命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強 作:Hetzer愛好家
実は部活の大会がありまして、描く余裕が失われてました。
「君は何故こんな奈落の底に封印されている? 普通の人ならこんな奥底までやって来られないのに、君は此処に居るのが不思議だよ」
油断は一切しない。召喚器を抜き、何時でもペルソナを出せるようにしてから俺は第一の質問をした。
女の子は俺とハジメの事をジーッと見ている。まあ、気長に待つとしようか。「話さないならもう行くぞ」と、鬼みたいな事は流石に出来ない。
たっぷり一分は俺たちの事を見つめていた女の子は漸く我に返ったのか、慌てた様子で自分の境遇を話し始めた。
「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……」
「すごい力? え、というか吸血鬼?」
「私、すごい力を使って国のため、皆のために頑張った。でも……ある日、おじ様……自分が王だから私はいらないって……」
まず、この女の子は元々何処かの国の姫君だったようだ。何やら「すごい力」を持っているらしく、それを使って国のために色々していたが、ある日突然「おじ様」という者に全てを奪われたらしい。
「それでも良かった……でも、私の力は危険だからって……」
「此処に封印された、か」
「なんて波瀾万丈な人生なんだろう。あれ、でも吸血鬼族って三百年前ぐらいに絶滅していたはずだよね? それなら、この子はとんでもない時間を此処で過ごしていたんじゃ……」
ハジメ曰く、吸血鬼族は三百年前に起きた大規模な戦争で絶滅してしまい、今日では存在が確認できないはずの種族らしい。
だとすれば、目の前に封印されている女の子は最後の吸血鬼族という事になる。
それにしても、彼女の言う「すごい力」とは何なのだろうか。
「すごい力って何のことだ?」
「……簡単には死なない。傷付けられてもすぐ治る。首を落とされてもそのうち治る。心臓を抉られても魔力が残っていれば死なない」
話を聞く限りでは、彼女は不老不死に近い存在という事だ。魔力さえ残っていれば何度でも再生が可能らしい。俺とは違って再生に時間がそこまで必要ないのは凄まじい。
「それに、詠唱と魔法陣が要らない。魔力、直接操れる」
「ああ、魔力操作か。それは強いな」
「僕たちと同じって事だよね。相手が詠唱したり魔法陣を用意してる間に幾らでも撃てるし、万が一当てられてもすぐに傷が癒える……で、正解なのかな?」
「ん……」
ハジメの推測は当たりのようだ。なるほど、彼の推測通りならこの女の子はとんでもない力を持っている。下手したら世界を滅ぼせるぐらいには強いだろう。
女の子は懇願するような表情で此方を見ている。言葉を発さなくても「助けて欲しい」という気持ちが見えている。
助けるという事は中々にリスクが高いだろう。奈落の底に封印される曰わく付きなのだ。ハイリスク以外の何者でもない。だが、その強力な能力を考えるとリターンも大きい。ハイリターンだ。
ハイリスクハイリターン。彼女を解放するならこれを受け入れる覚悟をしなければならない。
今一つ覚悟が決まらないでいた俺だが、そんな俺を置いてハジメは先に動き出した。
「僕が錬成で助ける。結城くんはこの子に着せる服を用意してくれる?」
「ハジメ……」
「分かってる。これは賭けになるってね。それでも……僕は手の届く距離にある、助けられる命を救いたいんだ」
それだけ言うと、彼は石に手を置いた。その背中からは絶大なる決意が滲み出ており、誰であろうとも動かせない強い意志が感じられる。
