あの決闘の後、浮かない気持ちのままベットで寝転がり天井をぼんやり眺めていた
シルヴィに電話でもかけてみようかと思ったが何故だかどうしてもそれは出来なかった。
いや、ホントは理由なんてわかっている..........
多分もう弱みを見せたくないのかもしれないのだ。自身の過去を知って悲しんでくれた彼女にあの時と同じ温かさを感じただけに遅いかもしれないがカッコつけたいのだろう
(ホント俺って奴は..........醜くて嫌な奴だ)
彼女には自分を悪く言うなと言われてもそう簡単に割り切れるものではなかった
陽翔は既に過去のことに対して怒りもなければ憎しみなんて物はさらにない。強いて言えば自分の手の届く人々に同じ痛みを受けて欲しくないくらいだろうか
(情けないが...............シルヴィの歌を聞くか...........今はそうしてないと馬鹿なこと考えそうだ)
なので憂さ晴らしに歌でも聞こうかと思っていると部屋の呼び鈴がなった。正直、今は相手をするのが億劫なので無視しようかと考えていると.................
「陽翔。居留守とは感心しませんよ?」
「............何で勝手に入ってきてるんだよクローディア」
「鍵が開いてましたので入っていいものだと思いましたが.........違ったんですか?」
すると抜け抜けと何でもないように我が物顔で自身のプライベートに無断で踏み込む
そもそもの話クローディアがこうして黙って入ってくるのは今日が初めてなどではない。鍵が開いてたら躊躇なく入ってきてはもてなせとせがむのだ
「はぁ~..............んで、なんだ仕事か?悪いが今日はやる気でないからまた明日まとめてやっとくからその変にでも──」
どうせクローディアの事だ。仕事でも任せに来たのだろうと素っ気なくおいていってくれと言いかけた所で
「あ、あの..........ご迷惑でしたか?」
「へ?...........なんで刀藤さんがここに?」
後ろから恐る恐ると言ったように入ってきたのは先程剣を交えた刀藤さんであった
「お話があるそうで連れてきたのですが陽翔は随分と酷い態度を取るのですね?」
「...........お前が相手だからに決まってるだろ腹黒生徒会長」
「へぇ~誰があの場をうまく収集させ、尚且つ刀藤さんの伯父様の方の対応もしたのか懇切丁寧に説明しましょうか?」
「はぁ~............悪かったよ。確かに今のは俺が完全に悪かった」
いくら悪友みたいなポジにいるクローディアと言えど対応がおざなりだったのは俺だ。謝るべきは俺なので素直に謝罪する
「ふふふ、明日仕事を三倍ほどこなしていただければ許します」
「俺の謝罪返して?」
いつものお互いにマウントを取り合うやり取りをしているとあっけに取られている刀藤さんに気が付く
「あっ........悪い刀藤さん。お客さんにまだ茶も出してなかったな。緑茶に紅茶、あと珈琲なんかもあるがどれがいい?」
俺が立ち上がって調理場に向かおうとしながら尋ねる
「え?あっ.....いえ!そんなお茶なんて大丈夫ですよ!」
「なら私は紅茶をください」
刀藤さんは遠慮してそう言うがこの腹黒は本当に全くと言っていい程遠慮を知らないな.............いつもの事だが
「.........まぁ、そう言うわけだしどうだ?」
「じゃ、じゃあ緑茶をお願いします」
俺は自分の分の飲み物と二人の飲み物を準備しに行くついでにリビングに移動してもらった。
陽翔はお湯を準備しながらこの間買っておいたそれぞれの飲み物に会いそうな菓子類を準備しつつ慣れた手つきで手際よく進めていく。星猟警備隊にいたころはそう言うのが得意なのは少なかったから必然的に家事スキルはある程度身についたために得意でもある
そうして準備を済ませるとリビングのテブールにかける二人の下に運ぶ
「ほら出来たぞ。菓子も用意したから好きに食ってくれ」
「あ、ありがとうございます牙山先輩」
「お菓子もとは流石気が利きますね陽翔」
「どういたしまして..........とでもいうと思ったか?お前はよく俺の部屋に飲みに来ては菓子をたかってる癖して..........おかげ街に出かけたら毎度茶請けの菓子なんかを買うようになっちまったんだぞ?」
「あら?それならこれからも遠慮なく通わせてもらいますね」
「おいふざけんなよな?いい加減俺も怒るからな?」
「あら.......そのセリフ何度目でしたかねぇ?私が来てもなんだかんだ準備してくれるのはどなたでしたっけ?」
ホント舐め腐りやがって...........でもなんだかんだ言ってこいつには世話になってるのは事実だし、適当にあしらうことはあっても最後には無碍にできないのは事実だ。ただ、こうも付け上がられるのもそれはそれなわけで、そろそろ訴えてもいいのではないだろうか?
