命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強 作:Hetzer愛好家
さて、今回はネコの亜人ちゃん中心になります。
「レーリス。これからはそう呼んでよ」
ちょっと顔を赤らめながらもそうおっしゃるネコの亜人。いや、レーリスさん。
改めてじっくり眺めると、レーリスもまた美少女である。風呂に入った事により、真っ白な毛並み……ではなく髪の毛が眩しい。瞳は透き通るようなスカイブルー。フリフリと揺れる尻尾。可愛いと美しいが良い具合に混ざり合っている。
軽く頭を撫でようかと思ったが、ネコは気まぐれ者なのを思い出したので止めにした。彼女から催促されるまでは何もしない方が良いだろう。
特に、彼女は人に対して良い感情は持っていない。これから長い付き合いになるからには無理に刺激したくないのだ。
「ああ、よろしくな。レーリス」
「よろしくね」
「よろしくお願いします」
三者三様。まあ、今更堅苦しい挨拶は必要ないだろう。自分の名前を適当に名乗っておけば問題ない。
「俺は結城理……じゃなくて有里湊。訳あって今は偽名を名乗ってる。それで、こっちの黒髪が八重樫雫で銀髪がレイシェンだ」
「分かったわ。貴方のことは湊って呼べば良い?」
「好きにしてくれ。あ、プライベートでは普通に理で構わないよ」
まだ名乗り慣れてないので言い間違えた。外では気を付けてるのでまず有り得ないミスなのが救いである。
さて、一通り名乗り終えたところで今後の予定を話すことにする。懐から地図を取り出すと、三人が見えやすい位置で広げた。
「現在地はここ、ブルックの町だ。あまり長居は出来ないから、これから中立都市フューレン辺りにでも向かおうと思う。で、向かう前にライセン大峡谷の魔物を狩ってしまいたいんだ」
「素材集めね? フューレンに運んで換金するってことよね」
「その通り。それと、レーリスの戦闘訓練も兼ねようと思うんだ」
ピクッとレーリスが反応する。
「え、戦闘訓練? 私は殆ど戦えないけど……」
そんなことは分かっている。が、訓練をすれば誰であってもそれなりに戦えるようになる。これから先、一ミリも戦えないとなると話にならない。最低でも自衛は出来るようになって欲しい。
しかし、これまで外にすら出たことがなさそうなレーリスが戦えないのは当然。彼女が困惑するのは当たり前である。
が、この程度の事態は想定済みだ。
「これを君にあげるよ。使ってくれ」
「これは……?」
「手甲鉤だ」
ハジメから受け取った手甲鉤である。軽く爪に物体が触れただけで切り裂いてしまうほどの鋭さを持つこの武器は、戦闘経験が皆無のレーリスであってもしっかりと戦闘能力を底上げしてくれると信じている。
あとはネコという種族の特性を活かす事が出来れば良い。ネコってのは生物的には身体能力が高く、隠密行動も可能な種族だと思っている。一撃離脱に特化すればかなり強いだろう。
必要なのは実戦経験。そして勇気。この二つが揃えば何とかなる。
「訓練と言っても基本は実戦ばかりだよ。今から筋トレやら勉強やらを始める時間はない。なら、実戦経験を積んで慣れるしかないんだ」
「そ、そうね。でも……」
「悪いな、こんな事をいきなり言って。白状してしまうと、俺は国から追われてる身の危険人物なんだ。だから君を助けるのはかなり迷ったよ。面倒事に巻き込むのは気が進まないからね」
それでも、と俺は続ける。
見捨てられなかった。どうしても助けたい。そう思ったんだ、と。
同時に、救うなら最後まで守ることも誓ったと伝えた。どんなに絶望的な状況に陥っても。例え俺が死んでしまうとしても。君を、君たちを最後まで守り抜くと。
「君を死なせはしないしこれ以上傷付けさせもしない。約束する」
「っ、なにそれ……」
……何だかレーリスの目がウルウルしているような。いや、気のせいか。でも顔がほんのり赤くなっているのは間違いない。
あ、涙を流し始めた。泣かせたのは不可抗力だから責められる言われないはず。
しかし放置するのは流石にマズいので俺はレーリスの頭を優しく撫で回してやる。ピコピコと動くネコ耳がくすぐったい。
「信じてくれるかい?」
「貴方たちだけは……信じるわ」
顔を上げたレーリス。うん、良い瞳を持っている。彼女なら、きっと強く逞しくなれるだろう。力強い瞳を持っている人なら誰だってなれる。
もう一度、少し乱暴に髪の毛を撫でると俺は手を離した。話を進めなければならない。
だからそんなに残念そうな顔をしないで欲しい。気持ちが揺らぐ。
「コホンッ。兎に角、訓練をしないと話が始まらない。ライセン大峡谷は魔法が使えない場所だから、この際魔法なしの戦闘にも慣れることにしようと思う」
「私と理は問題ないと思うわ。でもレイシェンは……」
「良い機会です。八重樫雫さんにも負けないぐらいになれるようにします」
「ア、アタシも頑張るわ。足を引っ張らないようにする」
意気込みは全員バッチリだ。これならお互いに高め合えるだろう。良い機会なので、俺も剣術を磨くことにする。
その後、俺は全員のステータスの現状を確認するためにステータスプレートを覗くことにした。奴隷の身でありながら、レーリスもしっかりとステータスプレートを所持していたのは幸いである。
レーリスのステータスは以下の通りだ。
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レーリス 15歳 女 レベル:5
天職:暗殺者
筋力:15
体力:30
耐性:???
