そのウマ娘、問題児につき。   作:shinp

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ここからノイズサウンドメインになります。


雑音、勝負服に袖を通す

「コモーちゃん!勝負服が届いたんだって?」

「うふふっ。そうなんです!私だけの勝負服がぁ…来ちゃいましたー!」

「わぁーっ、どんなの?見せてよ!」

「ダーメ!皐月賞まで見せてあげなーい!」

「えぇー、いいじゃん教えてよー!」

 

 皐月賞が迫る中、コモーノーデスはクラスメイトたちに得意気に自分に勝負服が届いた話で盛り上がっている。

 その集団をポツンといるような位置で眺めているのはノイズサウンドとその友人、ライスシャワーだ。

 

「勝負服…。いいなぁ、ライスも早く走りたいなぁ。」

 

 チヤホヤされているコモーノーデスの話題を耳にしたライスシャワーはそうぼやく。

 

「…ふむ、ライスシャワーさんはもし、勝負服を仕立てて貰うなら、どのような勝負服にしてほしいのですかな?」

 

 ライスシャワーの独り言を拾ったノイズサウンドはなんとなく聞いてみた。まさか振られるとは思っていなかったライスシャワーは驚きながらも照れ臭そうに話す。

 

「え、えへへ…。ライスはね、ライスが好きな青いバラのおとぎ話をモチーフにしてほしいなって…。」

「ふむ…。あのお話ですか…。」

 

 勝負服。

 

 それはターフを駆けるウマ娘にとっては重要な服装だ。主にG1などの大きな舞台で着て走り、ウィニングライブをする。言わば唯一無二のユニフォームである。それ以外で袖を通すことがあるとするならば、着心地確認と採寸合わせか、記者会見に赴く際の正装である。

 

「ノイズサウンドさんも今年のクラシックを走るんだよね。どんな服なのかな?」

 

 ライスシャワーはお返しにノイズサウンドの勝負服はどうなのか聞いてみた。

 

「ふむ、実は今日届く予定でして。今日の授業を終えたら行くつもりですよ。」

「わぁっ…!ノイズサウンドさんの勝負服、楽しみだな。」

「クックック。えぇ、えぇ。期待しておいてくださいな。」

 

 楽しそうに話す二人。その様子をコモーノーデスは一瞬チラリと一瞥したのだった。

 

 

 

 

 

 

 勝負服を試着するためトレーナールームへと向かうノイズサウンド。しかし、途中でその足を止めた。

 

「アンタさぁ、G1の舞台は相応しくないのよ。いい加減自覚したら?どうせアンタの勝負服は田舎のダートくらいがお似合いの服よ。」

 

何故ならその進行方向にコモーノーデスが待ち構えていたからだ。

 

「無様さらす前にローカルシリーズに行った方が身の為じゃない?どうせアンタはトウカイテイオーさんの影も踏めない雑草ウマ娘なのよ。」

 

 コモーノーデスはノイズサウンドをバカにするように貶す。

 しかし、ノイズサウンドは何も言わずにコモーノーデスの横を通り過ぎようとした。

 

「あーっと、ごめーん。」

 

 すると、コモーノーデスは側に来たノイズサウンドの足に自分の足を引っ掛けた。バランスを崩したノイズサウンドは地面に手を付き、受け身を取る。

 

「あれあれ~?偶然足が引っ掛かっただけで転ぶなんて。そんなバランスが不安定なウマ娘に皐月賞とか走れないでしょ?」

 

 クラシックに入ってから、コモーノーデスはノイズサウンドに対し、誰も見ていない時に限り、陰湿ないじめをするようになってきていた。今のように足を引っ掛け言葉で貶すだけではない。上履きに画ビョウが入っていたことがあったし、偶然を装い身体をぶつけて来ることもあった。その度にライスシャワーに心配されていたが、それはまた別の話である。

 しかし、ノイズサウンドはいくら言葉で責められようが、肉体に暴力を振るわれようが、無視をする。まるでコモーノーデスなど眼中にないと言わんばかりに、何事も無かったかのように無視をしていく。

 

「…チッ。いい加減気付きな。今年のクラシックはアンタなんかが勝っても誰も喜ばないんだよ。」

「……。」

 

 コモーノーデスは更に言葉責めをしていくが、ノイズサウンドには響いていないようで何事も無かったかのように立ち上がり、トレーナールームへと歩いていく。

 

「…ふん、なら好きにすれば?大負けして笑われる事は決まってるしね。」

 

 コモーノーデスはその背中に言葉を投げるが、ノイズサウンドは気にした風もなく歩いていった。

 

 

 

「やぁ、トレーナーさん。遅れましたか?」

 

 ノイズサウンドがトレーナールームに入ると、恐山とカイシン。いつもの二人がいた。

 

「いや、それほど待ってないぞ。」

「ノイズさん!ノイズさんの勝負服が来たんですよぉ~!」

 

 いつもの仏頂面の恐山と興奮気味のカイシン。二人を一瞥して机の上にある衣装に視線を向けた。

 

「さて、これから着てみますか。お二方は外で待っていただきませんか?」

「おう。」

「はぁ~い。」

 

 ノイズサウンドの頼みを聞いた二人はそそくさと出ていき、一人残ったノイズサウンドは自分の勝負服に手を伸ばした。

 

『どうせアンタの勝負服は田舎のダートくらいがお似合いの服でしょ。』

「…さて。」

 

 頭に残った声を無視しながら、ノイズサウンドは意を決したよう、衣装に手を取った。

 

 

 

 

 

 

 

「着ましたよ。お二方。」

 

 部屋の外で待っていた二人はノイズサウンドの声を聞いて動いた。真っ先に動いたカイシンはドアを開けた。

 

「うわぁ~…!」

「…ほう。」

 

 カイシンは勝負服を着たノイズサウンドの姿を見て感嘆の声をあげた。恐山もカイシンに続いてトレーナールームに入りノイズサウンドの勝負服を見て声を漏らした。

 

 その衣装は赤と黒に彩られた燕尾服のような衣装だ。黒に近い赤色にノイズサウンドのすらりと伸びた体躯、そして不気味な笑顔も相まってその姿は悪魔のようであった。

 

「カッコいいですよぉ!」

「良いじゃないか。お前はどうなんだ?」

 

 二人の感想を聞いたノイズサウンドは改めてトレーナールームに備え付けられている姿見に目を移した。

 赤黒い色で禍々しさすら感じる勝負服姿。

 この衣装でターフを駆けると思うとノイズサウンドは口角を上げるのを抑えられない。

 

「そうですねぇ…。特に動きづらさは感じない、そして私らしさがよく現れていると思いますよ。」

「よぉ~し!わたしは今年こそ!デビュー出来るようになって勝負服を貰います!そして、ノイズさんに追い付けるようになるんだ!」

「なら、カイシンはこの後トレーニングだな。先に練習場に行っておけ。」

 

 恐山に指示されたカイシンは元気よく返事をするとトレーナールームを出ていった。

 

「…これで、私の戦いが始まりましたね。」

「あぁ。そうだな。」

 

 ノイズサウンドの呟きに恐山は同意するよう呟いたのだった。

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