「ふわぁ~」
昨日はシルヴィとの電話のために急いで部屋に戻るとそこから1~2時間程度話してから一度切って風呂や食事を済ませてからもう一度長電話をしてたので少し寝不足気味だ。
「おはよう陽翔」
「おう綾斗」
「眠そうだけど昨日あれから何かあったの?」
「あー..........昔の事関連で少し、な?」
「あ!そ、そっか~」
どう言い訳しようかを考えていたところで昨日カミングアウトされた過去の件を使い誤魔化す。生徒会の事と言ってもよかったかもだが下手にクローディアの耳に入ったらシルヴィとのことがバレかねないしな
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俺達は一緒に教室に入ると夜吹が話かかけてくる
「おっス!お二人さん」
「おう、夜吹」
「おはよう」
そのまま談笑しながら席に向かうとすでに綾斗の隣の席にユリスは座っていた
「おはようユリス」
「う~すユリス」
「あぁ、おはよう........牙山もせめてしっかり挨拶したらどうだ」
「おはようございますお姫様。今日も大変麗しゅうございますね」
執事らしく恭しく、本気の畏まった挨拶をかましてやると................
「だからそれはやめろと言ってるだろう馬鹿者!!」
因みにこれをやるのは今日が初めてではなく何度か同じことをやってやったりするのだがやっぱりいい反応してくれるからおもしろい
そんな事を考えながら俺も席に座る。因みに俺の席は綾斗の真後ろである
だが、クラスメイトはそんなやり取りを見て..................
「「「姫様が牙山以外とあいさつしたぁーーー!?!?」」」
う、うるせぇ..........でも言われてみれば教室でユリスと話すのって俺位だけだっけ?
「し、失敬だな貴様ら!?私だって挨拶位する!!」
「いや、俺がからかったりしなかったらお前誰とも話さないじゃん」
「貴様やっぱり私の事を揶揄っていたのか!!」
えっ、今更聞くの?
「そうすれば少しはみんなとなじめるかなぁ~っていう副会長としての気遣いじゃないか」
「いらん気遣いだ!!」
「ふむ........なら綾斗。ユリスはどうやら綾斗がお望みの様だからあとはごゆっくり」
「えぇ!?」
「何故そうなる!?」
「いや俺の気遣いは嫌みたいだからここは火遊び相手同士の方が仲良くできそうかなぁ~って」
「火遊び相手言うな!!」
「まぁ.........その件はいいとしてユリスは綾斗と仲良くしといたほうがいいって俺は本気で思ってるんだぜ?ユリスならこの意味わかるだろ?」
ユリスは察しがいい。この言い回しをすれば何のことか恐らくわかるだろう
「..........お前まさか.......まぁ、いい。考えてはおく」
そこから昨日さぼってた沙々宮が実は綾斗と幼馴染で感動の再会何だと一悶着があり、その後HRが始まった。またHR後は腹ぐ...........クローディアが綾斗の純星煌式武装の適性検査の申請書を持ち込んできてまた一騒ぎと賑やかな........いや、むしろうるさいような一日を過ごした
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——授業後——
生徒会もなく特に用事もない今日はトレーニングルームで体を動かそうと丁度移動中だった。綾斗は何やらユリスと沙々宮と一緒にデート..........ではなく学内の案内をされてるらしい。俺も綾斗についてくるか誘われたが今日は何となく一人で過ごしたい気分だったので断らせてもらった
「貴様は牙山陽翔だな?」
後ろから誰か来たなと思うと突然上からな態度でそう尋ねられ振り返る
「............そうですか何か?」
後ろにいたのは俺が嫌いそうなタイプの中年のおっさんと小動物を思わせるような小柄な女子生徒だった。その女子生徒にはどこか見覚えがあり誰だったろうと考えていると.............
「貴様は確か序列二位だったな?聞いた話では《鳳凰星武祭》出場予定だったが都合により参加を見送ると.............そこで貴様には私の姪である綺凛と組むにふさわしいか綺凛と今ここで決闘をしろ」
(綺凛.........成程、道理で見覚えのある顔だと思ったら刀藤綺凛か)
陽翔は申し訳なさそうにしている彼女の正体を理解した。彼女は《疾風迅雷》の二つ名を背い、まだ中等部ながら序列一位の座を手にした剣の申し子たる才女
「..........なぜあなたの命令で彼女と決闘しなくてはいけないんですか?彼女が望んでいるならばまだしもそうには見えませんが?」
俺は何となくこの男がいけ好かない理由が見えてきた気がする。その核心を突くための問いを投げる
「口答えするな!!貴様は黙ってコイツと決闘すればいいのだ!!」
(あぁ............いけ好かないなんて生ぬるい...........俺はこのとこが心底嫌いだ)
恐らくこの男は身内を道具として考えているのだろう。俺にとってそれは一番許せないし、一番忌むべき存在だ
「お、伯父様。牙山先輩も困ってますし.........その.........」
彼女が仲裁に入ろうとしたところ興奮した伯父は手を上げようとする
「お前も口答えするな!!!!」
振り下ろされる平手。綺凛はまた叩かれると思い目を閉じる。だが..........
