六花で吠える太陽の牙狼   作:graphite

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これからに備えて

 

 

 

「俺がキレてた裏でねぇ」

 

後日俺は生徒会室でクローディアからユリスの襲撃に関することについて聞いていた。経緯は沙々宮がユリスと決闘をしようとした際に、 襲撃を受けたらしい。襲撃者は曰く二名、斧型の煌式武装とボーガン型の煌式武装の使い手。十中八九擬形体(パペット)だろうが、黒いローブを纏っていたので一概に断定できないらしい。

 

「陽翔がいれば相手が擬形体(パペット)かどうか分かるのですが、前回の経緯や状況証拠とその時間にアリバイのない生徒などから襲撃犯の候補は三人。その内特に怪しいのが...........」

 

俺があのとき擬形体(パペット)だと気がついたのはただ目視したからではない。俺は自身の能力上空間把握で生物か無機物か、その形状も手を取るように理解できる。もちろん意識して能力を使用すればさらに詳細にわかるが用いずとも体に染み付いた力だ。

 

「レスターとランディ、か」

 

犯人候補で挙げられたのはレスターとその取り巻き。つまりはレスター、ランディ、サイラスの3名。ただしその犯行時間に〝サイラス〟にはアリバイがあるらしい。しかも使われた武装はどちらもレスターとランディの得意とする武装なだけに事件の調査を担当する風紀員はどちらかだと疑ってるらしい。

 

「まぁ、俺ならあえてその二人に見せかけるけどな」

 

「そうですね。私でもそうすると思います。つまりあなたが一番疑ってるのは.........」

 

レスターは少なくともそういう卑怯な手を使うやつじゃない。強引ではあるがレスターの取る手段としては考えにくい。もちろんだからこそレスター達ではないとは言わないし、言えない。だが、そうなると1件目俺は確かに人間でないと確信してる以上、前回仕留められなかったからとはいえ、身元がバレるリスクを承知で本人が襲撃した理由が理解できない。

 

「あぁ、サイラスだな。まぁ、アルルカンとの関わりはほぼ間違いないだろ。目的は出場選手に怪我を負わせ辞退させる、または情報収集のどちらかといったところだろうな」

 

「私も怪しいのはサイラスだと思います。少なくともレスターの線は薄いでしょう」

 

「で、ユリスの守りは?」

 

「それを聞きますか?」

 

「護衛は拒否されただろ?ならそのポジションにあてがうのに適した人物がいるじゃないか」

 

言うまでもなくあの火遊び相手のことだ

 

「彼のことはどう思いますか?」

 

「食えないやつとは思うが、信用はできるだろ」

 

善人なのはわかるが飄々としてる印象が大きい。不思議な部分もあるが、最低限信用はできる。

 

「なるほど。まぁ、この件に関しては貴方のことも頼りにしてますよ」

 

「まぁ、今回は面倒とか以前の問題だ。副会長としてやるべきことはするさ」

 

 

 

****************************

 

 

「さて、綺凛。今後の方針を話そう」

 

「はい。陽翔先輩」

 

事件に関しては一先ず置いておくとし、鳳凰星祭に向けての特訓についての方針を説明する。

 

「特訓の場所はトレーニングルームはあまり使わないつもりだ」

 

「理由を聞いてもいいですか?」

 

「もっと強くなるのに適した環境があるからだな」

 

「..........なるほど。では、陽翔先輩の能力による空間ではなく別の場所ですよね?」

 

言い回しで綺凛は能力による時空間ではないと判断し確認する

 

「あぁ。その場所は界龍だ」

 

「他学園でですか!?」

 

驚くのも無理はない。ぶっちゃけこんな事ができるのは俺くらいだ

 

「正確には黄辰殿だけどね。昨日のうちに星露に話はつけてある。週の決まった日時に俺の能力で移動して星露と特訓だ。まぁ、もしかしたら向こうの出場者とも練習試合があり得るかもだがお互いの情報を交換条件に万有天羅の指導を受けられると考えてもらっていい」

