命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強   作:Hetzer愛好家

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今回は比較的ほのぼのです。


ブルックの町にて

周囲の視線を全て無視して移動し、冒険者ギルドまで真っ直ぐ進む。

 

重たそうな扉を開いて中へ足を踏み入れる。意外に清潔感が保たれた内部であり、少々拍子抜けしながらも俺はカウンター向かって歩いた。

 

ギルドに入った瞬間に視線が集まるが、雫もレイシェンも慣れたもので全面無視を決め込んでいるらしい。何も反応することなく、俺の三歩後ろを歩いてくる。

 

カウンターには大変魅力的な……笑顔を浮かべたオバチャンがいた。人が良さそうで何よりである。ハジメが話した異世界物のテンプレは、美人の受付嬢らしいが……俺はそう言った趣味はないし、期待もしてなかった。強いて言うなら、話しやすそうな人が良いなぁと思ってたぐらいだ。

 

「おや、随分と風変わりな男がやって来たねぇ」

「どうも」

 

オバチャンの目が何かを探るように輝いたのを見て、俺はより一層無表情を深めていく。片目しか見えないのが幸いだ。表情の判断材料が一つ減る。

 

見つめ合うこと数十秒。随分と長い時間が経過した気もするが、まあそれぐらいだ。

 

突然、オバチャンが笑い出した。

 

「あっははは! なるほど、これはたまげたね! あんた、これまで見てきた男の中でも別格な強さと儚さを持ってるね!」

「そりゃどうも。……儚いって、それは褒めてるのか?」

「褒めてる褒めてる! そんな顔をしなくても、しっかり褒めてるから安心なさいな!」

 

儚いの意味がよく分からないので首を傾げるしかない。が、馬鹿にしている様子は見受けられないし毛嫌いされた感じもしない。これで取り敢えず良しとするか。

 

「はは、悪いね。いきなり騒がせてしまって。さて、じゃあ改めて、冒険者ギルド、ブルック支部にようこそ。ご用件は何かしら?」

「素材の買い取りをお願いしたい」

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

「ん、ステータスプレートを出すのかい? 素材の買い取りに必要とは思えないけど」

 

素材の買い取りをしてもらうのは初めてなのだが、ステータスプレートを提示を求められて俺はほんの少し表情を曇らせる。あまり偽名を広めたくないのだ。

 

俺の疑問に、オバチャンは「おやっ」と声を出す。

 

「あんた冒険者じゃなかったのかい? 確かに、買取にステータスプレートは不要だけどね、冒険者と確認できれば一割増で売れるんだよ」

「へえ、そうだったのか。だが、俺は冒険者じゃないんでな」

「あら、そうだったのかい? だったら、買い取りのついでに冒険者の登録をするってのはどうだい? 登録費用は私がオマケしてやるよ」

「それなら頼もう」

 

オバチャンが一度奥へ引っ込む。その間に、俺は適当に魔物の爪やら皮やらを取り出した。ライセン大峡谷で狩った魔物の素材。それに表のオルクス大迷宮の下層階で手に入れた素材。今回はこの辺りだ。

 

素材をある程度揃えたところでオバチャンが戻ってきた。

 

戻ってきたステータスプレートには、新たな情報が表記されていた。天職欄の横に職業欄が出来ており、そこに〝冒険者〟と表記され、更にその横に青色の点が付いている。

 

「……確か、階級があるんだったよな。最高ランクは金だったか」

「男ならまずは黒を目指すんだよ? そこのお嬢さんたちに格好悪いとこ見せないようにね」

「努力するよ。それで、買取はここでいいのか?」

「構わないよ。あたしは査定資格も持ってるから見せてちょうだい」

 

ヒョイヒョイと俺はカウンターの受け取り用の入れ物に素材を入れていく。小高い山を作った魔物の素材を見て、オバチャンの目が見開かれた。

 

オルクス大迷宮の下階層に生息する魔物の素材は初めて見るのだろう。ベヒモスの爪から始まり、様々な魔物の爪から皮やら角やらを見て、オバチャンは溜息を吐いた。

 

「とんでもない物を持ってきたね。噂には聞いてたけど、オルクス大迷宮の下階層に生息する魔物の素材は初めて見たよ」

「腕っぷしには自信があるんだ」

「ひょっとしてあんた……いや、何でもないよ。それより、中央で売らなくて良いのかい? もっと良い値を付けてくれると思うけどねぇ」

 

オバチャンの提案に、俺は首を横に振ることで意思を示す。この際お金はそこまで多くなくても良い。当面の食糧と最低限の寝床を確保が出来たらそれで万々歳である。

 

それに、中央に行って下手に目立つのは色々と面倒事に巻き込まれそうだ。それは勘弁願いたい。

 

そんな俺の意思を読み取ったのか、オバチャンは特に詮索する事もなく査定を終わらせて金額を提示した。気の利いた人である。

 

提示された金額は七十万ルタ。日本の円に直すと七十万円だ。

 

「ほら、持っていきな。お金はあるんだから、良い宿に泊まってお嬢さんたちの疲れを癒してあげるんだよ?」

「分かってるさ。あ、そうだ。この町の簡単な地図って貰えるか? 門番に、此処に行けば簡単な地図を貰えると聞いたんだ」

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」 

 

