少しの間、見惚れてしまっていた。

 絹糸のようにきめ細やかな金髪、同性ですら目を奪われてしまう程の端麗な容姿、それに反しまるで精霊の祝福を受けた聖剣のような鋭さと神聖さを感じるその雰囲気。

 トレセン学園には容姿の優れたウマ娘が多く、美人に耐性がついちゃったなぁと苦笑するスペシャルウィークすらも魅了されかねない程の美人だった。

 

 

「以上ッ! 要望があれば言うがよいッ!」

 

「ありがとうございます。では、早速ですが一つよろしいでしょうか?」

 

「承諾ッ! どんな用件かッ!」

 

「学園の(ターフ)の様子を確かめたいのです。少し走ってもよろしいでしょうか?」

 

 

 

 彼女から紡がれる言葉からは、雰囲気にたがわぬ強い意志を感じた。

 スペシャルウィーク達は少し離れた場所にいるにも関わらず、彼女の雰囲気に呑まれない様その場に堪えるので精いっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 ──────────「ねぇ、ならボクと模擬レースをしようよ」

 

 

 そんな空気を吹き飛ばすように、一人のウマ娘がフェイトレジェンドへと声をかける。

 

 

「む、あなたは」

 

「ボクはトウカイテイオー。キミ、会長に勝った事があるんだって? ボクともやろうよ」

 

 

「テ、テイオーさん……」

 

 

 トウカイテイオーから溢れる闘志が強すぎて圧迫感を生み、少々乱暴な言い方になってしまっているのではないか。そう心配するたずなだったが、当のフェイトレジェンドは涼しい顔で受け流し、シンボリルドルフも軽く頷くだけであった。

 

 

「了承ッ! お主もそれでよいな?」

 

「えぇ、構いません。むしろ、その方がこちらとしても望ましい」

 

 

 シンボリルドルフと同じ三冠を取り、いずれ勝つ事を目標にするトウカイテイオー。

 トレセン学園最強のウマ娘の名前に上がる事もある彼女との戦いがどうなるのか、そして伝説と言われたウマ娘の走りはどんなものなのか。

 

 

 

 そしてこの日、ウマ娘達は“伝説”の走りを目にする事になる──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人は、大人になると幼少期の経験を恥ずかしく思う事がある。

 

 優しくしてくれる祖父母に対し、調子に乗ってわがままを言い放題言ってしまったり。

 友達に対して、つまらない事で喧嘩してひどい事を言ってしまったり。

 イライラしてる自分を心配したペットの犬に対して、冷たくあしらってしまったり。

 

 

 大人になると、そういう経験は戒めとして自分自身を律する支柱になる。「あのような振る舞いをしてはならない」と自分を改めるのだ。

 

 不義理を働いた祖父母には墓参りを決して欠かさず行ったり、

 友達との思い出話をした時に、何年ごしもの謝罪を行ってみたり、

 ペットの晩年を安らかに過ごせるように、常に目を配って見守ったりする。

 

 

 

 

 

 だが……──────────()()の不義理は、どうすればよいのだろうか? 

 

 

 

 

 

 そう、私には前世の記憶がある。

 幼少期から走る事が大好きで、小学校から陸上部に通っていた。クラスで一番足が速く、将来はマラソン選手としてオリンピックに出ると常々親に言っていた。

 だが高校の時、不幸な事故に会い一生脚が動かない体になってしまったのだ。

 

 

 私は荒れに荒れた。

 なだめる親を無視して大暴れしたせいで、病室にいられず自宅で不便な療養生活を介護させる事になった。

 心配して来てくれた陸上部の仲間たちを、嫉妬や僻みから罵倒し「もう来るな」と見舞いの品を叩きつけた。

 そして、絶望の末に私は死んだ。原因はもう思い出せないが、自殺ではなかったと信じたい。

 

 

 そんな私が、何の因果か第二の人生を『ウマ娘』として送る事になった。

 ウマ娘の事は知っている。私の気を紛らわせようと友人たちが四苦八苦してくれた贈り物の中に、ウマ娘のゲームの紹介PVがあったのだ。

 