 

向こうの学園は政治的思惑は皆無。ただ、強くなることを目的にしてる学園な上一時は編入を考えていた学園で顔見知りも多いから変に広まるリスクもない。だから俺達自身で気をつけないといけないのが他学園はもちろん自学園にもバレるの事。他学園に転校が軽々しくできないのはそうだが、密約を禁じる決まりもある。今回のは後者に触れかねないのもあるが、万有天羅は大きな影響力を持つため面倒になる。

 

 

「えっと......黄辰殿は確か星露さんの居住ですよね?」

 

「あぁ。特別な場所だ。それだけに星露と訓練するには適した場所だ。ただ、星露は多くの門下生を抱えてるから星露以外にも頼んでる人がいる」

 

「他にもですか?」

 

「あぁ。前回優勝者『天苛武葬』鞘虎峰『雷戟千花』セシリー・ウォンコンビにな。向こうは今回出場せず次の獅鷲星武祭に出場予定だから自己鍛錬のために付き合ってくれる」

 

虎峰は界龍で最も親しい友人だ。よく一緒に鍛錬をした仲であり、今でもプライベートはもちろん共に鍛錬をする。頼んでみるとお互い利があると快く受け入れてくれた。

 

「それはすごいですね」

 

「それともう一人..........『覇軍星君』こと武暁彗にも頼んでる」

 

「っ!あの覇軍星君に、ですか?」

 

「あぁ。界龍で俺が戦った相手の中で星露を除けばただの一度たりとも勝てたことのない相手だ」

 

綺凛には伝えていないがもう一人だけ勝てた試しのない人がいるが、その人のことは説明できないので割愛する。ただ本当に何度も鍛錬で手合わせしてきたがこれまで本当に勝てたことがない。武術に関して虎峰を、また星仙術に関してはセシリーを凌ぐ万有天羅を除けばこのアスタリスクでも最強クラスの武人だ

 

「陽翔先輩が一度も..........」

 

「あぁ。星露と同じでまるで歯が立たなかった。でも、次の獅鷲星武祭は出場してくるはずだ。その時に必ず俺が勝つ」

 

絶対に負けたままで終わらない。勝ってやる。絶対に

 

「............さて、あと話とくことは俺の能力やソルのこと。そしてその弱点についてだな」

 

「弱点ですか?」

 

「あぁ。当然弱点はいくつかある。綺凛にはそのカバーを頼むことになるはずだからな」

 

「!わかりました!任せてください!」

 

頼られた綺凛は嬉しそうにはにかむと頷いた

 

「さて、まずソルの弱点についてだ。綺凛はどの程度ソルのことを知っている?」

 

「えっと、確か全純星煌式武装の中でも最高クラスの火力を誇る。代償は確か大量の星辰力..............でしたよね?」

 

「概ねそうだな。代償の星辰力の方はさほど気にしないでもいい。けど、これだけの情報でどう感じる?」

 

「不釣り合いだと思います。勿論代償の星辰力の大量消耗は危険ですが火力の高さと釣り合ってるように思いません」

 

「そう。不釣り合いだ。そこで威力の帳尻を整えているのは残弾数とその回復だ」

 

「!なるほど、撃てる弾数には当然限りがあるわけですね」

 

「あぁ。俺の星辰力は勿論いるが、俺も総量自体には自信があるし枯渇することはまずない。ただ、それ以上に太陽光によるエネルギーが要る。つまり無闇矢鱈に撃ちまくれない。加えてコイツは夜にはなると起動すらできなくなり朝日が登るまで使えなくなるけど...................まぁ、こっちのリスクは問題ないからな」

 

「なるほど..........一発辺りどの程度の日光が必要ですか?」

 

夜に使えないというデメリットは星武祭ではさほど問題にはならない。しかし重要なのは連戦になるために残弾とその回復についてだ

 

「当然威力に依存するが平均で約3分、最高火力は1時間だ。加えて蓄積(チャージ)の条件に直射日光でないとだめなんだ。それも雲がかぶることは勿論部屋の中で窓越しでもだめだ」