手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とは、ちょっと信じられないくらいの出来である。もはやガイドブックだ。

 

感心して「凄いな……」と呟くと、オバチャンは書士の天職持ちなのでここまで精巧な地図が作れるという話を聞いた。しかもこの地図、なんと趣味で書いたようだ。彼女曰く落書きみたいな物らしい。とんでもなくハイスペックなオバチャンである。

 

過去に何があったか気になる。が、オバチャンが詮索しなかったように俺も詮索を止めた。

 

オバチャンに一礼をして、俺はたちギルドを出る。やはり様々な視線が叩き付けられるが、変わらずスルーして俺は地図を見ながら町の散策を始めた。

 

「食糧調達するの?」

「だな。明日に回しても良いけど、面倒事は早めに済ませてしまいたい」

「……この地図によると、向こうの店が人気らしいです」

 

三人で地図を眺めながら町を練り歩く。時折、チャラそうな男たちに絡まれながらもテキトーに受け流して穏便に済まし、一通りの食糧を買い込んだ俺たちは宿へ向かうことにした。

 

選んだ宿は「マサカの宿」である。何でも防犯がしっかりしており、料理も美味しい。更に風呂まで完備しているらしい。主に三つ目に挙げた情報に流されて、俺たちはマサカの宿へ足を運ぶ。

 

宿の中は一階が食堂になっているようで複数の人間が食事をとっていた。

 

「いらっしゃいませー、ようこそ〝マサカの宿〟へ! 本日はお泊りですか? それともお食事だけですか?」

 

カウンターらしき場所に行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。

 

俺は「泊まりだ」と答え、更に「一泊。食事と風呂も頼む」と付け足す。

 

「分かりました。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」

「うーん……取り敢えず此処から此処まで。一時間半で頼むよ」

「えっ、一時間半も!?」

「男女で使うから長めに、だよ」

「な、なるほど。それで、お部屋はどうされますか? 今のところ二人部屋と三人部屋が空いてますが……」

 

迷わず二人部屋を二つと頼んだ。男女で部屋を分けるのは当然だ。部屋が一つしか空いてないなら腹を括ったが、そうではないなら迷う必要はない。少し雫が不満げだが此処はスルーである。

 

……雫からの視線が痛い。それと、レイシェンからの視線も痛い。先客たちの「紳士だなぁ」という視線がせめてもの救いだ。

 

「それでは、此方が鍵になります。お夕食はこの時間からこの時間までお出しするので、それまでに降りてきてくださいね」

「ああ、分かったよ」

 

指定された料金を支払い、部屋の鍵を二つ受け取った俺はさっさと二階にある部屋へ向かった。

 

雫とレイシェンを別室に押し込むと、俺は自室に荷物を放り込んでベッドに寝そべる。不眠症気味で寝ることは出来ないが、楽な姿勢を取って少しでも疲れが抜けるように促す。

 

夕食が出されるまであと一時間弱。眠る事は出来なかったが、俺は時間になるまでずっと仰向けに寝転がった。

 

時間になり、部屋の外で雫たちと合流してから下へ降りる。チェックインの時に見た客が全員残っていたのは謎だが、特に気にする事もなく俺は料理を注文した。

 

久しぶりに口にするマトモな料理はとても美味しかった。ずっと魔物肉を食べていただけに感動である。

 

「ん……美味しいな。地図通りだ」

「そうね。白米とか何ヶ月ぶりかしら」

「これが、美味しいという感情ですか。ゆう……有里湊さん」

 

名前を間違いそうになったレイシェンに軽く吹き出した。ほんの少しだけ「あ、やべっ」みたいな表情を浮かべていたのが面白い。

 

変化はほんの僅かだが、それでもコロコロと色を変えるレイシェンの表情を俺は楽しむ。白米を口にすれば目尻が少し下がる。辛いものを口にしたら僅かに眉をひそめる。ピーマンを見て、黙って水の入ったコップをスタンバイさせる。

 

見ていて本当に飽きない。それは雫も同じらしく、娘を見守る母親の如く慈愛の眼差しを向けていた。

 

食事を終えたら次は入浴だ。流石にオスカーの住処みたいな温泉みたいに豪勢ではないが、庶民的な風呂というのもまた乙な物である。温泉はたまに入るぐらいで丁度良い。

 

何時もの如くアリスがひょっこり現れたので、慣れた手つきで彼女を洗ってから自身の体も洗った。オスカーの住処で散々洗ったので、今ではすっかり慣れてしまった。

 

雫たちと入れ替わりで風呂から上がり、浴衣のような物に着替えて自室へ戻った俺は早めに寝支度を調えてベッドへ飛び込む。

 

イヤホンを装着して音楽を選択し、天井を眺めながら物思いに耽る。

 

……そして、気が付いたら下弦の月が東側に設置された窓から顔を覗かせる時間になった。

 

眠気が流石に出てきたので、イヤホンを外して眠ろうとする。しかし、何時もの如く目を閉じるとあの日の光景が広がる。

 

結局、満足に眠らないまま朝日が昇り始めた。気絶するように意識を失った時間は二時間程度。これっぽっちも寝た気分にならない。

 

……何時になったら安眠出来るようになるのだろうか。




次回はオリジナル要素が入ります。お楽しみにしてください。

ハジメにワイルドの能力は必要?

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