「あっ、やば.............」
「どうしたのハル君?」
あの後、綺凛は流石にかなりの疲労を抱えていため流石に鍛錬の続行をやめ部屋で休んでもらうことにした。当然ながら綺凛は向上心が高く、続行を望んだが相手は手加減していたとはいえ星露だ。その後の事も考えれば今回は大事を取るべきと説得し、能力で部屋に送り届けた。その後陽翔はもう3回星露と模擬戦をし、星露と別れて陽も沈んできたためシルヴィを学園の寮まで送ってる最中だ。
そして、シルヴィと談笑しながら歩いているとある事を思い出した
「いや、星露の分の料理で醤油とか調味料を幾つかきらしてたんだった.............はぁ、買いに行くか」
「あははは...........確かに凄い量だったんもんねアレ」
シルヴィは陽翔が星露に渡していた料理の数々を思い出し苦笑を浮かべる。明らかに一人で食べる量ではなく、軽いパーティーにも対応できる量なので当然の反応だろう。
「まぁ、アレで万有天羅の鍛錬が受けられるんだから安いんもんだけど.............あの体のどこに消えてるんだか」
一応は星露の分でもあるが、黄辰殿に住んでる梅小路さんや暁彗さんに虎峰やその他にも分けられる程度には用意しているのだが、たまに連絡を取り合う梅小路さん曰くほぼ一人で食べているというのだから驚きしかない
「ふふっ、でもハル君料理できるんだなぁ~」
「?結構前から言ってなかったけ?」
「それは聞いてたよ。でも、なんて言うかな.............ふふ、なんだろ?」
「何だよソレ?」
よくわからないがふわりと笑うシルヴィを見てなんだか温かくなるのを感じる。
「..............よし!えい!」
「へ?.........ど、どうした?いきなり手を握ってきて」
突如優しい笑みは悪戯ぽっくなると突如俺の手を取って握ってきた。俺の豆やキズ跡だらけの手とは違い、柔らかく、綺麗で、温かい...........そんな手が包み込んできた。
「.......ねぇ、いいんだよ?寂しかったんでしょ?」
「だから...........そんなこと..「あるでしょ?」..........」
「大丈夫。私はハル君の事ちゃんと見てるし、わかってる............だから、ね?」
そう、寂しかった。
俺には...........家族はいない。だから、あんなんでも家族の存在を持つ綺凛が羨ましかった。それと同時に「あぁ、やっぱり一人なんだな」と思うと酷く寂しかった
情けない話だ。結局のところまだ引きずっていた。もうとっくに過去だと割り切ったと思っていたのにだ
でも、今は少なくとも..................
「...............あぁ、そうですよ。寂し
「......うん、そうみたいだね」
優しそうにやっぱりというか、納得した様に微笑む彼女にやはり敵わないと思わされてしまう。だからふと口が滑る
「でも、まぁ.............シルヴィに............いや今の無し」
「ん~?私にどうしたの?」ニヤニヤ
俺が口を滑らしたところにニマニマとまた揶揄う様な笑みになる
「言わん...........わかるんだろ?俺の事?」
「え~言って欲しいな~?」
「わかってるんだったらいいだろ」
恥ずかしくなり俺はそっぽむくと、それにつられるようにシルヴィがごねる。
「え~、ちゃんと言葉にしてほしいなぁ~?」
「.............」
「じ~.......」
黙秘権を行使し始めると。自分で効果音までつけてこちらをガン見してくる。ええい、やり難い可愛い照れるだろうが.............
