FAIRYTAIL~絶対なる黒龍戦記~   作:無颯

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“あの男”との対決ですが、戦闘は短いかもしれません。やっぱり戦闘描写は難しい…。


そして主人公の新技もあります。


では、本編をどうぞ。



黒竜VS雷竜

次の日……

 

 

 

「ごめんなさい、レイルさん。付き合わせてしまって…」

 

 

「気にしないで。僕がしてたことも別に急ぎじゃないから」

 

 

レイルはウェンディやシャルル、そしてブランと共にギルド近くの森にやってきていた。キナナの頼みでこの辺りに生えている薬草などを採りに来たのである…。

 

 

「でもあんた達、本当に書類仕事なんてやってたのね」

 

 

「どうしても事務的なことは付き纏いますからね~。向こうから送られてくる部隊編成や予算等の資料には目を通しておかなければ、後に色々な支障が出る可能性がありますから」

 

 

「わ、私にはあんなたくさんの紙に書いてあることを全部読んで、しかも頭に入れるなんてとても出来ないです…」

 

 

そう、レイル達が先程までやっていた作業とは、クロニクル側から送られてくる書類の確認だった。その量はとんでもないもので、昨日馬車で送られてきたその書類の山を見たギルドのメンバー達は、殆ど全員呆然としていたそうな……。

 

 

「まあ、僕達も書類に時間を取られてる場合じゃないから、そこそこ早く終わらせるつもりではいるけど」

 

 

「例のルーシィの御父上の遺品のこともありますからね~」

 

 

そしてレイルとブランがそう話していた、その時、

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!

 

 

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「何!?」

 

 

突然の轟音に思わず声を上げるウェンディと、驚くシャルル。だが……

 

 

「えっと、ウェンディ…?」

 

 

「っ///////! ご、ごめんなさい…//////」

 

 

無意識の内にウェンディはレイルに抱き着いており、指摘されてようやく気付き、顔を赤くしながら慌てて離れる…。何この鉄板過ぎる展開……。

 

 

 

 

「何してるのよ、あんた達…」

 

 

「えっと、僕に言われても…」

 

 

「うぅ……//////」

 

 

「それよりもレイル、あれを」

 

 

「…! あれって……」

 

 

バリバリバリッ……!!

 

 

ブランに促されたレイルがふと見上げてみると、そこには雷の柱が出現していた…。

 

 

「魔法ですね、間違いなく」

 

 

「うん…とにかく行ってみよう。ウェンディ達は?」

 

 

「あ、私達も行きます!」

 

 

「流石に気になるしね」

 

 

「分かった」

 

 

こうしてレイル達は雷の柱の方へと向かっていった…。

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

そして比較的時間もかからずに到着すると、そこには……

 

 

 

「あれは……!」

 

 

「! ラクサスさん!?」

 

 

「ナツとガジルも居るわね」

 

 

「雷神衆の皆さんもお揃いのようですが…何やら嫌な予感がしますね~…」

 

 

ウェンディが逆立った金髪が特徴の大柄な男を見て特に驚く。と、ここで近づいてみると、会話の内容が聞こえてきた…。

 

 

「いや…こいつらには俺自身の拳で分からせてやる」

 

 

「上等だ…!!」

 

 

「んじゃあ、ナツ…まずはお前からだ…」

 

 

そう話しながらナツとラクサスはお互いに“炎”と“雷”を纏わせる…。それを見て、

 

 

「おやおや…」

 

 

「戦う気満々じゃない!!」

 

 

「と、とにかく止めに行こう!!」

 

 

「あ、ウェンディ…!?」

 

 

真っ先に動いたのはウェンディだった…。

 

 

「そこまでです!!」

 

 

「ん? ウェンディ?」

 

 

「! レイルも一緒だったか」

 

 

「あ、はい」

 

 

ナツがウェンディの登場に首を傾げる中、フリードはレイル達も一緒に来ていたことに気付く。

 

 

「こういうのは、ちゃんと段取りを踏んだ方が良いと思います!!」

 

 

「段取り?」

 

 

「何だそりゃ?」

 

 

その発言にナツだけでなくガジルまで疑問を感じていると、ウェンディはビシッと指を差しながらこう言った…。

 

 

「勝負は明日です!!」

 

 

「ウェ、ウェンディ…!?」

 

 

「ほぅ…」

 

 

(あ、あれ? 何かちょっと違っているような気が…)

 

 

 

突然のことにシャルルが思わず声を上げ、ブランがウェンディの様子に少し驚いたような表情を浮かべていたが……レイルは些(いささ)か彼女の言っていることが仲裁の意味では無くなっているように感じていた…。

 

 

「意味分かんねえけど分ーったよ。そんじゃあ、勝負は明日だ!! 場所は南口公園の、空の木の下だ!!」

 

 

「じゃあ俺はその後だ」

 

 

「…勝手にしろ…」

 

 

「ふぅ…」

 

 

ナツとガジルの提案に承諾の意を示し、その場を後にするラクサスを見て、ウェンディは思わず安堵の息を吐いた。そんな中、

 

 

(この人が、ラクサス・ドレアー……。かつて妖精の尻尾の中でもエルザさんと互角以上の実力者と言われ、“ある事件”を期に破門された人……)

 

 

レイルはラクサスという人物の詳細を頭で反芻しながら見送っていた………その時、

 

 

ザッ………!

 

 

「いや、1つ注文がある……。レイル、だったな?」

 

 

「? あ、はい。初めまして、僕は……っ!?」

 

 

ガキィィィィィィンッ………!!

