騎乗と伝説の名を持つウマ娘   作:シグアルト

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自身の力を知るウマ娘

 

 

 

 

 

 どうも皆さん。アルトリア顔ウマ娘というパワーワードの存在、フェイトレジェンドです。

 

 現在私はトウカイテイオーとの模擬レースを振り返り、脳内会議を繰り広げています。私の読みは正しく、またもやレース中に《因子継承》が発生しました。これ幸いとスキルを取得し、速攻で使ってみた訳ですが……

 

 

 

「ちゃんと聞いているのか! フェイトレジェンド!」

「傾注ッ!」

 

 

 

 トレセン学園副会長のエアグルーヴさんと学園長から、正座で説教を受けている状況です。

 なんだよー、ジャンプで失格なんて聞いてないよー。と言い返したい所ですが、二人の怒りっぷりを見るにジャンプ禁止なんて考える事すらアホらしい常識みたいです。覚えるスキルにレースで使えないものがあるなんて思いもよりませんでしたよ。

 前回のメドゥーサさんとの絆で覚えた宝具(スキル)は、レース向けに効果が変わってたので安心しきっていたのが原因ですね。慢心イクナイ。

 

 因みにどう変わってたかというと『他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ)』の方は他のウマ娘の気分を落とす程度。『騎英の手綱(ベルレフォーン)』は原作では天馬を操る手綱として使用されていましたが、『自分』という存在を乗りこなすという意味合いで使用する事が出来ました。

 これにより、最初ウマ娘の身体能力に振り回されがちだった体を十全に使いこなせるようになったんですよね。ウマ娘は幻想種だった? 

 

 とにかく牛若丸さんの宝具『壇ノ浦・八艘跳』は今後使用禁止ですね。プ〇ステ5を買う行列に割り込む時にしか使わないと思います。

 それと2回の因子継承を経て、このチート能力の傾向がわかってきましたね。

 

 

 1.レース中に因子継承が発生する。(自分だけかは要確認)

 

 2.継承するのはFateのスキル・宝具になる。

 

 3.ライダークラス限定である。

 

 

 こんな所でしょうか。1・2は確定だと思います。

 3に関しては確証はありませんが、かなり有力なんじゃないでしょうかね。継承の時に【ライダーの想いを受け継いだ!】って脳内アナウンスが流れますし、『ウマ娘』という存在も騎手(ライダー)を彷彿とさせます。

 アルトリア顔なのに他のライダーの宝具やスキルを使う点に思うところもありますが、アルトリア顔のライダーって自分の知る限りオルタだけですからね。青王とは個人的に別物なので宝具・スキル無しにされるよりマシです。

 

 

 

 

「────という訳で学園長。彼女には2日間の自室謹慎と一週間のレース場使用禁止が妥当かと」

「承諾ッ! 危険行為は厳しくせねばならんッ!」

 

 

 

 脳内会議をしていたら、学園長(ほぼエアグルーヴさん)からのお説教も済み、罰も決まったようです。

 レース場使用禁止は走り込みが出来るからいいとして、謹慎はきついなぁ……でも2日間なら耐えられない事もありませんし、罰としてしっかりと受け止めたいと思います。

 これで謹慎が一週間とか言われたら、因子継承で『愛しき私の鉄戦車(チャリオット・マイ・ラブ)』を覚えた瞬間、エアグルーヴさんに撃ちかねない勢いでした。

 

 

 

「わかりました。寛大な対応に感謝します」

「うむ! 二度と危ない行為はせぬようにな!」

 

「フェイトレジェンド。謹慎中は食堂の利用も禁止だ、後で担当のものが持っていく」

「わかり……、ました……」

 

 

 食堂もお預けですか。これは地味に心配ですね。

 ウマ娘になってからというもの、食べても満腹感を感じる事がなくなったんですよね。そもそもウマ娘がどのくらい食事を摂取すれば健康的なのかわからなかったので、半年間住んでいた寮では前世の入院中の食事量を思い出しながら食べていました。

 なので常に空腹状態ですが『騎英の手綱(ベルレフォーン)』のおかげで、レースには影響を与える事はありません。便利

 

 

 3度の食事よりランニング、な私ですが食事による欲求は人並みにあります。

 他のウマ娘達の食事風景を見れば参考になるかな、と思いましたが自室で食事をとるのではそれも叶いませんね。担当の方から頂ける食事量で判断するしかないでしょう。

 

 

 

 

 ……………………

 ………………………………

 ………………………………………………

 

 

 

 

 

「お説教は終わった? 副会長は長いから大変だよね」

 