「えっと.........仲がいいんですね牙山先輩とエンフィールド先輩は」
「まさか.......こいつは俺の事便利屋程度にしか思ってねぇんだぞ?無茶苦茶仕事押し付けるし刀藤さんもコイツと関わるなら気を付けたほうがいいぞ」
「あら?明日の仕事は5倍にしたほうがよろしいですかね?」
「...........こいつまじでいつか絶対泣かす」
「ふふ..........陽翔にできますかねぇ?」
そのようなくだらない部下と上司のやり取りを見せるとどこか不機嫌そうに綺凛はぼそりと呟く
「やっぱり仲がいいじゃないですか...........」ボソッ
「ん?どうしたんだ刀藤さん?」
「い、いいえ!」
何かぼそりと呟いたようだが聞き取れなかったため聞き返したところはぐらかされてしまった。だがまぁそんな事より本題を聞くとするか
「んで、クローディア達はどうしてここに?」
「まずは序列一位になったことおめでとうございます陽翔」
「あぁ..........そういや俺一位になるわけか。ぶっちゃけ忘れてた」
アイツとシルヴィと並んだわけだが........あの二人はちょっと別格だから実感がわかないな
「そん事だと思いましたよ。と言っても貴方の場合何が変わるというわけではありませんが彼女と彼女の伯父の事について事後説明が必要だと思い来ました」
そうクローディアが言うと視線が自然と刀藤さんの方に向けられ話し手もそれに伴い移り変わる
「えっと...........あの後私は伯父と話し合って..........いえ、私の方から一方的に伯父との協力関係を断ってきました」
そう言う彼女の瞳には強い意志を感じられる。あの後何があったか知らないが俺個人としては正直安心できるものがある
「そうか........でもその様子だと何か問題があるんじゃないのか?」
毅然と彼女の意思でそうしたのだろうが表情は浮かない。もし問題があるのならこの状況にしてしまった俺に責任がある。後ろ盾は少ないができることなら何でもするところではあるが.............
「はい。伯父からの援助が完全に断たれてしまい生活する拠点がなくなりました。それと後もう一つ問題が.........」
生活の拠点も問題だがそれ以上に悲痛そうな表情で押し黙ったところでクローディアが代わりに続ける
「彼女の父親は現在刑務所に収監されています。罪状は非星脈世代に対しての暴行...........ですがそれは当時偶々刀藤さんと刀藤さんの父親が入った店に押し入った賊から幼かった刀藤さんを守るためもので正当防衛でした。そして彼女は父親を助けるために《
(成程..........だから彼女は.......)
肉親の為に奮起する彼女を見て、家族に憧れを持つ陽翔が見捨てることなどできるわけもなかった
「住む場所に関してはクローディアの.........はやめたほうがいいな。ユリスあたりにでも頼めば問題ないんじゃないか?それと後者に関しては俺が刀藤さんと組んで優勝できるかはともかくとして《
住む場所に関してはクローディアの部屋は諸事情あり少し厳しいが《
「私と出てくれるんですか?」
「刀藤さんさえよければ構わないさ。俺も最初はクローディアと出るつもりだったし、刀藤さんとなら相性からしてもそう悪いわけじゃないから客観的に見ても二人一組のこの大会なら十分に優勝は狙えると思う」
《
「そ、その.......こんな私でよければよろしくお願いします!」
「.........言い方を変えるわ。俺は刀藤さんと組んで出たい。だからこんな私なんて言わないでくれ。俺は刀藤さんの事を一人の剣士として..........人として尊敬してるからさ。だから自信もって、な?」
「ッ!//////は、はいっ!お願いします牙山先輩!///////」
年相応の満面の笑みでそう改めてお願いしてくる彼女に俺も笑顔で答える
「よろしくな。あとは住居だが俺ユリスの連絡先もってないんだよなぁ~クローディア今すぐ聞けるか?」
「私の部屋は確かにお勧めできないですし妥当な判断だとは思いますが..........ユリスの事ですから少し難しいかと」
そうか?いくらアイツでも事情を説明すればそう難しいとは思えないが........
「てかさ別に刀藤さんは序列二位なわけだし普通に個室空いてるだろ?そもそも無いにしても女子寮の空きがあるんじゃないか?」
よくよく考えれば冒頭の十二人には個室が与えられるので今まで刀藤さんがその特権を使ってえなかったわけだから空き部屋があるはずだし、なくても女子寮も探せば空き部屋ぐらいあるだろうことをすっかり忘れていたのでそう提案するが.............