 走る事への未練が残っていた自分にとって、一生懸命芝をかける彼女達の姿はとても眩しく思えた。嫉妬よりも先に感嘆があったのだ。

 速攻でアプリをダウンロードした私は彼女達の世界に触れ、のめりこむようにゲームをし続けた。

 

 両親も、無気力か暴れているかの二択しかなかった私が夢中になるものを見つけて嬉しかったのか、課金に制限もつけずに遊ばせてくれた。

 もうどっぷりとつかっていたのだと思う。あのゲームをやり始めてから睡眠をとった記憶がない。私の死因、睡眠不足じゃないよな……? 

 

 

 ここまでハマったのは中学時代にやっていた他のアプリゲーム以上だと思う。

 あっちも面白かったが、戦闘スキップも宝具スキップもないと周回に時間がかかり、学生生活との両立は難しかった。

 

 

 まぁそれは余談…………とも言えないのかもしれない。

 

 

 何故なら、今のウマ娘である私の姿。

 ケモ耳は頭についているけど、その中心に立派に生えている金髪のアホ毛、長い髪を後ろで結い上げている10代半ばの美少女。

 

 

 

 

 

 

 

 うん、どう見てもアルトリアです。本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 ……………………

 ………………………………

 ………………………………………………

 

 

 

 

 そして転生した私ですが、何故かトレセン学園に立っており自分の足で歩ける事に感動を覚えていました。

 校庭に出ると、それはそれは立派なランニング会場が。周囲に女の子しかいないとか、ケモ耳のコスプレをしてるとかは、再び走る事の出来る感動と衝撃の前には誤差ですよ、誤差。

 

 ランニング会場では鹿毛で前髪の一部にメッシュをかけた少女がスタート地点らしき場所にいますが、広い校庭だしママ、エアロ!! なノリで彼女に並走する形で走り出したら、周囲がどよめくは鹿毛メッシュの彼女が闘志を出してくるわで、元陸上部としては燃えざるを得ませんよね? 

 

 そして彼女との並走が終わると、騒ぎを聞きつけた警備員らしき人達に連行されました。その時はじめてこの世界がウマ娘の世界であることと、自身もウマ娘である事を理解した私は、必死に連行先の学園長室にいたロリ少女(学園長)に入学させてもらうよう懇願。

 するとさっきの並走が好印象だったのか、試験に合格すればOKとの返事を貰えた訳です。

 

 

 ただ住所不定無職の自分では印象が悪すぎると、仮住まいの手続きや試験勉強があったので入学に半年もかかってしまいました。

 ターフって何? 三冠ってどれ? トリプルティアラって?! ……やりこんだ筈なのに、にわか知識状態で苦労したのは内緒です。

 

 

 

 そして環境が落ち着いてくると、思い出してくるのは前世の自分の黒歴史。

 再び自分の足で走れる身になって落ち着いて振り返ると、あまりにも横柄だったなと後悔しか出てきません。

 

 自分だけが苦しいと思っていた。

 自分だけが悲しいと思っていた。

 自分だけが不幸だと思っていた。

 

 そう周囲と壁を作り、周囲の人々の気遣い、やさしさ、思いやりを無視してきたように思います。

 もう皆に謝る事も出来ない。恩を返すことも出来ない。転生というチャンスを得た事を後ろ暗く思う時もありました。

 

 

 でも今はもう違います。

 両親に報いる為にも、私は今回の生を精一杯生きようと思います。

 

 そして、自分を気にかけてくれた友人たちに報いる為にも──────────

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ君。得意なタイプは何なの?」

 

「――さあどうかな。先行かも知れぬし、追い込みかも知れぬ。いや、もしや逃げかも知れんぞ、テイオー」

 

「お楽しみって事か。それもいいね!」

 

 

 

 

 

 友人たちが大好きだった『アルトリアのキャラ』を保ったまま、生き抜いて見せる!! 

 

 

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