ガシッ!!
(あれ?痛く..........ない?)
綺凛は痛みが来ないと思い目を開けるとそこには腕をつかみ自分を守ってくれた人の姿がそこにはあった
「...........気が変わった。条件次第で受けてやるクソ野郎」
「き、貴様ァ..........!?」
俺はもうこの相手に敬語なんて使う必要すら感じない。だからぞんざいな態度で答える
「俺が勝ったらもう二度とこの子に手を上げるな。この子はアンタみたいな薄汚い大人の道具じゃない。彼女をぞんざいに扱わないと確約するのなら決闘を俺から申し込んでやる」
「!」
激昂した相手に俺は淡々とそれだけ告げる
「..........フンッ!まぁ、いい。勝手にしろ」
未だに傲慢な態度を崩さない相手に俺は力関係を理解させてやることにした
「俺は確約しろと言った................話、聞いてなかったのかクソ野郎?」
俺は
(な、なんて威圧!?凄い..........これが牙山先輩)
綺凛は陽翔の様子を見て畏怖と尊敬を抱いていた。今での陽翔の公式戦の様子も見てきたがどれも本気を見せてこなかっただけに余計にそう思えていた
「...........わ、わかった確約しよう」
若干顔色を悪くし膝を振るわせながら俺の条件をしっかりと飲んだことを確認する
「それでいい...........刀藤さんもいいかな?」
「は、はい。大丈夫です」
丁度辺りは広場だしソル・フラマも気をつけて使えば問題ないだろうと判断する
「そんじゃ刀藤さんこっちでやろう」
俺がそう言うと刀藤さんも後ろからついてきて手ごろなところまで出るとお互い離れる
「赤蓮の名の下に我牙山陽翔は刀藤綺凛との決闘を求める」
「その........本当にいいんですか?」
「問題ない。刀藤さんに対するあのクソ野郎の態度が気に食わない..........だから俺は君に決闘を挑む。俺は身内にあんな扱いをする奴がこの世で何よりも許せない」
俺には親の記憶もないし家族と言うものはもう知識でしか知らない。だからこそこんなまだ自分よりも小さな女の子があんな扱いをされているのが許せない。断じて許せない。
「牙山先輩.............分かりましたその決闘受諾します!」
騒ぎを聞きつけたのか徐々に人が集まる。俺はいつも通り相棒であるソル・フラマを展開させ慣れた重みを確かめる。念のためすぐに〝アレ〟も使えるように準備もしておく。この戦いだけは絶対に負けられない
カウントダウンスタート
二人はそれぞれの獲物を構え戦いの為に心を切り替える
3.........2.............1
そして
バトルスタート!!
「参りますッ!!」
流石は早い。綺凛は一直線にこちらに向かって切り込んでくる。だが俺とて負けるつもりはない
「フンッ!!」
俺も軌道を読みつつこちらからも踏み込み迎え撃つ
お互いの武器がぶつかり合い...........そして弾ける。この一合でお互いが理解したことはお互いの技量がほぼ拮抗していること。強いて言うなら綺凛は素早さが陽翔はパワーが相手より幾分か上回っているだけであると
切り返しが早いのはやはり綺凛だ。弾かれたところですぐにその勢いに差変わらず体勢を立て直すと攻撃につなげる
(流石に速い.......だが!)
相手のほうが速い。だが、陽翔は二刀..........〝単純〟な手数は上である
直ぐに弾かれたほうとは別の銃剣で受ける
陽翔の剣技は一撃必殺の剣ではなく連撃による手数多さと相手に合わせた万能さを売りにしている。剣の師から教わったのもあらゆる相手をあらゆる手をもって倒すというものだ。
二人はそこから流れるように剣の応酬が始まる
一進一退..........いや、お互いの連撃は今のところ同等であるため進んでいるようには見えない
(すごい......牙山先輩の剣技本当にすごい。技の速さ、鋭さ、正確さもどれも互角.........)
