FAIRYTAIL~絶対なる黒龍戦記~   作:無颯

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アニメの方は佳境に入っているようですが、こちらはまだまだですね…。



失礼しました。では、本編をどうぞ。


追跡

 

 

 

 

妖精の尻尾のギルドにて……

 

 

 

 

「“六魔将軍(オラシオン・セイス)”に“幽鬼の支配者(ファントム・ロード)”か……とんでもねえ事になっちまったな……」

 

 

 

 

「それで先代が評議院に呼ばれてったんか…」

 

 

 

 

「“バラム同盟”の一角が復活した上に、元聖十大魔導だった男が協力している訳ですからねぇ。評議院だけの問題でなくなっているのは確かです」

 

 

 

 

「まあ、当然の対応といった所か…」

 

 

 

 

マカオとワカバの呟きを聞いて、ジェイドとガイがそう言った。

 

 

 

 

「我々はどちらとも大きく関わっている上に、“別の脱獄事件”もあったからな…」

 

 

 

 

(! それって…)

 

 

 

 

エルザの言葉を耳にしたレイルは何かに気付くが…その間にも話は進んでいく。

 

 

 

 

「7年前よりも質(たち)が悪くなったぜ…」

 

 

 

 

「こちらはレイルやブラン達以外、手も足も出なかったわ。それに…」

 

 

 

 

「幽鬼(ファントム)の奴等なんか、六魔将軍(オラシオン・セイス)よりも怖かったよ。しかも狙いはウェンディみたいだし…」

 

 

 

 

「ゼントピアのトップも奴等の手に堕ちている…。状況はかなり悪いな…」

 

 

 

 

グレイとシャルル、ハッピー、リリーがそう言うと、ウェンディとアニスの表情が曇り、レイルがそんな2人を気に掛けるように目を向ける…。

 

 

 

 

「俺は、何もできなかった…ちくしょうッ…!」

 

 

 

 

「いいえ、元はと言えば私が…」

 

 

 

 

「ミッシェルのせいじゃないったら。それにジェイドさんも言ってたでしょ? お父さんはこうなることも予想していたかもしれないって…」

 

 

 

 

ロメオが悔しさを滲ませる中、責任を感じているミッシェルの姿を見たルーシィはそんな言葉を掛けた。と、ここで、

 

 

 

 

「そもそも、どうしてルーシィさんのお父さんが、あの時計と関わることになったんでしょう?」

 

 

 

 

「それが、分からないのよ…」

 

 

 

 

「ジェイド、あんたも心当たりは無いのか?」

 

 

 

 

「ええ。以前も申し上げたように、ジュード氏とお会いしたのは本の受け渡しの1度のみですので」

 

 

 

 

ウェンディとガイの問い掛けに、それぞれそう答えるルーシィとジェイド。

 

 

 

 

「色々な謎はあるが、その解明は後回しだ。今の我々が為すべきことは、六魔将軍や幽鬼(ファントム)の者達を探し出し、無限時計や導師イオンを取り戻すことだ」

 

 

 

 

「少々単純ではありますが、相手の目的も多くが不明である以上、やむを得ませんね~」

 

 

 

 

そして、エルザの考えにブランが同意を示していると…

 

 

 

 

「俺は行くぞッ! あちこち探し回れば、その内どっかでアイツ等と出くわすかもしれねえだろ!?」

 

 

 

 

「ダメだな。今回は作戦を立ててから動くべきだ」

 

 

 

 

「何ィッ!!? やる気あんのかァッ!?!? 考えたぐらいじゃどうにもなんねえだろォッ!!」

 

 

 

 

「やる気の問題じゃねえ! テメエの頭は頭突きにしか使えねえってのかァッ!?」

 

 

 

 

「頑張って~、グレイ様~! ジュビアはグレイ様の味方です~!」

 

 

 

 

ナツとグレイがそんな感じでいがみ合い始めた挙句、殴り合いの喧嘩をし出してしまった。しかもジュビアはグレイの方を見てトリップしている。それを見て…

 

 

 

 

「ねえ、この2人っていつもこんな感じなの?」

 

 

 

 

「アイ…」

 

 

 

 

「むしろこの光景を見ない日は無いだろうな」

 

 

 

 

「うわ、アホくさ…」

 

 

 

 

ハッピーとリリーからそう聞いたアニスは、辛辣な言葉を呟いた…。

 

 

 

 

