命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強   作:Hetzer愛好家

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モチベがまた死にかけてますが何とか更新です。


ライセン大峡谷にて

「はあっ、はあっ……こ、これでトドメよ!」

「ピギィ!?」

 

漸く鳥形の魔物を追い詰めると、アタシは鉤爪で魔物の胴体を抉って絶命させた。

 

戦いにまだ慣れてないからか、空を自由に動き回る鳥形の魔物相手ではどうも苦戦してしまう。最初の奇襲で倒せなければ、後は泥臭く地道に戦うしか方法がない。

 

それこそ理みたいに異能を使えたり、雫のように華麗な剣術を扱えるなら話は別だ。一瞬で戦いは終わってしまうだろう。レイシェンだってアタシみたいに弱くない。理の言う「まだまだ」は、アタシからしたら強すぎるレベルだ。

 

訓練を始めて一週間。感じたことのない筋肉痛に悩まされながらも戦いの基礎を教えてもらい、今日から実戦に移った訳だが……正直に言って己の無能さに嫌気がさす。

 

「んもぉー! アンタたち鬼教官すぎるでしょおおおお!」

 

なので、私はウガーッと理たちに八つ当たりしてみることにする。

 

「まあまあ、落ち着きなさい。今日の訓練はもう終わりだから」

 

しかし、アッサリと雫によってそれは流されてしまった。肩透かしを食らった気分だ。

 

不満顔を浮かべるが、内心では敵わないことを知ってるので絶対に逆らえないと思っている。口答えも呑み込んだ。

 

「理が一足先に戻って夕食の準備をしてるわよ。それだけ動けばご飯も美味しくなるわ」

「それは……間違ってないわね。あの人の料理が上手なのもあるけど、沢山動き回ってるからお腹がとても空くのよね」

 

あの人の料理は本当に美味しい。一口食べればその日の疲れを思わず忘れてしまうぐらいには。雫に聞けば、理は料理だけではなく基本的には何でも出来てしまう天才だと言う。

 

それは、付き合いの短い私でも感じている。

 

戦えば百戦錬磨の戦士の如く大奮戦。難しい問題に対しても常に最適解を導き出す。本当に人間なのかと疑う程に頑強な意志。自然と惹き付けられるカリスマ性。

 

何を取っても彼は天才だ。これは間違いない。

 

ちなみに昨日は「ちょっと面白い方法を見つけた」とか言って新戦法を考案していた。

 

サッパリ理解が出来なかったので雫に尋ねてみたが、彼女も全くと言っていいほど理解してなかった。彼の言葉をそっくりそのまま使うと「ペルソナの力を降魔させる」らしい。

 

「魔力消耗を抑えられるし、何より奇襲に使いやすいんだ」との事であるが、アタシにはサッパリである……。

 

しかし、ペルソナとやらを使用するときは大なり小なり彼の背後に幽霊のような物が現れていた。それが彼の言う「降魔」になると幽霊は一切現れず、彼自身が魔法を使っているように見える。

 

それしか分からなかったが、なんにせよあれだけ強かった理が更に強くなったのは明らかである。彼と肩を並べて戦える日は来るのだろうか。

 

悶々としながら拠点に戻ると、理は既に夕食を作り終えて待っていた。レイシェンも料理を皿に装っている。

 

「お帰り。今日はハンバーグだよ」

「あら、ハンバーグは久しぶりね。最後に食べたのは魔物肉のハンバーグかしら?」

「あれはあれで美味しかったですが、今回の料理は一味違いそうです」

 

サラリと魔物肉を食べていたことを明かされた。彼らの過去は簡単に話されてはいるが、まだまだ明かされていない事柄も多い。夕食の時間に少しずつ話してくれるので、アタシはどんなに辛い訓練であっても夕食だけは必ず食べるようにしている。

 

特製のソースを肉汁が溢れている肉の塊に掛け、フォークで程よい大きさに切ってからパクリと口に放り込む。途端に溢れる肉の旨味。そして絡み合う濃厚なソースの味わい。

 

毎度の料理が美味しすぎて、アタシの脳内は常に食事レポート状態だ。

 

「レイシェンの様子はどうなの?」

「良い感じだ。と言っても、レイシェンは忘れた記憶を思い出してるだけだからそこまで時間は必要ないと思うけどね」

「あら、それなら最終的には私と一騎打ちで勝てるようになって欲しいわね」

「あ、おい。あまり無茶言わないでくれよ」

 

やたらと距離感が近いこの二人はどうやら恋人関係らしい。聞けばかなりプラトニックな関係だそうだ。キスしか済ませてないと聞いたときは大層驚いた。

 

少しだけ。ほんのちょびっとだけ悔しいと思ってしまうのは、きっとアタシも……。

 

ううん、考えないことにしよう。ただ虚しくなるだけだから。

 

……だから、アタシは夕食を掻き込むように食すとネコのように理の膝の上に頭を乗せた。このくらいは許して欲しい。

 

「ん? ……おお、どうした?」

「別に。こうしていたいだけよ」

「そうか」

 

追求することなく黙って頭を撫でてくれる理が、アタシは好きだ。

 

劇的な場面で知り合い、更には心を救われたアタシは少なからず彼に好意を寄せている。しかし、アタシよりも付き合いの長い雫と恋仲であるなら邪魔はしたくない。と言うよりは、付け入る隙がないといった方が良いだろうか。

 

こうやって、たまにで良いから甘えさせてくれたらアタシは満足だ。

 

彼の手が心地良くて耳がピコピコ動く。尻尾もパタパタと揺れて理の背中をくすぐる。居心地良さから時折「んっ」と声が漏れて表情が緩んでしまう。

 

「ちょっと甘すぎないかしら?」

「妬いてるならまた後でな」

「……もうっ」

 

近くでイチャイチャされるのは流石に堪えるわね……。

 

八つ当たりとして甘噛みでもしましょうか?

