『全く............ソルばかり狡いですわ』
シルヴィと話し込んでから少しして綺凛が訓練してる場所へ向かおうとしていると、陽翔の脳内に直接どこか寂し気な拗ねた声が聞こえてくる。
『別に声掛けてくれてもよかったんだぞ?』
『.........自分でなるべく人にばれたくないとおしゃったくせに』
『そりゃ、お前は俺の正真正銘〝最高〟の切り札だし隠しておきたいさ。でも、お前にだって意志がある。それを無理に曲げてまでは押し付けないって言ってるだろ?』
『それは..........そうですが...........でも!』
確かに俺自身があまりこのことは知られたくないと隠すことに協力してほしいとはお願いしたが、彼女の意志を捻じ曲げてまでそれを押し付ける気はない。
それに──
『それに、拗ねてるのはソルが当てつけで〝一心同体〟だって言ったからだろ?』
『んなッ!?そっ、それはッ!?////////い、いえ!それよりも拗ねてなどいませんわ!?』
今話してる彼女は俺が最初に手にした相棒..........
そう、今の話し相手はほとんどの者..........恐らくはクローディアとヘルガさん、あとはウチの学園上層部しか知らないであろう俺がもう一つ所有している純星煌式武装《クロノ=ギアス》ことクロである。
クロは俺がまだ星猟警備隊にいた頃にとあるマフィアから押収した品であり、偶然手にしたら気に入られ統合企業財団に渡す予定が自分自身が貰うことになったのだ。製作者は不明だがその能力は非常に強く、起動時間に応じて自身や自身の能力、自身が装備する武装の強化をすると言った単純だがそれ故に強力な能力を有してる。
とは言え、クロを使う事をほとんどしないのは並々ならぬデメリットがある。それは起動時間に対する3600倍の寿命と言う、自身の寿命を代償としていることだ。つまり一秒起動すれば1時間の寿命を消費するのだ。その上、一年以上の寿命を一気に代償に充てると強力な強化を得られる。
そしてクロ自身もその事を気にしており、口では寂しいとか言ってもむやみやたらに使おうとするのを嫌う。能力が強力だから隠したいと言うほかに、そう言う意味でも切り札であるために公にしていない。
彼女こそが俺本来の主武装............つまりは一心同体のパートナーなのである。
『安心しろクロ。お前は一心同体の俺の相棒だよ。そりゃ、ソルがもっぱら俺の主武装だが、最初の相棒はお前だ』
『..........と、当然ですわ!私たちは一心同体のような関係ですもの!えぇ!ソルの言葉になんか惑わされたりいたしませんわ!』
そう伝えると嬉しそうな声が響く。ソルは悪戯好きで揶揄ったりするのが好きな人懐っこい性格に対し、クロはお嬢様然とした気高い感じではあるのだが..........どこぞの媒体での名優の様にギャグもシリアスも何でもござれりのポンコツお嬢様系と言う奴だ。その分こうやってソルの触発されやすかったりと言ったところがある。
『まぁ、俺も最近はクロと戦う機会なんてなかったし悪かった。寝不足にならない程度なら夢の中でならパクパクに付き合ってやるよ』
『パクパクですわ!.....って何言わせるんですの!?私一度たりともそんなこと言った記憶はありませんわ!』
夢の中ではクロもソルと同じく人型で対話することが可能だ。その際夢の中というのは景観や物品は俺の記憶を媒介に星辰力で賄われており、ゲームなり何なりで遊んだりしてるのだがクロは特にスイーツが大の好物だ。一度夢の世界って便利だなぁ~とか思いながら食べ物を出して食べると言ったことをしていた時に食べさせてみれば気がつけば好物となっていた。
まぁ、夢の中の者は俺の星辰力なわけであまりやりすぎると寝てるのに疲れるという意味の分からん経験ができたりする。
『いやいや、お前よく言ってたぞ?』
『う、嘘ですわよね?私がそんな...........』
『うん。嘘.............でも、いくら俺の星辰力が多いとはいえがつがつ食うのは辞めろよな?偶に寝てたはずなのに星辰力が回復してない時あるし』
基本は俺が夢で対話するときに限るのだが、クロとは付き合いが長いせいか勝手に自分で俺の星辰力で準備してしまうのだ。本人はうまく隠れてできてると思ってるのだろうがバレバレである。
『ぎくっ...........バレておりましたのね..........すみませんでした』
『そりゃいくら量があるからとはいえ、自分の体なんだから気が付くさ。まぁ、別に食いすぎさえしなければ勝手にしていいけどさ』
『わかりましたわ.........でも、陽翔の星辰力がおいしいのがいけないと思いますわ』
『美味しいのはスイーツだろ?』
『元は陽翔の星辰力ですわよ?陽翔の星辰力は何と言いますか綺麗.....と言うのは変かもしれませんが兎に角私は好ましいと思ってますわ』
事あるごとにソルもそうだが俺の星辰力はやれ綺麗だの、やれ上質だのと言うのだがよくわからない。まぁ、気に入られてるのならいいのだが──
(......................そのうち「パクパクですわ!」とか言って食われたりしないよな俺?)
