命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強 作:Hetzer愛好家
「ハジメぇ!」
ペルソナらしき物が消えるとほぼ同時にハジメが前のめりに倒れた。服装は見覚えのある物に戻っており、何故か左腕も消えている。
というか、出血が酷い。このまま何もしなければ本当に死んでしまうだろう。
「っ、香織!」
「わ、分かったよ。天の息吹、満ち満ちて、聖浄と癒しをもたらさん――〝天恵〟! ハジメくん、しっかりして!」
ハジメに回復魔法をかけながら「死んではいけない」と声をかけ続ける香織に全てを任せると、俺は再びユノを召喚して何か回復薬になる物体は見当たらないかを必死に探す。
すると、一際大きい魔力反応を感知した。魔物が保持する澱んだ物ではない。曇り一つもない澄んだ青空のような、純粋な魔力だ。
本能的に「これだ!」と思った俺はアリスをハジメの元へ行かせて警護を任せると、今度は二体目のペルソナを召喚する。
「来い、〝オルフェウス〟!」
ガキイン!!!
「やれ、〝アギダイン〟!」
ボォバアアアアア!!
岩壁を大爆発で粉砕して魔力反応のある場所目指して俺は足を進めていく。反応はそう遠くない位置にある。距離にして大体五十メートルだろうか。
反応への大まかな道筋を立ててからは細心の注意を払って岩壁を削り取っていく。こんな時、ハジメの錬成があれば随分と楽なのだが……ない物ねだりしても仕方がない。早く進もう。
ゆっくりと、しかし少しずつ確実に岩壁を削って進んでいくと、ポタリと何やら水滴のような物が岩の間から出て来た。何となしにその水滴を口に含んでみて、俺は驚愕する。
此処に至るまで、それなりに魔力や体力を消耗していた俺だが、このよく分からない水滴を飲んだ瞬間に魔力が全回復したのである。
間違いなく魔力反応の正体はこれだ。そう思い、俺ははやる気持ちを抑えて更に奥へ進んでいった。
やがて、流れる謎の液体がポタポタからチョロチョロと明らかに量を増やし始めた頃、更に進んだところで俺は遂に水源にたどり着いた。
「これか……あの不思議な水の正体は……」
そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。
その鉱石は、周りの石壁に同化するように埋まっており下方へ向けて水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた感じが一番しっくりくる表現だろう。
確認のため、鉱石から滴り落ちる水滴を口に含んでみる。
やはり、あの水滴と同じように魔力や体力が一瞬で回復していく。間違いない。この鉱石が、あの不思議な水を出していたのだ。
急いで手持ちの魔力回復薬が入っている瓶を空にするべく、一気飲みしてから瓶口を拭いた俺は不思議な水を瓶内に満たしていく。
「これなら、きっと……」
欠損した部位まで治せるとは思えないが、それでも瀕死のハジメを救う事は出来るはず。そう信じて俺は一杯になった瓶を持ってハジメたちの居る場所へ戻った。
ハジメは相変わらず傷だらけの状態で寝ている。香織は魔力枯渇したのか、膝を地面に付けているが、それでも必死にハジメを癒そうと無理やり魔法を行使している。
傷口は多少塞がったみたいだが、意識が戻るどころか顔が土気色になってきている。未だ呼吸も安定しておらず、極めて危険な状態と言えよう。
「香織、これをっ」
「これは……水? これで、ハジメくんを元気に出来るの?」
「分からない。だけど、何もせずに見殺しにする訳にはいかないだろ?」
「……そうだね。少しでも可能性があるなら、やってみないとダメだよね!」
香織は頷くと、瓶に入った水を口に含む。
……え、含んだの? 飲ませるんじゃなくて、自分で飲んじゃうの?
