高校生からの物語 2期   作:月島柊

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第35話 冬菜

 

 「だーかーら、なんで無いんだって聞いてるんだよ!」

「申し訳ございません。当店では取り扱わない商品でして……」

「んだよ、そのくらい倉庫にでもあんだろ!とってこいよ!」

 

うっ……胃が痛い……

たまにいるクレーマーだ。地震で店員の数も少なくなっていて、クレーマーの対処も私だけだ。

 

「ですから、本当にないので……」

「チッ、つっかえねぇなぁ」

 

クレーマーは店を出て行った。

はぁ、もう胃が痛い。毎日毎日クレーマーの対処。もう嫌だ。

 

 なんとなく、私はお兄ちゃんの家に行った。なんか相談したら乗ってくれそうだから。

 

「お兄ちゃん」

「ん?冬菜。どうした」

「ちょっと話したいことがあって」

 

私はさっきのことを話した。

 

「なるほどねぇ、よく頑張ってるね」

 

お兄ちゃんは優しく撫でてくれた。

 

「妹はこうされると落ち着くんだよ」

 

お兄ちゃんは私にくっついて撫でてくれた。本当に気持ちが楽になってくる。

 

「もっと、撫でて……」

「いいよ。よしよし」

 

私はお兄ちゃんにすっかり甘えていた。1番年の差が小さい妹だけど、小さい頃はよく甘えていた。

 

【回想】

 

 お兄ちゃんが5歳の時に私は産まれた。お兄ちゃんの方が何でも上で、お兄ちゃんが中学校に入って、私が8歳。お兄ちゃんが高校生になってから、数回授業参観に来てくれた。

 

「お兄ちゃん!」

「よっ、冬菜」

 

お兄ちゃんは小学校まで来ると、毎回私の後ろにいた。

授業参観が終わって家に帰ると、お兄ちゃんは私のことを撫でていた。

 

「今日もたくさん発表してたね。偉いぞ」

「えへへー」

 

だけど、こういう日々も長くは続かなかった。

お兄ちゃんが大学に入ると同時に、北海道に引っ越すことになった。中学校の参観日は毎回来てて、嬉しかった。だけど、お兄ちゃんは卒業してすぐ関東に行ってしまった。

お兄ちゃんが関東に言ったときには私ももう高校2年生。兄弟で甘えるのを避け始めた。

しばらくして、私も関東に引っ越してバイトを始めた。

 

【現在】

 

 こうして今に至るわけだけど、お兄ちゃんはずっと抱きしめてくれていた。

 

「お兄ちゃん、長くない?」

「長くない」

 

お兄ちゃんはそのあとすぐにこう言った。

 

「思ったこと言っていいんだよ。クレーマーでも。マニュアル通りに全部やらなくたっていい。臨機応変に対処した方がいい」

 

そして、最後にこう言った。

 

「俺は妹みんなを救うから」

 

 

 そしてその翌日、同じクレーマーがまた来た。

 

「もう売ってんだろ!出せや」

「先日申し上げました通り、売っておりません」

 

私がそう言うと、クレーマーはさらに怒り始めた。

 

「んだと!俺の言うことが聞けないのか!」

 

私はお兄ちゃんに言われたことを実行した。

 

「お客様は神様じゃないんです。無いんだったら諦めて他店に行って下さい。迷惑です」

「は?っざけんなよ!」

 

店長が来た。怒りに来たんだろう。

 

「ちょっ、月島!」

 

クレーマーは私に殴りかかってきた。私は咄嗟に手を出してガードする。

しかし、当たらなかった。なんでだろう、と思い、私が前を恐る恐る見てみると、そこには

 

「お客さん、何やってんですか」

 

お兄ちゃんだった。

 

「さっきからずっと聞いてましたよ。店員さんの言うとおりです」

 

きっと妹だと知られたくないんだろう。

 

「逆ギレして、殴りかかるのは違うんじゃないですか」

「なんだ貴様!」

「おっと、あまり大きな声を出さないで下さい。俺は魔法使いです。こう言えば分かりますね」

 

クレーマーは「あ?」と煽るような態度をとった。

 

「いいですか、無いんだったら諦めるのも大切です。そっちの方が楽で簡単ですよ」

 

お兄ちゃんは至って冷静。

 

「お前もこんな奴に同情しやがって!」

 

クレーマーがお兄ちゃんを殴ろうとした。

しかし、お兄ちゃんは冷静に魔法を発動。相手の手を凍らせた。

 

「言ったじゃないですか。魔法使いだって」

 

お兄ちゃんは外に行き、待機していた魔法警察に預けた。すぐに連れて行かれたが、お兄ちゃんは戻ってきた。

 

「店長も店長ですよ。臨機応変に対応しないと。マニュアル通りに動いてたら、所謂ロボットじゃないですか」

「し、しかし、お客様にご迷惑をおかけしてしまう恐れが」

「クレーマーをお客様扱いしなくていいと思いますよ?人の心を持っていないんですから。動物園の猿と同じですよ」

 

店長は「た、確かに……」と言葉が詰まった。

 

「暴行を加えるようでしたら警察を呼ぶなり対応すればいいんです」

 

お兄ちゃんはおにぎりを持ってきた。

 

「これ、お願いします」

 

お兄ちゃんは笑顔で言った。

 

「あ、えっと、110円になります」

 

お兄ちゃんは110円をICカードで払い、コンビニから出て行った。

 

「な、なんだったんだ、あの人は……」

「けど、助かりましたね」

「あぁ……よし、マニュアルの基準を変更しよう」

 

店長は裏に入っていった。

 

 お兄ちゃんの家にまた来た。撫でて貰いたかったから。

 

「どうだった、昨日は」

「助かった。ありがとう」

 

お兄ちゃんは撫でるだけでなく、ほっぺをむにむにしてくれた。

 

「どういたしまして~」

 

お兄ちゃんは「ほれほれ」と言いながらほっぺたをむにむにした。

 

「おにいひゃん、やめへ~」

「柔らかいな、冬菜のほっぺ」

「わたしもーっ」

 

入ってきたのは家から避難してきていた彩夏。家で地震の片付けをしているから預けられているらしい。

 

「彩夏も柔らかいのか?」

「うん!」

 

お兄ちゃんは彩夏のほっぺをむにむに。

 

「みゅふー」

 

なんだろう、なんか足りない。

 

「ん?冬菜、おいで?」

 

お兄ちゃんは私を呼んだ。

 

「くっつかないと寒いぞ」

「分かった……」

 

私はお兄ちゃんにくっついた。やっぱり、安心する。

 

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