「ウェミダー! です!」
臨海学校初日。バスに揺られて初めての海に辿り着いたアリスは感極まってオイヨイヨ語で叫んでいる。普通にうるさい。
宿泊する旅館で受付を終え、自由時間にみんなでやりたいことがあるといつもの一夏一行(箒を除く)と布仏本音、4組の更識簪に水着で浜辺の端の方に集まるよう声をかけた。
一夏への水着のアピールやらなんやらあったがそれらも落ち着いた後。……余談だがアリスの水着は学園指定のスク水である。先日のレゾナンスにはやはりゲームショップメインで行っていたようだ。オシャレよりもゲームにリソースを投入する。実にゲームジャンキーらしい選択である。
閑話休題。
本日のアリスだが、合宿にはいつもの
アリスのもとに先程声をかけたメンバーが集っているが、簪は自身の専用機に関するいざこざで一方的に嫌っている一夏から距離をとっている。一応話を聞く気だけはあるようだ。
「アリス、実は海に来てどうしてもやりたいことがありました」
「それはー?」
「ブリッツボールです!」
「ブリッツ……」
「……ボール?」
ブリッツボールとは、スクウェア(現・スクウェア・エニックス)から発売されたコンピュータゲーム『ファイナルファンタジーX』および『ファイナルファンタジーX-2』に登場する架空のスポーツ、またはそれに使われるボールの名称である。
具体的にはサッカーと水球を掛け合わせたような球技であり、競技はスフィアプールと呼ばれる球状のプールの中で行われる。Wikiより引用終了。
大雑把にどんなものかを説明したアリスだったが少年少女からはあまり良い返答は得られなかった。
「球状のプールなんて無理じゃないかな?」
「そこはISを使えば大丈夫です!」
「PICのこと? でもさすがに通常の機能にそこまでの出力は無いわよ」
「ラウラ、レーゲンのAICならどうだ?」
「どう考えても無理に決まっている。仮にできるISがあるとすれば……」
ラウラは水を操作できるISに心当たりがひとつあった。だが、その専用機を持つ生徒は二年生。この合宿には参加していない。
「はい! アリスはドラクエ式交渉術によって彼女の協力を取り付けたのです!」
アリスはそう言いながら足元のバックパックの口を開いていく。
中から出てきたのは特徴的な水色のはねた髪、潤んだ赤い瞳、簪に似た容姿を持つ生徒は縄抜けなど許さないとばかりにぐるぐると束縛されており、胸元から転がり落ちたと思われる愛用の扇子に書かれた「タスケテ」の文字が哀愁を誘う。
「更識楯無先輩です」
「おねえちゃぁぁぁぁん!!??」
天童アリス、能動的に誘拐すら行えるようになっていた。自分の目的の為に他者を巻き込むことはキヴォトスでは割とよくある日常なので、きっと染まってきたのだろう。このままいけば
「せいとかいのかえりにね、ひっぐ、こえかけられて、ひく、くらがりにひきずりこまれて、えぐ、こわかったの、はなしきかないし、ちからつよいし、あいえすきどうしないし……」
「だ、大丈夫だよお姉ちゃん。ほら、悪いアリスは織斑先生が連れて行ったからね。落ち着いて、ね?」
「かんざしちゃん…かんざしちゃんがやさしいよぉ…」
更識楯無。ロシア国家代表にしてIS学園生徒会長。対暗部用暗部という裏稼業の当主でもある。その完璧過ぎる能力から妹の簪は彼女に対して苦手意識が生まれ、幾度かのすれ違いの結果として修復困難なほど深い溝が出来ていたのだが…現在の姉の無残過ぎる姿を見てしまった簪は長年のわだかまりを捨てて親身に寄り添っていた。本来あるべき姿に戻ることができた麗しい姉妹愛である。こうなった原因には目をつむっておこう。つむるべきだ。
ドラクエ式交渉術とは…
アリス「アリス、ブリッツボールがやりたいです!」
楯無「残念、私は臨海学校にはいけないのよ」
アリス「そんな!アリス、ブリッツボールがやりたいです!」
楯無「確かに面白い案だけどそういうことにIS使うのはちょっとねぇ…」
アリス「そんな!アリス、ブリッツボールがやりたいです!」
楯無「…?あの、アリスちゃん?話聞いてる?」
アリス「そんな!アリス、ブリッツボールがやりたいです!」
楯無「…アリスちゃーん?」
アリス「そんな!アリス、ブリッツボールがやりたいです!」
楯無「」
相手が同意するまで延々とループする会話。絶対に逃げられない