 

意外と長くはないと思うが学生という都合上1日中蓄積できる訳では無いし、諸々の安全上ソル単体だけ外に放置しておける訳がない。なので実際使ってみると意外に制約は厳しいと感じる。まぁ、そのために単位はなるべく編入してすぐに取得してちょくちょく授業をサボっては昼寝でもしながら蓄積させてたりする。

 

「大会中弾数は枯渇すると思いますか?」

 

「そこは大丈夫だと思う。これを何十発もぶっ放さないといけない相手なら能力で攻撃するし、仮にそれを凌げるとすればそれこそ星露や暁彗さんクラスだ。ただ、万が一はある。覚えておいてほしい」

 

ソルの攻撃を受けれるなら能力で攻撃すればいいし、まず前提としてソルが例え最低威力の1射でもまともに防げる者はそうそういない。そう考えれば避けられさえしなければいいので自身の能力と射撃の相性的に無駄撃ちによる弾数の枯渇はないと考えることができる。だが、やはりどんな能力者あるいは純星煌式武装が出てくるかわからない以上節約して使っていく予定だ。

 

「わかりました」

 

「さて、ソルのことは一先ずこのくらいかな。俺の能力のことも話すよ」

 

「陽翔先輩は空間系の能力ですよね?」

 

「あぁ。正確には時空間支配だ。この能力でできることはそこまで知られてないはずだ」

 

「私も空間系としか聞いたことがありませんでした。詳細についてはほとんど知らないですね」

 

「その上で、まず前提としてこの能力は極めて強力であるということだ。そしてそれがこの能力の最大の弱点だ」

 

瞬間移動、空間物質問わずの入れ替えに空間座標の正確な把握そして空間の圧縮・膨張etc........射程は当然あるが、能力の応用でそれも伸ばすことは可能だ。つまりは空間を支配する絶対的な能力こそ陽翔が持つ魔術師(ダンテ)としての能力。

 

「..........加減、コントロールがとても難しいということですね」

 

「そう。俺自身につきまとう能力行使はそこまで難しくない。ただ俺以外の他人に掛ける事...........特に他者への攻撃的な能力の使用はかなり繊細なコントロールが求められる。前も言ったけど下手すれば殺しかねないんだ」

 

能力の暴走や事故等はこれまでもなかった。しかし、能力の使用を乱す能力や純星煌式武装を相手にしたとき能力の使用は著しく制限せざる負えなくなる。下手を打てば味方ごと多くの人間を巻き込み自爆する質の悪い爆弾のような能力なのだ。

 

「俺が能力を使わないのは能力の詳細を隠すためでもあるが、それと同じくらい能力による事故を防ぐためだ。だから俺は公式序列戦とかでほとんど能力で相手に干渉することはしない」

 

この能力で相手の校章を破壊する。有効射程で遠隔でそれをすれば非常に簡単に勝てることを今の今までやらずに来た。そんな簡単そうなことも相手の命を奪ってしまうという途轍もない程のリスクが常に隣り合わせなのだ。

 

「言うなれば必殺の能力.............確かにこれは攻撃に使うことは難しいですね」

 

屋外なら空に転移して落とすという単純な攻撃手段があるが当然会場の天井の高さはたかが知れてる。星脈世代相手ではダメージにもならないだろう。だからと言って空間の切断など空間由来の攻撃手段は確殺だ。ソルの1射が防がれたら能力による攻撃をとは言ったが正直殺さない手段が少なく、星武祭では攻撃手段として用いにくい。

 

「俺の能力による攻撃は空間由来な以上基本的に本人の防御力関係なく攻撃が通ってしまう。防御不可能の貫通攻撃なんだ。最も逆に空間を固定することで同系統能力もしくは貫通に特化した能力じゃないと攻撃を受けない絶対防御にもなりうるけどこっちはほぼできない」

 

