命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強   作:Hetzer愛好家

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遅くなりましたが更新です。受験生としては落とせない期末テストがあったので、珍しく自分としては勉強に没頭しており執筆がままならず……いや、本当に申し訳ないです()
それとお気に入り登録者数が遂に大台の1000を突破しました! 本当にありがとうございます!


場を離れ、そして

大豪邸から素早く脱出し、トドメと言わんばかりにレイシェンが大火を放ったのを背筋が凍る思いで見届ける。

 

やけにスッキリとした表情であるレイシェンに苦笑を零しつつ、俺は倒壊に巻き込まれないためにも雫と目配せしてその場を離れることにした。

 

茫然としているネコの亜人を抱えた雫が誰よりも前に進んでしまうので再び苦笑いした。まあ、この際そっちの方がありがたいけど。あの場所は、ネコの亜人にとっては忌まわしき場所。早いところ視界に入らない所まで連れて行きたい。

 

それなりの速度で走ったからか、数分もしないうちに倒壊する大豪邸は見えなくなり、代わりに視界が少し開けた広場のような所に出た。所々に腰掛けるにはちょうど良い大きさの岩が生えている。

 

一休みと今後のお話も兼ねて、俺は雫たちに目配せして止まるように促した。雫はネコの亜人を岩の上に優しく置く。

 

困惑全開で思考がまともに巡っていないようだが、悠長にする時間はないので早速話を進めることにする。

 

「さて、こうして連れ出したからには君も旅に同行することになるけど……」

「……その前に聞かせて。何で私を助けてくれたの? 助けてもらった身でこんな事を聞く資格はないと思うけど、答えて。アンタたちは無関係じゃない」

 

……思った以上にペラペラ喋るんだな。これが素の彼女なのだろうか?

 

まあ、ネコの亜人という時点で少し勝ち気な性格を期待してはいた。ハジメからの入れ知恵の部分が大きいが、ネコを擬人化したらツンツンで男勝りな性格をしてるか気まぐれ者の天然さんのどっちかなイメージだ。

 

人への当たりが強めな女の子、と言うと前世の大切な仲間を思い出す。置かれている状況も、性格もきっと違うだろうが……。

 

まあ、それは一端脇にでも置いておこうか。

 

彼女の意見は、マトモな感性を持っている人間ならそう思うのも不思議ではない。俺たちはあくまでも通りすがりの他人だ。こんな厄介事に首を突っ込む必要は本来なら無い。

 

それでも首をわざわざ突っ込んだのは何か理由があるに違いない。きっとそうだ、間違いない。そう思ったのだろう。

 

疑るような視線なのは人間不信だから仕方がないのだろうと思いつつ、俺は簡潔に答えた。

 

「人を助けるのに理由なんて要るかい?」

「……え、待ってよ。どういうこと?」

「だから、人を助けるのに理由なんて必要ないだろ?」

 

鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔をしているネコの亜人だが、俺は本心からこう思っているので何とも言えない気分だ。

 

何か見返りを求めている訳ではないし、自己満足したいからと言う訳でもない。単に、そこに困っている人がいたから助けた。本当にそれだけなのだ。それ以上もそれ以下もない。

 

有り得ない。そう考える人は、一度想像してみてほしい。目の前で泣いている人を放っておくのは、何となく罪悪感が芽生えてくるはずだ。人間として破綻していないなら、困っている人を放置したら罪悪感が芽生えるのは当然である。

 

己の手が届く範囲なら、どんな厄介事を抱えてしまおうとも助けようとするのが人として普通。少なくとも俺はそう思っている。

 

「なに、それ。意味が分かんない……」

「強いて言うなら、助けたいと思ったから助けた。こんな所かな」

「もっと意味が分からないわ……」

 

他人を助けるために動くというのはそんなに変なことではないはずだが……。

 

そんなに不思議なのだろうか?