 

 

 説教の済んだエアグルーヴさんや学園長、模擬レースを見に来ていた他のウマ娘たちも寮に戻り周囲に闇が広がり始めた頃、声をかけてくる人物がいました。トウカイテイオーですね。

 レースが終わるやいなや倒れこみ休んでいましたが、どうやらこちらの話が終わるのを待ってくれていたようです。

 せっかく模擬レースに付き合ってくれたのに、台無しにしちゃいましたからね。ここは謝らないといけません。

 えーと、キャラを守ってと……

 

 

 

「トウカイテイオー、あなたに謝罪を。折角の真剣勝負に水を差す様な結果にしてしまった」

 

「いやー、ボクは別に構わないんだけどさ。びっくりしたよね、あんなに飛んじゃうなんてさ」

 

「久方ぶりの勝負に浮かれていたようです。お恥ずかしい……」

 

「ふーん、まぁいいんじゃない? 熱くなれるのはいい事だよ。それで、ここに来る前はどこにいたの?」

 

「ここ半年ほどは学園長の紹介で寮にいました。そこで入試試験の勉強漬けの生活でした」

 

「へぇ、そーなんだ。その前は?」

 

「それは……」

 

 

 

 おっと、やっぱり来ましたねこの質問。

 これに対しては、どう答えるか考えに考えを重ね違和感ないようなストーリーを練り上げましたよ。

 

 

「とある農家の夫婦と、親子で厄介になっていました。そのご夫婦が隠居したのを切っ掛けに、一人上京してきたのです」

 

 

 片田舎設定にして、既に出家した事にすれば現在住所不定の言い訳にはなりますね。こういうふわっとした言い方にすれば、突っ込んではこないでしょう。

 

 

 

「そうなんだ。じゃあ夢見てトレセン学園にって事だね! これからよろしくね!」

 

「えぇ、共に学園で覇を競い合いましょう」

 

 

 トウカイテイオーと改めて握手。笑顔が眩しくて素敵ですね。

 話も終わったようなので回れ右。エアグルーヴさんに言われた通り、寮で謹慎といきましょう。2日間の間はトレーニングが出来ず残念ですが、やっと学園に入学できましたからね。時間はたっぷりあるので焦らず行きましょう。

 

 

 

 

 

 という訳でテイオーさん、オタッシャデー! 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────「テイオー」

 

 

 

 フェイトレジェンドとテイオーとの話が終わり、フェイトレジェンドが自寮に向かったのを確認してからテイオーに声をかける。テイオーは私が声をかけるのをわかっていたかのように、微笑を浮かべつつ振り返る。

 

 

「会長。すごいレースだったね」

 

「あぁ、すごいレースだった。…………お前もだ」

 

 

 私が口角を上げつつそう溢すと、テイオーは満面の笑みを浮かべる。

 

 

「ボクさ、初めてだったよ。あんなに必死になって逃げるなんて」

 

「あぁ。奴の発する圧はまさに桁違いだ。よく吞まれずに走り抜けた。鞠躬尽力*1という所だろう」

 

「でも、おかげで気がつけた。ボクはもっと熱く、もっと輝く事が出来るんだ」

 

「……テイオー」

 

 

 

 今のテイオーの姿を見て、私は腕を組み必死に自身の体に自制を促す。

 そうでなければ、己の闘争本能がマグマのように沸き立つのを抑える事が出来ないからだ。

 

 強く拳を握り、静かに言葉を溢すテイオー。

 その姿は、天に羽ばたく不死鳥の如き熱さを私に連想させた。やはり彼女と戦わせたのは間違いではなかったと確信する。

 

 

 フェイトレジェンド。

 彼女ほど“伝説(レジェンド)”の名に相応しいウマ娘もいない事だろう。彼女に相対したウマ娘は皆“伝説”の頂きの高さに恐怖し、足を止めずに進む者だけが“伝説”に挑むという“新たな伝説”を紡いでいくのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………だからこそ、私は気がつく事が出来なかった。

 

 

 

「そういえばさ、会長。レジェンドの事なんだけど」

 

「ん? 何か気が付いた事でもあるのか」

 

 

 

 彼女の魅せる“伝説”の輝きに目が眩んでいたのだ。

 

 

 

「学園に来る前の話の時だけ、何かおかしかったんだよね」

 

「あぁ、その話は聞こえていた。あまり話したくない事だったのだろう」

 

 

 

 その圧倒的な能力とカリスマ、彼女の放つ大きな光。

 

 

 

「ん~、ボクの勘だとちょっと違うと思うんだけどなぁ」

 