そう思った俺だが、香織が次に起こした行動に度肝を抜かれた。
「んうっ」
「へえあ!?」
何の戸惑いもなく、香織はハジメの唇に己の唇を重ねたのである。しかも無理やり唇を開かせると、舌を絡め取って直接水を流し込んでいる。
所謂ディープキスである。ハジメの喉がコクコクと動いているのでなんとか飲み干せているらしいのだが、そんな事よりも俺は香織が突然凶行に走った(様に見えた)のでそっちに目が行ってる。
いや、香織がハジメに対して恋愛感情を持ってるのは知っていたのだが、まさかこんな形で行動に移すとは思えなかった。「マジかよ」としか口に出来ない。
「う、ううん……」
「ハジメくん! 大丈夫? 私が分かる?」
「あ、え。しらさき、さん? 何で此処に白崎さんが……? あ、もしかして天国に?」
「もう、此処は天国じゃないよ! ハジメくんはまだ死んでないからね!」
「え、本当に白崎さんなの? 夢じゃなくて現実の白崎さん? あれ、でも此処って奈落の底で、白崎さんが落ちる意味は……」
……良かった。取り敢えず目が覚めたようだ。起こし方はさて置き、あの水がちゃんと効果を成していて本当に良かった。
ただ、未だに現実世界に帰ってきてないらしいので俺も参戦して我に返らせることにする。
「ハジメ、しっかりしろ」
「結城くん?! え、まさか二人で奈落の底に落ちてきたの?」
「いや、雫とレイシェンも一緒だな。計四人で降りてきた。君を捜しにね」
意識も随分とハッキリしてきたらしく、ハジメは目をパチクリさせて状況確認をしている。雫とレイシェンの姿も認めると、ますますハジメの表情が面白いことになる。
「僕を捜しにって、そんな意味のないことをどうしてするの? 無能一人が居なくなっても……」
「ハジメは無能じゃないさ。俺にとっては心強い味方だ。あの時、君が居なかったらベヒモスを抑えられなかったんだぞ?」
「そうなの? でも、僕を追ってきても良い事はないよ。此処は地獄みたいな場所なんだ。そこへわざわざ飛び込んでくるなんて……」
伏し目がちなハジメ。命の危機を感じて心が折れかけているのだろうか? いや、それは違うような気がするが……うーん。
ただ、ハジメが無能かと言われたら俺はノーと答える。ハジメが錬成で生み出した兵器は確かな強さを持っていたし、何よりさっき見えたペルソナらしき物の力は凄まじいものがあった。
最初から〝無能〟ではなかったが、もう今のハジメは限りなく〝チーター〟であろう。無能と蔑む者は目が節穴だとしか言い様がない。
と、この辺りにしておこう。俺たちがわざわざ奈落の底まで捜索しに来たのは、香織の強い意志があったからだ。今は彼女が伝えたいことを沢山ぶつける時間だ。
「ハジメぐん……生きででくれで、ぐすっ、ありがどうっ。あの時、守れなぐて……ひっく……ゴメンねっ……ぐすっ」
「え、ちょ、白崎さん!? そんな泣かないでよ! 僕は無事だから!」
「でも、でも……!」
女の子に泣かれると弱いのは俺もハジメも変わらないらしい。嗚咽を漏らしている香織に対し、どうすれば良いのか迷っている。
遂には俺に「助けてくれ!」と目線を飛ばしてきた。いや、俺に助けを求められても困るんだけどな。勘弁してくれ。
「……せめて抱き締めたら?」
「え、うん……え、抱き締める? ちょ、ちょっと待ってよ。それはいくら何でも」
「早くしなよ。心配かけたんだからさ」
プイッと顔を背けて取り付く島はないという意思を見せた。俺にはどうすることも出来ないので、自分で解決して欲しい。
ハジメは恐る恐るながらも香織の肩に手を置く。そして数瞬の間を開けてから、ハジメは香織の細い身体を優しく抱き締めた。
「ごめんね。心配かけて」
「ハジメくん……」
「あの日、守ってくれてありがとう。白崎さんが守ってくれているのを感じていたから、僕は彼処まで無茶する事が出来たんだ」
強く香織を抱き締めると、ハジメは誰もを魅了する優しさに溢れた笑みを浮かべた。
「でも、守られてばかりは僕が許せないから、今度は僕が白崎さんを守るよ」
「え、でも……」
「心配しないで。もう僕は何処にも行かない。白崎さんが悲しむような真似はしないよ。だから、もうそんな顔はしないで、何時ものように笑って欲しいな。白崎さんは笑顔の方が似合うからね」
サラッと告白したハジメ。最初から俺に助けを求める必要はなかっただろうに。
……あ、香織がハジメにキスをした。うん、邪魔者は退散しよう。
レイシェンと雫を引き連れて俺は物陰に移る。雫は何となく察しているらしく、顔が真っ赤だ。いや、目元も赤い。俺はそっと懐からハンカチを差し出した。
「あれは恋愛、なのですか? 私には理解しかねます」
「……それを言ったら終わりだぞ、レイシェン。君もそのうち分かるようになるさ」
「そうね。感情を覚えれば、私たちみたいになれる人が見つかるはずよ」
少し距離を詰め、肩と肩が触れ合うぐらいの距離の雫の頭を軽く撫でる。晴れて特別な関係となった俺と雫であるが、あの夜に軽い口づけを交わした以外には特に何もしていない。
と言うか、前とそんなに変わってない。スキンシップが多めなのが幸いだろう。
「何でしょう。貴方たちが近くで仲睦まじくしていると、胸の奥がチクチクします」
「……さあ、何でだろうね。俺には分からない」
感情が芽生えかけている、のだろうか。
俺はその感情を表現するのに相応しい言葉を知っている。だが、これを口にしたら雫の機嫌を損ねる気がするので敢えて口にはしない。
自分で気がつける日まで内緒にする。俺はそう決めると、レイシェンの髪も優しく撫でてから雫の頭も撫でるのだった。
次回から漸く本格的にオルクス潜りして行きます。まだ出してないペルソナも出さないと…()
ハジメにワイルドの能力は必要?
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いると思う
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いらん