 

気になって雫に質問してみようとしたが、彼女は弱く首を横に振るだけだった。それは暗に、俺の考えは不思議だと示していた。

 

無償の愛とはまた別の感情だとは思うのだが、どうも他者から見るとそれと同じように見えるらしい。

 

「人間として普通の思考回路だと思うけどな」

「で、でも……やっぱりおかしいわよ。人間って、損得勘定で動く生き物じゃないの?」

「それは言い過ぎだろ……」

 

人間不信も極まると、ここまで酷くなってしまうのかと半ば呆れた。

 

しかし、彼女が置かれていた状況を考えればそれも無理のないことだ。あのブタ面は人間の負の部分を凝縮した、絵に描いたような屑だった。そんな奴が長年身近に居たなら、それが当然であると思い込んでしまうだろう。

 

雫やハジメのように、人間的に素晴らしい者は何人も存在する。それだけに少し悲しい気分になるが、仕方がないのだと全力で割り切ることにした。これから知ってもらえば良いだけだ。

 

「まあ、これから様々な人を見るだろうさ。そこで少しずつ学んでいけば良い。それよりも……」

「んえ、何よ。急にジロジロ見て」

「名前をそろそろ教えてくれないか? さっきからどうやって呼べば良いか悩んでるんだ」

 

名前を聞き忘れていたことを隠すように、俺は彼女に名を名乗るよう頼む。真意に気が付いたであろう雫とレイシェンがジト目気味なのは気にしてはいけない。

 

しかし、ネコの亜人はすぐには言葉を発さなかった。何やら悩んでいる様子である。

 

漸く口を開いたと思ったら、彼女の口から衝撃の言葉が発された。

 

「名前、分からないのよ」

「えっ?」

「物心がつく前にあの家に連れて行かれたのよ。だから名前は分からないわ」

 

何ということだ。あのブタ面の闇が深まった。いや、それよりもこの世界の闇を垣間見た気がする。

 

レイシェンの話や王国で習った事を鑑みるに、彼女以外にも多くの亜人が幼い頃に汚い欲を持った人間に連れ去られ、名前すらも分からないまま奴隷として働かされる。

 

こんな酷いことが、然も平然と行われているこの世界はハッキリ言って終わってる。

 

しかしまあ、名前を付けて欲しいと言われるとはな……。

 

レイシェンの一件で名前を付けることに抵抗はないが、付けるとなればかなりしっかりと考えなければなるまい。これがそれなりに時間を要する。

 

「名前か……そう簡単に言われてもなあ」

 

語学がそれなりに堪能なのが唯一の救いだ。様々な言語を使って名付けることが出来る。レイシェンという名前だってドイツ語を知らなければ思いつくことはなかっただろう。

 

うむむ、と悩みに悩む。まずは英語やドイツ語からアプローチを仕掛けてみるが、これと言った良い名前が思いつかない。

 

英語でなら安直ではあるものの、希望を意味する「ホープ」やそこに新しいという意味をプラスした「ニュープ」ぐらいなら思いついた。しかし、なんだかちょっと違う気もする。

 

ドイツ語だとどうしても長くなってしまい、語呂の良い名前が出てこないのが悩みどころ。それなら言語を変えてしまえば良いじゃないと言うわけで、俺はロシア語でアプローチすることにしてみた。

 

「……今更ながら思ったけど、理って何でも出来るわね。学校のテストでも全教科満点じゃなかった?」

「料理も美味しいですし、包容力もありますよね。完璧だと思います」

「流石に褒めすぎだと思うけどね。ロシア語もドイツ語も囓った程度だよ」

「だとしても何かがおかしい気がするわよ……?」

 

伊達に努力した訳じゃない。俺は天才ではないのだ。どっちかと言えば努力するタイプである。

 

そんなこんなで考えていると、ポンポンと良さそうな名前が浮かび上がってきた。

 

一つはナディーツァ。ロシア語で希望を意味する言葉だ。これは英語と似たようなアプローチで思いついた名前である。さっきも使った「希望」だが、これは今後待ち受けるであろう苦難に巻き込まれても、希望を失ってほしくないという意味を持っている。