犯罪者の取締で能力の対人使用における加減は鍛えてきたがそれでも何度か必要以上の重症を負わせることは少なくなかった。そのため基本能力の対象は自身または無機物等にしてきた。オーフェリア程じゃないが対人使用は難しい。

 

「できないのはどういうわけですか?星露さんとの模擬戦で使った能力に近いように思いますが」

 

「当然の疑問だな。まず、領域の原理から説明すると、アレは俺の知覚する空間に能力を付与して具現化したものだ。例えばそうだな............俺達がいるこの部屋をA、隣の部屋をBとしようか。で、この時に此処の建物全体が世界に例える。そこに加えてこの建物にある部屋がこの二部屋のみとしよう」

 

世界を俺達のような冒頭の十二人(ページ・ワン)に与えられる個人部屋の集まるこの建物に例え、そこには二つの部屋..............二つの領域の存在を仮定する。

 

「この時Aが俺達が存在して認識する現実世界だとしたとき対し隣の部屋のBが第一領域になる。そうだな...............いうなれば自分のすぐ隣にある空白の空間を能力で拡張したのが第一領域だ」

 

「成程..........だから領域が近いとあの時言ったのですね」

 

「そういう事。第一領域はいわば常にある自分の隣、あるいは重なり合った裏の部分。だから近い。で、ついでに説明すると第二領域は時間の流れが遅い領域。これはさっきの例えを使うと数秒前のBを具現化したもの................過去の空間の拡張で、第三領域はその逆だ」

 

一本の時間軸を持つ線グラフで考えるとわかりやすいだろう。起点となる点から、マイナスの点がすなわち過去。逆にプラスの点が未来。これが第二領域と第三領域であり、逆に第一領域はその時間軸を無視、或いは一本の時間軸を常に移動する点を具現化したものだ。

 

「能力の解釈と対象を広げてるわけですね。私が陽翔先輩と同じ能力を持ってても到底思い至らないと思います」

 

陽翔のやってることは綺凛の言う通り能力に対する解釈とその対象を拡張だ。例えば炎を出す能力があったとしよう。炎を出す能力なので炎を出すことは当然できる。そこから例えばユリスのように花の形に形状を変化させる事が、詰まる所能力の解釈の拡大だ。

 

加えて対象の拡大は炎を出す場所を自分のみから他者や武器などを介して発動するなど、自分という基礎となる対象からの拡大だ。射程を伸ばすととらえてもいいだろう。

 

つまり、陽翔は空間の作用だけではなく『()空間支配』という能力の通り空間のみの能力干渉だけではなく、能力の文字通り時間流へと解釈を広げたのだ。そして能力の対象を自分ではなくではなく、自分が認識・観測する空間領域に広げ時間流への作用も併せて具現化させたのが第一領域をはじめとするあの領域なのだ。

 

「まぁ、小難しい話だけどこれが技の原理だ。で、疑問の星露を足止めしたときに使ったやつも似たような理屈だ。あれは今現在の空間の拡張だ。過去も未来も後ろや前に進むもの...........いうなれば途切れることのない直線だ。けど、今は違う。現在は座標上でいえば点と考えられる。そうすれば、その点にとどまる空間は何もかもが停滞した領域だ。だからあの時の技のように領域に捕らえた対象に停滞を強制する技になるというわけだ」

 

「現在は点...........停滞している」

 

「まぁ、自分でいうのもあれだが変な解釈をしてる自覚はある。けど、事実そうだろ?何もしない今はただただ停滞してる。けど踏み出したり顧みたりと歩んできた道のりは後にも先にも広がってる」

 

微妙な反応な綺凛の通り何とも変わった解釈を持ってることを再認識するが陽翔は間違っていないと信じていた。そも、世界からすれば今は本当に停滞した地点だ。世界の誕生はここより数億年も前だし、未来なんてそれこそ計り知れない。いわば人の尺度からすれば世界の過去も未来も現在からすれば無限なのだ。

 

「いえ、変と言いますか............うまく言えませんがわかったように思えます。それに私も父が捕まって直後はずっと世界が止まってしまったかのように思えましたから」

