俺が数学の授業をやっている最中、10時15分。俺は挙手の発表を選んでいた。
「えっと、じゃあ大門2の(2)を横川さん、それで、(3)を……」
その瞬間だった。
俺のスマホが入ったバックから、ホワッ、ホワッっと、不吉な緊急地震速報の警報音が鳴った。俺は生徒全員に気付かせるため、スマホを高く上げた。
しばらく俺が黙っていると、ガタガタと音を立てながらも全員が素早く机の下に隠れた。黒板前に来ていた人は休みの人の机の下や、教卓の下に隠れた。
俺はドアを全開にし、窓も全て開けた。そして、カーテンがある窓はカーテンを閉め、ガラスが飛び散らないようにした。
俺が全てを終える頃、ガタガタッと激しい音が聞こえた。激しい地震だ。
最初は弱かったが、1秒もしないうちに強い揺れがガタガタ襲ってきた。
俺は一時的にヘルメットを被ってその場に伏せた。しかし、終わる気配はない。俺は廊下に出て、他のクラスを見に行った。
3組は先生がいなかったらしく、生徒が黙って机の下に隠れていた。
「みんな、静かに待てて偉いぞ。絶対みんな生きるからな!心配するなよ!」
俺は胡桃を職員室に呼びに行った。副担任を取りあえず向かわせないと。
「胡桃!3組にいって」
「分かった!」
俺は走って6組に戻った。6組の状況はもうすさまじい状態だった。しかし、そんなこと気にしてられない。すぐにしゃがみ込んだ。
5分後、揺れは収まったが、ちょっとした揺れが長く続いている。気持ち悪い揺れだ。
「みんな、揺れが収まったから頭を守りながら立って」
俺は被害状況を確認する。
リュックが全て崩れ落ち、蛍光灯が一部落下している。休みだった人の机は倒れていて、無残な姿だった。
すると、放送が入った。
《先ほど、関東地方を震源とする、マグニチュード8.7の強い地震がありました。震度は震度7。生徒は引き取りとなります。担任の先生の指示に従い、校庭へ避難しなさい。先生方、校舎側から1年1組、反対側が3年6組になるようにお願いします》
8.7か。かなり大きいな。東日本大震災で9.0だから、それに近い。俺は生徒全員を廊下に並ばせた。
「素早く並びなさい。静かに。泣くな、生きるから」
俺は並び終わったのを確認すると、すぐに校庭へ行った。
引き取りは10時58分に完了。先生たちもすぐに帰る準備をして、車で帰った。
しかし、なんということだ。今日に限って電車で来てしまった。もちろん、高崎線は動いていない。10時18分、一斉に運転を見合わせたのだ。
駅前には帰れなくなった人々が大量にいた。俺と胡桃もその内の1人だ。
電光掲示板は10時20分発籠原行きが表示されたままだった。
10時20分発籠原行きは、鴻巣駅直前で止まっていた。
「胡桃、困ったな」
「うん……絢香ちゃんたちに連絡する?」
「あいつら免許持ってない。無理だ」
俺はとりあえず道ばたに座った。幸い、水筒の水があるが、もう少しだ。
「歩きになっちゃう?」
「かもしれない」
俺はスマホで震度の情報を見てみた。
震源は東京都23区
最大震度7
マグニチュード8.7
震度7地域
東京都23区
東京都西部
千葉県西部
千葉県房総半島
千葉県東部
埼玉県南部
埼玉県鴻巣市
埼玉県北本市
埼玉県桶川市
埼玉県熊谷市
埼玉県蓮田市
埼玉県白岡市
埼玉県久喜市
埼玉県行田市
埼玉県羽生市
埼玉県加須市
茨城県南西部
茨城県東部
震度6強地域
埼玉県北西部
群馬県全域
栃木県全域
茨城県南西部を除く全域
福島県南部
新潟県南東部
震度6強で深谷市が入ってるかもしれないな。一応深谷市の震度も確かめておこう。
震度6強地域(埼玉県)
深谷市
寄居町
美里町
本庄市
上里町
神川町
皆野町
長瀞町
やっぱり入ってた。安否確認のためにも連絡しよう。
「……もしもし?」
《つっきー。今どこ?》
「鴻巣駅で足止め。君らは」
《家にいる》
「なんか被害は」
《停電とか。私たちの身体に異常は無い》
良かった。
「ブレーカー落としといて。あとガスは止めてあるな」
《全部できてる。心配しないで、つっきー》
あーやはなるべく俺を安心させていた。
「そうか。だったら良かった」
《帰ってこれないの?》
「あぁ。再開見込みが立ってないらしくて。もしかしたら歩くことになるかもだから、帰り遅くなる」
《分かった》
そして、脇の方から声が聞こえた。
《迎えに行く?》
なぎだろうか。帰れずにいたのか。
「これる?」
《道路の状況が良ければ》
「じゃあ調べてこれそうだったら来てくれるかな」
《分かった!》
俺は電話を切った。胡桃は心配そうに俺の服の袖をきゅっと掴んでいた。
「柊くん……」
そう言うと、また大きな地震が来た。
駅前は騒然としていたが、今回の地震は30秒ほどで終わった。
最大震度は震度6弱。マグニチュード6.1。埼玉県鴻巣市は震度5強だった。深谷市は震度5弱。
「わっ、なんか揺れてる」
そう、立て続けに地震が来ているのだ。今も震度3程度の地震が続いている。
「たまにでかいのがくるな。大丈夫かな」
俺が離している間にも地震は来た。緊急地震速報が鳴り、震度6強の地震があった。マグニチュード7.5、深谷市は震度6強。結構広い。
「胡桃、俺の下にいて」
俺は胡桃を覆うようにした。ここから離れることもできない。これしか無いんだ。俺が犠牲になってでも胡桃が生きる方法は。
「そこの男の人!街灯!」
ガッシャーン
砕ける音が辺り一面に響く。街灯が地面に倒れたのだ。それと同時に電線が切れ、停電が発生する。
電車は安全確認が済めば運転再開できる。なんてことは無くなってしまった。停電なのだから当分動かない。
「充電ないし!」
「やべーって、もう電池無い!」
スマホの充電がないんだろう。俺もない。あと5%。
「もう魔法使っちゃうか」
飛行魔法は危険だから使用しない。だが、発光魔法くらいはいいだろう。
「明るくなったな」
「うん。わっ、また地震。って、これおっきいよ!」
俺は下を向きながら震度を確認した。震度6強。強い揺れだ。
「まだ明るいからそこまでは役立ってないか」
くっそ、もう水筒がない。コンビニなんて行ける状態じゃないし。あぁ、どうすればいいんだよ!
