FAIRYTAIL~絶対なる黒龍戦記~   作:無颯

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大変お待たせ致しました……。


今回は普段よりも内容が多いのと、新しいキャラが登場します。最後にも名前だけですが、思わぬキャラが出てくると思います。


では、本編をどうぞ。




強襲

「おお~ッ!! 何か見覚えが……」

 

 

「ハートフィリア邸だ」

 

 

レギオン隊襲撃の翌日、ナツが目の前の巨大邸宅を見て声をあげると、エルザがそう言った。

既に分かっている通り、ここはルーシィの生家であるハートフィリア邸。実はカナの占いの結果で出たのがこの場所だったのだ。

あとちなみにこの場にいるのは、レイル、ウェンディ、ブラン、シャルル、ナツ、ルーシィ、グレイ、エルザ、そしてミッシェルというメンバーである。

 

 

「売りに出してたのか?」

 

 

「7年経ってる割には綺麗だよね」

 

 

「買い手がつくまでは定期的に掃除してるってことね」

 

 

グレイとハッピー、シャルルがそう言うと、

 

 

「管財人さんの話だと、その買い手が全然見つからなくって……」

 

 

「立派過ぎるんだろ」

 

 

「まあ、最盛期のハートフィリア財閥は周辺の国々を含めて“最大の財閥”って言われていたらしいですし……」

 

 

「ええ。ある噂によれば、その当時の総資産は小国の国家予算に匹敵するとさえ言われていたそうですからね~」

 

 

「す、凄い人だったんですね、ルーシィさんのお父さんって……!」

 

 

「えっと、それ私も初めて聞いたんだけど……」

 

 

グレイの発言に対してレイルとブランが補足を入れると、ウェンディとルーシィが思わずそんな声を上げた。と、ここで、

 

 

「懐かしいなぁ。あの頃はお城みたいって思ってたけど……変わらないな~」

 

 

「? ミッシェル、ここに来てたの?」

 

 

懐かしげに呟くミッシェルを見て、ルーシィがふと尋ねると……

 

 

「うううううッ………! よく一緒に遊んだじゃないですかー!! ふぇぇぇぇぇぇぇんッ……!!(泣)」

 

 

「えっ!? あ、う、うん! そう……だったっけ?」

 

 

「おやおや、意外に薄情なのですね~、ルーシィは」

 

 

「ちょっ!? 誤解を招くようなこと言わないでくんない!?」

 

 

ミッシェルはショックを受けて泣き出してしまった。慌てたルーシィは咄嗟に思い出そうとするが、結局思い出せず、ブランにそんな評価をされる……。

 

 

「姉さん、私の為に服を作ってくれたり……」

 

 

「そ、そうそう……だったかも……(汗)」

 

 

ハンカチを噛み締めながらミッシェルがそう言うが、ルーシィは一向に思い出す気配が無い。だがそれを聞いて、

 

 

「服をですか?」

 

 

「それは中々凄いことだと思いますよ」

 

 

「案外器用だったのね」

 

 

「可愛い話じゃないか」  

 

 

ウェンディとレイル、シャルル、エルザがそう口にした。

 

 

「色紙とか、草花で出来た服だったけど……」

 

 

「うええええええっ!!??」

 

 

「か、紙や草花で、ですか……」

 

 

ここでミッシェルの思わぬカミングアウトにルーシィは驚きを露にし、レイルも苦笑いを浮かべながら呟いた。一方、それを聞いて……

 

 

「おいおい……」

 

 

「紙とか花で、どうやって服作るんだよ?」

 

 

「そりゃあお前……」

 

 

ナツとグレイは“紙や草花で出来た服”を想像し始めた。その結果……何故か妙にお色気チックな格好のルーシィとミッシェルの姿が……。

 

 

「帰れェェェェッ!!!」

 

 

ドガッ!!

 

 

2人がそんな想像を浮かべていることに気付いたルーシィは、即座にキレて蹴り飛ばした。だが……

 

 

「ふむ、センスとしてはそこまで悪くない気がしますがね~。これは一度試作するべきでしょうか……」

 

 

「あー……どうやら2人の想像はブランには結構好評みたい」

 

 

「何でそうなるのよ……」

 

 

「あははは……」

 

 

まさかのブランの反応に、レイルやウェンディが苦笑いを浮かべたり、シャルルが呆れたりしていたのは……まあ当然であろう……。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「そろそろ本題に入りたいのだが、よろしいかな……?(ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!)」

 

 

「「異議なーーーしッ!!(ガクガクガクッ!)」」

 

 

その後ハートフィリア邸内へと移動した一行だが、何故か凄まじい形相のエルザの問い掛けに、ナツとグレイがガクブルな状態で肩を組みながら答えていた。まあ、その理由は説明するまでも無いだろうが……。

 

 

「でも、何処から始めます?」

 

 

「それに、何を探せばいい訳?」

 

 

「その為に、この人数でやって来たのだ。2人組(ツーマンセル)で散開し、各部屋を徹底的に捜索。時計の部品、或いは古い時計そのもの、例の部品を連想させる物、古代ポタメリア語に関わる書物など、何でもいい……。『これは?』と思えるモノは何でも調べろ」

 

 

ウェンディとシャルルが質問すると、エルザが簡潔に方針を説明した。その結果、2人組はナツとハッピー、グレイとエルザ、ルーシィとミッシェル、ウェンディとシャルル、そしてレイルとウェンディという組み合わせになった……。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

「これはこれは、流石はハートフィリア邸ですね~。所々に値が付けられない調度品が見られます」

 

 

「ブラン、僕達鑑定や差し押さえに来たんじゃないから……。でも確かに、これは買い手が見つからないのも当然だね」

 

 

応接室と思われる部屋を捜索していると、ここでブランがそう呟き、それにレイルは若干呆れつつもそんな事を言った……。

 

 

「ところでレイル、あなたは今回の件、どう思いますか?」

 

 

「……それはレギオン隊の……いや、ゼントピア全体の動きについて?」

 

 

「はい」

 

 

その問いの意図をレイルが確認すると、ブランは口を開いた……。

 

 

「言うまでもありませんが、昨日のレギオン隊の行動は異常です。“聖戦”という言葉を用いたとしても、一般的視点から見て正統性が無いことは明らか……」

 