「皆さん、イライラしてますね…」

 

 

 

 

「手を拱(こまね)いているしかないもの。仕方ないわ」

 

 

 

 

「不在の者も多いしな」

 

 

 

 

「ギルダーツとラキも遠出してっからな」

 

 

 

 

(! そういえば、確かあの2人は“例のこと”を調べに行ってた筈…)

 

 

 

 

ウェンディやシャルル、エルザ、マックスがそんなやり取りをしている中、レイルは何かを考えながら“ある人物”に目を向けていた…。

 

 

 

 

「こういう時だ…。1人でも多い方が良いのだが…」

 

 

 

 

そしてエルザが思わずそう呟いた、その時、

 

 

 

 

ガチャッ!

 

 

 

 

「よぉ! 戻ったぜぇ!」

 

 

 

 

ギルド内に陽気な声が響き渡ったかと思うと、入り口からやってきたのは……

 

 

 

 

「雷神衆、仕事から御帰還だ~…!」

 

 

 

 

ビックスロー、フリード、エバーグリーンの3人、“雷神衆”の面々だった。ちなみに声の主はビックスローである。

 

 

 

 

「今度の仕事もあっさり片付けてきたわよ~! 我ながら、自分達の有能さに痺れちゃう……わ……?」

 

 

 

 

エバーグリーンが続けて自慢げに言おうとするが、ギルド内の様子を見て言葉を詰まらせた。

 

 

 

 

「どうした? 何かあったのか?」

 

 

 

 

「ええ、まあ…」

 

 

 

 

「大まかな説明になりますが、実は…」

 

 

 

 

フリードが思わずそう尋ねてくると、レイルとブランがこれまでの経緯と現況を説明し始めた…。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

 

「あァ~? 無限時計に世界の終末、それに幽鬼(ファントム)の復活か~…。ちょっと留守してる間に、えらい事になってるじゃねえか」

 

 

 

 

「間が悪かったわね~。私達が一緒なら、六魔将軍(オラシオン・セイス)や幽鬼の支配者(ファントム・ロード)なんか返り討ちにしてやったのに」

 

 

 

 

事情を把握したビックスローとエバーグリーンがそう言っていると、

 

 

 

 

「実はここに戻る途中、いつものように俺が1人で食材の買い出しに出かけていた時だ…」

 

 

 

 

「相変わらず食事係はフリードなんだね」

 

 

 

 

ハッピーが若干の茶々を入れる中、フリードは話を続ける。

 

 

 

 

「教会の警備をしていた兵士が話していたんだが、“大きな鎌を持った男”と、“とてつもないスピードで走る男”が、2人がかりでシロツメにある教会を全滅させたとか…」

 

 

 

 

「大きな鎌と、とてつもないスピード!?」

 

 

 

 

「エリゴールとレーサーか!!」

 

 

 

 

「間違いないですね」

 

 

 

 

「“グリムリーパー”とか言ってたね…!」

 

 

 

 

ナツの予想にレイルが同意する中、ハッピーが軽く補足を入れた。

 

 

 

 

「聞いた所では、教会の襲撃事件はこの2、3日で急に増えているという…」

 

 

 

 

「そんな凄えことがあったなら、俺達にも教えてくれよ~」

 

 

 

 

「俺はちゃんと話したぞ。お前等は、飯を食うのに夢中で聞いてんかったんだろうが…」

 

 

 

 

フリードがそう言うと、ビックスローとエバーグリーンは首を傾げたり苦笑いを浮かべたりし始めた。どうやら事実のようである…。

 

 

 

 

「しかし分からんな。奴等は何故教会を狙うんだ?」

 

 

 

 

「何か心当たりはある、アニス?」

 

 

 

 

「ううん。特に何も…」

 

 

 

 

エルザの疑問を聞いたレイルはアニスに尋ねてみるが、教会関係者でもある彼女にも心当たりは無いらしい…。

 

 

 

 

「つまり、無限時計が奪われてから、六魔将軍の動きが激しくなったって事よね?」

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

 

ルーシィが隣にいたミッシェルの方に目を向けるが、そんなミッシェルは何処となく妙な様子を見せていた。そして……そんな彼女を数名の人間が見ていることに、妖精の尻尾の面々が気付くことはなかった……。と、その時、

 

 

 

 

「! キナナ!」

 

 

 

 

「おいおい、まだフラついてるじゃねえか!?」

 

