命の答えを得た最強のペルソナ使いは異世界でも最強 作:Hetzer愛好家
マジでビックリしてますが、同時にめちゃくちゃ嬉しいです。本当にありがとうございます!
前半は何時も通り結城さん視点で後半は別人物の一人称視点です。
追伸:週間ランキング入りもしてました。マジっすか()
翌朝目が覚め、欠伸をしながら裏庭に出ると何故だか人だかりが出来ていた。
何事かと思って近づくと、そこにはつい昨夜に殺した(と思っていた)ゼクストが倒れてた。
顔に出しこそしなかったが、俺は内心でめちゃくちゃ驚いた。完全に死んだとばかり思っていたのだから当然ではあるが、それでも驚いた。
……そういえば、ゼクストは神の使徒と名乗っていた。周りを見渡すと聖教会関係の人間は見当たらないので人だかりの割にはそこまでの騒ぎになっていないが、あの老人たちに見つかったらきっと厄介なことになる。
現在、ゼクストの周りに群がっているのは殆どがクラスメイトだ。そして、ゼクスト自身に触れているのは香織である。どうやら傷を治していたらしい。魔力枯渇寸前だったのか、肩で荒い息をしているが、それでもゼクストの傷は大体が塞がっている。流石だ。
……なんか、改めて見るとゼクストの容姿って凄まじく整っている。神の使徒だなんて言ってたから、きっとエヒトに作られた存在であろう。それ故に整った容姿をしているのかもしれない。
「白崎、大丈夫か」
「ゆ、結城くん。うん、私は大丈夫だよ。でもこの人が……」
「呼吸はしてるみたいだから、きっと何とかなる。目を覚ますまでは俺が見てるから、後は任せてくれ」
「分かった。よろしくね」
下心からゼクストを引き取った訳ではない。脳天にあの巨大な琴が直撃したこともあって記憶が何処まで残っているのかは定かではないが、それでも覚えている範囲で話せることを話して欲しいのである。
それに、此奴と俺の関係を知られるわけにはいかない。今知られては少々面倒くさい事になる。
特に詮索することもなく俺にゼクストを託してくれた香織に感謝しつつ、俺は彼女を背負って自分の部屋に運んだ。
ゼクストをベッドに寝かせると、俺は椅子に座って彼女を眺めながら思考を巡らす。
「神の使徒、か。エヒトが何者なのかは分からないけど……碌な奴ではなさそうだな」
人知れず零れた俺の言葉。まあ、いきなり俺たちを異世界に召喚したと思ったら次には戦争を強要する奴のことだ。元より信用はしていない。
ただ、どう考えてもイレギュラーな力を持っている俺を抹殺するために、召喚から日が浅いのを無視して強力な神の使徒を送り込んだことを鑑みると、かなりの小心者でワガママなのだろうと推測できる。自分がナンバーワンでないと我慢できない者とも言えるため、なんにせよ迷惑極まりないと言えるだろう。
「……奴は、ペルソナの力を知ってるのか? いや、知っていたら神の使徒のような反応は有り得ないか。だとしたら、単純に俺を消そうとして、今回は小手調べで三体だけ送ったのか?」
様々な憶測が浮かんでは消えていく。文に起こせと言われたら、原稿用紙五、六枚ぐらいは余裕で書けるだろう。
そして憶測が浮かぶ度、エヒトに対する不信感は強く大きくなっていく。
そうして考えに耽っていた事で、俺はゼクストが目を覚ましたのに気がつかなかった。ゼクストが目を覚ましたと分かったのは、彼女が俺の服の裾を弱々しく掴んだからである。
「……あ、起きたのか」
顔色が少し良くなり、虚ろな目も多少は改善されたゼクストを前にそんなことを言う。
「はい。貴方は……」
「記憶はないのか? 俺は君にしっかりと名乗ったはずだぞ」
「……すみません。何も覚えてないんです。生まれた場所も、私の存在理由も」
目を伏せるゼクスト。その言葉に偽りは見えない。聞きたいことが沢山あったが、記憶喪失なら無理に聞き出すことは出来ない。
今すぐこの場で抹殺する事も考えたが、戦闘意思が見受けられない以上は手を下す必要はないだろう。
「記憶がないなら仕方ないな。もう一度、名乗るとしよう」
「はい、ありがとうございます。それと、出来るなら私の名前も教えて欲しいです」
「そうか、分かった。まず、俺の名前は結城理だ。好きなように呼んでくれ。そして君の名前は……」
ゼクスト。そう言おうとして、止めた。ゼクストと言うのがエヒトとか言うクソみたいな神から与えられた名前なら、新しい名を与えた方が良い気がするのだ。
暫しの間、思案した後に俺は答えた。
「君の名前は、“レイシェン”。レイシェンだ」
「レイシェンですか」
「そう、レイシェンだ」
レイシェンはドイツ語で“笑顔”を意味する。あまりにも鉄面皮なゼクストが、心から笑えるようにと祈って名付けた。