「し、...........」
「し?」
「..............シルヴィに会いたかった...........言わせんな」
「!えへへへ.......そっか~........ふふ、そっか~えへへ」
結局根負けして口を割ると、シルヴィは何故だかとてもうれしそうに笑う。きっと今の俺の顔が相当おかしいのだろう
「なんだよぅ............」
「ふふふ.........私も会いたかった」
満面の笑みでそんなこと言うシルヴィは本当に綺麗で見惚れてしまう。それを誤魔化す様に俺は不貞腐れたように返すのが精一杯だった
「そうかよ.............」
嬉しいと思ってしまった俺が何だか無性に恥ずかしかった。きっと今俺は赤くなっているのだろう。そうとわかるくらいに俺は顔に熱を感じた
そうして夜の六花を仲睦まじく歩く二人がいた
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あの後他愛ない話をしながらシルヴィを寮に送り届け、大型スーパーでいくらか食材を買い込み、別空間に仕舞い帰路につく。
『ふわぁ~.........今日は一杯撃ったから疲れた~』
『お疲れさんソル。もう今日は寝てていいぞ?夜に弱いんだからお前』
ソルには打てる弾数の他にもう一つの弱点がある。それは夜だ。太陽が出てる間は元気なのだが夜になると本人曰く眠くなるらしい。そうなるとソルは威力は落ちるし、ソルが寝てしまえば使えなくなる。
『でもいいの?最近何かと物騒なんでしょ?』
『刀は別空間にしまってあるし、クロもいるからな。今日は結構酷使したから疲れてるだろうしな』
『えぇ、そうですわ。〝一心同体〟の相棒である私がいるのですからソルは寝ても問題ありませんわ』
『クロまだ怒ってるの?ごめんってばぁ~』
『怒ってなどいませんわ。ただ、事実を述べたまでですわ』
『まぁ、言い争うのはいいけどソルも心配しなくていい。星仙術だってあるんだし、滅多な相手でもなきゃ大丈夫さ。それこそ《孤毒の魔女》でも出てこなきゃ危険なんて皆無さ』
『それもそうだね。陽翔は強いし...........それじゃお休み~』
ソルは完全に眠りに尽きたのでこれで起きるまではソルが使えない。とは言え、そこまでさしたる問題はない。能力もあるし、それこそいざとなればクロがいる。
俺はクロと話しながら、花壇がよく整えられた公園に入る。この公園の少し歩いたところにあるもう一つの出口から通りに出ると時短になるのだ
『それにしてもこの公園の花は綺麗ですわね』
『そうだな..........俺には花をめでる趣味はないがいい気分になるもんだな』
お嬢様ぽっいクロは当然好きだろうなと思い、歩いているとふと先の方の花壇の花が枯れているの気が付く。明らかに不自然だ。
そうして少し歩くと、離れた所にある小さな花壇の前に一人の白髪の少女が立っていた。
その彼女には見覚え.......否、すぐに誰だかわかった。
何せその特徴的な白い髪、そしてレヴォルフの制服とくれば誰かなんて問わずとも十分だった
(まじかよ.........オーフェリア・ランドルーフェンじゃん..........誰だよ《孤毒の魔女》でも合わなきゃ大丈夫って言ったの)←お前だよ
そう、六花最強にして最凶の魔女。レヴォルフ序列1位《
そう、本当に脅威には見えないほどに儚く、すぐに壊れてしまいそうな危うさを感じさせる面立ちであるのだ。だからか陽翔は.............