 

綺凛にとって父のいた時間は過去でいなくなってからは停滞したように思えた。だからこそ父が帰ってきたらそれは時間が動き出す事なんだと思うと理解できた気がした。

 

「そうか。なら、絶対優勝しないとな」

 

「はい!............あっ、すいません話の途中でした」

 

「そうだな。えっと領域の原理まで説明できたな。で、空間の固定による防御ができない理由だが、綺凛は............そうだな絵をかくのは得意か?」

 

「絵ですか?え、えっと............人並だと思います」

 

「俺もだ。じゃあ絵を描くとして絵は普通何に書く?」

 

「?画用紙やキャンバスとかですか?」

 

その問いがどう繋がってるのかわからず綺凛はちんぷんかんぷんな様子だ

 

「そうだな。じゃあ画用紙やキャンバスを使わずに絵を描けと言われたら?」

 

「えぇ!?そ、そんなのできませんよ?」

 

「そ、つまりそういうこと。空間の固定ってのはいわばキャンバスもなしに空間に絵を描くようなことだ。だから今の俺にはできない」

 

「あっ...........」

 

空間を固定しての防御。これは同じような能力で干渉するか空間すらも貫通するような、そういう事象に特化した力以外はまず通さない絶対防御だ。しかし、空間の固定は発言の通りキャンバスを用いずに絵を描くことと同義だ。要するにとんでもなく難しい。空間を圧縮したり膨張させるなどの『動』的な能力の使用はわかりやすいし、先の領域も自身の認識と観測に基づいたものの為言ってしまえばキャンバスに能力というインクで描写可能だ。しかし、空間の固定だけはそうはいかない。

 

「一瞬だけなら使えるけどアホみたいに集中しないといけないし、そもそも状況が動き続ける戦闘中に使えるものじゃない。星辰力での防御に似てるようでまるで違うというか................言語化しにくいくらいに難しい事なんだ」

 

「確かにそれは..............何と言いますかもはや神業みたいなものですね」

 

「あぁ。だから攻撃された部分を別空間に飛ばすとか、そもそも攻撃や有害なものを別空間に飛ばす方がわかりやすいし簡単だ」

 

転移させるのは非常に単純だ。故に防御に使うならわざわざ小難しい空間の固定をやる必要はなく、そもそも自身が瞬間移動で回避すればいいのだから細かな制御が後回しになりがちだ。

 

とはいえ、いつまでもこれではいけない。その後回しの結果が星露や暁彗さんとの模擬戦での敗北につながっているのだ。細かい能力の制御ができれば勝算ができるかもしれない。

 

「陽翔先輩みたいに能力が強力だと細かい制御が難しそうですね。一概に強い能力というのもいいものではないのがよくわかりました」

 

綺凛の言う通り言わば大量破壊兵器で特定対象のみだけを対処しろと言われても難しいということだ。傍から見れば恐らく非常に便利で文字通りに強い能力と見られるだろうが、本人からすればこれ程ピーキーな能力はない。

 

「あと、綺凛との決闘で見せた防御技。あれも欠陥があるんだ」

 

「すり抜ける技ですよね?とてもそう思えませんが...........」

 

「あれ、物理的ダメージこそ0だけど痛みはあるんだ」

 

「え!?」

 

「俺にもどうしてそんな欠陥ができてるかわからないけど感覚だけはなぜかあるんだよ。多分細かな制御ができてない故かな。だから、斬られる程度であれば痛い程度で済むけど例えばソルみたいな超火力をあれで凌ごうと思ったら失神するかもしれない」

 

「じゃ、じゃああの時はもしかして.........」

 

「そっ、痛覚はあったな。...........あ!綺凛は気にしなくていいからな?あの時も謝ったけど趣味の悪い手を使った俺が悪いから」

 

「は、はい...........で、でも..........その.........」

 

「?」

 

言うか言わないか、或いは言葉を探すようにする綺凛の様子をうかがってると意を決したように綺凛は口を開く

 