 

 

「えっ!!?」

 

 

『っ………!?』

 

 

まさかのことに全員が驚いた。レイルが自己紹介をしている途中にラクサスが瞬時に間合いを詰め、殴りかかってきたのだ。しかしレイルはそれをエコートレイサーの側面の部分で受け止める……。

 

 

「フッ、なるほどな……」

 

 

「……何のつもりですか?」

 

 

「なに、お前の話はこいつ等から聞いてる。あのジジィと同格以上とか言われてるらしいじゃねえか? だから少し確認のつもりでやってみたんだが………どうやら嘘じゃねえらしいな」

 

 

そう言うラクサスの目は………獲物を見つけた猛獣の如く鋭いものだった……。

 

 

「それで、注文というのは?」

 

 

「簡単な話だ……俺と戦え」

 

 

「……!」

 

 

「ええっ……!!??」

 

 

「お前の実力がどれ程のものなのか、一気に興味が湧いた。理由はこれだけで十分だと思うが……?」

 

 

注文の内容にウェンディが更に驚きを露にする中、レイルは目の前のラクサスを見る……。

 

 

(この人の目……純粋に“強い人間との戦い”を望んでる……。これは…仕方がないかな……)

 

 

そして………

 

 

「分かりました」

 

 

「レ、レイルさん!!??」

 

 

「ちょ、ちょっとあんた、本気……!?」

 

 

まさかの承諾に声を上げるウェンディとシャルル。

 

 

「ただし、ナツさんとガジルさんの後でいいですか? 多分御二人共、早く戦いたいと思いますし」

 

 

「フッ、構わねえよ。明日、期待しているぞ……」

 

 

そう言うとラクサスは雷神衆の3人と共に、その場を去っていった………。

 

 

「レイル!!」

 

 

「? どうしたんですか? ナツさん」

 

 

「お前も明日俺と勝負しろッ!!」

 

 

「……ええっ!?」

 

 

「お前はまずラクサスを倒すことを考えてろ……。つー訳で小僧、俺がお前と戦ってやるぜ。ギヒッ!」

 

 

「ガジルさんまで!?」

 

 

「おやおや、人気者ですね~、レイル」

 

 

「あんた、本当に酷いわね………」

 

 

その後こんなやり取りがあったらしいが………まあ、大したことではない……。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

「はぁ………」

 

 

「随分お疲れですね~、レイル」

 

 

「他人事みたいに言わないで欲しいんだけど………って、ブランに言っても意味ないよね……」

 

 

ナツやガジル、そしてハッピーと別れたレイル達は、キナナからの遣いも終えてギルドへの帰路についていた。すると、

 

 

「あの、レイルさん」

 

 

「ん?」

 

 

「本当に………ラクサスさんと戦うんですか?」

 

 

ウェンディが不安そうな表情でそう尋ねてきた……。

 

 

「まあ、もう言っちゃったしね。それにあのラクサスさんの感じからして、もし断ってたら多分あの場で戦うことになったと思うんだよね。そうなったら……」

 

 

「この森全部吹き飛んだわね、きっと。残りの2人や雷神衆も間違いなく加わってきたでしょうし……」

 

 

思わずシャルルがそんな予想を立てた。否定できないどころか、確定事項のように感じるのは気のせいだろうか……?

 

 

「でも相手はあのラクサスだけど、あんた本当に大丈夫なの? まあ、“うちのマスターと同格以上”っていうあの話が事実なら問題ないでしょうけど……」

 

「えっと……まあ、善処するよ……」

 

 

「それを聞く限り、不安しかないわね……」

 

 

「が、頑張ってください! レイルさん……!」

 

 

レイルの言葉にシャルルは呆れる一方、ウェンディは精一杯の応援の言葉を伝える。そんな中……

 

 

 

「(一瞬で“杞憂”に変わると思いますがね~………)」

 

 

ブランが心の中でそんなことを考えているなど、2人が気付く筈もなかった……。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

それからしばらくして………

 

 

「決闘!!? マジかよ!!?」

 

 

「相変わらず懲りねえ奴等だなぁ~……」

 

 

マカオが驚きを露にする中、ワカバは呆れ混じりにそう呟く。どうやら決闘の話がすでに知れ渡っているようだ……。

 

 

「ラクサスはちょっと前からマグノリアの隅っこに住み着いてたんだってさ」

 

 

「んな事どうだっていい!! 勝負こそ漢ッ!!」

 

 

ロメオから詳細が話されるが、エルフマンには本当に関係無いらしくそう叫ぶ。

 

 

「でもナツとガジル、大丈夫かなぁ?」

 

 

「そりゃあお前………」

 

 

「まあ……相手はあのラクサスだから、只じゃ済まないでしょうねぇ……」

 

 

リサーナの問いにワカバとミラがそう答えると、

 

 

「ラクサスって、そんなに強いの?」

 

 

「強えも何も、うちのギルドにいた頃にはギルダーツの次に強かったかもしれねえんだ」

 

 

キナナがふとそんなことを尋ねてきたため、ワカバが再び答えた。と、ここで、

 

 

「! そういやぁ………」

 

 

「? どうしたの?」

 

 

「レイルもラクサスの奴と勝負するらしい」

 

 

『何ぃぃぃ(えええ)っ!!!??』

 

 

マカオからの思わぬ情報にその場にいた全員が驚きを露にした。

 

 

「レイルまでラクサスとやんのか!?」

 

 

「でも、レイルはナツ達と違って戦いたがる子じゃないと思うんだけど……」

 

 

「うん。ウェンディと一緒にいる時からは全然そんな風には……」

 

 

「いや、どうやらラクサスの方から勝負を挑まれたみたいだぜ」

 

 

ワカバが声を上げる中、ミラとリサーナが疑問を感じていた所へマカオは補足を加える。

 

 

「そういえば、レイルってナツやガジル、ウェンディと同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なのよね。確か、“漆黒の滅竜魔道士”だったかしら?」

 

 