彼女は特に反応を示さない。「それが自分の名前なんだ」としか思っていないのだろう。元から無いに等しかった感情が、更に希薄になっている気がする。相対した時に、ほんの一瞬だけ見せた“感情”がそのうち出てくるのを祈ろう。
「身体は痛くないか?」
「はい、生命活動を続けるには支障ありません。それがどうかしましたか?」
「……いや、酷く傷ついた状態で発見されたから心配だった。問題ないなら、それで良い」
「そうですか」
さて、壊れた人形さんにこれからどうやって感情を宿らせようか……。
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目が覚めたら、知らない天井を見てました。
少々気怠かったですが、特に身体には異常が見当たらず、少し時間が経つと普通に動くようになりました。
ですが、頭の中はボンヤリとしていて一向にモヤが取れません。
まず、名前が思い出せません。私という存在がどんな物なのかがサッパリなのです。そして、私が生まれた理由があったような気がしましたがそれも思い出せません。生きるための術こそ本能的に覚えてましたが、それ以外は完全に忘却の彼方へ放られたそうです。
何も思い出せない。そんな感覚に私は内心に生まれた大穴のような物を感じてました。
気がつけば、私の手は近くに座っていたらしい男の人の着ている服の裾を掴んでいました。
それによって気がついたのか、私のことをジッと見つめた男の人は「起きたのか」と端的に返してきました。
「はい」と当たり障りのない返事をしてから、私はこの目の前に座っている男の人の事が一切分からなくて「貴方は……」と口籠もってしまいます。
男の人は不思議がっている表情を浮かべましたが、すぐに「どうでもいいか」と呟くと、ご自身の名を教えてくれました。
結城理。彼はそう名乗りました。そして、私の名前も教えてくださりました。レイシェン。それが私の名前だそうです。
その後、結城理さんから「身体は大丈夫か?」と聞かれました。特に生命活動を続けるには支障ないのでそれをそのまま伝えると、結城理さんは一転して悩みを抱えた表情を浮かべました。
話しかけても応えてくれなさそうなので、私はレイシェンの意味について考えますが、これっぽっちも出てこなかったので諦めて私は結城理さんの横顔を見つめることにしました。
何故か私は彼の顔から目線を外す事が出来ません。吸盤で張り付いたかのように目線を切れないのです。
その理由を表せる言葉を、私は知りません。訳も分からず見つめ続ける私を不審に思ったのか、結城理さんは怪訝そうな表情を浮かべています。
「どうした?」
「……いえ」
「そうか」
何でしょうか。結城理さんを見ていると、心臓の辺りがポカポカします。安心感、でしょうか。私が感じている物は、安心感なのでしょうか。それとも、違う感情なのでしょうか。
ポカポカと同時に、何故だかとても冷たい物も感じます。何かに「やれ」と命じられているかのような不快感です。これは何なのでしょう。
私には何も分かりません。が、少なくとも嫌悪感は覚えていません。この気持ちを表情する言葉を見つけるのを当面の目標にするのが良いのでしょうか。
結城理さんの横顔を見続けて、今後のことを考えていますと、扉がガチャリと開きました。気がつけば既に日は昇りきり、後は沈むだけの時間となっていたのです。
入ってきたのは別の男の人でした。結城理さんは、その人のことを「ハジメ」と呼びました。
「女の人は大丈夫?」
「さっき起きたよ。外傷は綺麗に消えてるが、記憶が無いらしい」
「え、そうなの……?」
声音から分かるハジメさんの優しさに、私はまたもや安心感に似た何かを感じました。
「って、結城くんに連絡があったんだ。明後日から、近場にある【オルクス大迷宮】に遠征しに行くんだけど、今日中にその近くにある宿泊施設に行くから準備しとけっていう伝言を頼まれたんだよ」
「そうか、分かった。わざわざありがとう」
「あ、えっと……お大事にね。結城くんは優しい人だから、何も心配は要らないよ」
最後にそう言って、ハジメさんは部屋を出て行きました。
結城理さんは優しい人、ですか。第三者からそう言われている彼のことは、どうやら信頼しても大丈夫みたいですね。
その後、日が暮れるまで私は結城理さんの顔を見続けました。心臓の辺りはずっと、ポカポカしていました。
ゼクストさんレギュラー入りです。後半の地の文は感情が存在しないとされるロボットと言うよりはアイギスや綾波レイに近い形にしています。今後はバシバシ他キャラとも交流させます。