命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強   作:Hetzer愛好家

22 / 32
長いです(唐突)
普段が3000~4000文字なところ、今回は6000文字です。
そして、また一気に飛びます。ユエさんまで加わったパーティーで原作通りに進めますと、私の技術では単調になりかねないので奥底まで進んで貰うことにしました。


気が付いたら奥底まで来ていた

さて、サソリモドキを無事に撃破することが出来た俺たちは、女の子を引き連れて魔物肉を削ぎ取り、一つ上の階層に作った拠点へ戻ることにした。

 

ちなみに女の子には、ハジメが「ユエ」と名前を付けていた。どうやらユエとは彼の故郷で月を表す言葉らしい。彼女を見たときに、第一に「月みたいだ」と思ったのが理由だそうだ。

 

テキトーに名付けたのかと思いきや、しっかりとした理由があったので一も二もなく俺は「良いんじゃないかな」と答えた。

 

「……ハジメ。あの幽霊みたいな物はなに?」

「あ、ペルソナのこと?」

 

仮面を外し、服や性格が何時もの状態に戻ったハジメがユエにペルソナについて説明している間、俺は削ぎ取った魔物肉を調理して美味しく出来ないかを試行錯誤する。

 

と言っても、料理には必須な調味料は数が限られる。生成も頑張れば可能だが面倒くさい。

 

「肉は味付け一つで変わるんだけどな。レア焼きで胡椒と塩を使うとかはどうだろう……」

 

ブツブツと言葉を口にしながら完成した肉料理の味見をする。うん、普通の味だ。魔物肉は基本的にはマズいので、俺は漸く普通の肉の味になった事に感動していたりする。

 

さて、ユエに対して行われていたペルソナの説明が大方終わったところでご飯にするとしよう。

 

ちなみにユエのご飯はハジメの血らしい。移動する前にハジメの背中に背負われていたが、その際にちょびっと吸血したらとても美味しかったようだ。何種類もの野菜や肉をじっくりコトコト煮込んだスープのような濃厚で深い味わいだそう。何だかそれだけ聞くと俺も飲んでみたくなる。

 

……鉄の味しかしないという結果が見えているのが残念だ。

 

「あれ、この肉……なんか何時もより美味しいね。調理した?」

「ハジメが魔物肉を調理しないと不味いって言ってたからな。手間はかかるけど……」

 

魔物肉を不味くしている要因は肉に含まれた毒素だ。それを完全に抜かないと、どうしても不味くなってしまう。〝ポズムディ〟を使っても、一回では抜け切らないので割かし面倒くさいのである。

 

料理の度に魔力を使うのも正直言って面倒だ。魔物肉でも美味しくなるのは分かったが、手の込んだ料理を作るのは数日に一回のペースにしておきたい。やる気が流石になくなる。モチベーションが消えたらそれこそ終わりだ。

 

「ユエは……食べないか。ハジメの血があれば何とかなるよな」

「んっ。ハジメの血、熟成の味がした」

「そ、そうなの? って、舌舐めずりしないでよ! ちょっと怖いから!」

「ユ~エ~? ハジメくんに迷惑をかけたらダメだからね~?」

 

背後に番長のような幽霊?を浮かべる美少女を前にしながらの食事。何とも言えない。ハジメの事が大好きなのは相変わらずなのだが、日を追う毎に彼への思いが深く、重くなっている気がしなくもない。

 

……まさか、ユエを恋敵として認識してるのだろうか? いや、そんな事はないはずだ。うん、きっとないはず。

 

「ハジメくんに手を出したら許さないからね?」

「…………ん」

「ふ、二人が怖い……」

 

多分、きっとないはず。そう信じていた時期が俺にもあった。

 

実際はそんなことなかった。めっちゃ普通に目の前でハジメ争奪戦が起きていた。第三者である俺ですら、近くの空気に触れているだけで身震いが止まらない。

 

「……レイシェン。貴方、理に近すぎない?」

「ダメな理由でも?」

「ダメな理由しかないわね!」

 

……身震いしている本当の理由はこっちだった。凄い近くで争奪戦が発生していた。

 

もうイヤだ。ニュクスの監視に戻りたい。また死ぬのも嫌だが、ニュクスの監視の方が心穏やかに過ごせる気がする。

 

──────────────────

 

俺の現実逃避が深くなり、ハジメの顔色が少し悪くなったが、俺たちは特に問題もなく階層を更に下げていった。

 