 

「うん……。“ギルドへの襲撃”という強硬手段が教会全体で容認されているなんて、とてもじゃないけど考えられない。今の大司教様は人格の優れた人だったはず。それに何より……」

 

 

「“あの方”がそれを許す筈がない……ということでしょうか?」

 

 

ブランがそう尋ねると、レイルはそれに黙ったまま頷く……。

 

 

「つまり今回の件は教会全体の意思ではなく、単独でレギオン隊自身が……もしくは彼等を動かしている者がいる、と?」

 

 

「そうじゃなければ、こんな事態は起こらない筈だ。それに何だか、今回の事件がゼントピアの関係者だけで引き起こされてるとは思えない……」

 

 

「なるほど。それが昨日のような強硬手段の要因になっているということですか」

 

 

「……あくまでも僕の推測だよ。根拠は何一つ無い……」

 

 

そう冷静な口調で呟くレイル。と、ここで、

 

 

「とりあえずここには何も無いみたいだし、そろそろ皆と合流しよう」

 

 

「そうですね」

 

 

特に手掛かりは無いと判断したレイルとブランは部屋を出た。そしてしばらく邸内を歩いていると……

 

 

「! ナツさん、ハッピー!」

 

 

「あ、レイル、ブラン!」

 

 

「お前ら、何か見つかったか?」

 

 

「いえ、こちらも特には……」

 

 

ナツとハッピーに出くわした。どうやら彼等も特に目ぼしいモノは見つからなかったようである……。

 

 

「ふむ、ここは書斎に向かってみてはいかがでしょうか?」

 

 

「そうだね。ひょっとしたら他の皆さんも居るかもしれないし……」

 

 

「んじゃあ、さっさとそこに行くとすっか!」

 

 

「アイサー!!」

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

という訳でルーシィの父親であるジュードの書斎へとやってきたレイルとナツ達。するとそこには……

 

 

「皆さん集まってたみたいですね」

 

 

「つーか何遊んでんだよ?」

 

 

「あ、ナツさん、レイルさん!」

 

 

「静かにしていろ」

 

 

「今考えてんだよ」

 

 

レイルやナツ、ブラン、ハッピー以外の面々が、いくつかの種類のアルファベット1文字が書かれた紙を並べ替えながら何かを考えていたのだ。それを見て、

 

 

「! もしかして、“アナグラム”の解析ですか?」

 

 

「そうよ」

 

 

「? ア、アナグラ……?」

 

 

レイルの問いにミッシェルが答える中、ナツは“アナグラム”という単語を聞いて混乱し始めた……。

 

 

「要するに、パズルみたいなもんよ」

 

 

「へ、へえー、面白そうじゃねえか……!」

 

 

「ナツ~、本当に分かってる~?」

 

 

「う、うるせえ……!!」

 

 

ルーシィが簡単に説明し、ハッピーがそう尋ねていると、ここで、

 

 

「! は……は……」

 

 

「え? ナ、ナツさん……?」

 

 

「おやおや、これは……」

 

 

レイルとブランがナツの異変に気付くが、もう遅かった……。

 

 

「ハックションッ!!!!」

 

 

バサッ……!!!!

 

 

「あー、やっぱり……」

 

 

ナツのくしゃみによって、並び替えられていた紙は一気に宙へ舞ってしまった。これにはレイルもげんなりとした表情を浮かべるしかない……。

 

 

「ちょっとォォッ!? 何してくれるのよッ!!?」

 

 

「今考えてたんですよ!!?」

 

 

「お、悪い」

 

 

そしてルーシィとウェンディが怒り出したのを見て、ナツがサラッと謝っていると……

 

 

シュインッ!!

 

 

「「おわぁっ!!?」」

 

 

「今閃きそうだったんだ……!!!」

 

 

「エルザさん、目が本気ですよ……?」

 

 

「今にもナツを三枚下ろしにしそうですね~」

 

 

「あいつ、こういうの集中するタイプなんだ……」

 

 

エルザが怒りを露にしながらナツに剣を突き立ててきたのだ。その様子にウェンディは冷や汗をかきながら、ブランは面白そうにしながら呟くと、グレイがエルザの一面に関して軽く捕捉を入れる……。

 

 

「まったくもう! こんなにバラバラにして…………ん?」

 

 

「? どうしたの、シャルル……あれ?」

 

 

「これって……!!」

 

 

バラバラになってしまっている中、偶然にも“M”、“Y”、“T”、“H”の4文字が繋がり、ある単語を形成していることにレイルとシャルルは気付いた。と、その時、

 

 

 

 

「キェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェイッ!!!!!」

 

突如響き渡った叫び声の主は、ルーシィと契約している黄道十二門の精霊の1人であるクルックス。通称“クル爺”。十字架の形をした顔が最大の特徴だ。

 

 

「それは“MYTH(ミス)”ですな」

 

 

「“MYTH(ミス)”……?」

 

 

「“神話”という意味ですね~」

 

 

「ホマ。その通りです」

 

 

ウェンディの問いにブランが答えると、クルックスもそれに同意した。

 

 

「それらしくなってきたな……!」

 

 

「残りの文字で何ができる?」

 

 

「あとは“DUO(デュオ)”と“GREAT”ですね。そこに“MYTH”を繋げると……」

 

 

「! これよーッ!! ある! 『大いなる二つの神話』って本が!!」

 

 

レイルが並べ替えて出来た言葉を聞いて、ルーシィは膨大な本棚の中から1冊の本を持ってくる。

 

 

「作者はウィル・ネビル! 1つは『時計仕掛けの人生』って題名で、例の一説が記されていた本ね!」

 

 

「姉さんの部屋にあった、あの?」

 

 

「“時は刻まれ、やがて混沌が訪れる”……ですね?」

 

 

「そう! スッゴい偶然! そしてもう1つの神話が……」

 

 

そう言いながらルーシィは続いてもう1冊の本を見せた……。

 

 

「じゃーんッ! 『星空の鍵』!!」

 

 

「絵本じゃねえか、それ?」

 

 

「単なる絵本じゃないの!」

 

 

「どんなお話なんですか?」

 

 

「それがスッゴく神秘的でね……!」

 

 

グレイの発言に少々不機嫌になるルーシィだったが、ウェンディに内容について聞かれると一気に機嫌を良くし、内容について話し出した。そんな中、

 