「心配はない。レジェンドには失礼だが、彼女の()()調()()はたずなさんにお願いしてある。万が一、問題があれば連絡が来るはずだ」

 

 

 

 その陰に、一体どれほどの闇が彼女に纏っているのかを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………

 ………………………………

 ………………………………………………

 

 

 

 

 

 

「詳細不明? どういう事ですか、たずなさん」

 

「申し上げた通りです。ここに来るまでの『フェイトレジェンド』さんの出自は一切が不明、トレセン学園にやってくるまでの足取りすら掴めませんでした」

 

「馬鹿な! 彼女ほど有智高才*2なウマ娘が、どの機関にも登録されていないなどありえない!」

 

 

 たずなさんの報告に私は絶句する。

 危険人物や要注意人物を入学させない様、ウマ娘の調査機関にフェイトレジェンドの事を依頼した所『該当なし』の結果しか届かなかったというのだ。ウマ娘の身体能力の高さは社会で様々な問題を起こす危険性がある上、各機関が優秀なウマ娘を常に探している為に、機関には僅かな賞罰であっても登録される。『該当なし』という事はありえない事だった。

 

 

「トラブルや問題がない事はわかる。だが、あそこまでの能力を持ちながら人材発掘機関に注目されない筈がない!」

 

「いえ、私はトラブル報告がない事にも疑問がありますけど」

 

 

 私やテイオーに勝利するには、才能だけで届くはずがない。

 だがどんな片田舎であったとしても、練習を行っていれば機関の目につく筈なのだ。北海道生まれのスペシャルウィークのように。

 

 そして私をますます混乱させたのは、半年間フェイトレジェンドが過ごしていた寮生活での記録だった。

 

 

「何だこれは? 彼女の食事量が一般的な人間以下ではないか」

 

「それも、彼女が自主的に希望した量です」

 

「人間だとしても少なすぎる、これでは病人レベルだ。ウマ娘の食事量ではない」

 

「寮母の方もそれとなく聞いてみたそうなのですが、『不安だからこれでいい』と」

 

「不安…………か」

 

「それと寮での生活も、自由時間は自室にこもり勉強ばかりやっていたそうです」

 

「入試試験の勉強を? トレセン学園の入試は実技が主体だった筈だ」

 

「えぇ、ですが彼女は相当数の時間をかけていたようです」

 

「レースでの行動と言い、彼女には一般常識が欠けているようだな」

 

「でも、話した限りではその様に感じませんでしたね。どこかちぐはぐに感じます」

 

 

 

 

 

 

 私は顎に手を当て考えた。何故、ここまで訳の分からない調査結果になるのかを。

 

 

 

 ─────どの機関にも影も形も残っていないウマ娘。

 

 

 ─────だがその能力は銅頭鉄額*3

 

 

 ─────だがそれに反し食事は箪食瓢飲*4

 

 

 ─────出自について語る時のテイオーの言う違和感

 

 

 ─────異常なほどに偏っている一般常識

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────まさかっ!!」

 

「シンボリルドルフさん?!」

 

 

 

 

 私は頭蓋に衝撃を受けたかのように立ち上がった。

 だが、私はその考えを口に出す事を躊躇った。口に出せばそれが事実として決定事項となりそうな気がして。

 

 

 

「大丈夫ですか? シンボリルドルフさん」

 

「あ……あぁ、問題ない」

 

「そうですか。どうしたんですか、突然叫び出して」

 

「すまないがこれに関しては不言不語*5とさせてほしい。それよりも、引き続きの調査をお願いする」

 

「……はい、わかりました」

 

 

 たずなさんは尚も何か言いたげだったが、口をつぐみ退出する。彼女の気遣いが今はありがたい。

 

 私は椅子の背もたれに身体を預け、溜めた息を吐いた。

 

 

 

 

 

「私の予測……、外れていて欲しいものだな」

 

 

 

 思わず力無く呟く。

 

 もしも予測通りだとしたら、ウマ娘の世界を揺るがしかねない事態だ。

 

 だが知らねばならない、突き止めねばならない、備えねばならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウマ娘の非合法実験機関、そんなものが存在し彼女がそこから抜け出した存在であるのならば。

 

 

 

*1
死ぬまで頑張りぬく! という程の決意

*2
人並み外れて才智に恵まれていること

*3
きわめて勇猛であるさま

*4
非常に質素なこと

*5
口に出して言わないこと




 

つい勘違い要素を入れたくなるスタイル。基本はほのぼの。

※調査機関に関しては筆者の妄想です。
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