ユエの力は凄まじく、彼女が一言何かしらの魔法のトリガーを引くだけで何百もの魔物が一瞬で消えていく。ハジメがペルソナを目覚めさせた時点で何処かおかしかった殲滅力が更に上がったことで、今では魔物が可哀想なくらいアッサリと死んで行ってる。

 

例えば、六十階層ぐらいに出会った大量の魔物。周りが百六十センチメートル以上ある雑草が生い茂っており、戦う場としては非常に悪かったのだが……そこで現れた総勢二百ほどの魔物は全てユエの殲滅魔法によって全滅した。

 

と、思ったらすぐさま別の魔物が大量にやって来たのだが、今度はハジメが敵中に突っ込み大暴れ。斬撃と闇属性魔法、そして拳銃を駆使して縦横無尽に駆け回り、数分と経たない間にまたもや魔物を全滅させてしまった。

 

その後は大量の魔物が現れる原因が「何者かに操られている結果」だと推測した俺がサクッと本体をアリスで殺したので階層制覇した。所用時間は約十分だ。

 

こんな調子なので、俺たちは気が付いたら奈落の底から数えて百階層目まで足を運んでいた。超スピードの迷宮攻略に、この大迷宮を作ったとされる〝反逆者〟もビックリしているであろう。

 

この〝反逆者〟と言うのは、神代に神に対して反逆し世界を滅ぼそうと画策した七人の眷属を指し示すらしい。しかし、その目論見は破られ、彼等は世界の果てに逃走した。

 

その果てというのが、現在の七大迷宮といわれているらしい。この【オルクス大迷宮】もその一つで、奈落の底の最深部には反逆者の住まう場所があると言われているのだとか。

 

正直言うと、俺にとってはかなりどうでも良い事だ。今は兎に角、この迷宮の出口を探すだけだ。反逆者とやらを調べるのはもっと後でも大丈夫だろう。

 

さて、問題の百階層だが、その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。どこか荘厳さを感じさせる空間である。

 

「……広いな。此処が終着点か?」

 

ジワリ、ジワリと心の奥底から湧き上がる緊張感に、俺は本能的に此処には何かあると察した。間違いない。何か、途轍もなく大きな物が此処にはある。

 

それを感じているのは仲間も同じらしい。それぞれが額に汗を浮かべている。

 

目の前には超巨大な魔法陣。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせている。形はベヒモスを召喚した物と似ているが、それとは比べ物にならないぐらい大きく複雑な式が組まれている。

 

「戦闘準備……は出来てるな。絶対に油断するなよ。此奴はヤバい」

 

俺の警告とほぼ同時に、魔法陣が一際強く輝く。咄嗟に目を腕で隠しながら、ペルソナ召喚器を手にして俺は光が晴れるのを待つ。

 

光が収まった時、そこに現れたのは……

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。

 

腹まで響く不思議な声色。だが、決して聞き惚れてはいけない。隙を見せた瞬間に、その者から命が刈り取られる。

 

「六つ首ね。それならこっちにも、姿形が似たペルソナが居るさ」

 

ガキイン!!!

 

「〝マザーハーロット〟」

『フフフ……妾を選ぶとは、其方も中々に素晴らしい心を持っておるのぉ』

 

七つの首に十本の角を持つ怪物に跨がり、手には澱んだ空気を放つ金の杯を持った女魔人が現れた。一気に周囲の気温が下がり、地面が俺を中心としてガチガチと凍っていく。

 

人を殺せる殺気をヒュドラは出しているが、それは俺も同じこと。普通の人間なら簡単に殺せるぐらいの悍ましい殺気を放っている。

 

「……“俺”もやるとするか。行くぞ、〝アルセーヌ〟!」

『良いぞ……もっとだ。もっと反逆の心を燃え上がらせろ! 反逆の心が、我に力を与える!』

 

アルセーヌも現れた。

 

「やれやれ……二人とも血気盛んなんだから。皆、準備は良い?」

「うん、サポートは任せてね!」

「ん……何時でも行ける」

「ユエさんに同じく、私も大丈夫です」

 

女子メンバーの準備も完了したらしい。これで役者は揃った。

 

誰もが黙りこくり、壮絶な殺気をぶつけ合う。一秒が一分に感じられるほどにまで時の流れが遅くなり、自分の心音が酷く喧しく感じる。

 

押し寄せる凄まじい緊張感に、俺が一つ生唾を呑み込んだ。その次の瞬間である。

 

「クアアッ!」

 

もはや壁とも言うべき炎の濁流が、紅い文様の入った頭から俺たち目がけて放たれたのである。

 