敏捷:100
魔力:10
魔耐:20
技能:硬爪・伸爪・壁走・夜目・超嗅覚・気配感知・気配遮断・痛覚遮断・言語理解
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名前の欄は空白になっていたので俺が入力しておいた。まだまだ若いのにあれだけの不幸を味わっていたと分かり、俺の心は締め付けられた。
さて、彼女の能力値で最初に目を引くのは天職欄だ。物騒にも暗殺者とある。バリバリの戦闘天職だが、そもそもこの世界では天職持ち自体が珍しかったはずである。
彼女曰く、
「アタシね、珍しく戦闘天職持ちの亜人だったのよ。活かせた場面は一度もないけどね」
との事だ。何処となく忍者のような技能が揃っているのは天職と生まれた種族が大きく影響しているのだろう。きっと、雫の家族が知ったら大喜びで八重樫流を伝授するに違いない。
次に目が行ったのは耐性値だ。まさかの非表示である。これは技能の痛覚遮断である程度予測が付く。耐え難い痛みに、彼女の脳は痛覚を遮断する事で精神を保っていたのだろう。その結果、身体も精神も凌駕した痛みを受け続けるという結果になった。
それによって、ステータスプレートを持ってしても彼女の耐性値を示すことが出来なくなってしまった……と言うのが俺の見解である。
亜人という種族の特性上、魔法適性は皆無に近い。しかし、それを補えるだけの能力は揃っている。これは何とかなるだろう。
同時に、彼女が目指すべき能力の平均値や戦闘スタイルもかなり纏まった。後は一つずつ実践していけば問題ない。
ズバリ、目指すのは一撃離脱の切り込み隊長だ。優れた索敵能力を併用することで誰よりも最初に手痛い一撃を与えることで敵を混乱させ、俺たちを勝利にグッと近付けさせる。そんな戦闘スタイルである。
考えをそのままレーリスに伝えると、納得した様子で「頑張ってみるわ」と答えてくれた自身の能力に合った戦い方を覚えてくれたら、俺はそれだけでも満足だ。
ちなみにだが、レイシェンのステータスは以下の通りである。
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レイシェン ⁇?歳 女 レベル:40
天職:神の使徒
筋力:8000
体力:8000
耐性:8000
敏捷:8000
魔力:8000
魔耐:8000
技能:分解・全属性適性・双大剣術・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・魔力変換[+体力][+治癒力]・高速魔力回復・生成魔法・言語理解・記憶喪失
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レベルの上がり方が遅いと感じるかもしれないが、これは単にレイシェンが徐々に力を取り戻しているだけだからなのではないか? と俺は睨んでいる。
まあ、正直に言ってしまえばレベルなんて物は見なくても良かったりする。必要なのは実戦での強さだ。大迷宮で相当の戦闘経験を積んだレイシェンは数値以上の力を発揮可能と言っても過言ではない。
レイシェンは最近になって双大剣術を思い出したと言っていたので、ライセン大峡谷では双大剣術を磨くのが良いだろう。
確認を終えた俺は、黙って魔力駆動二輪を取り出した。目を白黒させるレーリスにはヘルメットを被せ、痩せ細って軽い彼女を抱き上げて後ろに座らせた。
魔力を流し、静かに魔力駆動二輪を発進させる。ライセン大峡谷に入ったら長時間は動かせないだろうが……まあ良いか。
新しくパーティーに加わったレーリス。そしてこれまでの頼もしい仲間たち。
絶望しか見えなかった旅路であるが、少しだけ光が差した。そんな気がした。
候補として出した名前は今後使う……かも。