綺凛も技の速さ、鋭さ、正確さは他よりも優れているという確固たる自信がある。だからこそこれまで自身と拮抗した同じものを持つ相手と言うのに内心驚きを隠せない
(今は捌けてるが刀藤流の
だが、陽翔もまたこれほどまでに洗練した剣技を素の実力だけで捌くことは正直厳しいものがある。そして、陽翔も剣士の端くれとして刀藤流が何を得意としてるか知っている。恐れている
お互い拮抗した応酬の中、遂に綺凛は動く
(このまま続けてもダメ..........〝連鶴〟で決める!!)
「ッ!(来るか!!)」
綺凛の太刀筋が変わる。速さも流石としか言えないそのすさまじい剣技もそのままに、今までの斬り結びとは変わり法則性ができた途端に恐ろしく正確に隙の無い洗練された剣戟が襲い来る
陽翔が脳裏に浮かんだのは師の言葉
『〝連鶴〟.........アレは完全な連続剣じゃ。儂では至れなかった至上の剣技の一つじゃよ』
最初聞いた時はあの鬼みたいに強い師匠が至ることのできない剣技とかマジかよ.........と戦慄したものだ。だがこうして受けてみると分かる。師匠をそう言わしめる由縁を。
(こいつは本気でヤバい!鬼師匠の連続剣もえげつなかったけど......可愛い顔してえげつない剣才だぞこの子!?)
顔にこそ出ていないだろうが内心では戦慄していた。俺は師匠こそ最強の剣士だと感じていた。いつかは超えたいと思った目標でもあった。
だが、目の前の少女はその目標の存在を軽く上回っている。恐ろしいことにこれでもまだ成長の途中なのにだ。
(こりゃ能力なしじゃ無理だな.........)
陽翔はすぐに自身では剣技においてこの子の下だと理解し不公平ではあるが能力の使用をさせてもらうことにする
「
「?」
その瞬間陽翔の視界から色が削げ落ちモノクロ調に移り変わる
迫りくる剣、彼女の筋肉の細かい動きまでもを極小単位で座標的に把握する
(これでギリギリだが..........視えるし捌ける!!)
余りの速さにギリギリではあるが隙の無い連撃で押され気味だったのを拮抗した状態まで戻すことに成功する
(連鶴が捌かれている!?.......そうか!これが牙山先輩の
連鶴でこのまま押し切ろうとしたところでまたも拮抗した状態に戻されたことに驚きながらも冷静にその理由を理解する。綺凛も一応は陽翔が
だが、陽翔のこの技はそう長くは持たない
(目がいてぇ..........コレ目に無茶苦茶負担かかるんだよなぁ)
この技の長時間使用は視力の低下及び失明の危険がある。長く使えても一分が安全ラインだ。だからこそこれの弱点がバレる前に早期に決着をつけるしか陽翔に活路はない。
(乱れた!)
綺凛は陽翔が僅かな受けミスによりリズムが少し乱れたことに気が付くとすぐに隙ができると神経を尖らせると次の瞬間だった。ごく僅かに陽翔の体勢が崩れる
(校章が狙える!)
綺凛はそう思った時には刀を振り下ろしていた
だが——
「
「ッ!?!?」
陽翔がそう唱えたと同時に僅かに体をそらし半歩前に出た瞬間だった。綺凛は陽翔が踏み込んだことにより刀が陽翔の体を切り裂いた
だが、そんな事よりも綺凛にとって驚愕だったのは全く
(やっぱ超痛い!!けどこれで!!)
陽翔はそのまま流れるように剣を横薙ぎ一閃
完全に虚を突かれた綺凛の校章は断ち切られ——
エンドオブデュエル
ウィナー牙山陽翔
機械音がそう告げた瞬間一気にその場に集まっていた野次馬たちの歓声が大きくなる
綺凛は最後に陽翔の誘いに乗せられたと理解はできた。あの場面で無理して踏み込むことも今にして思えば体勢を崩したのも途中までの洗練された相手にしてみればらしくなかった。だが、それ以上に確実に自分の刀は陽翔の体に振り下ろされていた筈にも拘らず、手応えもなく見た感じ斬られた様子もない。その事が不思議でならなかった。
「牙山先輩最後のは一体.........」
「アレは剣が振り下ろされた座標にある俺の体を別の時空間に飛ばしてすり抜けたようにしたんだよ。驚かせて悪かったな」
(あぁ~まだ痛い!すんごい痛い!だからこれ使うの嫌だったんだよ.......)