一抹の不安を感じながら仕方ない相棒だと思うのであった
******************
「一つ聞いてもいいですか?」
「ん?何が聞きたいのだ?」
綺凛は星露と離れた場所でけいこをつけてもらう前に一つ聞きたいことがあると切り出した
「陽翔先輩はアスタリスク全体で順位をつけるとすればどのくらい強さとお考えですか?」
「陽翔の強さのぅ..............」
綺凛は決闘の時、少なくとも剣技においての実力は互角.............傲慢かもしれないが剣士としてなら対等に渡り合えると感じた。事実綺凛のその分析自体は何も間違いではない。能力がなければ陽翔は連鶴を防げていたとは思っていないのだ。
だが、先の星露との戦闘........間違いなく決闘の時とは次元が違う。確かにあの時の陽翔が手を抜いていたとは綺凛も思っていない。本気ではあったが全力ではなかった。自分では全力を出させるに至らなかった。
「..........総合的に見ればではあるが、陽翔の強さはアスタリスクの全学生中で上位に入るじゃろうな」
「..............」
「少なくとも確実に陽翔より上と言える学生は5人............一人は妾として、《孤毒の魔女》オーフェリア=ランドルーフェン、《覇軍星君》武暁彗、《聖騎士》アーネスト・フェアクロフ.........そして《戦律の魔女》シルヴィア=リューネハイムじゃな」
層々たる面々なだけに綺凛は息を呑む。
存在から隔絶しているまごうこと無き最強を体現する《万有天羅》
最凶の能力に無尽蔵というべき星辰力を誇る最強の魔女《孤毒の魔女》
《万有天羅》の一番弟子にして陽翔が一度たりとも模擬戦で勝てたことのない相手である《覇軍星君》
清廉潔白、さながら騎士の見本そのものである六花最強の剣士である《聖騎士》
そして《戦律の魔女》───
華やかで誰もを惹きつける彼女は六花の誰よりも万能だ。回復以外の全ての事象をコントロールする姿はさながら女神の如く神々しささえある
「とは言えじゃ。これはあくまで妾の想像の域をでぬ.............それに今日の陽翔を見ればその分析はいささか正確ではないじゃろうな」
「つまりどういう事でしょうか?」
「妾が最後に陽翔の稽古をつけたのは丁度3ヶ月ほど前だったが............この間で格段に実力を伸ばしておった。特に最後の大技..........陽翔は以前大技を持っとらんかったが........くっくくく.........妾に一泡吹かそうという想いであれほどの代物を編み出してくるとは思わなんだ」
凄絶な笑みを浮かべ感想を零す星露。目算では先に挙げた5人と陽翔の間にあった差は確かなものだった。だが、それがどうだ?この3ヶ月でその差は凄まじい勢いで縮まったと来た。星露にとってこれほど愉快で心をかき乱すことはあるだろうか。
以前までの陽翔の最大の弱点は必殺技を持たない事だった。確かに陽翔のソル=フラマの1射の威力は凄まじいし、能力をとっても強力だ。それを必殺技とも........大技ともいえるかもしれない。だが、戦局を一気に変えるだけの決定力があるかと言われれば否である。必殺技を持たないのは言い換えれば決め手がないとさえいえる。
「あの陽翔の大技.......『日輪』の威力はアスタリスク屈指の火力じゃ。あの技ならもしかすれば《孤毒の魔女》の防御も暁彗にも太刀打ちできるかもしれんのぅ」
「それほど...............ですか?」
確かに綺凛の目からしても尋常じゃない技なのは分かる。もしあの決闘の時、『日輪』を使われていればまず間違いなく瞬殺されていた。いや、そもそもあの時陽翔が全力ならきっと綺凛ではどちらにせよ秒殺されてたのは違いない
「うむ。じゃが刀藤綺凛よ...........そうおのれを卑下するものではないぞ?お主は剣技においては陽翔以上の逸材じゃ」
「え?」
綺凛はいきなり自分が考えていたことを言い当てられ驚く。確かに自分では陽翔には遠く及ばないとそう感じてしまっていたのだ。
「くっくく.........何故分かったか?という顔だのぅ。妾の目にかかれば表情から読み取ることなど造作ない」
「流石の慧眼ですね」
「まぁ、妾の周りには少なからずそう言ったおぬしの様に自身を過小評価している者はおったしな。じゃが、そう言うものは往々にして能力が高いものと決まっている」
強い光を持つものを見れば自分が矮小な存在だと思い込んでしまう。そんな強い光源そのものである星露からすれば綺凛のような表情は五万とみてきた。そしてそれが顕著に表れるのは得てして能力があるもの。能力があるからこそ差を的確に理解できてしまうからこそだ。
