命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強 作:Hetzer愛好家
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「……あ、あった! 見つけたわよ理!」
「近いって」
受験番号を探していた雫が喜びを全開にして俺に飛びつく。それとなく抵抗しながらも、しかし彼女の事を受け入れて俺も自分の受験番号を見つけ出し、合格したことを知った。
俺と雫が受験した高校は偏差値がそれなりに高い所だ。別に俺は問題なかったのだが、雫はそれなりに苦労したこともあって随分と喜んでいる。
ちなみに香織や光輝といった知り合いもこの高校を受験して合格したらしい。八重樫道場から大勢が進学校の受験に合格したという情報は既に雫の両親から近所に伝わっているだろう。
「……で、まだ離れないのか」
「あ、え、そ、その……ごめんなさいね。嬉しくて、つい」
「別に怒ってないけど、流石に恥ずかしい。というか、俺に抱き着く回数が増えたな」
「だって……居心地良いから……」
「……そうか」
周囲からの視線が痛い。だが、雫は一向に離れようとしないので俺は早急に今後の対策を考えないといけないなと思うのだった。
所構わず抱き着かれたら俺の精神が死ぬ。ついでにお互いの名誉も危なくなる。そんな事態だけは全力で回避するつもりだ。
……回避、出来るよね?
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高校。それは全世界に棲まう未成年の人間が、青春を謳歌する事を夢見る場である。そして、大人と子供の丁度中間という非常にややこしい立ち位置になるという難しさも秘められている。
そんな生活を送っていると、精神が不安定になったり様々なトラブルに巻き込まれたりする。その工程ですれ違いや別れと直面することもあるが、それらを経験することで人は強くなっていく。
……と、まあ大人っぽく語ってみたが生憎なことに俺も子供である。それでも入学から一年が経過したので少しは大人に近づいただろうか。
とはいえ高校生活を送るのはこれで二回目だ。特に目新しい事柄は見当たらないし、授業も以前受けた物と何も変わらない。最早勉強する必要すら感じない。
事前に何を勉強するのか知っていることもあり、俺の成績は常にトップである。通知表を見れば全学期を通してオール5だ。剣道部にも再び所属し、気がつけばエースとして先輩に期待されるまでになっていた。
ちなみに成績では次点で光輝が来る。通知表の数値自体は同じだが、全てのテストの点数は俺の方が上だ。剣道は相変わらず正面からの戦闘は敵わないし、何より女子からの人気は彼の方が高いので全てを総合して見たらトントンと言ったところか。
光輝の人気っぷりは凄まじい。廊下を歩けば黄色い歓声が上がり気絶する者まで現れ、体育の授業でも大活躍している。学校のアイドルと言っても差し支えないだろう。
アイドルと言えば、香織と雫の人気も凄まじい。いつの間にか“二大女神”なんて言われている。雫に至っては後輩たちが寄せ集まって“ソウルシスターズ”なんていう変態集団にまで追いかけられている。彼女が辟易気味なのは内緒だ。
ついでに俺に抱き着く回数が増えたのも内緒である。
俺はと言うと、基本的にはイヤホンで音楽を聴いているため、外界がどうなっているのか基本的には分からない。ただ、昼ご飯の時だけは雫や香織と一緒に食べるぐらいである。二大女神と一緒に居ても変な目で見られる事がないのはありがたい。
……何なら、光輝のように表立ってはいないが裏ファンクラブなる物があると雫から聞いてる。流石にそれは嘘だろう。嘘だと信じたい。
しかし、俺の隣に座る奴に向けての視線は非常に重苦しく痛々しい。
「うっわあ……今日も視線が怖いよ」
「え、南雲くん顔色が悪いけど大丈夫?」
「誰のせいだと思ってるんだ……?」
「香織は天然なところがあるからね……南雲くんには悪い事をしたかも」
……香織や雫。そして俺と一緒にご飯を食べている“南雲ハジメ”という男子に向けて、毎日こうしていると狂気的とも言える殺意が籠った視線が飛来してくるのである。
ハジメは所謂オタクという奴らしく、クラスメイトからの目は決して良いものではない。というか、マイナス寄りだった好感度が「二大女神と普通に話せている」という事実が好感度をぶっちぎって憎悪の目を向けられるようになってしまったのである。
だが、先入観に囚われて話す人が少ないだけで、ハジメは聖人とも言える心の優しさを持っている。そして、同時に鋼のようなメンタルの強さも伏せ持っている。
「……なあ、ハジメの食事って何時もそのゼリーだよな」
「母さんは夜遅くまで働いているからね。それに僕はそんなに食べないし……」
「だとしても少ないだろう。ほら、これあげるから」