陽翔は絶対に使いたくなかったのだが正直こうでもしなければ勝てないと判断したのだ。勿論、ソル・フラマを近距離射撃すれば簡単に倒すことは可能だったかもしれないが女性相手にやるのは流石にできる気がしなかった
「驚きましたが怪我がなかくて何よりです。大怪我させてしまったかもしれないと冷や冷やしてしまいました」
「ホント悪いな。趣味の悪いこんな策しか思いつかなくて」
そんな風に会話していると..............
「フン!この剣しか能のない綺凛が負けたことに関しては意外だがこれなら申し分ないな」
まだ懲りずに不遜な態度でそうのたまうクソ野郎に戦いの間は抑えていた怒りが爆発しそうになる。
「おい...........お前本当にいい加減にしろよ?彼女が剣しか能がないだと?これほどの技量に至るまでどれだけの努力が必要か全く理解できないのか?そしてそれをなせるだけの彼女の人間性もお前は理解できないのか?」
確かに彼女は間違いなく天才だ。十数年しか生きてないガキの俺にだってわかるほどに彼女の才覚はすさまじいことがわかる。だが何よりも凄いのはここまでに至るだけに積み上げて来たであろう努力とその人間性。自分よりも年下である彼女はきっと相当な覚悟と信念でここまで来たんだろうことを察するのはそう難しいことじゃない。
「ふん!下らんな!!貴様ら星脈世代は唯の自信の欲の為に争う化け物だろうに笑わせてくれる」
ゴウッッ!!!!
暴風が吹くかのような音が突如響く。その発生源は勿論陽翔で、重厚な
「いい加減にしろよ?俺が化けもと呼ばれるのはいい。何度もそう呼ばれとっくにもうなにも思わなくなった.............だがな!彼女を化け物呼ばわりすることだけは絶対に許さない!!彼女はひたむきで一生懸命なのが何でわからないんだよ?俺はお前みたいに身内をぞんざいに扱う奴がこの世で最も醜悪で吐き気を催すくらいに大っ嫌いだ!!!テメェは彼女の伯父なんだろうがッ!!だったら姪を大切にしやがれこの腐れ外道がッ!!!!」
俺は家族と言うものに憧れている
俺はそれを知らないから
だからこそ俺はかけがえのないものなんだと思った
絶対にぞんざいにしてはいけないものなのだと思った
だからこそ目の前のそれ踏みにじる薄汚い大人が許せない
俺は無意識に展開上体のソル・フラマを向けようとしていた
そんなところで——
「落ち着いてください牙山先輩!!」
「ダメだ!!落ち着いて陽翔!!」
「これ以上は拙いだろって!!!」
「落ち着いてください陽翔!!!」
突如俺の腕や胴にしがみついてくる者たちがいた
そのことで少しずつ頭が冷え冷静になりその者達が誰なのかに少しして気づく
「................刀藤さんに綾斗.........夜吹にクローディア...........すまない冷静じゃなかった」
荒れた海のような
そして周囲の野次馬たちも陽翔の圧に飲まれていたのでそれが解けたことにより耐性の無い者たちはその場に腰を抜かしてへたり込んでいた
そして綺凛の伯父鋼一郎鋼一郎も今までにない圧を受け膝をついていた
「ごめん刀藤さん。身勝手に当たり散らして迷惑かけた」
今回の事態の中心である彼女に俺は謝罪をする
「い、いえ!寧ろ私の為にこんなに怒ってくれて感謝しかありません!本当にありがとうございます!だから後は私に任せてください」
彼女はそう言うとクローディアと夜吹が伯父を支えながら連れていかれるのについって行った
そうしてるうちに辺りには俺と綾斗しかいなくなった
「えっと...........ちょっと立て込んでて途中からしか見てなかったけど陽翔はどうしてそんなに怒ってたの?」
「................昔、少しな」
俺はどうにも話す気にはなれなかった。シルヴィに話すときは抵抗なかったが今は気分が悪すぎてどうしても口に出せなかった
「..........そっか。今日は部屋に帰ろうよ、ね?」
綾斗にそう言われ俺はどうにか無言でうなずくと綾斗は何も言わず俺が立ち去るのを黙って見届けていた。
もうとっくに過去なんて割り切ったことだと思っていた。
だが、目の前であんな風な扱いを受ける彼女を見て耐えられなかった
俺にはない血縁者があんなひどいことをするなんて許せなかった
でも、家族がいることに嫉妬しているような自分が一番嫌いだ