命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強 作:Hetzer愛好家
朝にハーメルンの小説家さんをTwitterでフォローして、そのまま学校に出かけて下校時の電車でお気に入り登録者数を見たら200人近くまで跳ね上がっていてビックリしました。
反面、ペルソナが現実世界でも平然と使えることが気に入らない人も居るらしいですが……ちょっと待って欲しいですね。雫の両親にペルソナが使えることがバレたシーンに割と重要な事が描いてあるんですけどねえ……(どの面下げてるんだ)
「最初の質問だ。何故、俺たちをこの場に集めた?」
ジークフリードを一度消して、ドスの利いた声で老人に尋ねる。未だ腰を抜かして立てないのか、老人は数秒間口をパクパクさせていた。が、俺が一睨みすると慌てて事を説明し始めた。
「あ、あなた方を召喚したのは〝エヒト様〟です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと」
「滅ぶ? この世界にも滅びがやって来るのか」
脳裏に浮かぶのはとある同級生の姿。そして、強大にして絶対の力を持っていた“滅びを伝えるだけの存在”だ。
しかし、俺の予想は外れたらしい。老人が口にした話を要約するとこんな感じだ。
まず、この世界には人間族、亜人族、魔人族が存在しているらしい。そしてこの内の人間族と魔人族が長年戦争を繰り広げていた。
魔人族は数こそ少ないが個人の力は強いらしく、逆に人間族は数が多いが個人の力は弱めの種族らしい。ここ数百年の間はパワーバランスが均等であり、泥沼のような戦争を続けていたそうだ。
しかし、ある日そんな均衡が破られた。魔人族が、強力な力を持っている野生動物の“魔物”を使役し始めたと言うのだ。
「魔物と言うのは通常の野生動物が魔力を取り込んで変異した物です。それらは本能のままに動き回るので、これまで魔人族が使役出来たとしても精々二匹が限界だったのです」
「……それが、突然その魔物を大勢使役出来る魔人族が現れたことで均衡が破られた。そういう事だな?」
「ええ。数というアドバンテージが消え去った我々人間族は滅びの危機に瀕しているのです。貴方たちには魔人族を撃ち滅ぼすことで、どうか人間族に平穏をもたらして欲しいのです」
どうやらニュクスが飛来するとかではなくて安心した。ニュクスが降って来るから助けてくれ! 何て言われたら速攻で断るところであった。あんな化け物をもう一度相手するなんてまっぴらごめんだ。
しかし、随分とまあ自分勝手な理由で召喚されたものだ。
この老人の言う〝エヒト様〟とやらは、きっとこの世界の人間族が絶対視している唯一神なのだろう。その神とやらが神託を寄こしたからと言って、それに十どころか百すらも従おうとする老人たちはどうかしている。
……まあ、長くなったがとても簡素に伝えるとこういうことだ。
俺たちに戦争をしろ、と。
つい昨日まで血とは無縁だった俺たちに、殺人をしろ。そういう事か。
「……そう簡単に納得出来ると思っているのか? 魔人族は一方的に悪いというような言葉回しだったが、要は人殺しをしろということだろう?」
俺の言葉に、元から凍り付いていたクラスメイトの顔が更に凍り付いた。そして、ザワザワと隣に居る人間に「どうする?」だの「嘘でしょ?」だの様々な言葉を交わしている。
「まあ、そういう事になりますな」
「断ると言ったら?」
「お言葉ですが、今の貴方たちはこの世界から出る事は不可能ですぞ。それでもお断りするのですかな」
「出れない、だって? 俺たちは帰れないのか」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」
マジかよおい。ふざけんな。
……取り乱した。取り敢えず、現状の帰還は叶わない事が判明した。まあ、言われてみればそう簡単に世界を超えるなんてぶっ飛んだこと、ホイホイ出来るとは思えない。聞くのが愚問だったか。
しかし、冷静で居るのは俺だけらしい。いや、よく見たらハジメも比較的冷静か。だが、他のクラスメイトは一気に大パニックに陥った。
口々に騒ぎ、それぞれが頭を抱えたり訳の分からない言葉を喚いたり。俺が何を言っても彼らには届かないだろう。
「ハジメ。君は……」
「どうして冷静なのか、だって? そう見える?」
「……違うのか?」
「うん、本当は怖いし喚きたいよ。でも、何て言うか……予想出来ていたというか」
ハジメ曰く、帰れないという事実は最初から何となく察していたらしい。こんな展開は彼の好きな漫画や小説で見た事のある展開らしい。
それ故か、恐怖はあってもそこまで混乱はしていないらしい。
「……逞しいな」
「そんな事ないよ。 ……それよりも、あの豪華な服を着ている人は危ない」
「やっぱりか」
「この集団で一番力があるのは誰なのかを見抜いているみたいだ。天之川くんの顔を見てよ。あの人の話を聞いてから、怒りと悲しみがごちゃ混ぜになった表情が張り付いている」
