「だーかーら、なんで無いんだって聞いてるんだよ!」
「申し訳ございません。当店では取り扱わない商品でして……」
「んだよ、そのくらい倉庫にでもあんだろ!とってこいよ!」
うっ……胃が痛い……
たまにいるクレーマーだ。地震で店員の数も少なくなっていて、クレーマーの対処も私だけだ。
「ですから、本当にないので……」
「チッ、つっかえねぇなぁ」
クレーマーは店を出て行った。
はぁ、もう胃が痛い。毎日毎日クレーマーの対処。もう嫌だ。
なんとなく、私はお兄ちゃんの家に行った。なんか相談したら乗ってくれそうだから。
「お兄ちゃん」
「ん?冬菜。どうした」
「ちょっと話したいことがあって」
私はさっきのことを話した。
「なるほどねぇ、よく頑張ってるね」
お兄ちゃんは優しく撫でてくれた。
「妹はこうされると落ち着くんだよ」
お兄ちゃんは私にくっついて撫でてくれた。本当に気持ちが楽になってくる。
「もっと、撫でて……」
「いいよ。よしよし」
私はお兄ちゃんにすっかり甘えていた。1番年の差が小さい妹だけど、小さい頃はよく甘えていた。
【回想】
お兄ちゃんが5歳の時に私は産まれた。お兄ちゃんの方が何でも上で、お兄ちゃんが中学校に入って、私が8歳。お兄ちゃんが高校生になってから、数回授業参観に来てくれた。
「お兄ちゃん!」
「よっ、冬菜」
お兄ちゃんは小学校まで来ると、毎回私の後ろにいた。
授業参観が終わって家に帰ると、お兄ちゃんは私のことを撫でていた。
「今日もたくさん発表してたね。偉いぞ」
「えへへー」
だけど、こういう日々も長くは続かなかった。
お兄ちゃんが大学に入ると同時に、北海道に引っ越すことになった。中学校の参観日は毎回来てて、嬉しかった。だけど、お兄ちゃんは卒業してすぐ関東に行ってしまった。
お兄ちゃんが関東に言ったときには私ももう高校2年生。兄弟で甘えるのを避け始めた。
しばらくして、私も関東に引っ越してバイトを始めた。
【現在】
こうして今に至るわけだけど、お兄ちゃんはずっと抱きしめてくれていた。
「お兄ちゃん、長くない?」
「長くない」
お兄ちゃんはそのあとすぐにこう言った。
「思ったこと言っていいんだよ。クレーマーでも。マニュアル通りに全部やらなくたっていい。臨機応変に対処した方がいい」
そして、最後にこう言った。
「俺は妹みんなを救うから」
そしてその翌日、同じクレーマーがまた来た。
「もう売ってんだろ!出せや」
「先日申し上げました通り、売っておりません」
私がそう言うと、クレーマーはさらに怒り始めた。
「んだと!俺の言うことが聞けないのか!」
私はお兄ちゃんに言われたことを実行した。
「お客様は神様じゃないんです。無いんだったら諦めて他店に行って下さい。迷惑です」
「は?っざけんなよ!」
店長が来た。怒りに来たんだろう。
「ちょっ、月島!」
クレーマーは私に殴りかかってきた。私は咄嗟に手を出してガードする。
しかし、当たらなかった。なんでだろう、と思い、私が前を恐る恐る見てみると、そこには
「お客さん、何やってんですか」
お兄ちゃんだった。
「さっきからずっと聞いてましたよ。店員さんの言うとおりです」
きっと妹だと知られたくないんだろう。
「逆ギレして、殴りかかるのは違うんじゃないですか」
「なんだ貴様!」
「おっと、あまり大きな声を出さないで下さい。俺は魔法使いです。こう言えば分かりますね」
クレーマーは「あ?」と煽るような態度をとった。
「いいですか、無いんだったら諦めるのも大切です。そっちの方が楽で簡単ですよ」
お兄ちゃんは至って冷静。
「お前もこんな奴に同情しやがって!」
クレーマーがお兄ちゃんを殴ろうとした。
しかし、お兄ちゃんは冷静に魔法を発動。相手の手を凍らせた。
「言ったじゃないですか。魔法使いだって」
お兄ちゃんは外に行き、待機していた魔法警察に預けた。すぐに連れて行かれたが、お兄ちゃんは戻ってきた。
「店長も店長ですよ。臨機応変に対応しないと。マニュアル通りに動いてたら、所謂ロボットじゃないですか」
「し、しかし、お客様にご迷惑をおかけしてしまう恐れが」
「クレーマーをお客様扱いしなくていいと思いますよ?人の心を持っていないんですから。動物園の猿と同じですよ」
店長は「た、確かに……」と言葉が詰まった。
「暴行を加えるようでしたら警察を呼ぶなり対応すればいいんです」
お兄ちゃんはおにぎりを持ってきた。
「これ、お願いします」
お兄ちゃんは笑顔で言った。
「あ、えっと、110円になります」
お兄ちゃんは110円をICカードで払い、コンビニから出て行った。
「な、なんだったんだ、あの人は……」
「けど、助かりましたね」
「あぁ……よし、マニュアルの基準を変更しよう」
店長は裏に入っていった。
お兄ちゃんの家にまた来た。撫でて貰いたかったから。
「どうだった、昨日は」
「助かった。ありがとう」
お兄ちゃんは撫でるだけでなく、ほっぺをむにむにしてくれた。
「どういたしまして~」
お兄ちゃんは「ほれほれ」と言いながらほっぺたをむにむにした。
「おにいひゃん、やめへ~」
「柔らかいな、冬菜のほっぺ」
「わたしもーっ」
入ってきたのは家から避難してきていた彩夏。家で地震の片付けをしているから預けられているらしい。
「彩夏も柔らかいのか?」
「うん!」
お兄ちゃんは彩夏のほっぺをむにむに。
「みゅふー」
なんだろう、なんか足りない。
「ん?冬菜、おいで?」
お兄ちゃんは私を呼んだ。
「くっつかないと寒いぞ」
「分かった……」
私はお兄ちゃんにくっついた。やっぱり、安心する。
平行世界の物語(第3話で実施したもの)を別作品で投稿した方がよい?
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