「胡桃、俺、終わった」
「柊くん!?諦めないで!」
「無理だよ。知ってるか、人間は何も飲み食いしないと2日とか3日で死ぬんだよ。きっと、ここには1週間はいるだろう。無理だよ」
俺は自分を追い込み始める。
「苦しいなんてこれるはず無いだろ?だってどこもかしこも停電で渋滞が発生してる。飛行だって大地震で不可能。俺たちは何もできない」
「柊くん、違う。何かあったら私を食べていいからっ、だからっ、お願いっ、死なないでよ……」
胡桃は泣きながら言う。それで、俺は我に返る。俺は胡桃を追い詰めていた。胡桃が犠牲になることを考えていた。ダメだ。こんなんじゃ。
「ごめん。じゃあ、どこか行って道路に近づこうか」
「うん……」
胡桃は俺と一緒に大きな道路へと出て行く。
大きな道路へと出ても、大渋滞はずっとあった。俺は道路脇に座った。もう体力の限界だ。もう13時を過ぎている。もう、体力が……
「胡桃、しばらくこのままでいさせて」
「うん。私、凪沙ちゃんの車見つける」
胡桃は道路に向かっていった。なんか不甲斐ないな。
4時間くらい経っただろうか。停電も復旧せず、気温は夜になるにつれて下がっていく。今はもう15度。
なぎの車は来ないです、渋滞はまだ全然あった。
「柊くん、まずいよ……寒いし、お腹と喉が……」
そう、もう3時間近く何も飲み食いしていないのだ。腹を満たす物は何もなかった。
「ねぇ、柊くん。なんか話そ?あの、柊くんの従姉妹の紅葉ちゃんのこと」
なんか重い空気になってたからか。
「いや、実はさ、妹の方は紅葉なんだけど、姉もいるんだよ。年上の従姉妹」
「名前なんて言うの?」
「陽夏っていうんだけど、俺はいつも陽夏ねえって呼んでた」
なんか今考えたら恥ずかしいけど。
「それで、従姉妹って血繋がってるから好きになっちゃいけないんだけど、俺は好きになっちゃったんだよね」
「え?けど、それは気付かれなければ」
「気付かれたんだよ。それで、俺をキモいって思ったのか知らないけど、俺とは音信不通。連絡先もいつの間にか消えてた」
俺がそんな悲しげなことを話していると、クラクションを大きく鳴らす車がいた。
「ナンバー……俺のかよ」
俺はその車に手を振った。車は交差点で別の道路に行った後、別の道から来て、すぐ横に来た。
「乗ってく?」
なぎがキメながら言ってきた。
「乗ってく。つーか、自分の車にしろよ」
「すぐ近くにあったんだもん。キーも玄関に置いてあるし」
そうか、置きっぱだったか。
「まぁいいや。俺の家まで」
「私も」
「にゃ!」
なぎは来た道を引き返すように進む。反対側は渋滞が発生していないため、スムーズに進めた。
「地震おっきかったね」
「ホントだよ。あ、明日多分休み」
「え、私来てって言われたんだけど」
胡桃が怪しそうに言った。
「胡桃は会議室の火元管理者だろ、地震の時もいないと。音楽室は地震対策してたし」
俺は休めって言われたが……あ、事務所。
「やっぱ明日行く。事務所の方に行かないと」
「車どうする?」
なぎが運転しながら聞いてきた。
「胡桃が乗っていっていいよ。俺電車で行く」
多分混んでるだろうなぁ。大丈夫だろうか。
家に着くと、あーやが駆けつけた。あーやは寂しそうな、多分泣きそうな顔をしていた。
「おかえり、つっきー」
「ただいま。かりなたちは帰ってるか?」
「丁度早帰りででかけっちゃったの。高崎とか言ってたからまだ帰ってこない」
しょうがないけど、運が悪かったな。こんな地震が来るなんて。
「かりなの帰りは待とう。今は電気通ってるか」
「いや、通ってない」
絢梨が言う。まだ停電中か。だったら、俺に良い考えがある。
「俺に付いてこい」
俺はみんなをつれて少し外に出た。
平行世界の物語(第3話で実施したもの)を別作品で投稿した方がよい?
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