 

 

 

マカオとワカバが声を上げた先に居たのは、2階部分から降りてくるキナナだった。その足取りはフラついており、本調子でないことは明らかである。だが、それ以上に……

 

 

 

 

「ブラン…(ボソッ)」

 

 

 

 

「ええ…様子がおかしいのは、体調によるものだけでは無さそうですね~…(ボソッ)」

 

 

 

 

「キナナ? どうしたの?」

 

 

 

 

レイルとブランは、彼女の纏っている雰囲気そのものに着目していた。すると、キナナはそう尋ねるルーシィの声にも反応することなく、近くのテーブルに置いてあったフォークを手にし、ゆっくりと歩みを進めていく…。

 

 

 

 

「ダメだろ!! まだ寝てねえと…!!」

 

 

 

 

「! キナナさんの目…」

 

 

 

 

「うん……」

 

 

 

 

ワカバの言葉にも無反応な彼女の様子を見て、ミッシェルとルーシィもその異変に気付く…。

 

 

 

 

「時間を……無駄にはできん……」

 

 

 

 

そう言いながら、壁の目の前で立ち止るキナナ…。

 

 

 

 

「行くぞ…」

 

 

 

 

そして、彼女は“ある行動”に出た。それは……

 

 

 

 

「今の俺には……」

 

 

 

 

「ちょっと、キナナ!?」

 

 

 

 

「この悲しみこそ……」

 

 

 

 

「何、してるの…?」

 

 

 

 

フォークを使って“壁に文字を掘る”というものだった。レビィとルーシィが声を掛けるが、やはりキナナが反応する様子は無い…。

 

 

 

 

「力を…生み出す…」

 

 

 

 

「「「キナナ(さん)!!」」」

 

 

 

 

レビィとミラ、更にウェンディが呼んでも尚、キナナは掘ることを止めなかった…。

 

 

 

 

「この、胸の…痛みが……!」

 

 

 

 

(! これって、まさか……)

 

 

 

 

 

そしてレイルが何かに気付く中、キナナの奇怪な行動は続いていく…。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

所変わって、ここはゼントピア教会の総本山。そのとある場所に、2人の男の姿があった…。

 

 

 

 

「お待たせいたしました」

 

 

 

 

1人はゼントピア教会の枢機卿―――ラポワント…。

 

 

 

 

「! ラポワント殿…」

 

 

 

 

もう1人は、評議院直轄の実働部隊である“強行検束部隊”の総隊長―――ラハールである…。

 

 

 

 

「評議院の検束部隊の御方ですね? 何か御用でしょうか?」

 

 

 

 

「収容されていた、“六魔将軍(オラシオン・セイス)”の事です。彼等の脱獄の知らせは、こちらにも届いているかと思いますが…」

 

 

 

 

ラハールがラポワントに近付きながら言うが、対するラポワントは何も言わない…。

 

 

 

 

「それについて、確認したいことが…。六魔将軍が収容されていた当時、教会から定期的に面会に来ていた人物がいたらしいのです。もしかしたら、脱獄に関係があるかも…」

 

 

 

「言い掛かりはやめていただきたい」

 

 

 

 

「っ! は……?」

 

 

 

 

しかし、ラハールの聞きたいことが何かを察した瞬間…ラポワントは最後まで聞かずに否定した…。

 

 

 

 

「脱獄は評議院のミス。その責任を教会に押し付けるとは、言語道断ですな…。出直してくるがよい…。このままでは大きな政治問題になりかねませんぞ?」

 

 

 

 

「っ……!」

 

 

 

 

「では、私はこれにて…」

 

 

 

 

そして、ラポワントはそう言い放って立ち去ろうとした、その時…

 

 

 

 

「もう1つ御聞きしたい事があります」

 

 

 

 

「…何でしょうか? こちらも少々忙しい身。あまり時間を掛けたくはないのですが…」

 

 

 

 

「“導師イオン”の所在が掴めないというのは、事実なのですか?」

 

 

 

 

その問いを聞いたラポワントは、僅かに目を細める…。

 

 

 

 

「こちらでも知る者はごく一部のみの筈ですが…何故そのことを?」

 

 

 

 

「導師イオンが我々にとっても重要な方であることは、そちらも御存知かと思いますが…」

 

 

 

 

「…“クロニクル”、ですかな…?」

 

 

 

 