咄嗟に全員が散開し、炎の濁流を回避。俺だけは最小限の回避だけすると、マザーハーロットに撃鉄を起こすように指示を飛ばした。弱点属性の攻撃ではあるが、この際そんな事は言ってられない。やるしかないのだ。

 

「っ、やるぞ! 〝マハブフダイン〟!」

『其方の覚悟、確かに聞き入れたぞ。我が僕たちよ、この少年の心意気に恥じぬ大氷河期を生み出せい!!』

 

全てを凍てつかせんばかりの冷気が、炎の濁流を押し返した。一瞬で氷付けになった紅い文様の入った頭に目がけて、俺はクロスボウの引き金を引いて矢を放つ。

 

矢は狙い違わず紅頭に突き刺さり、爆薬が炸裂して木っ端微塵に粉砕した。

 

まずは一つ。そう思い、次の頭に狙いを定めようとしたところで、俺は目を見開いた。

 

白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。すると、まるで逆再生でもしているかのように赤頭が元に戻ったのである。

 

続けてハジメが拳銃で蒼い文様の入った頭を吹き飛ばしたが、やはり白頭によって元通りになってしまった。

 

その特性にいち早く気が付いた雫が突貫攻撃を仕掛けるが、今度は黄色い文様の入った頭が白頭と雫の間に割り込み、己の頭を肥大化させた。攻撃は難なく弾かれ、黄頭には傷一つ付いていない。

 

「……厄介だな」

『ふむ、攻撃役が二枚に壁役が一枚。回復役が一枚なのかの。ならば、あの黒い文様の入った頭は弱体化要因かえ?』

「有り得る。注意するとしよう」

 

あの白頭を潰さないと戦いに終わりは訪れないだろう。しかし、壁となる黄頭も邪魔だ。ほぼ同時に二つを叩き潰す必要がある。間髪入れずに倒すとなれば、単独撃破は尚更困難だ。

 

「……仕方ない。まずは〝コンセントレイト〟だな。強化した魔法で様子を見よう」

『承知した』

 

有効打が思いつかない以上、下手に思考で時間を潰すよりは行動を起こした方が得策だろう。そう信じ、俺はコンセントレイトを使って魔法攻撃の効果を底上げした。

 

ハジメはユエと共に黄頭を潰しては白頭を殴ろうとしているが、一歩間に合わず回復されている。他の頭からも攻撃されていると考えると、彼処に雫とレイシェンが加わったところで結果は変わらない。

 

全ての頭をほんの一瞬でも良いから、動きを完全に止められる。そんな芸当が可能なのは俺かユエぐらいだ。ユエは魔力の回復がそこまで早くない事を考えると、結局は俺がやるしかない。当たり前だが、逃げることは許されないのである。

 

「よし……やるぞ! 〝マハブフダイン〟!」

『さあ、凍てつけぃ! 心底まで冷え上がらせ、その身動きを止めてしまえ!』

 

炎の濁流すら押し返した冷気が、今度は目に見えるほど凄まじい勢いと範囲で降り注ぐ。数分の抵抗すら許すことなく、ヒュドラは全身を氷に包まれて身動きを止めた。

 

「今だ、総攻撃行くぞ!」

 

片手剣を抜くと、俺は叫びながら跳び上がる。真っ先に反応した雫を先頭に、ヒュドラを取り囲むようにして俺たちは縦横無尽に駆け回る。

 

様々な場所から閃光が駆けて行き、その度にヒュドラの体が地面にドウッ! と引き千切れては凄まじい音を立てながら落下した。

 

全ての頭が地面に落ち、ただの首なし蛇となったヒュドラの前に、俺たちはまとまって飛び降りる。

 

左からレイシェン、雫、ハジメ、俺、香織、ユエの順番に並び立つと、それぞれが特徴的なポーズを何故か取る。

 

レイシェンは最近また使えるようになった銀翼を広げ、威風堂々と立つ。

 

雫は一度ため息を吐いて、ゆっくりと日本刀モドキを納刀していく。

 

香織は着地に少し蹌踉めいたが、すぐに立て直すと回復に使う杖をクルリと回してから前に軽く突き出す。

 

ユエは少しの間、手に炎を浮かべる。が、またすぐに握り潰して前を無表情で見やった。

 

片膝を付いて格好良く着地したハジメはスクッと立ち上がると、ニヒルな笑みを浮かべながら左手袋の裾を掴んで嵌めなおす動作をした。

 