「じゃがのぅ...........それは惜しいと妾は思うんじゃ。能力なんてものは所詮は道具じゃ。道具の良し悪しだけでは強弱は語れんのじゃよ。それを使う者の燃え滾るような意志こそが強者たらしめると.............妾は陽翔から学んだのじゃ」
「陽翔先輩..........から?」
「そうじゃ。界龍には二つの派閥があってのぅ............武術を得意とする木派と星仙術を得意とする水派がある。陽翔は元々界龍に進学予定でその二つともに才があった。じゃから二つの派閥の者は陽翔を引き込もうとそれは揉めた物じゃ」
懐かしそうに...........そして、愉快そうに過去の思い出し話をする
「その時陽翔は何って言ったともう?」
「え?.............両方に入る、でしょうか?」
「概ねそうじゃ。あやつは両方で鍛えると言ったがそれで納得するほど連中は頭が柔らかくなくてのぅ...........ならばとそこで陽翔はこういったのじゃ................『全員まとめて相手をする。俺を倒した派閥につく』とな?」
「ぜ、全員...........人数は?」
「優に500は超えておったじゃろうな。全く無謀な事をするものだ」
「ご、500................そ、それで結果は?」
「最後まで戦い抜いた..........とはいえ、陽翔はこっぴどくボコボコにされたものじゃ。当時の陽翔の実力など今の半分にも及ばんのじゃからな。骨折に罅、大量出血に全身あざや火傷跡だらけの見るも無残な姿じゃったよ」
そう、当時の実力だって今とは比べ物にならないほど杜撰で無様の言葉に尽きる。その上で500もの相手を一人でだ。まともな状態で最後までいあられるわけがない
「拙い星仙術に、拙い武術............才はあっても何もかも拙い癖して大口をたたいたのじゃ。ある意味当然の仕打ちでもあった」
何もかもが未熟なくせに叩いた大口。
叩きのめされて当然だ。
だが───
「じゃが、あやつはあの場で戦っていた誰よりもただひたすらに、愚かしくも〝強さ〟だけを求めていた。誰よりも界龍のあるべき姿じゃった」
陽翔にとって生きる意味、目標や価値は当時から一つだけだった。
まだ生きていたいと...........命に希望を見出させてくれた〝彼女〟への感謝を伝えることだった。そのためにはただひたすらに強さこそが必要だった。そこが陽翔が相手した500人との明確な差だ。陽翔が欲したのは群れとしての力ではなく個としての力だ。
そして界龍に集まるものの多くは強さを求める者たちだ。だからこそ本来のあるべき姿を愚かしくも貫いた陽翔の姿勢は界龍の生徒を動かすに足るものだった
「結果.......その後の界龍と言えば変わったものじゃ。長年凝り固まった二つの派閥の者たちが鍛錬を共にしていたのじゃ。多少の反発もあったが、昔では考えられんほどに二つの派閥は手を取り合っとる」
「そう、ですか」
きっとすごく痛かったのだろう。凄く苦しかったのだろう。想像を絶するほどの苦痛の中で抗っていたのだろう。そんな苦行の果てに自身への見返りなんてないも等しいのにだ。
「とは言え、アレは陽翔が勝ったとは到底言えんものじゃな。そもそも勝ち負けで語っていいようなものでもないじゃろう。何せただの我欲を突き通すための通過儀礼のようなものじゃ。じゃが、お主も陽翔を慕うのであれば.............ゆめこの話忘れるでない。牙山陽翔とはどういう男かを。そして...........その陽翔自身が気にかけている刀藤綺凛がどうすべきかを」
「し、慕う!?」
「お主のぉ........それを気がついとらんのはその点に関しては図抜けて鈍感な陽翔だけだ。妾も歌姫殿もそれくらい見抜いておる」
「しょ、しょれは///////////!?!?」
「じゃが、ライバルは多いぞ?あやつはモテるからのぅ~うちの学園でもその件でファンができておるくらいじゃ」
「そ、そうですか...............」
「...........まぁ、話はここまでじゃ。そろそろ始めるとするかのぅ刀藤綺凛」
「ッ!」
綺凛は大きく後ろに飛びのき刀に手をかけ、油断なく構える
「くっくく..........殺気の感知は完璧じゃのぅ。これは滾ってくるわい」
「スゥ───............刀藤綺凛参りますッ!」
***************
綺凛は一直線に斬り込むが間合いに入ったと思った瞬間に星露霞むように消えた。
「ふむ...........悪くないスピードじゃ。まずは妾を捉えられるか試すとするかのぅ」
すぐに声の聞こえた方を振り返ると、先程まで自身がいた場所に星露は楽しそうに笑いながら立っていた。
(速い........)