「そうだよ。しかもレイ兄は造形魔法まで持ってて、そっちは古代魔法レベルだって話だぜ?」

 

 

「滅竜魔法に加えて造形魔法まで使えるなんて、物凄い才能よね~」

 

 

ミラ、ロメオ、リサーナがそう言った。ちなみにロメオは最近レイルのことを“レイ兄”と呼ぶようになっている…。

 

 

「この前ナツ達と一緒に依頼に行った時も、指名手配されてたかなりヤバい魔導士を1人で瞬殺してたからな。あいつは多分、とんでもねえ漢だと俺も思うぜッ!!」

 

 

「おーしッ!! こうなったら“現マスター”として、とことん盛り上げてやろうじゃねえかッ!!」

 

 

「おおおおおッ!! 祭りだ祭りだぁぁぁッ!! 祭りこそ漢ぉぉぉぉッ!!!」

 

 

「いいねいいねぇッ!! 折角だから楽しんじゃおうよー!!」

 

 

「「「「おーーッ!!!」」」」

 

 

「「賛成ー!!」」

 

 

リサーナの一言に全員が賛同したのだった…。

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「えっと……」

 

 

「何事でしょうね~、これは…?」

 

 

その日の夜、対決の行われる南口公園へとレイルとブランがやって来てみると……そこにはたくさんの屋台が並んでいるといった、所謂お祭り騒ぎ状態になっていた。と、そこへ、

 

 

「あれ? レイル?」

 

 

「! ルーシィさん!」

 

 

「それにミッシェルさんもご一緒でしたか」

 

 

レイルとミッシェルがやってきた。

 

 

「あの、これは一体…?」

 

 

「え? これってレイル達が原因だよね?」

 

 

「……はい……?」

 

 

それを聞いたレイルがポカンとした表情を浮かべると、その様子を見て事情を知らないと判断したミッシェルが経緯を説明した。どうやらマカオ達がマグノリア中に決闘の話を広めた結果、町民全員が一気に便乗することになったらしい…。ちなみにこれは決闘前の前夜祭とのこと。

 

 

「えっと、盛り上げる方向がちょっと違う気が…」

 

 

「まあ、そう言われてみればそうなんだけどねぇ…。それにしても、ラクサスに勝負を挑まれたって本当なの?」

 

 

「え、ええ、まあ…」

 

 

「雷神衆の皆さんからレイルの話を聞いて興味を持ったようでしてね~。端から見ても断れる雰囲気ではありませんでしたし」

 

 

「それは何と言うか…ご愁傷様」

 

 

「あははは…」

 

 

ルーシィの一言に乾いた笑いをするしかないレイル。

 

 

「ところで、例の遺品の古代文字はどうですか?」

 

 

「それが全然ダメなの。やっぱりレビィちゃんに頼まないと…」

 

 

「だから気分転換にここに来たんです…。ん~…この綿飴美味し~い!」

 

 

「…さっきから本当に凄い食欲ね…」

 

 

「おやおや、これはうちの組織にいる食いしん坊な方々にも負け劣らずかもしれませんね~」

 

 

御嬢様然とした風貌には似つかわしくない喰いっぷりである…。まあ、その後は人気雑誌“週刊ソーサラー”の記者であるジェイソンの進行でミラのライブが行われるかと思いきや、まさかの代役としてガジルがサングラスに白スーツ姿で登場。センスの欠片も無い歌を披露して観客から顰蹙(ひんしゅく)を買っていた…。

 

 

「何やら“騒音”が聞こえますね~」

 

 

…ブランがこんな辛口コメントを呟いたのは言うまでもない…。すると、

 

 

「ガジル、ギターも白いスーツも似合わない…。歌も変だし…」

 

 

「「!! だよな~ッ!!」」

 

 

「あ、レビィちゃん!!」

 

 

いつの間にか帰っていたレビィとジェット、ドロイをルーシィが発見して駆け寄っていく。

 

 

「帰ってきたの!?」

 

 

「うん。久しぶりに“シャドウ・ギア”で仕事に行ってきたの」

 

 

「お帰りなさい、レビィさん」

 

 

「ありがとう、レイル。でも何だか凄いことになってるみたいだね」

 

 

「あー…何かすいません…」

 

 

お互いに苦笑いを浮かべてそんなやり取りをするレビィとレイル。

 

 

「あのね! レビィちゃんに解読してもらいたい文字があるの!」

 

 

「え?」

 

 

「古代文字なのですが、少々珍しいタイプのものの様でして…」

 

 

レビィに頼むルーシィの言葉に、ブランが更に補足を加える。

 

 

「とにかく私の部屋に来て! 詳しい話は後で説明するから!」

 

 

「あ! ル、ルーちゃん…!!」

 

 

「ま、待って姉さ…きゃっ!?」 

 

 

「「あ…」」

 

 

そんな訳でルーシィはレビィを連れていってしまい、それを慌てて追いかけようとしたミッシェルは……見事に躓(つまず)いていた…。

 

 

「さて…これからどういたしますか? レイル」

 

 

「うーん…ウェンディとシャルルに何か買って帰ろうか」

 

 

「分かりました」

 

 

そしてレイルとブランは屋台で適当な物を買ってその場を後にしたのだった…。

 

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

 

翌日、森の中にて……

 

 

 

 

「どうしよう…あの場を収めるために『勝負は明日!』なんて言っちゃったけど…」

 

 

「ここまで大事(おおごと)になるなんてね」

 

 

「どうやら少なくとも町民の半数以上が見物に来るそうですよ?」

 

 

「そ、そんなに正式な決闘じゃないんだけどね…」

 

 

レイルとウェンディ、シャルル、そしてブランは状況と経緯と説明するためにマカロフを探しているのだが、一向に見つかる気配がなかった…。

 

 