「それが個室は諸事情あり使えない状況で.........それに女子寮の方は空きが今なく」
「は?マジで言ってんのか?この間書類ではそんな事............」
つい最近書類整理で寮管理あたりの奴を目にした機会があったが空きはあった気がしたが...........記憶違いか?
「そんじゃ俺の口座から金下してそこら辺のマンション一室借りておいてくれ」
ぶっちゃけ序列二位にもなると月にもらえる報奨金も結構もらえるし、その上星猟警備隊時代の給金の貯金もあるので家賃を払うくらい造作もないだろう。
そう考えていると..............
「あ、あの!.............牙山先輩が嫌でないのなら私を...........その..........こ、このお部屋に置いてもらえないでしょうか!//////////」
し~ん................
その瞬間部屋を沈黙が支配し陽翔も少し理解するまで時間をかけ、理解できたところで冷静に突っ込む
「............待て。いや、勿論嫌だからとかじゃないが...............問題がありすぎだろ?俺捕まっちゃうよ?」
ブタ箱でヘルガさんに嬲られるまでの未来が軽く見えてしまう。嫌だよマジで?
「あら?問題ないと思いますが?陽翔一人でこの部屋を使うのは広すぎるのではないですか?」
「おいコラ腹黒女。部屋の広さじゃなくて倫理的な問題だ。俺が襲ったりするかもしれないとかそう言う話だよ」
「お、おそ、襲う!?///////////」
ピュアな刀藤さんは顔を赤くするせいでこっちもやましいことしてるような気分になり慌てる
「いや待って!お願いだから待って!?例え話だからそんな過剰に反応されるとどうすればいいか困る..........って、おい腹黒笑ってんじゃねぇ!!」
俺が面食らってる様子を見て愉しそうに笑うコイツはホントいい加減マジでいつか泣かせる
「良い......クック......じゃないですか?.......プップ......別に陽翔はそういう所しっかりしてるしてるのは知ってますし」
「お前紐なしバンジーさせたろうか?ン?」
「あら、淑女にそういう対応は紳士としていかがなものかと思いますが?」
「淑女なら刀藤さんの暴走止めろよエセ淑女..........なぁ、刀藤さんも流石に男女が一つの屋根の下過ごすのは拙いのはわかるだろ?特に刀藤さんみたいなかわいい子なんかは男は簡単に惑わされちゃうんだぞ?俺は君の先輩なんだからお金のことは申し訳がらなくていいから、な?」
あくまで冷静に先輩として誠実な対応をしたところ...............
「わ、私が可愛い!?あぅっ.......////////........え、えっと.......その........牙山先輩は........その、私に惑わされてしまうんですか?////////」
いじらしく可愛いな........だが、これってどう答えても地雷でしかない気がするのだが?
「あー...........そうだな俺は多分我慢できると思う。わからないけど」
考えた末に思いついた言葉は『我慢できる』だった。明確に否定するのはなんか失礼かもだしかといって認めるのもなんかダメな気がしてそこが思いつく限りの落としどころだと考えた
「我慢.......つまりは............」
何かボソボソと呟いてるがさすがに彼女を部屋に置くのは拙いだろう
「おいそこの自称淑女もなんか言ったらどうだ?流石に上層部も黙ってないだろ?」
「自称とは言ってくれますね............まぁ、いいですが上層部に関しては問題ありません。私が説得しますので」
「おいコラふざけんな!倫理的に考えろやこの腹黒女!!」
コイツさてはハナからこうするつもり出来やがったな?
俺はどうやって説得するか考えていると..........
「牙山先輩は...........私の事嫌い.........ですか?」
(あぁ!!上目遣いで見ないでくれ!?俺が悪いことしてるみたいでしょうが!!)
上目遣いなうえにうるんだ目で見られていると俺が虐めてるみたいで大変よろしくない。本来なら絶対に彼女の為にも認めるべきではないのだろうが.............
(この子.........無意識でこれだから罪悪感が凄いんだよなぁ........まじで俺が悪いみたいだし........)