ただ一人、ヒュドラ側を向いて着地した俺は流されるままに片手剣を鞘に納めると、召喚器をガンスピンさせながら腕を持ち上げる。そして頬の辺りまで召喚器が上がったところでピタリとスピンを止めると、横目にハジメたちと同じ方向を見やった。

 

全員が決めポーズ的なのを取ったと同時に、ヒュドラの残された胴体がもの凄い音を立てて地面に倒れ伏せる。

 

「……なんだこれ。てか、倒したのか?」

 

めちゃめちゃ恥ずかしいので、即刻ポーズを解いた俺はなるべく気にしないようにしてヒュドラを見やる。

 

首が全て落ちたヒュドラはピクリとも動かない。完全に沈黙している。

 

……本当だろうか?

 

ヒュドラと言うのは、ギリシャ神話では首を切り落とした傍から生えてくる厄介な怪物なはずだ。この世界のヒュドラがギリシャ神話と同じ物なのかは分からないが……。

 

凄まじく嫌な予感がする。その嫌な予感が、俺をヒュドラから目を離す事を許さない。

 

「理、どうした? もうアイツは死んだはずだろ?」

「……そのはずなんだ。だが、嫌な予感がする」

 

ガチリと召喚器をこめかみに合わせた。意識はしてなかったが、本能的に何かが来ると思ったのである。そしてその予想は、恐ろしくなるぐらいに正しかった。

 

音もなく七つ目の頭が胴体部分からせり上がり俺たちを睥睨する。銀色の文様が入った七つ目の頭は、俺から視線を外し、ハジメ目がけて何の前触れもなく極光を放った。

 

……このままハジメに、あの極光が命中してしまったら非常にマズい。驚くほどアッサリと、ハジメは死んでしまうだろう。その余波に巻き込まれたら、他の仲間の命も危ない。

 

そんな事は、俺が絶対にさせない。俺が皆をこの手で守る。そう決めたんだ。

 

絶対に、守ってみせる……!

 

「〝メサイア〟!」

 

ガキイン!!!

 

ハジメたちとそこまで距離が離れていなかった事が幸いし、ペルソナを召喚してすぐに彼らとヒュドラの間に割って入る事に成功する。

 

オルフェウスの体を基準とし、背中にはタナトスと同じような棺桶を背負ったペルソナ。その名も〝メサイア〟。またの名を〝救世主〟だ。

 

「頼むぞ! 〝マカラカーン〟!」

 

ガキイイイイイ!!!

 

展開されたマカラカーンが、悲鳴にも似た軋み音を上げる。メサイア自身の属性の御蔭もあって割れる事はないが、途轍もなく心臓に悪い音だ。聞いているだけで寿命が縮む。

 

かなり強引だったが、何とか極光の軌道を逸らして壁にぶち当てると、俺は一思いに地面を踏み抜いて再度空へ上がった。

 

「死にたくないならしゃがめ! 絶対に巻き込まれるんじゃないぞ!」

「ま、待ってよ理。そんな急に『早くしろ!』っ、分かったわ。その代わり、しっかりね」

 

エネルギーがメサイアに集束していく。メサイアが右手を開いて腕を持ち上げると、掌に紫と白の混じった魔力が塊となっていった。

 

俺は目を見開くと、最強戦力であるメサイアが持つ最大にして最強の、そして文字通り必殺の一撃を放つトリガーを引く。

 

〝メギドラオン〟!!

 

隕石のように、ヒュドラ目がけて充填されたエネルギーが回転しながら落ちていく。

 

集められた膨大なエネルギーとは裏腹に、落ちていくと同時に小さくなっていくエネルギーの塊はヒュドラの脳天に命中して途端、

 

ズゥドオオオオオオオオオオオン!

 

五感の殆どを奪うまでの破壊力を持った大爆発が発生した。

 

俺は、巻き起こした大爆発に全エネルギーを注ぎ込んだため、ヒュドラを爆発が呑み込んだ瞬間に意識を失うのだった。




マザーハーロットとメサイア登場です。アリスでも良かったんですが、アリスさんには後にもっと大切な出番があります。

さて、結城さんの総攻撃フィニッシュですが、以下の通りになります。
…敵側を向いて着地しながら片手剣納刀→召喚器を取り出す→ガンスピンして腕を上げながら体の向きも少しずつ変える→召喚器が顔の横まで来たらガンスピンを止めると同時に結城は敵とは反対側をキッと見る→The shows over.
何か他に良い案があったら教えてください…()

ハジメにワイルドの能力は必要?

  • いると思う
  • いらん

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。