そのウマ娘、問題児につき。   作:shinp

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推しロスの中、なんとか書くことが出来た…。


小物、玉砕する。

(ヤバいとこ見られちゃったでもまだ言い訳すればやり過ごせると思うし上手く行けばアタシのことを気に入ってくれてあのクソ野郎をトレセン学園から追い出せるかもしれないから頑張ろうよし頑張ろう慌てない慌てないあわわわわ)

 

 シンボリルドルフに生徒会室へ招かれたコモーノーデス。

 震える自分とその対面に生徒会室の奥にある会長の座席に座るシンボリルドルフ。隣には副会長である女帝エアグルーヴを控えている。その姿は正しく皇帝に相応しい威厳があり、場の空気を張り詰めていたのだ。

 

「急な呼び出しをして申し訳無いな、コモーノーデス君。君には幾つか聞いておきたいことがあるんだ。」

 

 カリスマ性溢れる声でコモーノーデスに話し掛けるシンボリルドルフ。だが、その声色は普段生徒であるウマ娘の幸福を願う優しい生徒会長の声ではなく、皇帝の名に相応しい威厳とプレッシャーを与える程の気迫を感じられた。守る盾もなく、無防備に晒されたコモーノーデスは滝のような汗を吹き出し、気を失いそうになった。が、媚を売ればどうとでもなると思い、できる限りの笑顔で返事をした。

 

「は、はい!それにしても、わたしの名前をご存知だと言うことは、もしかして私って、会長さんに注目されてるんですか?」

「ふふっ。自慢じゃないが、私はこのトレセン学園にいる全生徒の顔は皆記憶しているのだよ。新入生、転入生、分け隔てなくね。」

「す、すごいですぅ~!尊敬しちゃいます!(チッ!アタシはノイズサウンドと同じ扱いってワケか?)」

 

 コモーノーデスは笑顔の下で吐き捨てる。だが、このままノイズサウンドの悪評を生徒会に植え付ければと悪巧みをして、口を開こうとしたがそれを制するようにシンボリルドルフが話し掛けてきた。

 

「さて、まずは昨日の皐月賞についてだ。私はマルゼンスキーと一緒に直接見に来ていたのだが、スタートから第一コーナーにかけて君の走りに違和感を感じた。そして、最後の直線では私の予想通りスパートを掛けなかった。コモーノーデス君、単刀直入に言うよ。もしかして君は忖度をしていたのか?」

 

 シンボリルドルフが問い掛けてきたのは昨日のレースについてだった。自分の浅はかな考えが見透かされている。コモーノーデスはノイズサウンドの出任せの悪評を言おうとした言葉が喉の奥に引っ込ませられ、心臓を鷲掴みにされた気分になった。

 

「え、えー?わ、わたしは、昨日のレースはぁ、真面目に走りましたよぉ?た、ただぁ、そのぉ、その…そう!あの日は稍重だったじゃないですか!だからいつもの調子が出なかったと言うか、重バ場のトレーニングはしていなかったのでスパートを掛けるタイミングが分からなかったのですよ!」

 

 それでもコモーノーデスは何とか猫を被った笑顔と態度を保ち、汗だくながらシンボリルドルフの問いに対応した。が、それでも皇帝の鋭い眼差しは弱まらない。すると、隣に控えていた副会長のエアグルーヴが話し掛けてきた。

 

「…つまりお前は、こう言いたいのか?会長の目は節穴だと。」

「へぇっ!?そ、そそ、そんな滅相もない!クラシックのG1ですよ?そんな忖度なんか出来るわけ無いじゃないですか!エアグルーヴさん!」

「お前のトレーナーに、どのようなトレーニングをしているか聞いたのだが、良バ場でも重バ場でも対応出来るようなトレーニングはしていたと言っていた。お前もそれに応えるように真面目にトレーニングをしていたと証言しているが?」

 

 エアグルーヴがコモーノーデスの言い訳に差し込む。女帝に相応しい眼光がコモーノーデスに突き刺さる。

 

「う…。と、トレーニングの時は調子が良かったと言うか…そう!前日になって片頭痛起こっちゃって!」

「本当か?お前のトレーナーはレース前、特に調子を崩した様子もなかったとも言っていたぞ?」

 

 コモーノーデスの言い訳をエアグルーヴは更に逃げ道を塞ぐ。

 