なるほど、確かに光輝の表情は分かりやすいぐらいに歪んでいる。それと同時に、何かを決意したかのような表情も浮かべている。
……これは碌な事が起こる気がしない。
あの、正義感とご都合解釈の塊である光輝の事だ。きっとこの世界を救うだとか自分が全員を助けて見せるとか思っているに違いない。
「みんな! ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人たちが滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれないだろ?」
……やはりと言うべきか。この状況で、一番言ってはいけない事を彼は言ってしまった。
絶望がひしめくこの場で、光輝は根拠はないが有り得そうな希望に近い何かを見出してしまったのである。そしてそれを、絶望真っ只中のクラスメイトにも教えてしまった。
「こ、こら! そんな簡単に戦争に参加するなって言ってはいけません!」
「先生……」
そんな中、一人声を上げる女性が居た。小さな体を目一杯張り、腕をブンブンと振り回しながら抗議の態勢を取っている。
彼女の名は〝畑山愛子〟である。またの名を「愛ちゃん先生」だ。先生とあるように、彼女は俺たちが昼食を取る前の授業を展開しており、この場において唯一の大人だ。
「戦争するというのがどういう事なのか本当に分かっていますか!? 人殺しをするんですよ! 授業でも戦争がどんなに悲惨な物なのか教えたでしょう!」
「で、でも! この世界の人が困っているのに、それを見捨てるなんて!」
「……どうでもいいじゃないか。この世界の事なんて」
「何だって!? 結城、今なんて言ったんだ!」
「あ、しまった」
本心がポロっと外に出てしまった。俺としては、何の関係もないこの世界を救うなんて気は一切ないのだが、それを口に出すべきではなかった。
だが、口にしてしまった以上は仕方がない。俺は俺自身の意見を貫き通す事を決めた。
「どうでもいいと言ったんだ」
「結城、ふざけてるのか? 冗談も大概にしろ!」
「大真面目だ。困ってる人を全員助けに行ったら身が持たない。というか、そもそもこの世界と俺たちは何の接点も関係もないんだぞ。わざわざ戦争に参加する必要性が感じられない」
「お前はっ! 死んでしまうかもしれない人が大勢居るのに見捨てるのか!?」
「逆に、帰る方法は神頼みで生き残れるかも分からない戦争に参加するって? その神様とやらも本当に帰してくれるか分からないのに? それこそおかしいだろ」
食ってかかる光輝に対しても俺の態度は変わらない。
別に俺は冷徹漢ではない。困っている人が居るなら助けたいとは思うし、無駄に命が失われるのはなるべく防ぎたい。世界が滅びるしか道が残ってないのであれば、もう一度俺は全力を尽くす心づもりもある。それこそ、ニュクスが飛来してきた時ぐらいには頑張るつもりだ。
だが、今回ばかりは話が違う。俺たちが立っているこの地は別世界の地だ。元居た世界で戦うのとは訳が違う。それに、魔人族を撃ち滅ぼすならそれ相応に時間が必要だ。一年や二年で終わるかと問われたら、俺は首を横に振る。
よしんば魔人族を絶滅させたとしても、それでエヒトが俺たちを元の世界に帰してくれるかは分からない。そうなると、一生帰れない可能性も視野に入れないといけないのだ。
勝手が分からない以上は下手に行動できないが、神頼みするよりは自分で帰還方法を探すのが確実だ。正直言って、戦争に参加する時間が勿体ない。
「俺たちには大きな力があるって言ってただろ? さっきから妙に力が漲っていると思わないか?」
「まあな。それで、何だ? 力があるから戦争に参加するって?」
「そうだ! 俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
「ああ、そうか。なら勝手にしてくれ。俺は今のところは不参加の方向で考えてるからな」
話すだけ無駄だと悟ったので、俺は投げやりに「好きにしろ」と言った。
自分なりに忠告はしたつもりだ。それでも戦うならば、後は勝手にやれ。ただし死んでも俺は弔いの言葉を送るつもりはない。
これまでしてきたため息の中でも特大の物を吐き出すと、俺は老人に吐き捨てるように言葉をかけた。
「戦うなら何時までもこの場に留まっているのはどうなんだ?」
「そうですな。この聖協会本山がある【神山】の麓の【ハイリヒ王国】にて受け入れ態勢が整っています。そちらへ案内いたしましょう」
手の回るのが早い事で感心した。皮肉気に。
光輝は未だ、震えている女子に力強い言葉を投げかけて自分側に付かせようとしている。その様子を見て、再度特大のため息を吐いた。
完全な余談ですが、私の担任の先生がアイちゃん先生って呼ばれてるのが途轍もない親近感を覚えています。まさか、私も異世界に……なんて妄想に耽ったり。