某十秒でエネルギーチャージ出来るゼリーしか昼に食べていない……いや、飲んでいない? まあ良いか。兎に角、量がどう見ても少ないので俺は弁当から包装されたチーズとラップに包まれたおにぎりを一つ手渡す。
すると、それに便乗して香織も動き出した。
「そうだよ! ちゃんと食べないと倒れちゃうよ! 私のお弁当も分けてあげるね!」
「あー……地雷踏んだな」
地雷がばら撒かれた大地でタップダンスを踊るかのような香織の発言に俺はむしろ感心する。彼女はきっと、無自覚ながらハジメの事が好きなのだろう。
しかしたちが悪いのは、ハジメに向けられている憎悪と嫉妬の視線にも気が付けていない事だろう。善意から動いているだけに何とも言えない。
ハジメの今にも悲鳴を上げたいという表情に対し、俺が出来る事はないので黙々と箸を進める。光輝や龍太郎がハジメに何か言っているらしいがどうでもいい。
食事を終えて弁当をカバンに放り込み、何んとなしに中に入っている召喚器に手を触れた。
その時であった。
すぐ近くで悲鳴が上がったのである。
何事かと思い、俺は咄嗟に召喚器を腰のホルスターに納めて声がした方向を見やる。場所は光輝の近く……だったか。
そして、俺自身は凍り付いた。
光輝の足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れたからである。金縛りにでもあったかのように輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを注視する。
その魔法陣は、急激に光を増していく。そこまで来て漸く現実に帰り、すぐにでも教室を出ようと思ったが、その行動は一歩遅かった。
すぐに光が限界まで爆ぜ、俺の視界を悉く白亜に塗り潰したのである。目を開けるなど到底不可能なぐらいの光に、俺も例外なく目を閉じて両腕で顔を覆った。
すると奇妙な浮遊感が俺を襲う。地面には足を確かに付けているのに、フワフワと浮いているように感じるのだ。目を開けられないので何が起きているかは分からない。が、間違いなく教室から別の場所に移動している。それだは明確に分かった。
言葉には出来ない恐怖感が喉からせり上がって来るが、グッと飲み込んで浮遊感が消えるのをジッと待つ。
どれぐらいの時間が経過したのだろうか。ふと気が付けば、俺を襲っていた浮遊感は消えていた。目を閉じても分かるぐらいの光というのも感じられない。
ゆっくりと俺は目を開ける。そして、周囲を呆然と見渡した。
まず目に飛び込んできたのは巨大な壁画だった。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が描かれていた。
背景には草原や湖、山々が描かれ、それらを包み込むかのように、その人物は両手を広げている。美しい壁画であり、素晴らしいとも分かる。しかし、何故だか薄気味が悪い。
よくよく見渡せば、随分と広い空間に俺は居るらしい。いや、俺たちか。あの時、教室に居た人間は全員この場に居る。
大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間の最奥にあるらしい台座に立っている、という事は分かった。問題は、俺たちの周りで祈るような態勢で目を閉じている老人たちだ。
その中でも特に豪奢な服を身に纏った老人が前に進み出た。他のクラスメイトも全員、自分が置かれている状況を飲み込んだのか茫然自失としている。
そんな中、俺だけは召喚器をこめかみに当てて何時でも引き金を引ける準備を整えた。この際、クラスメイトの前でペルソナの力を使うのも厭わない。そう決意した。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておますイシュ『ペルソナァ!』なっ?!!」
ガキイン!!!
何が起こったのか。それを正確に把握している訳ではないが、それでも本能が危険だと警鈴を鳴らしたので俺は迷わず引き金を引いた。
召喚に対しての容赦は一切ない。その表れとして、出て来たのは最強戦力の一角である“ジークフリード”である。
老人は目を見開いて腰を抜かしている。他の者も同じだ。動けてすらいない。
「ジークフリード、やれ! “空間殺法”!!」
ジークフリードが長刀を一振り。そうすると、無数という言葉では足りない量の剣跡が現れ、その一瞬後に実態の一撃が老人たちの毛や服の裾の一部を斬り落とした。しかし、誰一人として血は流していない。
これは警告射撃みたいな物だ。次はない。
「……今から質問する事を嘘偽りなく答えろ。良いな?」
自分でも「こんな声が出るのか」と思う程に冷たい声が突き刺さったのか、老人たちはコクコクと壊れた首振り人形みたいに頷くのだった。
あっという間に本編突入です。ちなみに檜山はまだ登場してませんが、理が「どうでもいい人間」と割り切ってしまってるので存在感を薄く感じてます。
オルフェウス、ジャックフロスト、ノルンと続いて召喚されたのはジークフリード。次は誰なのか予想してみてください()