「う…あ…。あのぉ~、その、て、テイオーさんが強かったから勝つ気が削がれちゃって…」

「最後の直線でテイオーに差された君の顔は随分と余裕そうに見えたが?」

 

 トウカイテイオーを言い訳の道具に使った瞬間、シンボリルドルフの一声で場の空気が一気に薄くなるような感覚に陥る。コモーノーデスと生徒会の面々の間にはそれなりに距離がある。だが、コモーノーデスの目にはシンボリルドルフとエアグルーヴが目だけで人を殺せそうな威圧を放つ巨大な怪物で、自分の目の前にまで迫っているように見えたのだ。

 段々とこれまで忖度と八百長をしていく上で培った猫被りの顔と悪知恵が崩されていく。

 

「ひ…あ…。」

「どうなのだ?コモーノーデス君。君は、栄えある皐月賞で、真剣に走るウマ娘達がいた中で、あんな下らない侮辱するような忖度をしていたのか?」

 

 シンボリルドルフが急かすように問う。だが、言い訳の引き出しが無くなったコモーノーデスは耳が垂れ、酸素を求める金魚のように口をパクパクするだけだった。その様子を見たシンボリルドルフは悲しそうに、そして失望したように言葉を出した。

 

「…沈黙は、肯定と捉えるぞ?」

「あ…あの…会長…。」

「くどいぞ貴様。本当に忖度をしていないなら、皐月賞のあの走りについて説明をしろ。」

 

 コモーノーデスの言い訳を更に潰すようにエアグルーヴも追及していく。

 そこでコモーノーデスの仮面は粉々に砕け散った。

 

「…ンド…せ…よ。」

「何?」

「ノイズサウンドのせいよ!!あの施設上がりのウザったい顔をした赤いウマ娘!!アイツのせいでアタシのレース人生ぐっちゃぐちゃなのよ!!だって!アタシのママは中央でデビューして!重賞取ってるウマ娘なのよ!?なのにどうして!!アイツばっかり目立って!余裕で勝って!アタシが前座みたいな扱いなのよ!?どう考えてもおかしいわよ!!アタシみたいなエリートよりもあんな雑草ウマ娘が目立つとか絶対何かインチキしてんのよ!!そうよ、絶対そうよ!!あの顔で絶対悪巧みしてんのよ!!会長!ノイズサウンドこそ忖度をしているんですよ!!今すぐに裁きを下しちゃってくださいよ!!」

「………言いたいことは、それだけか?」

 

 完全に化けの皮が剥がれたコモーノーデスは支離滅裂な主張をして捲し立てていたが、シンボリルドルフは一言で一蹴した。

 

「それだけぇ!?何がそれだけなんだよ!?アイツなんか…」

「黙れ。」

 

 更に噛みつこうとしたコモーノーデスにシンボリルドルフは低い声で威圧する。完全に追い詰められたコモーノーデスは大量の汗でぐしょ濡れになり、それまで身体を支えていた足までも崩れ落ちる。

 

「…君の事は良く分かった。処遇は後日、生徒会で会議をして話し合った上で決めよう。下がって良いぞ。」

「う、あ…何でよ…。何でアタシの事をいじめるの!?うわあああああああああん!!!」

 

 シンボリルドルフが指示をするとコモーノーデスは自分を視線で殺さんばかりに睨み付けている二人を見て、大泣きしながら生徒会室から出て行った。泣き声が遠退き、静寂が残った生徒会室にいる二人は疲れたように溜め息を吐き出した。

 

「はぁ…。まさか、あのような邪な考えで入ってくるとはな…。」

「これまで様々なウマ娘達を見てきたが…彼女は、憐れだな。」

 

 シンボリルドルフはふと、コモーノーデスに関して纏めた資料に目を通す。そこには彼女が地方での成績が書かれていたのだが、トレーナーに関する文献にはこう書かれていた。

 

『コモーノーデスの前任トレーナーはコモーノーデスが中央に移籍した直後、地方レースにて他のトレーナーに賄賂を渡して勝たせていた事が発覚したため、トレーナー資格を剥奪されている。』

 

(彼女自身は中央のトレーナーにスカウトされるほどのポテンシャルはあるのだが…おそらく、ノイズサウンドという存在と出会ってしまった事と、汚職トレーナーの影響で歪んでしまったのだろうな…。)

 

 シンボリルドルフは、自分の力ではどうすることも出来ない問題に肩を落とし、大きな溜め息を一つ吐き出したのだった

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