そのウマ娘、問題児につき。   作:shinp

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問題児、正月を迎える

 1月。世間一般的には新しい年の始まりであり、正月でもある。寒空の下で人々は一年の目標を立てたり、神頼みしたりと、形は様々ながら新しい年の区切りで気合いを入れ直す。そのような時期なのだ。

 

「トレーナーさぁ~ん!ノイズさぁ~ん!」

「おや、カイシン。明けましておめでとうございます。」

「おう。」

 

 それは、この三人にとっても違いはない。黒のコートに身を包んだ恐山、トレセン学園の制服を着たノイズサウンドとカイシン。三人は神社の前で待ち合わせをしていたのだ。

 

「ふぅ、ふぅ。もしかして、わたしが最後ですかぁ?待たせちゃいましたかぁ?」

「そうですねぇ。そりゃあ待ちましたよ。」

 

 最後に来たカイシンはノイズサウンドの言葉を聞き、ジト目でノイズサウンドを睨み付けた。

 

「嘘ですよね?ノイズさんはわたしを弄るとき、そうやって意地悪な笑顔をしていますよね?」

「まさかまさか。私のこの顔はいつも通りのはずですが?」

「むーっ!そうやって煙に撒いたって!」

「それよりも初詣だ。さっさと行くぞ。」

 

 じゃれ合う二人に恐山トレーナーは親指で神社に行こうと促す。新年になろうがいつものような掛け合いをする三人。

 

「今年こそは!デビューできますように!」

(ノイズサウンドのクラシック活躍とカイシンのデビューに無病息災を…。)

(今年のクラシックで私は…。)

 

 神社の賽銭箱の前で三人は手を合わせ、カイシンは手を擦り合わせ必死に、ノイズサウンドと恐山は静かに願掛けをするのだった。

 

 

 

「さて、これから何をしますか?」

「うん?そうだな…。」

 

 初詣を終えた後、ノイズサウンドは恐山に話を振った。恐山はどうやらこの後の予定を考えていなかったようで顎に手を添え考え始める。

 

「はいはぁ~い!折角の正月だからぁ、お休みしませんかぁ?ほら、ノイズさんのレースの色々振り返りながら…。」

 

 カイシンはこれまでトレーニング詰めだった自身とノイズサウンドの為に振り返りを兼ねた休息をしないかと提案した。

 

「…それもそうだな。ノイズサウンドはどうだ?」

 

 恐山はカイシンの案に賛成するとノイズサウンドに確認を取る。ノイズサウンドも別に良いと言わんばかりに肩をすくめた。

 

「よし、この後トレーナールームに来い。去年のノイズサウンドのレースやカイシンの練習諸々の反省会を兼ねた休息だ。」

 

 

 

「トレーナーさん…それって…!」

「…おやおや。」

 

 トレーナールームに入った二人が真っ先に目にしたのは、普段のトレーナールームにはないもの。炬燵だった。

 

「…おう。こういうのはやっておいた方が良いと思ってな。入ってこい。」

「はぁ~い!失礼しますっ。」

 

 これまで口数が少なく、無愛想な印象しかなかった恐山。そんな彼の気遣いに二人は驚いたが、カイシンは外の寒さから逃げるように炬燵に飛び込んできた。ノイズサウンドもカイシンに遅れて炬燵に足を入れる。

 

「はぁぁ~…。外は寒かったから癒されるぅ~。」

「お前らの身体が第一だからな。出来ることはやるだけやるさ。」

「フッフッフ。私たちは良いトレーナーを持ちましたよねぇ。さてさて、炬燵を囲んでみかんをつまみながらこれまでの、そしてこれからの事を話しましょうか。」

 

 

 

 

「まずはノイズサウンド。お前はこの間のホープフルステークスはよくやった。」

「そうですね。見事なごぼう抜きでしたよねぇ。」

 

 最初の話題はノイズサウンドのジュニア期最後に走ったホープフルステークスの結果だった。ノイズサウンドは最初に最後方で様子を伺うように走り、それでいて取り残されないようピッタリとくっついて走って、最後の直線で急な加速でバ群を外から追い抜くレースをしたのだ。

 

「えぇ、ありがとうございます。ですが、この手は人気が高くなったら使えない手だと考えても良いでしょうね。」

「そうだな。お前は5番人気だったからな。」

「ですので、たまには差しの走りをしておいた方が良いでしょうね。追込はラストスパートでブロックされる可能性が高いですから。あ、失礼カイシン。みかん頂きます。」

「あぁ。今後はお前をマークするウマ娘とトレーナーが出てくる。そいつらにブロックされないような立ち回りと視野の広さを要求されるな。」

「ですが、私にとっては今回のクラシック戦線で注意すべきと判断したのはトウカイテイオーのみですね。」

「…やっぱりな。あのシンボリルドルフの無敗三冠を自分も取ると宣言したんだ。それに相応しい実力も持っている。マスコミ連中にとってはこれ以上ないネタだろうな。今頃、願掛けか書き初めで無敗三冠達成を決めているだろうな。」

「えぇ、目に浮かびますよ。張り切って新年の目標を口にしている彼女を…クックック…。」

 

 炬燵でみかんの皮を向きながらそんな会話をする二人。そんな二人を見るカイシンは何だか蚊帳の外にいるような気分になってきた。

 

「そう言えば、二人は神社で何を願ったんですか?」

 

 そこで、何気なしに話題を振ってみた。

 

「俺は、そうだな。お前らの無病息災だ。レースを走るウマ娘は怪我と隣り合わせだ。お前ら二人が何事もなく走りきれるように神頼みをしていた。」

「トレーナーさん…!」

「おやおや、顔に似合わず優しいですねぇ。」

 

 最初に言ったのは恐山だった。トレーナーらしい願掛けにカイシンは感動し、ノイズサウンドは冷やかした。

 

「…そういうお前はどうだ?ノイズサウンド。」

 

 冷やかされたのが気に食わなかったのか恐山はノイズサウンドは何を願ったのか聞いてみた。

 

「そりゃあ、トウカイテイオーの無敗三冠の阻止ですよ。」

「そ、阻止!?」

「……。」

 

 ノイズサウンドはさらりと発言した。聞く人によっては喧嘩を売っているとしか思えない発言にカイシンは驚き、恐山はじっとノイズサウンドを見る。

 

「お前、それはマスコミの前で言うなよ?」

「クックック…。えぇ、勿論。マスコミの前ではクラシックG1を獲ると言いますとも。ですが、悪役路線で行こうかと思いましてね。」

 

 恐山に注意されたノイズサウンドは分かっていると言わんばかりに不気味な含み笑いをする。

 

(やれやれ…。今年のクラシックは荒れるかもな…。)

 

 恐山は天井を仰ぎ見ながら今年のレースの行方を予見していた。

 

 

 

「あの、わたしは聞かないのですかぁ?」

「カイシンは口に出していたからな。」

「えぇ、ですから聞く必要はないかと。」

「ひどいですよぉ…。」




カイシンの秘密

実は身体が柔らかく、よくトウカイテイオーと競いあっている。
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