ラハールの言わんとしていることを予想したラポワントは、思わず眉をひそめる…。

 

 

 

 

「導師イオンはクロニクルの三官である“神祇官”として、この国の政治そのものにも影響を与えています。そして今回の六魔将軍の背後には、かつて“聖十”の称号を持っていた男…ジョゼ・ポーラや元“幽鬼の支配者(ファントム・ロード)”の幹部達がいるという情報も上がっています」

 

 

 

 

「………」

 

 

 

 

「恐らくクロニクルは“導師イオンの失踪”と“六魔将軍、及び幽鬼の支配者の復活”を関連付け、本格的に動き出すと思われます。この問題は評議院、ゼントピアの双方における懸念事項です。どうかこの件に関して御協力を…」

 

 

 

 

「その必要はありません」

 

 

 

 

するとこちらに関しても、ラポワントは拒否の姿勢を見せた…。

 

 

 

 

「イオン様の捜索はこちらでも既に動いております。現状では、評議院側と協力するつもりはありません」

 

 

 

 

「! ですが……!」

 

 

 

 

「そろそろ職務に戻らなければなりません。これにて失礼致します」

 

 

 

 

そして、ラポワントはかなり強引な形で話を終わらせ、その場を後にしてしまった…。それを見て……

 

 

 

 

(あの態度…何か後ろ暗いことがある証拠か…? クロニクルの方々が本格的に動こうとしているとはいえ、渦中にいる筈のアスフォード元帥や、増援として向かったカーティス元帥との連絡も依然不通…。やはりこの状況は、思っていた以上に芳しくない…)

 

 

 

 

ラハールは1つの決断を、心の中で下す…。

 

 

 

 

(“奴”の力を借りるしかなさそうだ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、再び妖精の尻尾……

 

 

 

 

「どうなってんだ、これ…?」

 

 

 

 

「壁が文字だらけですね…」

 

 

 

 

マックスとウェンディが、目の前の壁の状態を見て思わず呟く。確かにそこには、大量の文字がキナナによって書き記されていた。ちなみにそのキナナは今ミラに介抱されており、依然として魘(うな)されているようである…。

 

 

 

 

「予知…とかじゃなさそうね…」

 

 

 

 

「この世界に…終末をもたらすには……!」

 

 

 

 

シャルルがそう言う中、キナナは譫言(うわごと)のように呟いている。それを見て、

 

 

 

 

「もしかして、例の事を何か思い出したとか…?」

 

 

 

 

「どうだかなぁ? ここ最近、そのことで悩んでた感じもあったし…」

 

 

 

 

「…?」

 

 

 

 

「そういえば、キナナさんは確か…」

 

 

 

 

「うん…。キナナはね、長い間呪いを掛けられてたんだって」

 

 

 

 

「! 呪い…?」

 

 

 

 

ルーシィとマックスのやり取りを聞いたミッシェルが首を傾げていると、レイルの補うような問い掛けを受けてルーシィが軽く説明した。そして、それを聞いたミッシェルが反応を見せていると…

 

 

 

 

「これ、古代ポタメリア語だよ!」

 

 

 

 

「! またそれかよ…」

 

 

 

 

「針の文字と同じ奴か…」

 

 

 

 

壁の文字を見たレビィがその種類をすぐさま特定し、それを受けたワカバとマカオが思わず辟易した口調で呟いた。すると…

 

 

 

 

「どうやら、“ウィル・ネビル”という人物についての記述らしい」

 

 

 

 

「! ウィル・ネビル…!」

 

 

 

 

「“星空の鍵”の作者だな」

 

 

 

 

「「……!」」

 

 

 

 

同じく古代文字に詳しいフリードの発言を聞いたルーシィとエルザがそう言うと、ナツとハッピーは思わず反応した…。

 

 

 

 

「えっと、ざっと翻訳すると…ウィル・ネビルはかつて何体もの星霊と契約し、彼等を使いこなすことが出来た偉大な魔導士だった…」

 

 

 

 

「星霊と契約…!?」

 

 

 

 

「作家でもあり、星霊魔導士でもあるってことか…」

 

 

 

 

レビィの大まかな翻訳を聞いてハッピーとグレイがそう言った。そして、内容はまだ続く…。

 

 

 

 

「更にこうある…ウィルネビルには、多くの弟子がいた。しかし彼が永久の眠りに就いた後、弟子たちは散り散りになり、その後の行方は分からない…」

 

 

