「ほらほら、霊夢さん。防御が疎かになってますよ」
「煩いっ!判ってるわよ!」
博麗神社に戻った千里は、再び霊夢達の稽古をつけていた。
(霊夢さんの上段からの蹴り一発、後方からは・・・星さんと妹紅さんの弾幕三十八発。右下から美鈴さんが突きを放ってきている。・・・さて、如何するかな)
先ずは、宙返りをして霊夢の蹴りを相殺する。その勢いで回転し、美鈴の腕を掴んで後ろに放り投げる。
幾つかの弾幕を被弾させてしまった事に動揺した星に一瞬で近づき、脇腹に強烈な回し蹴りを叩き込む。
「ぐうっ!」
吹き飛んだ先には、同じく驚いた顔をした妹紅が居た。巻き添えをくらって一緒に遠くへ飛んでいく二人。
「まだ終わっていませんよ!」
何時の間にか千里の後ろに回り込んでいた文が、団扇を振るう。
突風が荒れ狂い、千里を吹き飛ばした・・・筈だったのだが。
「あ、あやや?決まったと思ったのですが」
「残念でしたね。あと少しだったんですけどね」
いち早く気づいた千里は、上空に避難していた。
そこから急降下し、文の手首を掴むと地面に向かって投げつけた。
奇跡「白昼の客星」
「油断してましたね、千里さん。近づいている私に気づいていなかったなんて」
千里の真後ろにピッタリとくっついた早苗が、文を投げ飛ばした体勢のままの千里に向かってスペルを宣言する。
距離が距離だけに、一度に数十発の弾幕に被弾してしまう。
「やりました!遂に、皆さんの思いを達成しました!」
「・・・・・と、思うじゃん?」
「あれ?」
其処に居たのは、あれ程被弾しておきながらもケロリとした表情をした千里だった。
「一応、言っておきますけど。僕は貴方達全員の気配は常に探っていたんですよ。早苗さんは、他の六人が僕の気を引いているうちに気配を消して移動していたつもりなんでしょうけど、だいぶ前から気づいてましたからね?」
確かに、千里ならば普通のスペルは対応出来るのかもしれない。だが、あの時は相当距離をつめて撃った筈なのだ。
「そう。早苗さんは如何して僕が無傷なのかを知りたいんですよね」
そこへ飛ばされた他の六人も集まってくる。
「その話。詳しく聞かせてもらおうじゃない」
「全員集まりましたね。では、お聞かせしましょうか」
千里は自身が持つ技術を霊夢達に教えていき、彼女等もその技の幾つかは扱えるようにはなってきていた。
(彼女達は、恐ろしく飲み込みが早い。これならば・・・、少し厳しくしても構わないかな?)
七名の特訓の日々は続いていき、それぞれは著しく成長を見せていた。
地獄 旧都
「おらおら如何したぁ!鬼ともあろうお方が随分弱っちいじゃねーの!」
先程から旧都では、鬼の四天王の一人・星熊勇儀と鎌霞団団員の刃が拳を交えていた。
辺りに衝撃波が飛び交い、旧都の建物をことごとく破壊していく。
「前回は酷くやられたからねぇ。今度は鬼の本気を見せてやろう!」
元々の住人は、破壊されていく町並みを眺めているだけしか出来ずにいた。
「止めてくれー!これ以上戦ったら、街がぶっ壊れちまうよー!」
勇儀が本気を出すとなると、街がただでは済まなくなる。それは、刃にも同じ事が言える。
嘗て刃は暴力の限りを尽くし、一つの国そのものを全て破壊しつくしてしまった事があるのだ。
この戦いには、勇儀だけでない。勿論、鬼の四天王の二人目である伊吹萃香もその場に居るのだった。
「おい、萃香!さっきから酒飲んでばかりいないで、こっち来て戦え!」
「や~だよ、メンドくさい。大体、私は修行なんてしなくても強いんだけど?」
自身の強さを十分理解しているからこそ、このセリフが出てくるのだ。
「面白い奴も居たもんだ。・・・ならば」
速攻で萃香に近づき、行き成り顔面に向けて拳を一発放つ。当たる直前に、反射的に腕が反応する。
「危ないねぇ。当たったら痛いじゃないか」
「ほう、それなりの反応は出来る様だな。鬼もただ雑魚って訳でもなさそうだ」
その挑発は、萃香と勇儀の堪忍袋の尾を切るには十分な一言だった。
「その喧嘩、買った。後悔しても知らないよっ!」
修行よりは、チンピラの喧嘩にしか見えない様な気もするが、両者共に満足しているようなので、別にいいだろうと思われる。
こうして、各地の住人の修行は続いていく。
かなり遅くなってしまった。
私に足りないもの・時間。