皆さんは楽しめましたか?私は全然です。
その頃・・・
白玉楼 石庭
「よし、今日の鍛錬はこれくらいにしておこう。やり過ぎるといざという時に動けなくなってしまうからな」
此処では、幸嗣の指導の元、妖夢と咲夜が修行を行われていた。
「ねえ、これくらいしないと悪魔に勝てないんですか?お嬢様なら簡単に勝てる相手だと思うのですが」
「そう思うのならばしなければいい。後で文句言っても知らんからな」
つっけんどんに返し、刀を鞘に収める。
先程から行われているのは、基礎体力や瞬発力を鍛える訓練であった。妖夢は強くなれると信じて素直に聞いているが、咲夜はレミリアが悪魔に勝てるだけの実力があると感じているので、どうにも信じきれずにいた。
「ま、今日は帰るわ。お嬢様が心配だから」
そう言うと咲夜は時を止めて消えてしまった。
「そうだ、妖夢。今日はクリスマスなんだろ?今日の午後の修行は無しだ。クリスマスというのは、大切な人と聖夜を過ごす日なのであろう?」
「んへ?た、大切な人?」
行き成りの幸嗣の言葉に、妖夢は素っ頓狂な声を出してしまう。
「だから、主人の幽々子と一緒に居てやれ。たまには息抜きも必要だ」
「はあ・・・。ん、判りました」
何故か妖夢は深いため息を吐いて本殿の方へと向かっていった。
「はあ、大切な人と聞いて一瞬動揺してしまった。何故なのだろうか。しかも、酷くがっかりした気分だ」
「むふふ、それは恋ってやつじゃない?妖夢」
「ひょわあっ!」
またもや変な声を出してしまう妖夢。
「ゆ、幽々子様!急に出てきて驚かさないで下さいよ!それに何ですか恋って!」
「だって~、最近妖夢あの人と一緒に居る時ずっと笑ってるし~?二人きりになると、顔真っ赤だしね~」
自分で気付いてもいなかった表情の変化を、幽々子はちゃんと見ていたのだ。
「今日はクリスマスなんでしょ?大切な人と一緒に居る日なら、真田君と居ればいいじゃない」
「め、滅相もない!私なんかでは不釣り合いですよ!」
「あ、好きだって認めた~。きゃ~、妖夢もそういうお年頃なのね~ん」
茶化されて不機嫌になる妖夢。そんな妖夢の頭を撫でて、優しい声で諭す。
「妖夢は、これまで剣で自分の上に立つ人を妖忌しか知らないものね。だから、惚れちゃったんでしょ?私は応援するわよ?妖夢の初恋」
「んむう。幽々子様の、意地悪」
頬を膨らませて抗議するも、
「ほら、行ってきなさい」
と、追い出されてしまった。
「ん?どうした」
顔を赤くさせながらも、なんとか勇気を出して声をかける。
「ゆ、幸嗣さん。一緒に買い物行きませんか?」
「ああ、別に構わないが。何故拙者と行くのだ?」
「そんなことはどうでもいいんです!」
妖夢の迫力に押されたのか、少し戸惑う幸嗣。
この後、二人は普通に買い物を済ませてしまった。が、特に何の進展も無かった為、省略。
「そうだ、先に行っててくれないか?少し用事を思い出してしまった。後で追いつく」
「・・・ええ、判りました」
幸嗣は再び人里の方向へと向かって行ってしまったので、妖夢は一人寂しく白玉楼への階段を登っていった。
「おらあ!隙ありぃ!!」
突如、上からの斬撃が降ってくる。しかし、間一髪でこれを躱した。
「くっ、何者だ!」
其処に居たのは、両手に大きな鋏を持った男だった。一応、悪魔の様な尾や角が見られるので、悪魔だという推察は妖夢にでも出来た。
「俺はフラウロス。七十二柱の一柱を任されている。今回は、ただの様子見のつもりだったが、面白え奴が居たから攻撃してみた。ハハッ」
(異様な雰囲気を放っている。確かにこいつには私では勝てない。だが、これでも白玉楼の庭師を任された身。臆する訳にはいかん)
「魂魄妖夢、参るっ!」
「いいぜえ、その感じ。滾るね」
先手必勝とばかりに、楼観剣を横に薙ぐ。フラウロスは身軽に飛び、剣の上に乗る。
「甘い甘い。大甘だよ、嬢ちゃん」
鋏で寸断しようと、鋭利な刃が振り下ろされる。妖夢はもう一本の剣、白楼剣で応戦する。白楼剣が鋏の支店部分に食い込み、どちらも動けなくなる。
膠着状態になるかと思われたが、フラウロスは鋏を回転させて軽い妖夢の身体を宙に浮かせる。
「弱っちいなぁ、お前。こんな技に引っかってくれるなんてよ」
止めと言わんばかりに、振り下ろされる鋏。
「そこまでだ」
鋏は妖夢には届かず、代わりに一本の日本刀がそれを受けていた。
「そいつは拙者の弟子なんでな。例え、悪魔であろうと手を出す事は許さん。斬らせてもらうぞ」
妖刀「真田抜刀術・韓紅」
目にも止まらぬ幸嗣の剣術は、フラウロスの身体を切り刻んでいった。
「ぐおああ!くそっ、俺がっ、こんなところでえええ!!」
断末魔の叫び声をあげながら、黒い霧になって消滅していくフラウロス。その様子を見て、刀を鞘に収める幸嗣。
「危ない所だったな、妖夢。まだお主は悪魔に勝てる実力はついていない。今回の事で身にしみたであろう?」
腰が抜けてしまって立てない妖夢の元に来て、手を差し伸べる。
「あ、有難う御座います」
「今度からは気をつけるのだな。今回は拙者が近くに居たが、次はお主だけかもしれぬ」
軽い気持ちで悪魔に挑んでしまったことを幸嗣に諭され、落ち込む妖夢。
「だが、その心意気や良し。その気持ちを持ち続けることが大切だ。さ、行くぞ」
差し伸べられた手は離されることは無く、帰るまでずっと手は繋いだままだった。
幸嗣の言葉遣いを変更しました。但し、この話から。
妖夢は、幸嗣が好きみたい。だけど、本人は気付いていない。
や~い、朴念仁。 ザシュッ
ドサッ(作者が倒れる音)