先の陽翔の模擬戦もそうだが、綺凛もあの次元で動けるかと聞かれれば現状では難しい...........もしくは無理だと思ったのだから当然と言えば当然である。相手の速さは自身より明らかに上だ。
だが、綺凛とて..........《疾風迅雷》とて、速さで簡単に負ける気は毛頭ない
「知っておるか?妾の弟子になる条件はただ一つ。妾に触れることじゃ。お主には妾に触れることができるかの?」
「...................」
その星露の言葉には綺凛は応えなかった。だが、目つきは明らかに変わった。
「くっくくく..........良い目じゃ。こんな目を向けられては滾ってくるのぅ!」
凄絶な笑みだ。背筋をぞわぞわと嫌な感触がする。けど............
「ッ!!」
風の様に綺凛は鋭く、疾く駆ける
明らかに最初とは段違いの速さだ。
「おぉ!よいのぅ!よいのぅ!!」
だが、それで終わらない。まるで強引に上へ上へと新たなステージへ引き上げられるかのように綺凛の速度は累乗に上がっていく。
(もっと!もっと!陽翔先輩の隣に立つならもっと!)
綺凛にとって陽翔は誰よりも強く、誰よりも優しいまるで太陽のような存在。だから、綺凛は隣に立ちたい。鳳凰星武祭のパートナーとしてだけではなく対等な真のパートナーとして。だから───
「やあぁぁッ!!」
気合の籠った叫びと共に剣を振り抜く。その結果は───
「ほぅ...........妾にその刃届かせるか」
何と星露が手加減していたとはいえ、あの万有天羅に防御をさせた。そう、綺凛は星露を捉えたのだ
「成程のう...........《疾風迅雷》まさしくお主にこれ以上ない二つ名じゃな。ならばここからは妾も攻めるとしよう...........さぁ、刀藤綺凛よ!どう戦う?」
ここからが本番だ。
此処からはただ躱すことしかしない星露ではない。
気を抜けば..............数瞬と経たずして──
「ッ!?」
ドカァンッ!!!
「...........ほぅ、今のを咄嗟に防ぐとは大したものじゃ」
(............気を抜けばやられる!)
一瞬で間合いを詰めた星露の正拳突きを紙一重で綺凛は星辰力によって防ぐが、先程よりもさらに神経を尖らせ警戒を強める。
「今のは挨拶代わり..........さてとことんやるとしようではないか!!」
********************
「凄いね刀藤さん」
「剣技だけで言えば現時点ですでに《聖騎士》と互角レベルだ。そもそも単純な剣技じゃ俺も勝てない」
「そこまで高評価とはね..........流石は元序列一位は伊達じゃないね」
シルヴィと俺が来た時にはすでに戦いが始まっていた。相変わらずと言うべきか綺凛は手加減されているとはいえよく星露相手に食らいついている。
(これで綺凛が純星煌式武装を持った日には恐ろしいものがあるな.............)
綺凛の唯一の弱点は火力不足と言ったところだろうか。速さや攻撃の正確さは群を抜いているが、俺がそうだったように状況を一発で変えるだけの火力がないという一点において劣る。ただの日本刀だけであれだけ戦えるのだから十分にさえ思えるが、そこに純星煌式武装と言う破壊力が加わればと考えると怖いものがある。
とは言え、今は...........
(頑張れ綺凛。お前なら............)
「っはぁ───、っはぁ───.................」
(あれからまともに攻撃が入らない!わかっていたけど強い!)