ハジメが頑固なのは既に証明済みだ。こうなったら否定しても彼は止まらないだろう。
「……雫。替えの服はあるか?」
「勿論よ。でもサイズが違いすぎない?」
「大丈夫だろ。多分な」
煌々と光り輝くハジメの魔力を見ながら軽く答える。ハジメの魔力は刻一刻と輝きを増していき、部屋全体を明るく照らしていった。少々黒のまざった真紅がとても綺麗である。
徐々に女の子の枷となっている石がドロリと融解していく。全ての石が融けるまでそう時間はかからないだろう。
「手の届く距離にある命を救いたい、か。やっぱりハジメは優しいな」
優しすぎるとも言える。だが、そんな彼の心構えは素晴らしいと思う。
ポツリと零した程度でいたのだが、俺の言葉を聞いていた香織がこんな事を話してくれた。
「ハジメくんは見知らない人のために公衆の前でも臆さず頭を下げられる人だよ」
まだハジメや香織が中学生の頃だが、ハジメは見ず知らずの男の子と老婆のために頭を下げたことがあるらしい。
詳しく聞くと、不良連中にたこ焼きをぶつけてしまった男の子とクリーニング代として財布ごと取り上げられてしまった老婆のためだそうだ。
「強い人が暴力で解決するのは簡単だよね。でも、ハジメくんみたいに弱くても立ち向かえる人や他人のために頭を下げられる人はそんなにいないと思うんだ」
「……そうだな。俺もそう思うよ」
「だから、私のヒーローは誰が何と言ってもハジメくんなんだ。私にとってはハジメくんが世界一格好いい男の人だよ」
枷を完全に解き、肩で息をしているハジメの手を握る女の子を優しい瞳で見やる香織。溢れんばかりの慈愛の感情によって場の空気も暖かい物になる。
俺は雫から受け取った服を女の子に渡すために歩み寄ろうとした。
……歩み寄ろうとして、すぐに表情を凍り付かせた。
「危ないっ、そこを離れろ!」
俺の声を聴いたハジメは女の子を抱えて後ろに飛び退いた。そして、ついさっきまでハジメたちが居た場所に何か巨大な物が落ちてくる。
女の子に服を投げ渡し、俺は一番前に出る。ハジメも女の子を後方支援組に託して仮面を取り出した。
仮面を装着したハジメの服装が変わった事を確認すると、改めて目の前に降ってきた生物を見つめる。
その魔物は体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。
一番分かりやすいたとえをするならサソリだろう。二本の尻尾は毒持ちと考えた方が賢明だ。明らかに今までの魔物とは一線を画した強者の気配を感じる。
「部屋に入って来たときは反応がなかった。ということは、彼女を逃がさないための最後の門番ってか?」
「多分、ハジメの推測で正解なはずだ。取り敢えずあれを倒さないと、あの子の身が危ない」
召喚器をこめかみに当てる。ハジメも仮面に手を掛けた。互いに頷き合うと、それぞれ己の半身を召喚する。
「来い、〝オルフェウス〟!」
ガキイン!!! カッ!
「行くぞ、〝アルセーヌ〟!」
ブチッ!!!
幽玄の奏者オルフェウス。そして、逢魔の掠奪者アルセーヌ。それぞれが冷たい眼でサソリモドキを射貫いている。
……と、カッコつけてみたは良いが、策は一つも思い浮かばない。どうしたものか。
そう悩んでいると、サソリモドキが先に動き出した。初手は尻尾の針から噴射された紫色の液体である。かなりの速度で飛来したそれを、俺たちは咄嗟に動いて躱す。着弾した紫の液体はジュワーという音を立てて瞬く間に床を溶かしていった。溶解液のようだ。
「くそ、やらせはしない! 〝アギダイン〟!!」
ドゴオン!
