OVER RIDERS:百鬼夜行〜Worst and best matching〜   作:桂馬

3 / 3
三話:残された男

目を覚ますと、そこは見知らぬ白い天井。

蛍光灯は光を失っており、横の窓から入る日光が視界を照らしている。

そして横を向くと……前に出会った白衣の奴がいた。

 

鈴「やあ。気分はどうだい?」

 

???「……まあ、悪くない」

 

体に痛みはない。

あの時の状況から見るに……こいつが俺の手当てをしたのだろう。

 

???「あんたは、一体なんなんだ?」

 

鈴「何……と言われても、どこから説明すればいいかわからないな。私の出生からスリーサイズまで事細かに説明すべきかい?」

 

???「そんなことはどうでもいい。どうやってあんたがあの怪物を倒したのかさえわかればそれでいい」

 

鈴「つれないなぁ。……まず、私の名前はあんたではなく"新田 鈴(にった りん)"だ。そして話を円滑にするためにも、君の名前を聞かせて欲しい」

 

???「智。"二条院 智(にじょういん さとる)"だ」

 

鈴「わかった。それじゃ説明しよう」

 

そう言って、新田はベルトを取り出す。

 

鈴「こいつは私が開発したベルトだ。これにあるアイテムを合わせて変身する。変身することで力を得て、あの敵……スラッシャーと戦えるわけさ」

 

智「ベルト一個に、そんな力が……」

 

鈴「ああ、別にベルト自体に力はない。あくまでベルトは、力を扱いやすいエネルギーに変換するための中継点に過ぎないからね。本題のエネルギーはこっち」

 

そういって、紫色の筒状の物体を取り出す。

 

鈴「こいつは"コア"というものでね、このコアに秘められた力をベルトでエネルギーに変換し、変身するわけさ」

 

智「……なるほど。それがあれば俺も……」

 

鈴「ちなみに、なんで私がここまで懇切丁寧に説明してると思う?」

 

智「……?」

 

鈴「結論から言おう。君自体に試してないから確証はないが……おそらくこれを使っても君は変身できない」

 

智「なっ……どういうことだ!?」

 

鈴「これはあくまで、私にのみ使えるものだ。ここの……ああ、ここは私が研究に使ってるラボなんだけどね?ここの研究員全員に試しても、使えるのは私一人だった」

 

智「……」

 

鈴「それにこの"コア"自体も貴重なものだ。そう易々と渡せるものじゃない。君のことを知らない現状なら尚更だ」

 

智「……それでも、俺には力が必要なんだ。そうしなきゃ、俺は……」

 

鈴「なんと言われようと、ダメだ。……君が戦う理由はない。このことを忘れて、君は平和な生活に戻るんだ」

 

智「そんなこと……できるわけねえだろうが!」

 

そう言って、智は新田の胸ぐらを掴む。

 

鈴「……力尽くで奪う気かい?」

 

智「…………」

 

智は真っ直ぐに新田の目を見つめる。

そしてつかんでいた手を離す。

 

鈴「……案外理性的で助かるよ。私本体はか弱い乙女だからね」

 

智「……チッ」

 

鈴「まあ、傷が治るまではここにいていいさ。ご飯と寝床は保証する」

 

智「そうか。なら遠慮なく寝かせて貰う」

 

そう言って、智は布団を被る。

 

鈴「そうかい。おやすみ」

 

新田は静かに部屋を出て、自室へ戻った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

……夢を、見ている。

俺の家族がいつも暮らしているアパートの一室。そこで兄弟と、母と、俺は幸せに食卓を囲んでいる。そんな夢だ。

 

妹「兄さん、ご飯どのくらい食べる?」

 

智「大盛りで頼む」

 

妹「はーい」

 

茶碗を受け取り、そこに大量に盛られた白米に手を伸ばそうとする。そこで……。

バリーン!という窓ガラスが盛大に割れる音と共に、化け物……あいつの言うスラッシャーが入ってきた。

 

智「野郎……!」

 

咄嗟にスラッシャーを蹴るが、易々と躱される。

そしてお返しとばかりに、爪による一撃が智を襲う。

 

智「ぐっ……!」

 

本棚に叩きつけられ、意識が朦朧とする。

朦朧とした視界の中で見えるのは、俺の家族が黒いスラッシャー攫われていく姿と……俺を埋め尽くす本の山だけだった。

 

智「やめ……ろ……俺の家族を……返せ……」

 

やめろ……

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

智「やめろっ!!」

鈴「ひゃいっ!」

 

智は叫びながら、飛び起きるように目を覚ます。

 

智「……夢か」

 

鈴「あ、え、えっと、その、あの、えっと、ごめん……」

 

智の横にいたらしい新田は、目に見えて動揺していた。

 

智「いや……ただ悪夢にうなされてただけだ。あんたに問題はない」

 

鈴「あ、そう?ならよかった……」

 