「こんなつもりじゃなかったのに…」

 

 

「ま、まあ大丈夫だよ、ウェンディ。決闘とはいえ仲間同士なんだから、そんなに激しい事にはならない……と思う」

 

 

「説得力ゼロね…」

 

 

「下手をすれば公園が吹き飛ぶのではありませんか?」

 

 

「うぅ……」

 

 

フォローのつもりがシャルルとブランの言葉のお蔭で完全に逆効果になってしまっている。まあ、だが十中八九そうなる予感しかしないのは事実だろう…。

 

 

「レイル、そろそろ…」

 

 

「そうだね」

 

 

「あんた達、もう行くの?」

 

 

「うん。多分もうナツさん達が来ている頃だろうし…。マスターへの事情説明は2人に任せるよ」

 

 

ここでレイル達は指定場所である南口公園へと向かうことにした。すると、

 

 

「レ、レイルさん…」

 

 

「! ありがとう、心配してくれて。でも決闘だから正々堂々戦わなきゃいけないし、こうなった以上僕も退くつもりは無い…。それは分かってくれるよね?」

 

 

「…はい…」

 

 

ウェンディが昨日にも増して不安そうな表情を見せてきた。だが同年代の子供達と比べて恐ろしく聞き分けの良い彼女は、当然レイルの言わんとしていることも理解できている…。

 

 

「うん、いい子だ」

 

 

「あ……//////」

 

 

「行きますよ、レイル」

 

 

「分かってる。じゃあ、マスターの方は頼むね」

 

 

「ええ。なるべく早く見つけるわ」

 

 

「無茶しないでくださいね……?」

 

 

そんなウェンディの頭を一撫でしたレイルは、いつものように造形魔法の黒い翼を生やしてブランと共に決闘の場へと向かうために飛び立った。

 

 

「無茶ですか…。私としてはもっと“別の心配要素”があるのですがね~」

 

 

「あははは……」

 

 

実はこんな会話が空中で交わされていたが、それが他の誰にも聞こえていなかったのは……まあ、言うまでもない……。

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

所変わって、ここは件(くだん)の南口公園の“空の木”の下なのだが………今何故かその場にいる全員は呆然としていた。エルフマンやリサーナだけでなく、あのミラまで口をあんぐり開けてポカーンとしてしまっている。その理由は……

 

 

「」チ~~ンッ………

 

 

「……………」

 

 

「決ぃぃまったぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

最初の決闘が終わってしまったからである……。ラクサスの拳一発によって……。ちなみに決着を言い渡したのは審判を務めるジェイソンである。

 

 

「「アハハハハハハハッ!!」」

 

 

「やっぱ一撃で決まりかぁ!」

 

 

「いつも通りの瞬殺だったなぁ!」

 

 

その結果を初めから読んでいたのか、マカオとワカバは笑いながらそう言った。

 

 

「ナツーッ!!」

 

 

「ぁぁ………ぁッ………」

 

 

ハッピーが思わず駆け付けるが、本人はピクピクと動くだけ。明らかに当分駄目そうだ……。一方、

 

 

「流石ねラクサス!」

 

 

「これが実力の差って奴よぉ」

 

 

「うぉぉぉぉぉんッ! ラ、ラクサスゥゥゥゥゥッ……!!(泣)」

 

 

ラクサスの下には雷神衆の面々が集まっていた。何か号泣している奴がいるが、それは気にしない方向で……。だがそんな中、あからさまに様子のおかしい人物が1名……。

 

 

「…………………(ダラダラダラッ)」

 

 

次の対戦相手でガジルである。大量の汗を流している所からも明らかだが……。そして、

 

 

「次はお前だったな?」

 

 

ラクサスがガジルの方を振り向いてみると……

 

 

「……?」

 

 

「あれ……?」

 

 

先程まで居た筈のガジルの姿は無かった。これには当のラクサスだけでなく、リサーナも首を傾げる。

 

 

「ノォォォォォォォォッ!! ガジルが消えたァァァァァァッ!!?」

 

 

「あの野郎! まさか逃げやがったのかぁ!?」

 

 

「何ィィッ!!?」

 

 

当然のごとく他の者達も驚きを露にする。中でも一番はワカバの発言を聞いたリリーだ。

 

 

「ふざけんなぁ!! 絶対逃がすかぁッ!!」

 

 

「ウオオオオオッ!! 山狩りこそ漢ォォォォォォッ!!!」

 

 

「見損なったぞ!! ガジルーッ!!!」

 

 

そしてマカオの一声に観衆の男達が怒り狂って探しに行こうとした、その時、

 

 

「構うなよ。こいつ等の相手はついでだ……。俺にとってのお楽しみは………」

 

 

そう言うラクサスの表情には、先程のナツの時とは違う“獰猛な笑み”があった。何故なら……

 

 

 

 

 

「ここからだ…………!!」

 

 

「お待たせしました、ラクサスさん……」

 

 

最後の相手にして今最も戦闘本能を刺激する人物が、ようやく姿を見せたのだから……。

 

 

「えっと……この状況は一体……?」

 

 

「どうやら少々奇妙なことが起きてるようですね~。まあ、あなたは取り敢えず目の前の相手に集中すべきでは?」

 

 

「うん、そうだね」

 

 

その相手──レイル・アスフォードが疑問を感じていると、相棒であるエクシード──ブランズ・センチュリオンがそう指摘した。

 

 

「改めて礼を言うぜ? よく勝負を受けてくれたな」

 

 

「いえ、気にしないでください。僕も実は……何処かで“あなたと戦うのも悪くない”と思っていたようですから……」

 

 

「! ハッ、そうかい……」

 

 

軽くそんなやり取りをするラクサスとレイル……。

 

 