 

「そりゃあともかく、“鍵”って言葉が怪しくねえか?」

 

 

「うむ。その本の中に何かヒントがあるかもしれん」

 

 

グレイとエルザは“鍵”という単語に着目していた。と、ここで、

 

 

「…………?」

 

 

「? どうしましたか、シャルル?」

 

 

シャルルが『星空の鍵』の表紙をジッと見ていることにブランが気付いた。

 

 

「アナグラムの次にアナグラム……な訳ないか。でも見方を変えれば……」

 

 

そしてルーシィがそう考えている間、シャルルの頭の中にある光景が過(よぎ)る。それはモノトーンな世界の中に、表紙に描かれている少女がいる様子だった……。と、次の瞬間、

 

 

 

 

 

 

「ダメ」

 

 

 

 

 

「(ゾクッ!!!)」

 

 

少女の恐ろしい表情と声に、凄まじい寒気を感じたシャルル……。

 

 

「? シャルル?」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「い、いえ……何でもないわ……」

 

 

それに気付いたレイルとウェンディが聞くが、シャルルは片手で頭を押さえながら首を振る……。

 

 

(この反応……予知能力で何かを見たのか……?)

 

 

そんな中、

 

 

「あの針に関わるかどうかは分からないけど……この本に、お父さんのメッセージが込められてるのかもしれない………。で、そこの猫ちゃんは何を持っているのかしら?」

 

 

「ウサギとカメの本だよ! この話もとっても神秘的だと思うんだ」

 

 

「あー、うん、もういいわ……」

 

 

ハッピーが全く関係の無い定番の昔話の本を持ってきたのを見て、ルーシィが呆れていた、その時、

 

 

「レイル」

 

 

「うん……ブラックメイク! 短剣(ダガー)ッ!!」

 

 

ガッ!!

 

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 

「ど、どうしたんですか、レイルさん!?」

 

 

突如レイルが瞬時に黒金剛の短剣を1つ生成かと思うと、入り口のドアに向けて投擲したのだ。そんないきなりの事に当然ながらルーシィとウェンディは驚きを露にするが……

 

 

「そのような所で盗み聞きとは関心しませんね~。入ってきたらどうですか?」

 

 

「……どうやら気付かれていたようだね。でもそれも計算通りだ」

 

 

『なっ(えっ)!!??』

 

 

ドアの向こうからブランの問い掛けに答える声を聞いて、レイルとブラン以外の全員が驚愕した。と、次の瞬間、

 

 

キュイィィンッ! バゴッ!!

 

 

「な、何だありゃ!?」

 

 

「ドアノブが膨らみやがった!?」

 

 

「大きくなってドアが破壊された、か……」

 

 

目の前の光景を見て、ナツとグレイ、エルザがそう言った。すると……

 

 

「表現力が乏しいね。“ドアノブが倍加したことで、結果ドアを押し破った”……とか言えないわけ?」

 

 

「っ!?」

 

 

「嘘っ!?」

 

 

「えっ!?」

 

 

「んっ!?」

 

 

「ほぉ……」

 

 

「あいつ……!」

 

 

「もしかして……!」

 

 

上からレイル、シャルル、ウェンディ、ナツ、ブラン、グレイ、ルーシィが反応した。まあ、それも当然であろう。何故なら……

 

 

 

 

『エクシード!!??』

 

 

 

土煙の中から現れたのは、教会の制服と帽子を身に付け眼鏡を掛けている、水色のエクシードだったのだから……。

 

 

「でも、エドラスにこんな奴いたかな?」

 

 

「違うわ……きっと、私達と同じ時期にこっちの世界に送られた1人……!」

 

 

「ふん……」

 

 

ハッピーとシャルルがそう話すが、水色のエクシードは特に興味も無いといった様子を見せる。と、ここで、

 

 

「テメエ、誰だ!?」

 

 

「レギオン隊の頭脳、サミュエル」

 

 

(つまり、“参謀役”といった所かな……?)

 

 

ナツの問いに対し、水色のエクシード──サミュエルがあっさりと自らの正体を明かす中、レイルはそう推測を立てた。

 

 

「早速嗅ぎ付けてきやがったな!」

 

 

「だったら針返せぇッ!!」

 

 

「嫌だね」

 

 

「何ィィィッ!!?」

 

 

「まあ、当然の反応ですね~」

 

 

グレイとナツの喧嘩腰な口調に対するサミュエルの答えに、ブランはただそう呟く。

 

 

「それにしても、見事なまでに僕の計算通りだったね」

 

 

「何……?」

 

 

「君達は必ずここに来る。そして手掛かりを見つける。実際見つけた。流石、僕」

 

 

エルザが疑問を感じる中、サミュエルは翼(エーラ)を発動して上昇すると、自らが持っている本を読みながら淡々と話す。それに対し、

 

 

「あいつ、何か癪(しゃく)に障るな」

 

 

「仕掛けてくる前にやるしかねえッ!!」

 

 

「換装!」

 

 

グレイは造形魔法の構えを取り、ナツは右手に炎を纏い、エルザは“雷帝の鎧”を身に纏うと……

 

 

「アイスメイク……槍(ランス)ッ!!」

 

 

「先手必勝ッ!!」

 

 

「火竜の咆哮ォォォォォッ!!」

 

 

一斉に氷の槍や電撃、炎の息吹(ブレス)をサミュエルに放った。と、その時、

 

 

シュンッ!

 

 

(っ! 新手か!?)

 

 

レイルは見た、サミュエルの前に何者かが割り込んだ瞬間を……。そして、

 

 

カッ……!!

 

 

「「なっ!?」」

 

 

「っ!?」

 

 

その何者かは、なんと自らが左手に持っていた大きな盾で3人の攻撃を受け止めたのだ。これには当然驚くナツ達だが、ここで更に驚愕の出来事が起こる……。

 

 

ギィィィィィィンッ……!!