綺凛は息が切れかけながら当然の様に余裕そうな星露見つめる。こちらはもうほとんどの星辰力を出し尽くしている。綺凛の星辰力量は多い方ではない。体力もかなり消耗し尽くしている。
「うむ、よく凌ぎ.........更に常に攻撃を加えようとするその姿勢、やはりお主は逸材じゃ...........じゃが、そろそろ限界のようだが?」
向こうもこちらが限界なのは理解している。もうやれることは限られる。
少ない星辰力、少ない体力で出来ることは───
「フゥ───........................」
刀を鞘に戻し、大きく息を吐いて呼吸を整え集中力を研ぎ澄ます。
残された力でできること..........それは居合の他ない
「居合か............成程、躱すのは容易い........が、無粋よな?」
星露からすれば次の攻撃を躱すのは赤子をあやすよりもずっと容易い。だが、ここでそんなことをするのは当然無粋な真似だ。かくなる上は正面から相対するまでだ。
「スゥ───ハァ───..........ッ!」
残り僅かの星辰力、すべての力を振り絞り、風よりも疾く、雷鳴よりも速く。何もかもを置き去りにするような圧倒的な速さで星露との間合いを駆け抜ける
そして───
次の瞬間にはお互いが交差し、背を向けていた
その結果は───
「っう......................」ドサッ
「............無茶な真似をする。妾や陽翔の真似をして脚部に星辰力を集中させての強引な加速。下手をすれば自爆しておったぞ?」
刀を地面に堕とし、膝をついたのはやはりと言うべきか綺凛だった。最後の最後で先の戦いで陽翔や星露がやっていた加速法を強引に使う大博打で対抗したがやはり相対した壁の高さは段違いであった。
「そうでもしないと..........貴女に..........陽翔先輩に届かないと思ったので」
「そうか..............成程のぅ、陽翔が偉く肩を持つだけのことはある。じゃが、それは二度と使うな...........今のお主では次は確実にない。まぁ、陽翔や妾にならえば使えるようになるかもしれんがな」
とは言えだ
確かに、膝をついたのは綺凛だ。だが、綺凛はただでは膝をついてはいない
その刃は───
「じゃが、何よりも..............妾に一太刀を浴びせた。凄まじい執念と技じゃ」
そう言う星露の頬を見ると浅く、あの星露でもってしても躱しきれなかった一太刀の証が刻まれていた。
「お主は強い。万有天羅である妾が認める」
「あ、ありがとうございましゅ......あぅ//////////」
肝心なところで噛んでしまうのが可愛らしいが、綺凛の為したことは凄まじいことだ。
何せ───
「お疲れ綺凛」
「陽翔先輩!」
労いの言葉に嬉しそうに陽翔を呼びながら振り返る綺凛に、陽翔は眩しいものを見るような目で語り掛ける
「綺凛ならやるとは思ってたけど............俺が星露に一撃いれるのに半年........いや、正確には一年半はかっかたのをたった数十分で成功させたんだからやっぱりすごいな綺凛は」
そう、今でこそアスタリスク上位に食い込むであろう実力者の陽翔をしても星露に一撃いれるまでにかかったのは星露との鍛錬を始めて半年、それ以前に星猟警備隊での鍛錬と剣の師との鍛錬の一年分を加えて一年半という年月を要した。
陽翔には魔術師としての能力や習得中の星仙術などの手管があるが、綺凛にあるのは刀と自身の剣技のみ。たったそれだけで陽翔を優に超える才覚を示したのだ。
いや、才能で語るべきではない。
綺凛には才能よりももっと大切なモノがある
「そ、そんな...........私は───」
恐縮と言ったように綺凛が言葉を紡ぐ前に陽翔の手が綺凛の頭を優しく撫でる
「いや、綺凛はすごい。才能だけじゃなくてもっと貴重で尊いものがあるから凄いんだ..........だから自信をもっていい..........これからよろしくな相棒?」
「っ.........はい!!」
陽翔のそんな言葉に綺凛は満面の笑みをたたえる
尊敬している人から相棒と..........隣に立つ者として認めてもらえた気がして綺凛はこれまでにない程の幸福を感じるのであった。
今回はここまでです。前回からかなり時間がたってしまいましたが鍛錬回はひとまず終了です!
さて、一つ設定の訂正があります。最初クロノ=ギアスの代償は起動時間あたり5倍の寿命でしたが、それは流石に軽いかなと思い3600倍、今回書いた通り1秒の使用で1時間分の寿命を代償にするに変更しようと思います。
そう言えばもうお気づきだとは思いますが、ソルとクロの意志の元はテイオーとマックイーンです。ソルの方は太陽を冠してるため元々人懐っこいキャラの予定もあり、イメージ的にテイオーが合うなと感じたのと、クロの方は基本的にはお淑やかにお嬢様らしい方が時間にまつわる武器としていいんじゃないかなと言う考えから元にしました。もっとも推しであるという点も大いにあったりしますwなので他にもフラッシュやファインなどなど何か他の推したちのキャラクター性も組み込んでみたいなんて思ったりします
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