「さぁ!! ラクサスの最後の試合の相手は、何とあの王国が誇る魔導士組織“クロニクル”からの挑戦者!! 最年少の王国軍元帥の実力は本物かぁ!? レェェェェイル! アスフォーーーーードッ!!!」

 

 

「気を付けて! ラクサス!!」

 

 

「そいつの実力は多分相当だぜ!」

 

 

「行けぇぇぇぇぇッ!! ラクサァァァァァァスッ……!!!(泣)」

 

 

ジェイソンのアナウンスに続き、雷神衆がラクサスにそう声を掛ける。何故か約1名まだ泣いているが……。

 

 

「レイル!! 頼むからちゃんと戦えよ!?」

 

 

「ナツみてえに瞬殺されたり、ガジルみてえに敵前逃亡したら承知しねえぞぉッ!!」

 

 

「なるほど、先程の状況はそういうことでしたか。それでリリーだけがガジルー探しに行ったと……」

 

 

「ブラン、そろそろ」

 

 

「そうですね。ではレイル、健闘を」

 

 

マカオとワカバの言葉を聞いたブランが納得していると、ここでレイルがそう言って彼を下げさせる……。

 

 

「んじゃぁ………始めるか……」

 

 

「……よろしくお願いします……」

 

 

雷を自らに纏わせるラクサスと、静かに腰の愛刀“エコートレイサー”に手を掛けるレイル。そして………

 

 

ザッ!!×2

 

 

「始まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

両者同時に地面を蹴り上げたことで、決闘の火蓋が切って落とされた…。

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

その頃、引き続き森の中でマカロフを探しているウェンディとシャルルは…

 

 

「見つからないわね、マスター。これだけ探してるのに…」

 

 

「もう始まってるかな? レイルさんとラクサスさんの決闘…」

 

 

「さあね。流石にあの2人がそれぞれ戦うんだし、まだじゃないかしら?」

 

 

だがそんなシャルルの予想とは裏腹に、“瞬殺”と“逃亡”という形で呆気なくナツとガジルの試合は終わり、丁度レイルとの決闘が始まっていることなど到底知る由も無い。

 

 

「と、とにかくマスターを早く探さないと…」

 

 

「どうしたのかね?」

 

 

「「!!」」

 

 

ウェンディがそんなことを呟いていると、いきなり背後から声が聞こえてきたため2人は振り返った。すると、そこには…

 

 

「マスター!!」

 

 

「もう! 散々探してたのに何処行ってたのよ!?」

 

 

「? 何かあったのか?」

 

 

今まさに探している人物であったマカロフがいたのだ。そして2人の様子を見てマカロフがそう尋ねると、ウェンディが事情を説明する。

 

 

「それが…ナツさんとガジルさんが決闘することになったんです!!」

 

 

「な、何じゃとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!?!?!?」

 

 

あまりの予想外な話に驚きを露わにするマカロフだが、

 

 

「しかもレイルまで決闘に参加することになっちゃったのよ」

 

 

「レ、レイルもじゃと!!?? あ奴は闘いを欲するような性格では無かったと思うが…」

 

 

「実はラクサスさんの方から勝負を挑まれちゃったんです。それで断れそうもなくて…」

 

 

「な、何をしとるんじゃあの馬鹿者は…」

 

 

ラクサスが喧嘩を吹っ掛けたと知ったマカロフは、頭を抱えながら思わずそう呟く。とにもかくにも、こうしてウェンディ達はマカロフと共に決闘場所の公園へと向かうのだった…。

 

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「ふっ!!」

 

 

シュッ!!

 

 

「っ…!」

 

 

「ラァッ!!」

 

 

ギィィィィィィンッ…!!!

 

 

戻って公園では現在、レイルとラクサスの勝負がすでに開始されていた。レイルの一閃を躱したラクサスは雷化して背後に回り殴り掛かるが、レイルもすぐさま反応して体を反転させ、剣の側面部分で拳を受け止める…。

 

 

「す、凄い…!!」

 

 

「あのラクサスと互角に渡り合ってやがる…!!」

 

 

それを見たリサーナとワカバは当然驚きを露わにした。だが…

 

 

「いや、違ぇ…」

 

 

「え?」

 

 

「気付かない、リサーナ。ここまでのレイルの戦い方を見て…」

 

 

「レイルの戦い方……? っ! あっ…!!」

 

 

エルフマンの呟きに首を傾げるリサーナだったが、ミラにそう聞かれると改めて“ある事”に気付く…。

 

 

「ええ、レイルはまだ……魔法を使ってないわ」

 

 

「! おいおい冗談だろ…!? 今まで魔法を使わずにラクサスを相手してたのかよ!?」

 

 

ミラの言葉に信じられないといった表情を浮かべるマカオ。当然である。S級魔導士を相手に魔法を使わず1分以上も互角に渡り合うなど、殆どの人間が出来る筈がない。出来るとすれば、それこそ“聖十(せいてん)”の称号を持つ人間くらいだろう…。

 

 

「ここまで雷の速度に魔法無しで普通に対応しやがるか…。どうやら俺はとんでもねえ奴に挑んじまったらしいな…」

 

 

「…あなた程の魔導士にそこまで言ってもらえるとは、光栄です…」

 

 

「ハッ、そんなお堅い言葉はいらねえよ。“小手調べ”も済んだだろ? ここからは…ガチの勝負と行こうじゃねえか…!」

 

 

ガッ!!

 

 

ここでラクサスは強引にレイルから距離を取ると…

 

 

「魔法を使ってこい、小僧」

 

 

「!」

 

 

「見せてみろ。てめえのその大層な実力って奴をなぁッ…!!」

 

 

彼にしては珍しく高揚した様子で叫んだのだ。それを聞いてレイルは少し逡巡するが…

 

 

「…分かりました。では…行きます…!」

 

 

ダッ!!