 

 

「っ! ちょっ……!?」

 

 

受け止めた3人の攻撃が1度球体になったかと思うと、再び元に戻って“在らぬ方向”へと弾き返されてしまったのだ。では、ここで問題です。この現象の結果、一体何が起きるでしょう? 正解は……

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

「イヤーーーーーーーッ!!!??」

 

 

ハートフィリア邸の大破壊である。ちなみに悲痛な叫びを上げたのは、言うまでもなくルーシィ……。

 

 

「何やってんのよォッ!!? 私ここ買い戻すって決めた所だったのにーーッ!!」

 

 

「お言葉ですが、怒りの矛先を向ける相手を間違えていますよ? ルーシィ」

 

 

「ああ、そうだ! あいつが魔法を弾きやがったんだよ!!」

 

 

怒りを露にするルーシィに、ブランとグレイがサミュエルの前に立ちはだかっている“1人の男”を指した。すると……

 

 

「我こそは“レギオン隊の一番槍”……ダン・ストレートッ! 見参ぜよッ!!」

 

 

全身に鎧を身に付けて大きな槍と盾を装備し、土佐弁のような口調が特徴のその男──ダン・ストレートは自らをそう名乗った。だが、それを見て……

 

 

「えっと……」

 

 

「また変なのが来ちゃった……」

 

 

レイルとハッピーはそんな反応を示すしかなかった……。

 

 

「我が盾の力、とくと見たぜえ? 魔法の盾(マジック・シールド)、“リコシェ”! いかなる攻撃も通さんし、ばら撒くんじゃきー!!」

 

 

「“リコシェ”、というと……」

 

 

「“跳弾”ということか……!」

 

 

「マジックアイテムの中でも上位クラスに入る名品ですね~。まあ、教会の暗部が保有しているとなれば納得ですが……」

 

 

ダンの話を聞いたウェンディとエルザが彼の持つ盾の特性をそう判断すると、ブランがその盾“リコシェ”について補足を入れた。

 

 

「下手すりゃルーシィは、瓦礫の山を買い戻すことになるぞ!」

 

 

「面倒くせえ奴ばっか寄越しやがって!」

 

 

「来るよ、ダン」

 

 

「何度やろうと変わりゃせんきに!!」

 

 

そうしてグレイとナツに対し、ダンがサミュエルの前に陣取っていると、

 

 

「弾かれる前にぶっ壊す!!」

 

 

「いや、ちょっと……!?」

 

 

「ナ、ナツさん!?」

 

 

ナツがそう言って“火竜の鉄拳”を繰り出した。だが……

 

 

カッ!!

 

 

「おわっ!?」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

 

「どわあああああああっ!!!??」

 

 

「うわあああああああっ!!??」

 

 

 

「「「きゃああああああっ!!!?」」」

 

 

「っ!!?」

 

 

「おっと……!」

 

 

「だからやめてって!!」

 

 

「それじゃどう考えても弾かれますよ……」

 

 

案の定、先程の二の前となってしまった。これにはルーシィも怒り、レイルも若干呆れる他無い……。と、ここで、

 

 

「ダン、本はあの娘(こ)が持ってる」

 

 

「! ルーシィさん……!」

 

 

「……私が誘導する!」

 

 

「そんな!? 危ないわ、姉さん!!」

 

 

サミュエルにそう言われたダンが目を向けてくると、ルーシィはそう提案した。しかしミッシェルはそれを止めようとする……。

 

 

「本はここよ! 奪えるものなら奪ってみなさい!!」

 

 

そしてルーシィが部屋を出ていこうとした、その時、

 

 

 

「ッ!!!!」

 

 

「? あれ……?」

 

 

「何やら様子がおかしいですね~……?」

 

 

突如驚愕の表情を浮かべるダンを見て、疑問を感じ始めるレイルとブラン……。

 

 

「ド……!」

 

 

「? ド……?」

 

 

と、次の瞬間……!

 

 

 

 

 

「ドキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!」

 

 

 

ドゴンッ!!

 

 

「うえええええッ!!??」

 

 

え? 何が起こったかって? ダンが出ていこうとするルーシィの手前を狙って投擲し、行く手を阻んだだけですが……?

 

 

「! あれ!? いない……!?」

 

 

しかもいつの間にか、ダンが姿を消していることに気付くウェンディ……。さて問題です。ダンは何処にいるでしょう? 正解は……

 

 

 

 

 

「美しい……!!」

 

 

「え…………?」

 

 

ルーシィの真後ろである。当然ルーシィは突如背後から聞こえてきた声に驚いて振り返る。すると……

 

 

 

「ドッキュンッ!!!」

 

 

「ええっ!?」

 

 

「美しい……! 美人過ぎる魔導士が今、俺の心の臓を撃ち抜いたぜよ!!」

 

 

『……………………』

 

 

「おやおや……」

 

 

「はぁ………」

 

 

あまりにもぶっ飛んだ状況に、ミッシェルとブラン以外の面々は呆然とし、仲間である筈のサミュエルも深い溜め息を吐く……。

 

 

「たまらんきに、たまらんきにッ! ひしゃげてしまうじゃきぃッ!! ところで、お名前は?」

 

 

「ル、ルーシィ……(ポカーンッ)」

 

 

「“ルー”、“シィ”……! 全て俺のツボじゃきぃッ!」

 

 

「え……えー……」

 

 

最早言葉で表現するのも面倒な感じになりつつあるダンに、ルーシィも呆然としたまま名前を名乗ってしまう中、レイルは思わずそんな声を漏らした……。

 

 

「“ルーたん”って呼んでいい? “ルーちゃん”? “ルーぴぃ”? “ルールー”?」

 

 

「な、何でもいい……(ポカーンッ)」

 

 

まあ、そうしてる間にも某土佐弁バカは更に暴走しているが……。と、ここで、

 

 

「始まった……」

 

 

「えっと……も、もしかして、この人……」

 

 

「君達の考えてる通りの人物だよ……」

 

 

「あー……」

 

 

「こういうのもなんですが、実に苦労しているようですね~」

 

 

「……敵対関係にあるとはいえ、同情には感謝するよ」

 

 

「ちょっと! 敵に同情してどうすんのよアンタ達!?」

 

 

レイルとブランが何気にサミュエルを慰めているのを見て、シャルルは思わずツッコミを入れる……。その一方、

 

 

「何でもいい……!! その声! その目! その口! その髪! その胸! その腰! その足! 全てが俺の好みッ!! ジュワジュワさせるぜよッ!! これぞまさに……!!」

 

 

こちらでは未だに暴走を続けるバカが“極めつけの行動”に出ていた。それは……

 

 

 

「L! O! V! E……! LOVEぜよ!!」

 

 

 

「な……何なの………!?」

 

 

「LOVEぜよ!!」

 

 

体全体を使って4文字のアルファベットをルーシィに表し、そう告白してきたのだ。うん、もうツッコみ切れません……。と、その時、

 

 

「ルーシィ!!」

 

 

「ッ!!」

 

 

ドガアアアアアンッ!!