 

そして二つ目はレーリス。ロシア語で自由を意味する言葉である。奴隷の身からは勿論だが、これからは亜人という枠組みを超えて自由に生きてほしい。そんな願いが込められている。

 

考えた名前とその理由をポンポンと提案していくと、みるみるうちにネコの亜人の顔が面白い表情へと変わっていく。

 

「すっご……」

「好きな名前を選んでくれ。気に入らなければ言ってくれて構わない。また考え直す」

 

岩から立ち上がって軽く体を伸ばす。ポキポキと小気味よい音を鳴らした腰や背中を軽く叩くと、俺は考え事をするためにその場から離れた。

 

考え事と言っても大したことではない。どちらかと言えば、雫やレイシェンとネコの亜人が会話する時間を設けるためにその場を離れたの方が正しかったりする。

 

「さて、これから何処へ向かおうかな……」

 

地図を取り出して適当なことを思案する。あまり一箇所に留まることは出来ないので、可能なら今日中にでも他の国なり町なりに到着してしまいたい。

 

宿はぶっちゃけると外泊でも構わないのだが、俺以外のメンバーが女子というのが悩みどころである。どんなに了承してくれたとしても、何となく男のプライドがそれを許したくない。

 

 

考え始めればそれなりに思考は深まっていくもので、気が付けば相当に時間が経過していた。女子トークもそれなりに進んでいるようで、とても楽しそうに三人は会話している。

 

仲良くやっていけそうで何よりだ。気苦労が一つ、これで取り除かれた。

 

……お、雫が手招きしている。俺もそろそろ戻るとするか。

 

──────────────────

???

 

「ふう。これで大体は片付いたか?」

「多分な。数だけは多かったけど……これぐらいの強さなら幾らでも相手できるだろ?」

「まあ、神と比べればな……」

 

比較対象が何かおかしいのはご愛嬌。この二人の英雄が相対してきた敵と比べれば、魔人族の攻撃は止まって見えるぐらいにまで弱々しい物だったし、耐久力も紙以下でしかなかった。

 

「ああ、帰りたい。今日は嫁“たち”が腕によりをかけて料理してくれる日だったのに……」

「……そっとしておこう」

 

こんな状況であっても構わずぼやく天パの英雄。それを聞かなかったことにする冷静なもう一人の英雄。まあ、そっとしておくと決め込んだ英雄にも美人な嫁が帰りを待ってるのだが。

 

これは二人ともだが、嫁の機嫌を損ねることを心底恐れている。異世界に召喚され、しかもいきなり大軍に襲われた後だというのにすっとぼける余裕があるのは、流石英雄と言ったところか。

 

しかし、帰る方法がとんと思いつかない以上はこの異世界でどうやって生き残るのかを考えることが先決だ。

 

「こんな荒れた土地だが、捜せば小さな町ぐらいは見つかるだろう。取り敢えずはそこを目指さないか?」

「手料理。ごはん……」

「もうそろそろ現実を直視しろ」

 

ベシッと天パの英雄にデコピンを浴びせるもう一人の英雄。

 

何かと気苦労の絶えない番長。そして何処に行っても天然を発揮する怪盗。

 

デコボコのようでデコボコでない。奇妙なコンビは荒野を進み始めた。




ネコの亜人の性格は完全に独断と偏見で決めてます。ネコって自由気ままでツンツンで、たまにデレるじゃないですか。自分、そんなネコちゃんが可愛くて大好きなんです。それに、ありふれのキャラでツンデレなのって優花さんぐらいじゃないですか。折角なので増やそうとも思ってこんな性格になりました。

さて、ネコの亜人のお名前についてはもう少しの間募集期間を設けようと思います。候補は四つになりますので、差し支えなければアンケートにお答え頂けると幸いです。

ネコの亜人さんのお名前(随時更新)

  • ニュープ(New+Hope)
  • ホープ(Hope)
  • レーリス(ロシア語で自由)
  • ナディーツァ(ロシア語で希望)
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