 

──────────────────

 

「ふぁあ……眠れないな、相変わらず」

 

雫の相手(長時間の膝枕をした)を終え、彼女含めて三人が眠ったのを確認した俺は拠点から出て外気を胸一杯に取り込む。

 

夜ともなれば魔物の動きも陰りを見せる。夜行性の魔物も当然ながら存在するが、数がそこまで多くないし何より此処に生息する魔物は漏れなく弱い。奇襲されても何とかなるだろう。

 

日本に住んでいた頃と何も変わらない星空を眺めると、俺はふとこの世界に転送されてからそれなりに時間が経過したことに気が付いた。

 

いや、それよりも雫と出会ったことが随分と前な事に驚く。既に年単位で時が経過している。

 

「そうか。彼奴らを殺したのも、もうかなり前の話なんだな」

 

未だに消えぬ、檜山たちを殺した際に味わった奇妙で不気味な感触。絶望しきって崩れていく檜山の身体。

 

直接は見てないが、全身が一瞬で燃え尽きて認識するまでもなく死んだ近藤の悲鳴。繊維という繊維がボロボロと崩れ落ちて嬲り殺しにされた斎藤。聞こえなかったはずの断末魔の声が未だ耳の奥にこびり付いて離れない。

 

目を閉じて寝ようとすれば必ずあの日の光景が広がる。俺が眠れたと感じるのは、疲弊が最高潮に達して気絶するように意識を失ったときだけ。

 

大凡マトモとは言えない俺の睡眠事情。きっと、これは本物の神様が俺に与えた罰なのだろう。人をこの手で殺めた罰だ。

 

雫は困ったような笑顔を浮かべながらも肯定してくれた。レイシェンは何も言わずに傍に立ってくれた。一部のクラスメイトは自分の過ちに気が付き、俺の味方をしてくれた。

 

だが、それでも俺の罪が消えることはない。

 

オルクス大迷宮に突入してからの凡そ一週間弱は、誰にも素振りを見せなかったとは言え何度も生きる意味を自問自答した。人殺しがこうしてのうのうと生きても良いのかと。

 

別世界の日本に召喚された時に一度、生きる意味を見失って自暴自棄になったこともある。様々な理由があるが、一番大きかったのは別世界であるが故に大切な仲間たちと二度と会えないと思い込んだことだ。

 

余りにも自暴自棄になったからか、長らく出てこなかった「どうでもいい」が考える前に口にしていたこともあった。

 

トータスに召喚される少し前に、雫を一人にしないためにも絶対に生きると決めた御蔭で何とかその時は乗り切れたのだが……。

 

今回はどうしても振り切れない。いや、振り切ったらいけないだろう。

 

「何であの時は抑えられなかったんだろうな」

 

俺の疑問に答えてくれる者は居ない。憎たらしい程に綺麗な星空に、俺の疑問は虚しく吸い込まれていった。

 

ぼーっと星空をどれだけ眺めていただろうか。ふと気が付いた時には、さっきまで低い位置に輝いていた一等星が西へ傾き始めていた。

 

「……歩くか」

 

気を紛らわせるためにも俺は峡谷を歩く。時折通り過ぎる魔物を無視して空を見上げながら味気ない峡谷を歩いていると、何だか虚しい気持ちで一杯になってしまった。今日はどうやらセンチメンタルな日らしい。

 

はあ、やれやれ。そんな感じで息を吐いて目の前を見る。そして俺は目を見開いた。

 

二度。そして三度。それだけでは足りず、俺は何度も見返す。

 

俺の視線の先。そこには、壁を直接削って作ったのであろう見事な装飾の長方形型の看板があり、それに反して妙に女の子らしい丸っこい字でこう掘られていた。

 

〝おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪〟

 

「……」

 

目を思いっきり見開く。鬱屈とした気分が一瞬で吹き飛んだ。

 

〝!〟や〝♪〟のマークが妙に凝っている所が何とも腹立たしい。

 

……いや、それよりも重要な事がある。苛立つのはもっと後にしよう。

 

これが嘘ではないのであれば大迷宮の入り口と言うことになる。扉らしき物は見当たらないが、きっと何処かに隠し扉があるのだろう。

 

こんな軽い感じの口調ではとても信じられないのが普通なのだが、今回は少し違う。それは、〝ミレディ〟という部分だ。

 

〝ミレディ〟その名は、オスカーの手記に出て来たライセンのファーストネームである。ライセンの名は世間にも伝わっており有名ではあるがファーストネームの方は知られていない。故に、その名が記されているこの場所がライセンの大迷宮である可能性は非常に高かった。

 

〝解放者〟という仰々しい名を使っているのだから、もっと厳かな人物を想像していただけに少々ショックを感じているのはさて置く。

 

「……まあ、明日で良いか。入るのは」

 

一瞬俺だけで入ろうかとも思ったが、レーリスの訓練の集大成としても使えそうだなと思い直すことにした。

 

魔法をホイホイ使えない環境なのは間違いないためかなり厄介な迷宮攻略になりそうである。

 

が、まあ何とかなるだろう。

 

俺は翌朝迷わないようにマーキングをしながら拠点に戻るのだった。

 

拠点に戻ったら既にレーリスが起きていた。何処に行っていたのかは言及されなかったが、何も言わずに俺の膝の上に収まった。そしてそのまま、レーリスは二度寝を始めた。

 

別にこの状態が嫌いなわけではないが思っていた以上に甘えん坊だな……。




次回、ライセン大迷宮。かなり重要な部分なので何とかグダらずに行きたいところですが、更新が滞ってしまったら申し訳ないです。
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