 

 

混沌(カオス)な空気を打ち破ったのはエルザだった。持っていた槍を投げつけるが、ダンはそれをかわす。

 

 

「誰だァッ!? 横槍入れるんじゃねえぜよ!!」

 

 

 

「行け! ルーシィ、ミッシェル! その本を盗られる訳にはいかん!!」

 

 

 

「う、うん!!」

 

 

 

ダンが怒りを露にする中、エルザは素早さを重視した露出の多い鎧、“飛翔の鎧”へと換装しつつ、ルーシィとミッシェルにそう指示した。

 

 

 

「皆は援護を! ここは私に任せろ!!」

 

 

「! 分かりました!」

 

 

「で、でも……」

 

 

「あまりの事に……」

 

 

「思考が停止してたぜ……」

 

 

レイルが頷く一方で、ハッピーとシャルル、グレイは先程までの状況を思い出して冷や汗をかいていた……。

 

 

「俺にも殴らせろ!!」

 

 

「お前はルーシィを守ってやれ」

 

 

 

ガンッ!!

 

 

 

「ぐお……ぉ……」

 

 

 

そして参戦しようとするナツに対し、エルザは拳骨を喰らわせながら諭すと……

 

 

 

「走れ、ルーシィ!!」

 

 

「行こう!!」

 

 

「はい!」

 

 

ダンと対峙し始めるエルザを背に、ルーシィとミッシェルが走り出した。

 

 

 

「まだ話は半分じゃきぃッ!!」

 

 

「「! オラアッ!!」」

 

 

 

それを見たダンはルーシィの後を追おうとすると、ナツとグレイは同時に攻撃を繰り出し行く手を塞ぐ。だがダンは当然リコシェでそれを防ぎ……

 

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

 

「壊すなーーーーッ!!!」

 

 

 

「はわわわわっ……!!」

 

 

 

「そろそろ学習してください……」

 

 

またしてもハートフィリア邸が“瓦礫の山”に一歩近づいてしまった。これには無論ルーシィは激怒し、ウェンディはオロオロし始め、レイルは思わずげんなりするが、取り敢えず部屋を後にしていく。そんな中、

 

 

「失礼しますよ?(ヒソヒソッ)」

 

 

「! どうした、ブラン?(ヒソヒソッ)」

 

 

「あの男の持つ槍、あれも恐らくマジックアイテムの類いだと思われます。ご注意を(ヒソヒソッ)」

 

 

「……分かった(ヒソヒソッ)」

 

 

「では、御武運を(ヒソヒソッ)」

 

 

 

ブランは密かにエルザに忠告をし、最後にその場を後にしたのだった……。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアン……ッ!!!!

 

 

 

「! 書斎の方からですね…」

 

 

 

「派手にやってるみたいだな…」

 

 

 

「姉さん!」

 

 

 

「うん…!」

 

 

 

「我々は直ちに邸内から出るとしましょう」

 

 

 

廊下を走っている最中に聞こえてきた轟音にウェンディとグレイがそう呟く中、ミッシェに対しルーシィは頷く。そしてブランが自分達の優先すべき事を提示した、その時、

 

 

 

バリィィィィィンッ!!

 

 

 

『ガルルルルルルッ!!』

 

 

「えっ!!??」

 

 

「魔物!!?」

 

 

「何でこんな所に居んだよ!?」

 

 

『グアアアアッ!!』

 

 

 

突如窓を突き破って邸内に侵入してきたのは、2匹の灰色の狼のような魔物だった。この辺りでは一切出没しない筈の魔物の登場にウェンディ、ルーシィ、ミッシェルが驚きを露にする中、2匹の魔物は早速襲い掛かってくるが……

 

 

「邪魔だあああああッ!!!」

 

 

ドガッ!!×2

 

 

「「ギャウッ!!??」」

 

 

 

ナツがあっさりと炎の拳で蹴散らした。

 

 

 

「……!」

 

 

 

「レイル、これはまさか……」

 

 

 

「? レイルさん……?」

 

 

その様子を見てレイルとブランが何故か驚いていることに気付くウェンディ。すると……

 

 

 

「やっぱり僕の計算通りだね」

 

 

『っ!!?』

 

 

「いつの間に!?」

 

 

「君達がもしあの状況から逃げるとして、その時の精神状態とこの屋敷の構造から簡単に弾き出される答えさ」

 

 

背後から聞こえてきた声にレイルとブラン以外の全員が振り返ると、そこにはいつの間にかサミュエルの姿があった……。

 

 

 

「本当に癪に障る奴だな……」

 

 

「エクシードだろうが容赦しねえぞ!!」

 

 

そんなサミュエルに対しグレイとナツは臨戦態勢を整え、今にも攻撃しようとするが……

 

 

「待ってください、ナツさん、グレイさん」

 

 

「あァ?」

 

 

「何だよ、レイル?」

 

 

ここでレイルが待ったを掛けてきたのだ。少しばかり出鼻を挫かれたため、若干不機嫌そうな表情を見せるナツとグレイ。すると……

 

 

 

「いつまで隠れてるつもりですか? いるんですよね? “アリスさん”」

 

 

「あら~、流石にお見通しなのね♪」

 

 

「っ!? 誰!?」

 

 

レイルのそんな問い掛けに対する返事が何処からともなく聞こえてきたのだ。これには当然ルーシィだけでなく他の者達も驚きを露にする中、その声の主はゆっくりとサミュエルの後ろから現れる。それは……白髪のショートカットで、若干ロリータ系と表現できそうな格好をした、ルーシィより少し年上な感じの少女だった……。

 

 

 

「ふふっ♪ 久しぶりね~、レイル君♪」

 

 

「やっぱり……さっきの魔物はあなたの差し金だったんですね」

 

 

「ということは……」

 

 

その少女──アリスの登場にレイルとブランが何かを言おうとすると、更に……

 

 

 

「アリスちゃーーーーーーんッ!!!!」

 

 

 

もう1人の人物がアリスの下へ全速力で走ってきた。それは、紫の長髪を1つに結んで下ろしている、“見た目だけなら”割と格好良い部類に入りそうな若い男だった。そして……

 

 

 

バシンッ!!