「あ、あまり陽翔先輩が負担になるような能力行使はしないでほしい..........です」

 

「............ありがとう心配してくれて。気をつける」

 

とは言ったものの他の使い方も負担が大きいものがある。

 

「その上で申し訳ないんだけど他にも負担のある技がいくつかあるんだよね..........まず──」

 

例えば星の眼(サテライト・アイ)のリスクや自分の体内に第三領域を展開しての加速手段などによる掛かる負荷など能力でできる技とリスクの殆どを細かく伝える。伝えていくほどに心配の表情から綺凛は少しずつ怒ったような表情になっていった

 

「むぅ.........陽翔先輩はもっとご自身のことを大切にしたほうがいいと思います」

 

「やっぱり怒ってる?」

 

「怒ってる...........というよりも悲しいです」

 

綺凛からすれば陽翔のまるで痛みを顧みないやり方とそのあり方が酷く悲しく思えるのだ。能力に当然リスクはつきまとうものだし、純星煌式武装もそういうある種等価交換的な関係で強力無比な力を持っていると理解している。だが、理解はできても心が受け入れられるかといえば別問題だ。

 

「?」

 

「陽翔先輩は優しすぎますよ。きっと、今あるものを取りこぼさない為に必死なんです」

 

「俺が.........優しい?」

 

割とマジでそんなことはないと思う。対戦相手は全力で殴れるし、犯罪者相手には能力の対人使用の訓練として戦ってたりとかしてたので、どちらかといえば悪魔的な人間に思える。

 

「はい。優しいですよ。だから、殺してしまうリスクがある能力の攻撃を躊躇っている。だから、能力を確実に扱えるように自身への負担を簡単に許容してしまう」

 

これだけ強力な能力、その反面制御が難しいとは言えそれを極端にまで使用を控えているのは綺凛からすれば陽翔が偏に優しいからとしか思えない。その上、自身の負荷をまるで当然のように受け入れているのが極めつけにそう思わされる。

 

「陽翔先輩。私は陽翔先輩が傷つくのは嫌です。陽翔先輩がいくら痛いことに慣れていても、私が辛いです。私が痛いんです。もっと...............もっとわがままになるべきだと思います」

 

そして、『痛み』に慣れている。

 

陽翔の過去を聞き、能力の反動を聞き、綺凛の中でソレは明確な陽翔の歪な部分として映った。あまりにも苦痛を受け入れすぎていることだ。能力の使用を控えてる理由は手の内を隠すことや事故を防ぐことが大部分な時点でおかしいのだ。自分への負担を殆ど考えていない。

 

実際、陽翔が考えていないわけではないのだが、あまりにもそのことに対して意識が軽すぎるように綺凛には見えてしまった。だから綺凛はそうしようもなくそのことが悲しくて痛いのだ。

 

「えっと..........一応俺も痛いのは嫌だからね?」

 

「で、でも........陽翔先輩は簡単にそれを受け入れすぎです!私との決闘だって本当の陽翔先輩の実力なら間合いから抜け出すことも、そもそも一瞬で決着をつける事ができたはずです」

 

そもそもの話、本当に能力の負荷をケアしているのであれば、あの決闘の時も今日みたいな動きをしていればそもそも能力を使わずに勝てたはずなのだ。確かに、隠しておきたい理由にも理解できるとは言え、表向きには誤魔化しようだってあるはずだ。

 

「流石に一瞬はキツイさ。綺凛相手じゃアレが最前手だった................って言うのは無理があるか?」

 

「はい」

 

実際問題、あそこまで打ち合わなくても決着をつける手はソルの力然り当然あったし、能力だって負荷のかかる使い方じゃなくても如何様に戦えた。偏に負担のかかる戦い方をしたのは言う通りかもしれない。

 

「.................そうだな。いい加減、能力の方も向き合わないとだと思ってたし気を付けるよ」

 

「はい!陽翔先輩ならきっとできます!!」

 

この能力の使い方、これは一つ今回の鳳凰星武祭における課題、目標へと至る為にもここで一つ殻を破らなくてはいけないだろう。

 