 

 

「あ…!」

 

 

 

 

続けてフリードが翻訳した内容を述べると、ここでルーシィが何かを閃き、その場を後にした…。

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

数分後……

 

 

 

 

「? 何だそれ…?」

 

 

 

 

「人名事典。倉庫から持ってきたの」

 

 

 

 

ルーシィがテーブルの上に置いたのは、様々な重要人物の名前と素性が記されている“人名事典”。ルーシィはナツの問い掛けに答えつつ、ページをめくり始める…。

 

 

 

 

「ウィル・ネビル……あった!」

 

 

 

 

そう、調べているのは言うまでもなく“ウィル・ネビル”のことである…。

 

 

 

 

「ウィル・ネビル…作家…ゼントピアの……枢機卿…?」

 

 

 

 

「食い物か、それ?」

 

 

 

 

「教会組織のお偉いさんだ」

 

 

 

 

「正確に言うと、大司教に次ぐ地位の人間だ。教会内でも数人しかいないくらいのな」

 

 

 

 

「その人物が枢機卿だったことは間違いありません。以前教会内で歴代の重職者名簿を拝見した際、確かにその名がありました」

 

 

 

 

ルーシィが事典に記された内容を読んでいると、ナツがまたしても的外れなことを言ってきたため、呆れ混じりに簡単に説明するエルザ。更にそこへ、ガイとジェイドが詳しく解説を加える…。

 

 

 

 

「ええと…枢機卿として数々の功績を残し、ゼントピアの歴史の研究家としても知られていた。でも、ある時期を境に教会を離れて、しばらく行方不明になったんだって」

 

 

 

 

「理由は書いてないの?」

 

 

 

 

「……書いてない」

 

 

 

 

エバーグリーンの質問を聞いたルーシィは事典を隈なく探すが、それについての記載は無かった…。

 

 

 

 

「数年間行方不明の後、突然、作家ウィル・ネビルとして再び世の中に出て来たそうよ…。でも、星霊魔導士だったことは載ってないわね。弟子が大勢いたことも…」

 

 

 

 

「何がどうなってるんだ? 事典にも出てないことを、どうしてキナナが知ってるんだよ?」

 

 

 

 

「しかも、古代の文字で書くなんて…」

 

 

 

 

マックスとハッピーの疑問が更に深まる中、ここでレイルが発言する…。

 

 

 

 

「もしかしたら、“憑依”かもしれません」

 

 

 

 

「! 憑依だと…?」

 

 

 

 

「ひょ、憑依って、幽霊が人に乗り移る…あの憑依ですか?」

 

 

 

 

“憑依”という単語に驚くエルザと、若干怯えた様子のウェンディ。すると、

 

 

 

 

「いえ、憑依というのは何も霊によってのみ起こる現象ではありません。場合によっては、実在する人物の意識が乗り移る可能性も大いにあります」

 

 

 

 

「ってことは、この文字を書いてた時のキナナは別人だったってことか?」

 

 

 

 

「それなら確かに、あの様子にも説明がつくなぁ…」

 

 

 

 

ブランが憑依に関して補足を加えた。それを聞いて、マカオとワカバはかなり納得したように呟く…。

 

 

 

 

「だがもし憑依だとすれば、一体誰の意識がキナナに乗り移ったのだ?」

 

 

 

 

「…彼女がこの壁に記した内容と、乗り移った意識が実在する人物のものだったと仮定すれば、考えられる可能性は1つですねぇ…」

 

 

 

 

「! まさか…今回の無限時計の一件に関わってる連中の中にいるっていうのか?」

 

 

 

 

「十分にあり得ると思います。むしろこのタイミングで起きている以上、そう考えるのが自然と言えるかもしれません…」

 

 

 

 

リリーとグレイの質問にジェイドとレイルが答えると、それを聞いた妖精の尻尾の面々は皆一様に驚くが……それを否定しようとする者は誰もいなかった…。と、ここで、

 

 

 

 

「それについては考えてても埒(らち)が明かないわ。今は無限時計の方よ…。無限時計は教会のものだったって、レギオンの隊長が言ってたのよね?」

 

 

 

 

「その教会にいた人が『星空の鍵』の作者で、ジュード叔父さんが姉さんにメッセージとして残した…」

 

 

 

 

シャルルが話題を無限時計そのものについての話に戻し、ミッシェルがこれまでに判明したことを整理していると……

 

 

 

 

バンッ!!