 

 

 

「ゲフッ……!!!」

 

 

「うるさい」

 

 

アリスに乗馬用の鞭のような武器でひっぱたかれ、撃沈した……。

 

 

 

「やはりデクスも一緒でしたか……」

 

 

そんな突如現れた男──デクスとアリスのやり取りを見て、ブランが溜め息混じりにそう呟く中、

 

 

「ねえ、何か……」

 

 

「く、臭くない……?」

 

 

「え、ええ……」

 

 

「きゅ、急に凄い匂いが……」

 

 

「こんなの今までに嗅いだことねえぞ……!?」

 

 

ハッピーとシャルルを皮切りに、ルーシィやミッシェル、グレイも或る事に同意する。それは……尋常ならざる“臭気”である。そして、その被害を特に受けているのが……

 

 

 

「は、鼻が曲がっちゃいそう、です……(フルフルッ)」

 

 

 

「な、何とかしてく、れ……!(ガクガクッ!)」

 

 

 

「ナツ~、ウェンディ~、大丈夫~?」

 

 

「滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の鼻の良さが仇になってるみたいね……」

 

 

ナツとウェンディだった。特にナツに至っては床に突っ伏してピクピク痙攣してしまっており、これにはハッピーとシャルルも心配そうに呟く他無い……。

 

 

「ッ! おおっ! 君達もこの香りの素晴らしさが分かるみたいだね!! この“メロメロコウ”の素晴らしさが!!」

 

 

「今の私達を見て何でそう思うのよ!? ていうか近づくなぁッ!! そして撒き散らすなぁッ!!」

 

 

 

「オイラ、何かデジャヴを感じるんだけど……」

 

 

「奇遇ね、私も今“思い出したくもない連中”が頭に過(よぎ)ったわ。臭いの質が全然違うけど……」

 

 

 

「“メロメロコウ”って……確か販売開始から数日でクレームが殺到して、あっという間に生産中止になった筈だけど……」

 

 

「そりゃ中止になるのも当然だな。この臭いは或る意味兵器だぜ……」

 

 

 

何故か凄まじい勘違いをしながら近寄って、その臭いの正体である香水──メロメロコウの入ったスプレーを自らに吹き掛けているデクスに、ルーシィは苛立ちを露わにし、ハッピーやシャルル、ミッシェル、グレイもそれぞれ呟いた。ちなみにシャルルの言っている“思い出したくもない連中”が誰なのかは……言うまでもないだろう……。

 

 

 

「ヌォォォォッ……!? こ、殺す気……か……!?(ガクガクッ)」

 

 

 

「ふぇぇぇぇ……(キュ~~ッ!)」

 

 

 

「! ウェンディも駄目か……」

 

 

 

「あんた達はよくそんな平気な感じで居られるわね……」

 

 

 

「まあ、僕は2人と違って嗅覚は人並みだし、耐性もあるからね……」

 

 

 

「とはいえ、それでも十分キツいのですが……」

 

 

 

ついにフラつき出してしまったウェンディを抱き留めるレイル。それを見てシャルルが尋ねると、レイルとブランは若干優れない表情を浮かべながらそう返す。と、ここで、

 

 

「んなことより、何者だコイツ等?」

 

 

「2人は知っているみたいだったけど、知り合いなの?」

 

 

「ま、まあ……この2人はアリスさんとデクスさん。それぞれ傭兵ギルド“血盟の先駆者(ヴァンガード)”のマスター兼戦闘部隊隊長と、工作部隊隊長を務めている人達です」

 

 

 

「っ!? よ、傭兵ギルドッ!!? しかもあの子がマスター!!?」

 

 

 

グレイとミッシェルの問いを受けてレイルがそう答えると、ルーシィは目の前にいるアリスとデクスに驚愕した……。

 

 

 

「つっても、大した連中には見えねえんだが……」

 

 

「外見で判断しない方がよろしいと思いますよ? 私見ですが、この御二人はどちらもS級クラスの実力を持つ魔導士。特にアリスに至っては、下手をすればエルザやラクサスに匹敵する程の強さですからね~」

 

 

 

「ええええええええっ!!!??」

 

 

 

「こういう時にあんたが冗談を言わないのは分かってるけど、本当なら全然笑えない話ね……」

 

 

 

グレイの発言に対するブランの忠告に、今度はハッピーが驚きを露わにし、シャルルも信じられないといった表情を浮かべる……。

 

 

「でも驚いたわ~♪ まさかあなた達があの“妖精の尻尾”と行動してるなんて~」

 

「色々あって居させてもらってるに過ぎないです」

 

 

「ふ~ん、その割には随分仲良しになってないかしら~? 特に……貴方がギュッてしてるその娘(こ)とか」

 

 

「! ふぇ……?」

 

 

いつの間にか意識を復活させていたウェンディは、いきなりアリスに指されて首を傾げる。

 

 

「ふふっ♪ ウェンディちゃん、だったかしら~? 何だかその娘、アリスにとって凄く良い感じっぽいのよね~。くれないかしら~?」

 

 

「! 絶対にダメです。断じて」

 

 

「え~? もう少し悩んでくれてもいいじゃな~い……!」

 

 

「悩む余地なんて皆無ですよ、まったく……」

 

 

そんなアリスとレイルの会話を聞いて……

 

 

 

「えっと、あの2人は一体何の話をしてるの?」

 

 

「ていうかさっき、“ウェンディをくれない?”とか言ってなかった!?」

 

 

「……実はアリスはああ見えても“生粋のサディスト”でして……恐らくウェンディが“その手の嗜好”にハマる人物と認識したようですね~」

 

 

「! ひっ……!!」

 

 

シュッ!!