「............花が好きなのか?《
「............貴方は.......あぁ、星導館序列2位《
「あぁ、牙山陽翔。一応訂正しとくとつい先日序列1位になった」
「そう」
それだけ言うと興味すら抱かれていないようで何も言わず立ち去ろうとする。なので陽翔はもう一度声をかける。
「待てよ。花が好きなんだろ?なら俺の話聞いて損はないと思うぜ」
聞いた話では、彼女は自身の能力を制御しきれていない。常に毒素を振りまいてしまうとか。だからきっと彼女は意図せずして花を枯らしてしまっているのだろう。じゃなきゃそんな悲しそうな顔はしない。
もっともわかってるなら来なければいいとかいう想いがない訳じゃない。だが.................それでも耐えきれないものがあるのだろう。陽翔自身がそうだったように。
「............貴方に何の関係もないでしょ?」
するとほんの..........ほんの少しだけ苛立ちのような、でもどこか寂しそうな声音でそう答える。
「そうだな関係なんてないな。でも、さっきも言ったが損はさせないぜ《
「................」
《
「...........俺の能力、知ってるか?」
「確か空間系の能力だったわね?それがどうしたというの?貴方程度の能力で私の運命をどうこうできるとでも?」
そりゃそうか............俺って基本的に能力者であることは明かしてるけど公式序列戦じゃ大した使い方はしてない。精々綺凛の時見たく空間的に対象を観測するとかそう言うサポート程度しか見せてない。だからそう思われても仕方ないだろう。
「できるさ..............と言うか俺の能力はアンタの能力と滅茶苦茶相性がいい」
「................信じられないわ。この運命は誰にも覆せない」
絶望しきった表情で呆れたようにそう呟く。まるで───
「ならその運命とやらが容易く覆るところ見せてやる」
「運命が簡単に..........「いや、簡単だね」...........」
「いいこと教えてやる《
そう、俺はきっと誰に知られることなく、何も残すことなく、消えるように死ぬ『運命』だった。でも、それはたった一人の歌で変えられた。彼女の歌が変えたのだ。
音楽一つで人の人生がいともたやすく変わったのだ。なら運命なんて物は何かあればそれはいともたやすく変わっていく。
「まぁ、信じられないかもな..........だから、そうだな.........俺に素手で触れてみろ。お前の運命とやらが覆ることがないのなら俺はアンタの毒で苦しむだろうな?」
陽翔は知っている。昔の自分が聞いたら何をバカな事をと思ってしまうと分かっている。だから、言葉をいくら紡いだところで無駄だ。行動で示す他ないのだ。
「...........正気?私が素手で触れればただでは済まないわよ」
そう、彼女の場合にただ触れているだけで通常は毒に侵される。強力すぎるその能力は彼女自身を毒そのものに変えてしまうほどなのだ。
だが、陽翔ならば───
「それはどうかな?」
「...........いいわ。後悔しても知らないわよ」
そう、普通に触れられでもしたらひとたまりもないのだろう
それはあのシルヴィが昨年の竜王星武祭の決勝で彼女に敗れた姿を見てよくわかっている。
だが、残念なことに俺は普通ではない。俺は彼女が手袋を外すのを見て、手を前に差し出す。すると彼女も俺のその手に伸ばし、触れる。
結果は...............
「物騒な二つ名な割に綺麗な手してるんだな」
「.............苦しくないの?」
「そう見える?俺の体調はすこぶるいいぞ?」
「ありえない...........何故?どうして............なんで貴方は?」
僅かにも顔色を変えない陽翔に困惑する《
「俺の能力知ってるならだいたい予想はつくだろ?」
「!............まさか、毒をすべて別空間に.........」
「正解」
俺は自身にとって有害なものが触れる傍からすべてを別空間へと飛ばすことで一切の毒を受けないことができる。元々できるとは思ってたし、やはり彼女に対して俺の能力は相性がいい。
「俺の能力は時空間支配...........時空を
ただ操るのではなく、支配し統べることで同系統能力とは異次元な自由度を誇る。だからこそ任意の物質のみを対象に...........それも微小なウイルス等の目に見えないレベルの物質であろうと別空間へと飛ばしたり、ヘルガさん程ではないが時間さえも干渉を可能とする程だ。
「さて、こっちに行ってみるぞ」
俺はそのまま彼女の手を引き、綺麗な花が咲き誇る花壇の前まで連れてきたところで手を離す
「ほら、触れてみろよ」
「で、でも..........」
「触れたときに、お前の身体から放たれる毒素を別空間に飛ばすようにしておいた。思う存分楽しめよ」
既に彼女には自分自身と同じ技をかけておいた。勿論効果は永遠というわけじゃない。だが、彼女が満足するまでなら鍛錬で少々心もとない星辰力も持つ限りでは踏ん張ろうと思う
「わ、わかったわ........」
彼女はしゃがみ込み恐る恐る花に手を伸ばす。とは言え、もう彼女が近づいても花が枯れる様子がないのだから当然───
「ほ、本当に触れている..........触れられているっ..........あぁ、何年ぶりかしら」
(何だよ..........ちゃんといい顔で笑えるんじゃん)
まるで明るい方の感情が枯れ切ってしまったような彼女だったが、花をめでる彼女の表情はとても優しい表情をしているのであった
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「んじゃ俺は帰る。後輩またしてるしな」
あれから数十分ほど花をめでる姿を見守ると満足したのか立ち上がったので俺はそれだけ言って立ち去ろうとしたところで.............