智「……なあ、やっぱり俺もー」

 

『warning。warning』

 

鈴「……ちょっと待ってて」

 

新田はスマホを開き、地図を見る。

先日と同じ山奥に、スラッシャーの反応がある。

 

鈴「ちょっと山に行ってくる。すぐ戻るよ」

 

そう言って、新田は出ていく。

 

智「ちょっと待て……!行っちまったか」

 

部屋に残された智は、ふと周囲を見渡す。

 

智「……たとえ手段がなくても、戦うだけだ」

 

智はベッドから降りて、部屋から走り去っていく。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

新田はバイクで山奥へ到着する。

そこには一体のスラッシャーがいた。

新田がバイクを止めてスラッシャーに向けて歩き出すと、気づいたスラッシャーが振り向き威嚇する。

 

スラッシャー「ガガッ!」

 

鈴「サクッと終わらせようか」

 

『メタルアックス』

『ポイズンボム』

『コンプリート。一致率75%』

 

鈴「変身!」

 

『バトルモード"紫毒のヴァルキリア"。いざ、開戦!』

 

新田は斧を片手に敵に突撃。

そして爪を躱して一撃、二撃、三撃と続けて攻撃していく。

 

スラッシャー「ガッ!ガアッ!」

 

鈴「よし、続けてもう一発……!」

 

斧を振り上げ、ガラ空きになった新田の腹部に……突然、何かが突き刺さる。

 

鈴「うぐっ……!?」

 

射撃型スラッシャー「ガッガー!」

 

よく見ると腹部に当たったのは、スラッシャーの爪。

 

鈴「爪を飛ばし攻撃をする……射撃タイプのスラッシャーか。厄介な……!」

 

スラッシャー「ガアッ!」

 

鈴「きゃっ!?」

 

射撃型スラッシャーに気を取られている隙に、通常のスラッシャーの爪が新田に襲いかかる。

 

鈴「くっ……なら、こっち!」

 

新しく緑色のコア……"グリーンシールド・コア"を取り出し、紫コアを外してセットする。

 

『モードチェンジ!"鋼鉄のガーディアン"!城塞、不落!』

 

亀をモチーフにしたような背中の装甲に、鋼色のアクセント。

その装甲はいつもより数段重く、硬く見える。

 

射撃型スラッシャー「ガッガー!」

 

そんな新田にもう一度痛手を負わせようと、射撃型スラッシャーが爪を射出する。

 

鈴「ふっ!」

 

新田は取り出した緑色の盾でその爪を防ぐ。

 

スラッシャー「ガッ!」

 

その隙を狙いスラッシャーが爪を振り上げる。

 

鈴「甘いっ!」

 

大振りの爪をバックステップで避け、反撃の蹴りをスラッシャーに喰らわせる。

 

スラッシャー「ガッ!?」

 

鈴「……よし、いける!」

 

新田は射撃型スラッシャーに向けてダッシュし距離を詰める。

当然射撃型スラッシャーもただ棒立ちで待つわけではない。爪を顔に目掛けて射出する。

それを新田は盾で弾き、さらに距離を詰めようと前へ。

 

スラッシャーB「ゴゴッ!」

鈴「うあっ!?」

 

突然、もう一体のスラッシャーが頭上から奇襲を仕掛けてきた。

装甲の比較的薄い腕に、重力による加速の乗った一撃が叩き込まれる。

当然、他スラッシャーもその隙を見逃さない。

 

スラッシャーA「ガッ!」

射撃型スラッシャー「ガガッ!」

 

スラッシャーが新田を羽交い締めにし、身動きを取れなくさせる。

そこに射撃型スラッシャーが爪を打ち込んでいく。

 

鈴「あっ!うあっ!?」

 

新田は拘束から逃れようとするが、羽交い締めにされた腕は全くと言っていいほど動かない。

絶体絶命の中、新田の耳にはある音が聞こえた。

……何かが枯葉を踏み締める音。

特徴的なエンジン音。

バイクが、猛スピードでスラッシャーと新田に突撃した。

 

スラッシャーB「ゴアッ!?」

鈴「きゃんっ!?」

 

そしてバイクの搭乗者が、ヘルメットを外して顔を見せる。

 

智「お前らの相手は俺だ。かかってきな」

 

鈴「智……!?ってそれ私のバイク!勝手に使うんじゃない!」

 

智「いいだろ別に。緊急事態なんだから……うおっと」

 

スラッシャーの攻撃を避けながら、智は返答する。

 

鈴「……ああ、もう!そんな状態で来られても困るんだって……」

 

智と新田は背中合わせの状態になりながら、スラッシャー達と対峙する。

 

鈴「智、これ使って」

 

新田は"レッドドラゴン・コア"を取り出し、智に渡す。

 

智「……どう使えと?」

 

鈴「ロックを解除してボタンを押す!それだけ!」

 