 

 

 

 

「あぁー、じれってぇッ!!! だから結局どうすればいいんだよッ!? その“ミルク・デビル”とかっていうのを探して、ぶん殴りゃあいいのか!?」

 

 

 

 

「ウィル・ネビルな。ウィル・ネビル…」

 

 

 

 

「ウィル・ネビルはとっくに死んでる! ちゃんと話聞いてろぉッ!!」

 

 

 

 

「何だとゴラアッ!!!」

 

 

 

 

「やんのかオラアッ!!!」

 

 

 

 

「グレイ様頑張ってー!!」

 

 

 

 

「本当にまた始めてるし…マジでアホくさ…」

 

 

 

 

ガイが何気にツッコむ中、再び喧嘩を始めてしまうナツとグレイ。それを見たジュビアがまたしてもグレイを応援し始め、アニスも再び毒のある言葉を口にしているのは…気にしなくてもいいだろう…。

 

 

 

 

「六魔将軍(オラシオン・セイス)達が次に何処を襲うのかが分かれば、待ち伏せが出来るよな」

 

 

 

 

「うん…!」

 

 

 

 

「もっとも、その特定が最大の問題ですがね~…」

 

 

 

 

そしてマックスの呟きにハッピーが頷いたのに対し、ブランが根本的な問題を指摘していると…

 

 

 

 

「うぅ……ふあ~……! うるさいわね~。寝られやしないじゃない…」

 

 

 

 

「お前こそいつまで寝てんだ!! もう昼過ぎだぞッ!!」

 

 

 

 

「何だか知らないけど、やたら眠くって……」

 

 

 

 

今までテーブルに突っ伏して寝ていたカナが起きたのだ。そんな彼女に対して、若干苛立ちを露わにしながら声を上げるワカバ…。

 

 

 

 

「何? 六魔将軍達の居場所を見つければいいの?」

 

 

 

 

「! そうか、お前の占いで…!」

 

 

 

 

「そういうこと!」

 

 

 

 

(位置の特定まで出来るのか…。カナさんのカードマジックの応用性は、思っていた以上だな…)

 

 

 

 

ハッとした様子のエルザに対し、ウインクをするカナ。そしてレイルが心の中で彼女の魔法をそう評価する中、特定のための下準備が始まる…。

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

しばらくして……

 

 

 

 

 

「よし、出来た! こんな感じでいい?」

 

 

 

 

「うん、上出来♪」

 

 

 

 

ロメオが尋ねると、カナは妖艶な口調でそう返した。目の前の壁には、フィオーレ全体の地図が掛けてある…。

 

 

 

 

「六魔将軍達が次に何処を狙うか…あと、どこに誰が行けばいいのかも、まとめて占うからね」

 

 

 

 

そして一同が見守る中、カナは目を閉じて精神を集中させ……

 

 

 

 

「! 見えた…!!」

 

 

 

 

ダッ!!!×6

 

 

 

 

持っていたカードの束を一斉に投げた。その結果、カードが幾つかのグループに分かれるようにして、地図の数か所に突き刺さった…。

 

 

 

 

「これで決まったのか?」

 

 

 

 

「うん」

 

 

 

 

ビックスローの問い掛けに、しっかりと頷くカナ…。

 

 

 

 

「チームの相性と目的地との相性、良い感じになってると思うよ!」

 

 

 

 

「何でもいいから、早く出発させろォッ!!」

 

 

 

 

「発表するぞ!」

 

 

 

 

ナツが待ち切れない様子で声を上げる中、突き刺さったカードを回収していたマカオが発表していく…。

 

 

 

 

「まず最初のチーム…グレイ、フリード!」

 

 

 

 

「面白い。1度お前とは、組んでみたいと思っていたんだ」

 

 

 

 

「術式と氷の魔法か……巧く組み合わせれば、面白い使い方が出来そうだな」

 

 

 

 

一組目は、グレイとフリードのペア。会話の様子を見ると、中々のようである…。

 

 

 

 

「次! エルザとエバーグリーン!」

 

 

 

 

「チームワークとか大丈夫なのかよ?」

 

 

 

 

(そういえば、エバさんはエルザさんにライバル意識を持ってるって…)

 

 

 

 