「待って」
「ん?どうした?」
「.............ありがとう。私に花をめでさせてくれてありがとう」
「気にするな。ただの自己満だ」
放っておけなくなって勝手に首を突っ込んだのだ。別に助けたいとか思ったのではなく、端にそうしたいと思ったからしただけの自己満足............いや、本当は昔の自分に似ていたからだ。自分の能力や星辰力量による苦悩にはやはり共感できる部分はある
「変な人ね」クスクス
先程とは見違えるほどの柔和な笑みを浮かべる彼女に吊られ陽翔も自然と笑みが零れる
「ははは、よく言われる」
「..............でも、貴方と会えてよかった」
「そりゃ最強の魔女様にそう言ってもらえて光栄だ」
おどけて見せると彼女はまた微笑んだ
「《
「まぁ、そりゃ花に触れたいだろうしな。.......ほれ、これ俺の連絡先。時間があるときは付き合う」
端末を操作し連絡先を渡す。とは言え、花に触れるために何度も呼び出され続けるのもアレだし、なんか考えたほうがいいかもしれない。
「そう.........ふふふ、ありがとう」
「おう、それじゃまたな」
そうしてまた俺が立ち去ろうとすると、彼女は俺の服を掴んでまた引き留める
「まだ何かあるのか?」
「私はオーフェリアよ」
「は?そりゃ知ってる........「お前でもアンタでもないわ」.........何?名前で呼べと?」
いきなり自己紹介されたかと思えば名前呼びを要求してきた。こちらも警戒してたからお前とかアンタとか確かにあまりよろしいとは言えない態度だったのは認めざる負えない
「えぇ、私はオーフェリア..........オーフェリア・ランドルーフェンよ」
「俺は牙山陽翔だ。よろしくなオーフェリア」
最後にしてようやく俺達はちゃんとお互いの名前を知るのであった。
オーフェリアは公園を出たところで陽翔のはなれていく背中を見て不思議な感覚を覚えた。今までずっと傷つけることしかできなかったのに容易くそれを御された。今の今までだれ一人としてそれをなしたものはいなかった
「私の手が綺麗..............そんなこと初めて言われた」
毒そのものである自身の手が綺麗などと思ったことはなかった。そもそも肌を晒す機会さえないのだから当然でもあるが.............
ピピピピピィ!
「..............」
すると通話の通知がなり響く。先程まで陽翔がいたためよりむなしく.........そして、何よりも相手が相手だからこそもあるが何より先程までの事もあり余計に気が重い
「................私よ」
しかたないので通話に応えると不機嫌そうな男の声が聞こえてくる
『おい!こんな時間までどこほっつき歩いてやがる』
「......貴方に関係ないでしょ?言われなくとも帰るわ」
『フンッ..........今日はやけに反抗的じゃねぇか』
「............きるわ」
何故か、怒りがわいた。彼に今の時間の事を触れられたくないと思ってしまった。だからか普段よりもおざなりに答え通話を中断した
「...........」
もしも...........もしも彼に現状を話せばどうなるだろうか?
彼ならばもしかして───
「..............それは............ダメ」
誰かに縋ればいいなんて甘い考えができるほどオーフェリアは子供でもなければ、現実と言うものをよく知っている。
そんな彼女の寂しそうな背が六花の明るい街並みに溶けていくように消えるのであった
今回はアスタリスクの方を更新しました。次回は何を更新するか未定ですがreゼロ、よう実、ロクアカ辺りをかきたいとは思っています。今回もここまで読んでくださりありがとうございます!お気に入り登録、評価、コメントしてくださりありがとうございます!