智「はぁ!?んなこと言われたってわかるはずねえだろ!」

 

鈴「だからそれは……ってああもう!敵!敵来てる!」

 

スラッシャーB「ゴッ!」

 

新田は偶然近くに落ちてた盾を拾い上げ、スラッシャーの爪を防ぐ。

 

智「ロック解除って一体……はっ、これか!?」

 

智はコアの側面についたスイッチを上げる。そうするとコアは赤く光る。

 

鈴「そうそれ!あとはそのまま下部にあるボタンを押す!」

 

智「これを……押す!」

 

コアを反転させ、親指でボタンを押す。

そうするとコアは変形し、竜の頭を模したナックルとなる。

 

智「……うおおっ!?どうなってんだこれ!」

 

鈴「そいつを嵌めて殴れば何もないよりマシのはずだ!一体押さえておいて!」

 

智「お、おう!」

 

智はナックルを嵌め、目の前にいるスラッシャーに殴りかかる。

 

スラッシャーB「ゴッ!?」

 

智「……手応えがある。いけるぞ!」

 

いつもの何倍にも威力を増した一撃に、スラッシャーもひるむ。

 

鈴「それじゃ……こっちも行きますか!」

 

鋼コアを外して、新たに橙のコア……"オレンジフラッグ・コア"をセットする。

 

『モードチェンジ!"緑鎧のコマンダー"!勝鬨、大勝利!』

 

戦国の鎧武者を思わせる緑の装甲。両手には橙と緑に分けられた2本の旗が握られている。

 

鈴「ふんっ!」

 

旗を剣のように振るい、スラッシャーに攻撃。

 

スラッシャーA「ガッ!?」

 

そして新田は射撃型スラッシャーにもう一度向かっていく。

 

射撃型スラッシャー「ガガッ!」

 

当然射撃型スラッシャーは爪を飛ばし迎撃する。

新田は旗を胸の前で交差させ、その爪を防ぐ。

 

鈴「接近戦はお好きかな!」

 

そして振り上げた2本の旗を射撃型スラッシャーに叩きつける。

 

射撃型スラッシャー「ガガッ!?」

 

智「うおらぁっ!」

 

スラッシャーB「ゴゴッ!」

 

智のナックルとスラッシャーの爪が激しくぶつかり合う。

 

スラッシャーA「ガッ!」

 

智「遅い!」

 

背後から襲い掛かろうとした別のスラッシャーの突進を横に避ける。

スラッシャーはそのままの勢いで、さっきまで智と戦っていたスラッシャーにぶつかり双方倒れる。

 

スラッシャーA「ガッ!?」

スラッシャーB「ゴゴッ!」

 

鈴「それじゃ……決めますか!」

 

新田がベルト横に取り付けられたボタンを押す。

すると装甲と旗が光を放ち始める。

 

鈴「はっ!ていっ!おりゃあっ!」

 

光りだした新田は先程より明らかに速く動き、敵に怒涛の連続攻撃をかける。

 

射撃型スラッシャー「ガッ!ガガッ!ガアッ!?」

 

鈴「それじゃ、こいつでトドメだ!」

 

緑色の旗に"グリーンシールド・コア"を装着。そして緑の旗を両手で持って回転。

緑色の旋風が巻き起こり、三体のスラッシャーを巻き込んで竜巻を起こす。

 

『必殺!グリーン・コマンダー・サイクロン!』

 

スラッシャー達「「「グガアアアッ!!!」」」

 

竜巻で上空に打ち上げられたスラッシャー達は、そのまま爆散する。

 

鈴「……一丁上がり」

 

『変身解除』

 

変身を解除した新田は、そのまま智に向き合う。

 

鈴「無茶はするな。と言いたいところだけど……まずはお礼が先だね。ありがとう」

 

智「……あんたに死なれたら困る。それだけだ」

 

鈴「礼は素直に受け取っとくもんだよ?少なくとも今回、私は君に感謝してるんだから」

 

智「はいはい」

 

鈴「ただ私のバイクを雑に扱ったのはいただけないなぁ」

 

智「……仕方ないだろ、それが一番楽に助けられそうだったんだから」

 

鈴「ま、帳消しとしておこうか」

 

そう言って、新田はバイクに乗る。

 

鈴「ああ、そうそう。ナックルの手首あたりにボタンがあるだろう?それを押せば元のコアに戻るよ」

 

智「これか?」

 

智が言われた通りにボタンを押すと、ナックルは変形し元の"レッドドラゴン・コア"に戻る。

 

智「んじゃ、こいつは返しておく」

 

鈴「ああ」

 

新田は智から返された"レッドドラゴン・コア"をスカートの中にしまい、ヘルメットをつける。

そしてもう一つのヘルメットを智に渡す。

 

鈴「帰るよ。智くん」

 

智「おう」

 

智を後ろに乗せて、新田はラボに向けてバイクを走らせた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。