 

 

ミッシェルとルーシィの問い掛けに対し、ブランがアリスの本性に関してそう答えると、ウェンディは一気に怯えて瞬時にレイルの後ろへ隠れてしまった。

 

「うわぁ……」

 

 

「何つーか、とんでもなくおっかねえ女だな……」

 

 

「怖がるのも今回ばかりは仕方無いわね……」

 

 

それを聞いたハッピーとグレイは勿論ドン引きし、シャルルも珍しく昔のように涙目で怯えるウェンディに同情する他無い……。と、ここで、

 

 

「そろそろ仕事に掛かってくれないかい? このままだと僕の計算が狂いそうだ」

 

 

「! ふんッ! 言われなくても分かってるわよ、うるさい猫ね……。デクス!」

 

 

「はいはい! 分かってるよ、アリスちゃーーーんッ!!!」

 

「っ!!??」

 

 

「! 姉さん……!!!」

 

 

サミュエルからの催促を聞いたアリスは苛立ちながらも声を掛けると、デクスはハイテンションのまま何処からともなく大剣を出して斬りかかる。その相手は……ルーシィだった。すると……

 

 

 

ガキィィィィィンッ!!

 

 

 

「いきなり仕事モードに切り替わらなくとも、よいのではないですか?」

 

 

「! ブランッ!!」

 

 

「先に行ってください。ここは……」

 

 

「アクアエッジッ!」

 

 

瞬時に大型化したブランがデクスの大剣を受け止めながらそう言おうとする間に、アリスは刃物のように鋭い高圧の水の塊を数発飛ばしてきた。すると……

 

 

ザザザザザァンッ!!!

 

 

 

「僕とブランが残ります!」

 

 

 

レイルがそれらを瞬時に斬り刻みつつ、ブランの続きの言葉を述べた……。

 

 

「いい加減俺にも戦わせろーッ!!」

 

 

「だからお前は“ルーシィを守れ”って言われてんだろ!」

 

 

「行きましょう! 姉さん!」

 

 

「う、うん……!」

 

 

「2人共頑張れーッ!!」

 

 

そう言ってナツとグレイ、ミッシェル、ルーシィ、ハッピーが先に離れ……

 

 

「レイルさん……」

 

「! 僕達は大丈夫。だからウェンディもナツさん達とルーシィさんと本を……」

 

 

「行くわよ、ウェンディ!」

 

 

「……はい!」

 

 

ウェンディとシャルルもそれに続いていく……。

 

 

 

「じゃあ君達、その2人のことは任せるよ」

 

 

「ええ。だから早く消えてくれないかしら~? 間違えて貴方を殺しちゃいそうだし……」

 

 

「フンッ……」

 

 

更にサミュエルもナツ達を追いかけるようにして飛び去っていくと、この場にいるのはレイルとブラン、アリス、デクスの4人となった……。

 

 

 

「やっぱり依頼なんですね?」

 

 

「当然よ~♪ アリスちゃん達は傭兵ギルド、依頼されないと動かないんだから~」

 

 

「では、依頼主はあのエクシードですか?」

 

 

「依頼主の情報を僕達が言う訳無いだろう? でもとりあえず、あの猫は依頼主じゃない」

 

 

「そうね。もしあの猫が依頼主だったら、アリスちゃんきっと断るついでに“丸焼き”にして鳥の餌にでもしてたんじゃないかしら~♪」

 

 

「そ、そうですか……」

 

 

アリスの過激な発言に若干苦笑いを浮かべるレイル。と、ここで、

 

 

「じゃあ、そろそろアリスちゃん達もお仕事に入ろうかな~♪ 任されたのは足止めだけだし、それに……貴方とも久しぶりに遊べるんだから!」

 

 

「っ!!」

 

 

 

最初に動いたのはアリスだった。何かを両手に数個持って、レイル達に投げつける。それは……

 

 

 

ドガガガガアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

 

爆弾だった……。当然のごとく爆発によって黒煙が発生し、2人が居た辺りを包むが……

 

 

 

ボフッ……!

 

 

 

「魔神剣ッ!!」

 

 

そこから無傷のレイルが姿を現し、アリスとデクスに向けて斬撃を放ってきた。それに対し、2人は苦もなくその攻撃を避け……

 

 

「オオッ……!!」

 

 

今度はデクスが横からレイルに迫ってくる。すると……

 

 

 

シュッ!

 

 

 

「行かせませんよ?」

 

 

「ッ! ラアッ!!」

 

 

「ふっ!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオンッ!!!

 

 

その前にブランが立ちはだかり、デクスの爆炎を纏った斬撃を黒い魔力のオーラを纏った斬撃で相殺した……。

 

 

 

「ブラン、デクスさんの相手を頼んでいい?」

 

 

「! 分かりました」

 

 

「デクス、黒猫君の方は任せるわよ」

 

 

「ああ! 任せてくれ、アリスちゃーーんッ!!」

 

 

「うるさいわよ」

 

 

お互い距離を取った所で方針を決めると、ブランとデクスがあっという間にその場から姿を消した。その結果、この場で対峙しているのはレイルとアリスの2人だけ……。

 

 

 

ドオオオオオオオオンッ……!!!

 

 

 

「……!」

 

 

「気になるかしら~? フェアリーテイルのお仲間ちゃん達の方が……。でも、気にしてる場合じゃないわよ、ねッ!!」

 

邸内から響いてきた音にレイルが耳を傾けていると、アリスは持っていた乗馬用のものと同様の形をした特殊な鞭の先から電撃を放って攻撃してきた。勿論レイルはそれを難なく避けていくが……

 

 

「ロックブレイク!!」

 

 

跳躍して避けた所で、突如巨大な岩の塊が下から出現し、空中にいるレイルへと迫ってきたのだ。しかし、

 

 

 

「! ブラックメイク……丸鋸(サークリング・ソー)ッ!!」

 

 

ズバババババババンッ……!!!

 

 

レイルはチェーン付きでノコギリ刃が特徴の黒金剛製の丸い刃物でバラバラに切り裂くと……

 

「天衝! 裂空撃ッ!!」

 

 

ガキィィィィィンッ!!!

 

 

勢いを付けて縦回転斬りを繰り出すが、アリスはそれを自らの鞭で受け止める……。と、その時、

 

 

 

「アブソリュート……」

 

 

「っ!? くっ……!!」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ……!!!

 

 

 

レイルが咄嗟に窓を突き破って邸内から出た瞬間、巨大な氷塊が突如現れ、屋敷の壁を破壊した。あの場に居れば間違いなく瞬間凍結していたことだろう……。すると、

 

 

 

シュンッ!!