 

 

そう言うと、一気に高々と跳躍した。

 

 

「ブラックメイク…杭(ステイク)」

 

 

「!! フッ!!」

 

 

空中で構えも無く造形魔法を発動し、黒金剛で出来た数本の大型の杭を飛ばしてきた。当然ながらラクサスはそれに向かって雷を放つが……

 

 

「黒刃の雨(ダガー・フォール)」

 

 

「っ!!??」

 

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドッ……!!!!

 

 

突如その杭が一瞬にして無数の短剣に変化し、ラクサスの雷をすり抜けて降り注いだのだ…。

 

 

「一度造形した物を瞬時に変化させただと!?」

 

 

「しかも造形のスピードが速過ぎる…!!」

 

 

これにはラクサスの応援をしていた雷神衆のフリードやエバーグリーンも驚きを隠し切れなかった。今依頼でエルザと共にこの場に居ないグレイが見れば、恐らく尚のこと驚いただろうが…。

 

 

「雷竜の…!」

 

 

「っ…!!」

 

 

「咆哮ォォォッ!!!」

 

 

しかしラクサスは刃の雨を躱していたらしく、土煙が晴れると同時に口から電撃のブレスを放つ。それに対し、

 

 

「翼(フェザース)ッ!!」

 

 

レイルは一切動じることなく黒金剛の翼を生やし最小限の動きで避ける。しかもそのまま一気に急降下してラクサスに肉薄し、

 

 

「崩蹴脚ッ!!」

 

 

「ぐっ…!!??」

 

 

ドガァァァァァァァァァァァァンッ……!!!

 

 

「「きゃあっ!!?!??」」

 

 

そのままの勢いで蹴りを放った。それによって土煙と同時に地面が砕ける音も響いてきたため、ミラとリサーナは思わず声を上げた。

 

 

「け、蹴り一発で何て威力だよ…!?!?」

 

 

エルフマンが思わずそう言う中、土煙が消えていく…。

 

 

「………」

 

 

「チッ……!」

 

 

そこにいたのは全くの無傷で立っているレイルと、所々に傷を負ったラクサス。一応左腕で受け止めていたのだが、それでも十分な防御は出来なかったようである…。

 

 

「造形魔法が使えるって話も聞いてはいたが、グレイとは比べ物にならねえな。構え無しでその造形の速さと正確性……厄介なことこの上ねえ…」

 

 

「褒め言葉として受け取ります。では……“もう1つの魔法”も使わせてもらいますね」

 

 

「っ!! ああ、俺が待ってた本命はそっちだからな…。来な、“漆黒の滅竜魔導士”さんよぉッ!!」

 

 

そう言って雷を纏わせるラクサスは、明らかに高揚した表情を浮かべていた。そして、レイルが動く。

 

 

ヒュッ!!

 

 

「黒竜の…」

 

 

「っ!!」

 

 

「砕牙ッ!!!」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

『どわああああああああああああああああああああっ!?!?!?!』

 

 

右手に漆黒のオーラを纏い、横薙ぎに振るって爪で斬り裂きにかかったのだ。ラクサスはそれを避けるが、それによって発生した衝撃波は第三者の観客達にとっても凄まじい物だった。

 

 

「オラアッ!!!」

 

 

「! 黒竜の…鉄拳ッ!!!」

 

 

ドゴッ!!!!!

 

 

ラクサスはすかさず横から雷を纏った拳を放ち、レイルもすぐさま反応して漆黒のオーラの拳を放って受け止める…。

 

 

(この威力…ナツ達のとはまるで次元が違え…!!)

 

 

押され始めたのはラクサスの方だった。拳に伝わる威力に驚愕を隠し切れずにいるのに対し、レイルの方は少しの焦りも見えない…。

 

 

「くっ…! ぬんっ!!」

 

 

ここでラクサスが溜まらず雷を纏った蹴りを繰り出し、一旦距離を取った。すると、

 

 

「ブラックメイク…朝星棒(モーニングスター)」

 

 

「ッ!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオンッ……!!

 

 

驚異的な速さで造形した鎖付き鉄球をレイルはすかさず繰り出してきた。当然それを避けるラクサス。だが……

 

 

「なっ……!!?」

 

 

「黒竜の……」

 

 

それを予め読んでいたかのように、目の前にはブレスを放つ寸前のレイルの姿が……。

 

 

「咆哮ォォォォォォッ!!!」

 

 

「ぐあああああああっ!!!??」

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!!

 

 

「「「ラクサスーーーーッ!!!?」」」

 

 

もろにブレスを受けたラクサスを見て、思わず声を上げる雷神衆の3人……。

 

 

「レイルの奴、あのラクサスを完全に押してやがる……!!」

 

 

「マスターと互角っていう話は私も半信半疑だったけど……これは流石に信じるしかないわね」

 

 

そんなレイルの圧倒的な強さにマカオは冷や汗をかきながら驚くしかなく、ミラもこれには苦笑いを浮かべるしかない。

 

 

「ハァ………ハァ……!」

 

 

「……………」

 

 

何とかブレスを受け切ったラクサスだが、状態は見事なまでのボロボロ。対してレイルは相も変わらず余裕も見せることなく、冷静かつ真剣に対峙していた……。

 

 

「ふ……はははッ……」

 

 

「?」

 

 

「これ程の相手とはな……。だが……久々に思う存分燃えたぎれそうだッ……!!」

 

 

「!!」

 

 

高揚が最高潮に達しているラクサスの表情を見て、レイルは初めて少しばかりその表情を動かした。そして、

 

 

「ラァッ!!」

 

 

「……!」

 

 

今度はラクサスが先に動いた。拳から雷を放ち、レイルはそれを避けるが……

 

 

「まだまだァッ!!」

 

 

「……!!」

 

 

ドガガガガガガガガアアアアアアアアンッ……!!!