刀藤さんは何と言うか庇護欲の塊みたいと言うのか.......こうも懇願されるとどうにも固辞しようとしている俺が大罪人みたいで実によろしくない。
「嫌いじゃないからそんな不安そうにしないでくれ..........分かった。刀藤さんがいいなら俺はもう止めない。それに俺が責任を取らなきゃいけない案件だしな」
「よ、よろしくお願いします!!」
「あぁ.............で、これで用件は終わりか?クローディア」
「もう一つのことについては時間もかかりますので後日お話します。刀藤さんの方は今日からここに泊めてあげてください。明日私物などは配送させるよう手配しときますので」
「了解」
それから少ししてクローディアは退室していき刀藤さんと二人きりになってしまった
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「さて..........部屋は空室があるからいいとしてある程度は生活のルール的なもの決めないといけないか。何か要望とかあるなら聞くけど?」
(なるべく彼女の要望は聞き入れたいところだが.........)
俺のそんな問いに少しばかり予想外な要望がされる
「あっ........えっと、私の事........その、刀藤さんって呼び方を変えてもらえませんか?なんだか.......そのよそよそしくて...........なんだか寂しい、です////////」
もじもじとそんなことを言う彼女はやはりまだ年下の少女なんだと思い出させる
「そっか.........じゃあ綺凛でいいか?俺の事も敬語じゃなくていいし下の名前で呼び捨てしてくれて構わないからさ」
「は、はい!名前呼びでお願いします!あっ.........でも、流石に牙山先輩は.......い、いえ......は、はは陽翔先輩は先輩なので敬語は使わせてもらいます!//////」
名前で呼んであげるとそれは嬉しそうにするのでなんだかペットでもできた気分だ。いや、もしかしたらこれが妹ができた感覚と言うのだろうか?
「..................了解。まぁ、そんな緊張しないでくつろいでくれればいいから。気楽にやっていこう。取り合えずトイレ、風呂は鍵を絶対にしめるようにしたほうがいいな。洗濯も別にするのがいいだろう」
下手な事故が起きては間違いなく自信が極刑ものだ。それだけは何としても避けたい。
「は、はい。あと、食事とかはどうしますか?私少しなら作れますが.........」
「ん~俺も少しはできるし一週間くらい交互に当番制でやってみて無理そうならどっちかが食事担当でどっちかが掃除担当みたいに役割分担するか学食で済ませるかだな」
「そうですね」
とりあえずはこんなとこだろうか?ある程度適当な形のルールは決まったように思える
「さて.........取り合えずこんな感じで後はその時々に応じてでいいかな?」
「はい、そうですね。私も問題ないと思います」
「よし。なら購買部いくか。流石に寝間着は持ってないだろうし女の子ならほかにも入用なものなんかあるだろ?」
購買部にはジャージなんかも売られてるし日常用品もある程度は備え付けられているためそう提案する
「あっ、わかりました!」
こうして後輩との同居生活が始まったのであった
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とある船内
「ん?何々..........【憤怒の牙狼!ついに序列一位に!!】ってこれハル君の事なんじゃ............」
六花に向かう船の中世界の歌姫シルヴィア・リューネハイムはそんな見出しのネットへの書き込みを見つける。
「へぇ~疾風迅雷に勝ったんだ.......あっ、動画もあるみたい」
自分の知り合いと言うこともありどんな戦いだったのか動画を見てみると...............
「...........ハル君。やっぱり昔の事で...........」
彼の戦いぶりはすさまじいものだった。彼女の肥えた目からしても彼の実力はアスタリスクでも屈指の物に映る。
だが、それ以上にシルヴィは疾風迅雷の伯父に激怒したことに注目した。陽翔の過去を知る分理由はいたいくらいよくわかった。彼が怒る理由を理解できてしまうだけに、同時にとても悲しかった
(ハル君........寂しいんだろうな.......きっと...........)
激怒している彼の顔には怒りの感情だけでなく深い悲しみのようなものをひしひしと、映像越しであるにも拘らずわかってしまう
彼は過去の事を語った時に言っていた「寂しかった」と..........
「............よし!帰ったら直接会いに行こうっと♪喜んでれるかな?」
私が彼を救ったのなら何度だって彼に手を伸ばそう。大切な友人なのだから
ただ、偶然にも彼と会うことになったうえとある大物とも会うことになるとはこの時は露にも思わなかったのであった
今回はここまでです。何と言いますか.......メインヒロインはシルヴィなのにクローディアが悪友ポジを利用して陽翔を狙ってる見たくなってしまってますね。クローディアは個人的に割と好きなので書いてるうちに気がついたらヒロインになってそうですw
ですが、綺凛ちゃんはその分まだ近所のお兄さんを憧れるみたいな感じですが十分ヒロインで来ていた筈ですし、最後のシルヴィも自分が陽翔のこと一番理解してます風の正妻っぽくできたと思うので大丈夫..........ですよね?
兎にも角にも今回もここまで読んでくださりありがとうございます!コメント、お気に入り登録、評価をしてくださり本当にありがとうございます!