二組目で発表された2人の名前を聞いてロメオが不安になる中、レイルは思わずそんなことを思い出していた。ちなみにレイルは、ラクサスとの一騎打ちの後エバーグリーンとそれなりに会話をしており、彼女から“エバ”の愛称で呼ぶ許可をもらっていたりする…。

 

 

 

 

「…と、マックス」

 

 

 

 

「お、俺かよッ!?!?」

 

 

 

 

最後に発表された自身の名前を聞いて、驚愕するマックス。すると…

 

 

 

 

「良い機会だわ…。どっちが妖精の名に相応しいか、今度こそハッキリさせようじゃないの…!」

 

 

 

 

「肝心なのは無限時計を見つける事だ。それが済んだらいつでも相手にをしよう…」

 

 

 

 

「いや、あー、そんな張り合わねえでさぁ…和やかにやろうよ、な、な…!?」

 

 

 

 

「おやおや、これはマックスさんのストレスも一気に急上昇ですね~。クックックッ…!(ボソッ)」

 

 

 

 

早速生じ始めている不和の緩衝役に回るマックス。そんな彼の姿を見たブランは、久しぶりの嫌味な発言を呟いていた…。

 

 

 

 

「次! ガジルとジュビア!」

 

 

 

 

「“幽鬼の支配者(ファントムロード)”からの移籍組コンビ…」

 

 

 

 

続いて三組目の発表を聞いて、その関係性から思わず口にするレビィ。そんな中、

 

 

 

 

「何故ぇッ!? グレイ様とジュビアが離れ離れに~!? それこそ世界の終わりだと思います~…!(泣)」

 

 

 

 

ジュビアは盛大に泣きながら悔しがっていた…。そして……

 

 

 

 

「続いて! ビックスローと、ウェンディ!」

 

 

 

 

「ッ!!?」

 

 

 

 

四組目の発表を聞いた瞬間、レイルは大きく反応した…。

 

 

 

 

「こりゃまた異色の組み合わせじゃねえかぁ! 面白え~!」

 

 

 

 

「よ、よろしくお願いします、ビックスローさん…」

 

 

 

 

「おーよぉ! 俺のベイビー達とも、仲良くしてやってくれよぉ!」

 

 

 

 

『クレヨクレヨッ!!』

 

 

 

 

若干緊張気味のウェンディに対し、ビックスローは5体の操り人形達と共にやる気を漲(みなぎ)らせている…。

 

 

 

 

「次! ハッピー、シャルル、パンサーリリー、ブラン、レイル!!」

 

 

 

 

「アイッ! エクシード隊にレイルが加わったチームだね!」

 

 

 

 

「最後の2人が加わったお蔭で、或る意味全チーム中最高の戦力になったんじゃないかしら…?」

 

 

 

 

「だな…」

 

 

 

 

五組目の組み合わせを聞いて、そんなやり取りをするハッピー、シャルル、リリー。しかしそんな中、シャルルだけは不安げな表情を垣間見せていた…。

 

 

 

 

「そして最後! ナツ、ルーシィ、エルフマン、ミッシェル!!」

 

 

 

 

「よっしゃーッ!!」

 

 

 

 

「ここだけ4人組? ハッピー達の所は置いておくにしても…」

 

 

 

 

最後の組み合わせの発表を聞いたナツが声を上げる中、ルーシィはふとそんな疑問を持った。すると、

 

 

 

 

「姉さん、また一緒ね!」

 

 

 

 

「うん! 頑張って無限時計を見つけよう!」

 

 

 

 

ミッシェルにそう言われたルーシィは、何処か嬉しそうに言葉を掛けた…。

 

 

 

 

「以上だ……って、俺はまた留守番かよ!?」

 

 

 

 

「俺もナツ兄達と一緒に行きたい!」

 

 

 

 

「グレイ様と離れ離れになるのは嫌~ッ!! ガジル君! グレイ様と交代して!!」

 

 

 

 

マカオに続き、ロメオとジュビアも組み合わせについて意見を口にするが…

 

 

 

 

「ダ~メ。この組み合わせが一番良いって、占いの結果で出たんだから♪」

 

 

 

 

「じゃあ! ジュビアとフリードさんの交代でもいいッ!!」

 

 

 

 

「同じことでしょうが……」

 

 

 

 

カナはそれらの意見を却下した。ジュビアが食い下がるが、当然カナは取り合わない…。

 

 

 

 

「考えてみたら、ナツとこうして別々になるのも久しぶりかも」

 

 

 

 