 

 

ラクサスは嵐の如く雷をレイルに向かって放ち続ける。だがそれにも当然限界があり、やがてその攻撃が止んだ所でレイルが攻勢に出ようとした、その時、

 

 

バチバチバチバチッ……!!!

 

 

「ッ……!!」

 

 

レイルは気付いた。最小限の動きで避けたため、周りにはラクサスの攻撃による痕が散乱し、尚且つ今それ等が全て雷を帯びていることに……。

 

 

「“ボルテックス・ケージ”……!!」

 

 

「っ!? これは……」

 

 

その瞬間、レイルはあっという間に雷の檻に閉じ込められる形となった。そう、先程までの乱れ打ちはこのための布石だったのである……。

 

 

「こういう手はあんま得意じゃねえが、お前相手にそんな余裕はねえからな。これで避けるのは不可能だ……行かせてもらうぞ……」

 

 

そして……

 

 

「レイジング・ボルトォォォォォォォォォォッ!!!!」

 

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

 

 

『おわあああああああああああああああああっ!!!???』

 

 

上空から凄まじい威力の雷がレイルに降り注いだ。その衝撃は容易く周囲の地面を抉(えぐ)り、観客の何人かを吹き飛ばしてしまう程であった……。

 

 

「ちょ、ちょっと、これ……!!?」

 

 

「どう考えても決闘のレベル超えてんだろ!!?」

 

 

「こんなの喰らったら即消し炭じゃねえか! レイルはどうなった!?」

 

 

「と、とにかく一旦勝負を中止して、レイルを……!」

 

 

ラクサスの放った一撃を見て、リサーナやマカオ、更にワカバが慌て出し、ここでミラが勝負の中断をしようとした、その時だった……。

 

 

「おいおい………そいつは流石にねえぜ……」

 

 

ラクサスが笑いながらそんなことを呟いたのだ。だがその顔からは冷や汗が流れている……。その理由は……

 

 

「流石です、ラクサスさん。やはりあなたは……凄まじい魔導士です……」

 

 

先程の一撃を受けて尚立っているレイルである。しかも服などは多少傷ついてはいるものの、実質的なダメージは……ほんの僅かとしか思えない程度のものだった。

 

 

「う、嘘だろ……?」

 

 

「ラクサスのあの一撃を喰らって、掠り傷程度だと……!?」

 

 

これにはエルフマンやビックスローだけでなく、その場にいた全員が驚愕のあまり言葉を失う。“そんなことが可能なのか?”と……。すると、

 

 

「ラクサスさん」

 

 

「……何だ……?」

 

 

「次の一撃で、終わりにしませんか……?」

 

 

「……!!」

 

 

レイルの突然の提案にラクサスは思わず目を見開く……。

 

 

「これ以上僕達が長く戦うと、この公園が持ちそうに無い気がしますから……。どうでしょうか……?」

 

 

「……いいぜ。丁度俺も魔力が大分減ってきた所だったからなぁ……。有難えことこの上ねぇ……」

 

 

「……ありがとうございます……」

 

 

ラクサスが承諾の意を伝えると、レイルは静かに礼を述べた。

 

 

「では……ここまで戦ってくれた敬意を評して、御見せします………僕の“滅竜奥義”を……」

 

 

「ッ!! 面白え、相手してやるよ……。来い、小僧ッ!!」

 

 

バチバチバチバチバチバチッ……!!!!!

 

 

闘志を剥き出しにして叫んだラクサスは、魔力を最大限に高めながら雷で一振りの“槍”を形成した。それに対し、

 

 

「………………」

 

 

レイルはただ静かに自身の魔力を高め始める。その魔力は底知れぬ程黒く………それでいて一切“邪”の無い不思議なものだった……。

 

 

(凄い魔力だわ……)

 

 

(間違いない……これで本当に決着する……!)

 

 

現S級魔導士のミラと、S級相当の実力を持つフリードは直感した、次の瞬間、

 

 

「雷竜……方天戟ーーーーッ!!!!!」

 

 

仕掛けたのはラクサスの方だった。巨大な雷の槍をレイルに向かって投擲する。その威力は肌で感じられる程の膨大な魔力が表していた。すると……

 

 

「滅竜奥義、第一極……」

 

 

「ッ………!!!??」

 

 

ラクサスは見た……。レイルの高められた魔力が、彼の愛刀に一気に集約されていく瞬間を……。そして……

 

 

「“死黒……幻壟閃(げんりゅうせん)”」

 

 

キンッ…………!

 

 

戦いを見ていた者達に聞こえたのは、剣が鞘に納まる時の甲高い音だけだった。視界は突如“漆黒”に覆われ、ようやく視界が回復した彼らが見たのは………

 

 

「………………」

 

 

愛刀“エコートレイサー”を納めて立っているレイルと……

 

 

「ふぅ………完敗だな、こいつは………」

 

 

見たこともないような清々しい笑みを浮かべて、仰向けに倒れているラクサスの姿だった……。

 

 

「き、決まったぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!! 勝者! レェェェェェイル! アスフォォォォォォォドッ!!!」

 

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!』

 

 

ジェイソンの決着宣言を聞いた瞬間、観客達は一斉に歓声を上げた。そんな中……

 

 

「マ、マジかよ……?」

 

 

「あのラクサスに勝ちやがったのか……!?」

 

 

「しかも殆ど無傷だなんて、これは凄過ぎるわね~」

 

 

「というか、一体何があったの? 何も見えなかったんだけど……」

 

 

「あ、ああ。気が付いたらラクサスが倒れてやがるし、何が何だか……。だが、漢だぁッ!!」

 

 