 

***************

 

 

『こんばんわハル君!』

 

「こんばんわシルヴィ」

 

夜、部屋のベランダにでて最早日常となっているシルヴィとの通話。今でもあの世界の歌姫とこうしてプライベートで会話できることに何とも言えないものがあるが、それ以上に今はただこの他愛ない大切な友人とのひと時が心地いい。

 

『.....................』

 

「?どうしたシルヴィ?」

 

『ハル君何かいいことあった?』

 

シルヴィが画面越しにじーっと顔を見てくるとそんな問いかけをしてきた

 

「ん~特には.........................あっ」

 

『何かあった?』

 

「いい事って言うか.........そういえば前にシルヴィにも似たようなこと心配されたなって」

 

『????』

 

今日綺凛が言ったことは以前星露との鍛錬の際もシルヴィに心配されたことだと思い返す。そう考えれば改めて綺凛が今日自分に抱いたであろう感情もよくわかる。

 

「俺の能力の使い方、あんま人からするといい気しないんだろうなって改めて思わされたんだよ」

 

『.............そうだね。正直言えば負担は仕方ない部分はあるよ?でも、ハル君はどこかそうなるであるべき、そうでないといけないみたいな感じがあって...................悲しかったし、私が痛かった』

 

シルヴィも綺凛と同じように能力を行使する陽翔の鍛錬の姿を見て、同じ悲しみと同じ痛みを感じていた。そして何より、被害者であるはずの陽翔が自罰的なのが何よりも心配だった。

 

「ごめんシルヴィ」

 

『謝らないでよ!確かに悲しかったし痛いし.........心配もしたよ?でも、ね?私はハル君を否定したいわけじゃないんだよ。さっきも言ったけど負担が発生するのもしょうがない部分はあるし、どうしようもないこともある。けどね、それはハル君の良さでもあると思うよ?』

 

「???」

 

『ハル君は優しい。自分だけが報われるみたいな形が嫌なくらいに底抜けに優しいの。素直にそれは尊敬するというか.............そ、その...........す、素敵だなって思う//////』

 

自罰的なのは裏を返せば、自分以外の苦痛を、不幸を親身になって考える事ができるからという事。そんな優しさ、まるで不幸をすべて晴れやかにしようと、無意識に願うような太陽のような優しさ、そんな陽翔の在り方はとても尊敬されるべきだとシルヴィは思っている。

 

『け、けどね!私はハル君に苦しんでほしくない。ハル君と一緒に笑っていたい。だからハル君は自分を................そうだね、私のこの想いを大切にしてほしいな』

 

きっと、簡単じゃないし陽翔はいざという時きっと躊躇わない気がする。だから卑怯だし、根本的には解決するわけじゃないかもしれない。それでもきっとこう言えば──────

 

「シルヴィの想い受け取った。俺の大切な人からの想いは絶対に無下にはできないな」

 

『ありがとうハル君!私の事、大切にしてねっ!』

 

ずるいけど、大切にしてくれるという言葉が心の底から安堵できた。

 

願わくばこの夜のように、これまで時間のように

 

2人の幸せな日々が、幸せだと断言するその日まで共にあれたら、と

 

2人は星に願うのであった

 

 





今回もここまで読んでくださりありがとうございます。

前回から期間が滅茶苦茶にあいてしまい申し訳ないです。次は少しは進んでいるリゼロ・よう実・SAOか、まだ全然書き始めてもいないロクアカ辺りを更新したいと思います。

因みに何故ここまで更新が空いたのか、何がきっかけだったかと思い返せば丁度ダイエット始めたことだと思います。そこからダイエットは普通に成功して、筋トレが普通に趣味になって日常的に筋トレするようになり、食事もまた自炊するようになったから完全に更新が止まってしまった感じですね。今も続けてますが最近は暑さも控えめになって捗るわけで............

も、勿論なるべく期間が空きすぎないように書いていこうと思うのでこれからもよろしくお願いいたします!

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