「! そっかあああッ!! いざという時空飛べねえんだッ!!!」

 

 

 

 

そして、ハッピーの発言を聞いて今更ながらそのことに気付くナツ…。すると、

 

 

 

 

「ねえ、何か忘れてない?」

 

 

 

 

「? 忘れてる? 何をだ?」

 

 

 

 

シャルルがそう言ってきたのに対し、質問の意図が分からず尋ね返すマカオ…。

 

 

 

 

「決まってるでしょ? ウェンディのことよ」

 

 

 

 

「っ! そうよ! “幽鬼の支配者”の狙いは…」

 

 

 

 

「そう、ウェンディよ…」

 

 

 

 

ルーシィが気付いた所でシャルルがそう言い放つと、それを聞いたウェンディは一気に不安そうな表情を浮かべ始める…。

 

 

 

 

「カナ、ウェンディの所だけでも人数を増やせない? いくら何でもその男1人は…」

 

 

 

 

「平気よ、シャルル。今回の占いにはそのこともちゃんと考慮されてるから」

 

 

 

 

「っ! でも…!」

 

 

 

 

カナの発言を聞いたシャルルは思わず説得しようとした。しかし…

 

 

 

 

「私は大丈夫だよ、シャルル」

 

 

 

 

「! ウェンディッ…!?」

 

 

 

 

そんな彼女を止めたのは、ウェンディだった…。

 

 

 

 

「カナさんがこう言ってるんだもん。ちゃんと信じなきゃ」

 

 

 

 

「! それはそうだけど…」

 

 

 

 

「心配すんな! いざという時は、俺やベイビー達が何とかしてやるからよぉ!!」

 

 

 

 

『シテヤルシテヤルーッ!!』

 

 

 

 

ウェンディだけでなく、ビックスローの方からもそう言われたシャルル。その結果…

 

 

 

 

「…絶対無理しちゃダメよ?」

 

 

 

 

「うん…」

 

 

 

 

シャルルは“自らの不安を呑み込む”ことを選択したのだった…。と、ここで更に、

 

 

 

 

「どうやら我々が出る必要はないようですねぇ…。では、我々は一度本部の方へ戻ることにします」

 

 

 

 

「! 戻るというのは…クロニクルへか?」

 

 

 

 

「ええ。既にレイル達から聞いているとは思いますが、通信ラクリマによるクロニクル本部との連絡は依然不通状態です。しかし現状が現状だけに、報告をしない訳にもいきません」

 

 

 

 

「ってことを踏まえると、俺達が直接戻って詳細を伝えに行くしかないだろうな…」

 

 

 

 

ジェイドが唐突にそう提案してきたのだ。それを聞いたエルザが思わず尋ねるが、ジェイドとガイはそう説明した。更に…

 

 

 

 

「あとはアニスを一度連れて帰らないといきませんからねぇ」

 

 

 

 

「ほえっ!? 私も戻るんですか!?」

 

 

 

 

「当たり前だろ。ほんの少し前まで魔力欠乏症で倒れてたんだぞ? ウェンディの治癒魔法で回復したとはいえ、整った所でちゃんと検査をした方がいい」

 

 

 

 

「で、でも、こうしてる間にも、イオン様が…」

 

 

 

 

ジェイドとガイの言葉を聞いて、あからさまに躊躇いを見せるアニス…。

 

 

 

 

「万全な状態で挑(のぞ)まなければ、返り討ちに遭うだけです。それが分からない貴女ではないと思いますがねぇ…」

 

 

 

 

「う……」

 

 

 

 

しかし、ジェイドのその一言に反論することは出来なかった。頭では理解してるということも、その要因であろう…。すると、

 

 

 

 

「ジェイドさんとガイさんの言う通りだよ、アニス。ここは一先ず、僕やブラン達に任せて」

 

 

 

 

「…うん…」

 

 

 

 

レイルにそう言われたアニスはこれまでと打って変わり、少々汐(しお)らしい様子で頷いた…。

 

 

 

 

「決まったな…。何としても無限時計を見つけ出し、六魔将軍達を倒す! 行くぞッ!!」

 

 

 

 

『おう(ああ)(うん)(ええ)(はい)!!!』

 

 

 

 

こうして、六魔将軍達の追跡のための準備は整った。だが…

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

現在の状況に対し、レイル他数名が不安を感じていることに気付いている者は…他に誰もいなかった…。

 

 

 

 

 

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