それなりの爆発がサソリモドキに直撃する。だが、まるで効いている様子がない。爆炎が晴れると、無傷のサソリモドキが姿を現した。
お返しとばかりにサソリモドキの尻尾の先端が一瞬肥大化したかと思うと凄まじい速度で針が撃ち出される。まるでマシンガンだ。一撃でも貰えばマズい。
「やってやる……! アルセーヌ、〝スラッシュ〟!」
金属音を鳴り響かせてハジメが針を捌いている間に俺は策を練る。
時折、ハジメの繰り出した斬撃がサソリモドキに命中しているが、硬質的な音を立てて弾き返されている。サソリモドキの甲羅は異様なぐらいに頑丈と見ても良いだろう。
だとすれば、甲羅を突破するために超々高温攻撃を仕掛けて融解させるか、即死系の魔法を使って一発で仕留めるかの何方かだ。更に言えば、魔物相手には光属性の即死攻撃は効きにくいだろう。そうなると、かなり使える技が限定される。
「くっそ、硬すぎるだろ! 何か手は……!」
「ハジメ。一回下がってくれ。少し俺が時間を稼ぐから、その間に奴を眠らせるんだ」
「ね、眠らせる? 眠らせてどうするんだ?」
「闇属性即死魔法で攻撃するのさ」
これぐらいしか思いつかなかった。眠らせればダウンを取ってからの総攻撃も可能だが、火力不足に陥ったら目も当てられない。今回は即死を狙うのが一番良さそうだ。
……実際のところはアリスを使えば一発なのだが、それではハジメの成長には繋がらないので今回は出番なしだ。
ハジメはイマイチ釈然としない様子であったが、一応頷いてくれた。まだ自分が使える技を完璧には把握していないのが大きいのだろう。闇属性の魔法は基本的に即死魔法であると覚えきれていないらしい。
「行くぞ、オルフェウス!」
俺は片手剣を、オルフェウスは琴を手にしてサソリモドキに突進した。攻撃が通用するかは考えない。今は、兎に角時間を稼ぐことが先だ。ダメージは二の次で良い。
マシンガンのように発射される針を弾き飛ばし、溶解液を躱しながらチクチクと一撃離脱していると、今度は地面から凄まじい勢いで円錐状の刺が無数に突き出してきた。
地面が波打った後に刺が突き出したので、サソリモドキはハジメと同じように錬成が出来るのかもしれない。
だが、攻撃を受けたからと言って下がる訳にはいかない。ハジメが攻撃を仕掛けるまでの間、出来るだけ集中させるためにも彼からサソリモドキを遠ざける必要がある。
オルフェウスの巨体を活かした回し蹴りと、俺の片手剣での連撃が功を奏して何とか押し込めているが、そう長くは抑えられないだろう。
「〝アギ〟を連発しろ、オルフェウス」
『ォォォオオオオオ……!』
ドオン! ドオン! ドオン!
爆発の連打もそこまで長くは保たないはずだ。だが、稼いだ時間は数分間。それだけあれば、彼ならきっと大丈夫なはずだ。
俺の相棒は世界一の錬成師であり、俺と同じペルソナ使いなのだから。
「すまん、遅くなった。準備完了だ」
アルセーヌを引き連れたハジメが再び前線に来たのは、オルフェウスがアギを乱打してからそう時間も経ってない頃だった。
「アルセーヌ!」
『良かろう。さあ、夢魔の旅へ我が誘おうではないか!』
「やれ、〝夢見針〟!」
何やら針のような魔法弾を高速でアルセーヌが発射し、ハジメ自身も手榴弾のような物をポイッと投げ捨てる。錬成師の彼の事だ。きっと麻痺なり眠らせるなりする成分が入っているのだろう。
サソリモドキに命中した瞬間に、彼の繰り出した魔法は効果を発揮する。一瞬でサソリモドキは眠りの海へと引きずり込まれ、身動き一つしなくなった。
「今だ、畳みかけるぞ!」
「よし……やってやる!」
カッ! ブチッ!
「来い、タナトス! 〝ムドオン〟!」
「奪え、アルセーヌ! 〝エイガオン〟!」
……夜空を駆ける流星の如く、二つの魔法弾は動きを止めたサソリモドキに高速で飛来し、吸い込まれるように脳天に直撃した。
一瞬でサソリモドキの全身を死の概念で埋め尽くし、断末魔の悲鳴すら上げる事を許さずにサソリモドキの命を難なく刈り取ってしまった。
ドサリと音を立てて地に伏せたサソリモドキを数秒間だけ見つめ、完全に命の鼓動を止めたと察した俺は背を向ける。ハジメはどうやらサソリモドキに数発弾丸を撃ち込んだらしいが、そんな事しなくてもきっと死んでるだろう。
目を見開いて驚愕し、サソリモドキと同じように動きを止めている女の子を尻目に、俺はテクテクと雫たちの元へ戻るのだった。
アリス使えよお!っていうツッコミはなしです。使ったらオルクスが一話で終わります()
ハジメにワイルドの能力は必要?
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いると思う
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いらん