マカオ、ワカバ、ミラ、リサーナ、エルフマンがその結果に驚きを露にしていた……。相変わらず約1名発言が雑だが……。

 

 

「「「ラクサスーーッ!!」」」

 

 

一方、雷神衆の3人はすぐさま倒れているラクサスの下へ駆け寄った。

 

 

「魔力が尽きちまっただけだ。大したダメージは受けてねえよ……」

 

 

「よかった……!」

 

 

「流石にヒヤヒヤしたぜぇ~……」

 

 

体を起こしながらそう言うラクサスを見て、安堵するエバーグリーンとビックスロー。と、ここで、

 

 

「大丈夫ですか、ラクサスさん……?」

 

 

「! ああ、問題ねえよ……」

 

 

自分を負かした対戦相手──レイルがそう声を掛けてくると、ラクサスはそう答え……

 

 

スッ……

 

 

「……!」

 

 

「久々にたぎらせてもらった……。感謝するぜ、“レイル”……」

 

 

「! こちらこそ、良い勝負をさせてもらいました、ラクサスさん……」

 

 

なんと握手を求めた上、レイルを名前で呼んだのだ。これにはレイルも驚きつつ、キッチリと言葉を返す……。それを見て、

 

 

「あんなラクサス、初めて見るわ……」

 

 

「それだけレイルを認めたということだな。フッ、彼には驚かされてばかりだ」

 

 

「こいつはめでたいぜ~……!」

 

 

雷神衆の面々は見たこともないラクサスの表情に驚愕するも、それぞれそんな言葉を口にした……。

 

 

「次はお前を“本気で”戦わせてやる……その時は覚悟しとけよ……?(ボソッ)」

 

 

「………!」

 

 

そして誰にも聞こえないよう、こっそりとラクサスがレイルに耳打ちでそう伝えていると……

 

 

「あ、マスター!!」

 

 

リサーナが声を上げた先にいたのは……マカロフだった。更にその後ろにはウェンディルもいる。

 

 

「「……………………」」

 

 

ここで対峙するマカロフとラクサス。お互いに何も言わない状況に、何とも言えない空気がこの場を包み込んだ……。すると、

 

 

「……………」

 

 

「! 待てよ、ラクサスッ!!」

 

 

「このまま妖精の尻尾(フェアリーテイル)に戻ってきてよ!?」

 

 

「マスター!! いい加減ラクサスの破門を解いてくれ!! マスターッ!!!」

 

 

そのまま背を向けて去っていくラクサスを見て、雷神衆の3人はそれぞれを声を上げるが………ラクサスの状況は結局変化を見せなかった。一方、

 

 

「レイルさん!!」

 

 

「! ウェンディ……!」

 

 

ここでレイルの下へウェンディが駆け寄ってきた。

 

 

「マスターを探し出してくれたんだね。ありがとう」

 

 

「あの! それより怪我はしてませんか!?」

 

 

「えっ? あ、う、うん。服は少しボロボロだけど、怪我は殆どしてないから……」

 

 

「よかったぁ……。あ、でも一応治癒魔法掛けますね? 掠り傷でも治した方が良いですし……!」

 

 

「! そ、そうだね。ありがとう、ウェンディ」

 

 

かなり積極的に接してくるウェンディに、レイルは思わず若干気圧されつつも好意を受けることにした。そしてウェンディが集中して治療魔法を掛け始めていると……

 

 

「お疲れ様です、レイル(ボソッ)」

 

 

「! ビックリさせないでよ、ブラン……(ボソッ)」

 

 

「これは失礼」

 

 

いきなりブランが小声で話し掛けてきた。どうやらウェンディの集中を切らさないよう気を遣っているらしく、お蔭でウェンディの方もその会話を聞いてはいないようだ……。

 

 

「それよりどうでしたか? ラクサスさんとの試合は……(ボソッ)」

 

 

「やっぱり流石だったよ。まさか一撃魔法を喰らわせてくるなんてね。それに……僕が“加減していた”のも、あっさり見抜かれてたよ(ボソッ)」

 

 

「ほぉ…レイルの加減を見破るだけでも相当な技量が必要ですからね~……。マスターマカロフの孫と言ったところでしょうか(ボソッ)」

 

 

「それはラクサスさんに言ったら怒られると思うよ、多分…(ボソッ)」

 

 

先程の勝負を振り返りながら、ブランにそう話すレイル…。

 

 

「レイルさん、終わりました!」

 

 

「うん、ありがとう、ウェンディ」

 

 

「あ、い、いえ……/////」

 

 

礼を述べながらレイルが頭を撫でると、ウェンディはいつも通り顔を赤らめる。こうして、滅竜魔導士達の熾烈な決闘は幕を下ろしたのだった……。

 

 

 

☆☆

 

 

 

時間は少し進み、もう日が沈み始めている頃……

 

 

「あれ? リリー、どうしたの?」

 

 

「ガジルを見失ってな。ここへ戻ってくると思ったんだ。お前等はガジルを見たか?」

 

 

「残念だけど見てないわ」

 

 

「オイラも」

 

 

先にハッピーとシャルルがギルドに帰ると、そこにはガジルを探しに行っていたリリーの姿があり、2人にガジルのことを尋ねてきた。すると……

 

 

カツッ……カツッ……!

 

 

「! ガジルの奴が戻ってきたか……!?」

 

 

外の方から足音が聞こえてきたのだ。ガジルはそれを聞いてすぐさま外へ飛び出し、ハッピーとシャルルも後を追う……。

 

 

「ガジルーーッ!!」

 

 

そしてリリーが叫ぶが……

 

 

「「えっ……!?」」

 

 

「っ!? お前達は……!!」

 

 

そこにいたのはガジルではない……とある“3人”の人物達だった……。

 

 

 

 

 

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