 

 

「! ブラン、そっちはどう?」

 

 

「特に問題はありませんが、やはり以前より腕が上がっているようですね~」

 

 

「こっちもだよ。今のは流石に危なかったかな……」

 

 

 

ブランが隣に現れ、そう報告してきた。そしてそれを聞いてレイルも同意していると……

 

 

「! あれは……!」

 

 

レイルは見た。サミュエルがあの絵本『星空の鍵』を、特殊な魔法が付与された“風詠みの眼鏡”で読み、それを閉じている瞬間を……。

 

 

「「「はあああああああああッ!!!」」」

 

 

そんなサミュエルにウェンディとグレイ、エルザが攻撃を仕掛けるが、間に入ってきたダンの持つ“リコシェ”によってアッサリと防がれてしまった……。

 

 

「本は返すよ。全部覚えたから」

 

 

「えっ!?」

 

 

ズドドドドドドドドドドッ……!!

 

 

 

「ひやあああああああああっ!!??」

 

 

ルーシィはサミュエルの言葉に驚きを露わにするものの、すぐに先程の3人の攻撃がまとめて自分の方に降り注いできたため、慌てて避けるのに精一杯となった……。

 

 

 

「君達も足止め御苦労様。撤退するよ」

 

「あ~あ、これから面白くなりそうだったのに……。行くわよ、デクス!」

 

 

 

「オッケーだよ、アリスちゃーんッ!!!」

 

 

 

サミュエルからの撤退指示を聞いて、いつの間にか外に出ていたアリスとデクスは空中に待機していた1体の魔物に飛び乗る。それは“鯨”のように見えるものの、まるで気球のように漂う形の丸い魔物だった……。

 

 

 

「うふふ♪ じゃあね、レイル君。また遊びましょう♪」

 

 

「フッ、じゃあな君達! 今度僕が来た時もまた虜にして……」

 

 

バシンッ!!

 

 

「オウッ……!!」

 

「ウザいから黙ってなさい」

 

 

そんなやり取りをしつつ、魔物に乗って去っていった……。

 

 

「ルーたん、またニャー!! 次は二人っきりでデートぜよーッ!!」

 

 

「ダン、また重くなったんじゃない……?」

 

 

そしてサミュエルもまた、ダンを持って飛び去ろうとした、その時、

 

 

「「っ!!」」

 

 

ガキィィィィィンッ!!

 

 

2人に向かって斬撃が飛んできたのだ。当然それに気付いたダンがリコシェで受け止めて弾き返し、攻撃してきた人物に向ける。その人物とは……

 

 

 

『レイル(さん)ッ!!?』

 

 

 

なんとレイルだった。これにはナツやウェンディ達も驚きを隠せない……。

 

 

 

「驚いたね。僕の計算では君はこんな行動を取らない筈なんだけど……」

 

 

「やるっちゅうなら望むところじゃき……!」

 

 

「いや、僕もこれ以上戦う気はありません。でも……あなた方に1つ、どうしても聞かなければならないことがあります」

 

 

「? 君の質問に僕達が答えると思ってるのかい? 悪いけど答える気なんて……」

 

 

レイルの言葉を聞いたサミュエルが呆れた様子でそう言っていた、その時、

 

 

 

 

 

「あなた方のこれまでの行動は、“イオン”が認めたものなんですか?」

 

 

「「ッ!!!??」」

 

 

 

「“イオン”……?」

 

 

 

「誰かの名前か……?」

 

 

ナツとグレイがいきなり出てきた言葉に疑問を感じる中、サミュエルとダンは明らかな驚愕の表情を浮かべた……。

 

 

 

「お前(まん)、どうしてその名を知ってるぜよ!!!??」

 

 

 

「知ってるに決まってるじゃないですか。“あいつ”は僕の上司で、親友なんですから……」

 

「っ!!? し、親友じゃと!!?」

 

 

 

「! そうか、君が“あの方”の……(ボソッ)」

 

 

 

レイルの答えにダンが更に驚愕する一方、サミュエルは誰にも聞こえない程の小さな声でそう呟く……。

 

 

 

「それだけは答えてください。答えないのなら……“本気で”実力行使をします……」

 

 

「レ、レイル……!?」

 

 

「凄まじい覇気だな、これは……」

 

 

愛刀“エコートレイサー”を構えて鋭い目付きをするレイルの姿に、ルーシィは当然驚き、エルザも冷や汗をかきながら呟いた。すると……

 

 

「イオン様は今回の僕達の行動を知らないだろうね。何せ前から“居場所が掴めない”のだから……」

 

 

「っ!!? おいサミュー! それは機密事項じゃ……!?」

 

 

 

「居場所が……掴めない……!?」

 

 

「ッ! まさか……」

 

 

 

サミュエルの言葉にダンが慌てる中、レイルとブランはそれを聞いて“1つの結論”に達した……。

 

 

 

「僕が答えるのはここまでだよ。計算外なことが起こり過ぎた……。これで失礼させてもらう」

 

 

 

「お、おい、サミュー……!?」

 

 

 

そして今度こそダンを連れて去っていくサミュエル。だがレイルは……それに少しも目をくれることなど無かった……。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

「でも本を置いてくなんて……!!」

 

 

「嘗められたものね……!」

 

 

襲撃者達が去っていった後、ハッピーとシャルルはサミュエル達の余裕とも取れる行動に対してそう言う。更に、

 

 

 

「見下しやがって……!!」

 

 

「借りは必ず返す……!!」

 

 

「てか元に戻せーーッ!!!」

 

 

グレイ、エルザ、“小さい”ナツも苛立ちを露わにした。ちなみに何故ナツが小さくなってるかは、原作を観てください……。

 

 

(お父さん……一体、何を伝えようとしてるの……?)

 

 

一方でルーシィは心の中でそう呟く……。

 

 

 

「レイルさん……」

 

 

「レイル……」

 

 

 

そしてウェンディが心配そうに、ブランが何とも表現し難い表情を浮かべる中……

 

 

 

「イオンが……行方不明……!!??」

 

 

 

レイルは発覚したまさかの事実に、驚きを隠せなかったのだった……。

 

 

 

 

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