IS×アーマード・コア
《インフィニット・ストラトス》
《大きすぎる……修正が必要だ……》
学会にて自身の発明であるマルチフォーム・スーツ、通称『インフィニット・ストラトス』を否定された天才・篠ノ之束は全人類へ自身の生み出したISの価値を知らしめるべく、日本周辺の軍事基地へクラッキング。計2300発を超えるミサイル群をIS『白騎士』単独にて迎撃するプランを計画、実行した。
その選択が昨日までの「当たり前の日常」を失う蛮行だと最後まで気付けずに。
「……本当に安全は確保されているんだな?」
「ちーちゃんは心配性だなぁ。大丈夫大丈夫。この天才束さんにぜーんぶまーかせて! ちーちゃんが撃墜し損ねてもこっちで遠隔自爆させられるからさ!」
既に日本へ向けて大量のミサイルが発射され、それらの迎撃のためIS『白騎士』へ搭乗した織斑千冬は迎撃ポイントへ赴く途中で今回の作戦を実行した友人と通信で言葉を交わす。
不安を口にする千冬に束は傲岸不遜、普段通りのふてぶてしい笑顔で応じるが、それでも千冬の気分は優れない。
「お前の能力は信用している。だが、どうにも嫌な予感が止まらないんだ」
「ま、初の実戦投入だから多少は仕方ないか。でも、これで今までのつまらない世界が動き出す。私とちーちゃんで変えるんだ」
「束……」
「おおっと! そろそろ迎撃ポイントに到達するよ! 準備準備!」
「ああ、了解……………………待て束、センサーが上空からこちらに向かってくる物体を確認した。あれもミサイルか?」
「はえ? ハックした衛星の探知網には何も映って」
通信が突如として切れた。
「束? おい、束!」
明らかな異常事態。混乱する中、千冬は自身の勘に従って超高速で飛来する物体を最優先で警戒する。
それは正しく、白騎士のセンサーが察知したそれは減速せずにまっすぐに突撃してきた。
「く……戦闘機か……なに?」
白騎士とニアミスした大型戦闘機は大きく旋回しながら千冬の前で姿を変える。
「人型に、変形した……?」
両背部の大型ヴァリアブル・フライト・ユニットが特徴的な赤と黒で彩られた巨体が姿を現し、千冬と対峙する。
……どこかのロボットアニメから現実へ抜け出してきたかのような姿に千冬は一瞬我を忘れてしまった。
《全システムチェック終了》
《戦闘モード起動》
機械音声で友好的とは言い難い動作確認を行う巨大ロボットに千冬は警戒しつつ、束に連絡を繰り返す。
「おい束! こいつはなんだ! ミサイルはどうする! ……おい、聞こえていないのか! 束! 束ぇ!」
応答は、無い。
《排除開始》
「どこのどいつだよ! この天才束様に電子戦仕掛けようっての!?」
その頃、束は突如として監視衛星、ミサイルの遠隔操作、千冬との通信へとクラッキングを仕掛けてきたアンノウンに対し、束は両手両足を使ったタイピングやこれまでに自作した電子戦サポートメカを加えた万全な態勢での迎撃を開始した。おそらく篠ノ之束という細胞レベルでの天才がここまで人生を含め、全力全開を出した最初の瞬間である。その実力は各国の電子戦対応チームが力を結集したとしても返り討ちに逢うことは間違いないレベルの迅速さと練達さを有していた。有していたが……
(なに……コイツ!? 私の技能に適応してきている……!)
回線割り込みを確認直後、即座に相手からの侵攻を2割程度で抑え込んだ束はそのまま相手を弾くつもりであったが、1秒2秒と時間が経過するたびに少しずつ相手が束のアンチクラッキングに対応するようになってきた。それはまるで束の電子戦技術を相手が学習、吸収しながら即座に急成長を行っているようであり、束は寒気を感じる。
……何よりも今は時間が無い。急ぎ通信の切れた千冬へのオペレートを再開しなければミサイルの迎撃ができない。たとえ白騎士と織斑千冬が優秀とはいえ、高速で飛来する多数のミサイルを単独で処理するためにはバックアップの束の協力が必要不可欠だ。故に束は焦る。この計画での失敗は間違いなく自身の、ISを使った宇宙開発の夢を終わらせる。なぜ、どうして、なんで。突如として現れた巨大な障害。世の不条理に抗う為に自身で派手に飾り立てた舞台が、いつの間にか自分を吊る為の絞首台にすげ替えられていた。
「クソクソクソ!」
「ふざけるな! ふざけるな!! ふざけるな!!!」
「私の夢を!!」
「ISの証明を!!!」
「邪魔するなぁぁぁ!!!!」
焦りはミスを生む。しかし篠ノ之束は天才だ。失敗などした事がない。
……そんなことは無い。
「あ……」
自宅では自分を理解してくれない親を見切った。
学校では自分と周囲の能力差に失望した。
ISを受け入れなかった学会や世論を凡人だと切り捨てた。
彼女は自身の未来を見据え過ぎて、先走る悪癖を治せなかった。世の中には天然の天才たる自分を超える存在がいる可能性や失敗のリスクを考慮しなかった。
結果、束は過激な暴走を始め、ついに失敗が許されない土壇場で躓いた。
状況確認の為の監視衛星を乗っ取られた。
日本に向かうミサイルのコントロールを奪われた。
現場に送った織斑千冬との交信はできない。
手持ちの端末も抑えられた。
……詰みである。もう束は状況に流されるしかない。
茫然自失とした天才は目の前の現実を直視できない。
グラフィックボードに介入者からのメッセージが表示されているが、反応できない。
……この騒動の結末を伝えよう。
白騎士は帰らなかった。そも白騎士が、インフィニット・ストラトスがミサイル迎撃の為に出撃していたことを何処の国も、組織も把握していなかった。
ミサイルの後追いでスクランブル出撃した米国の偵察機のパイロットが途中、
ミサイル群を防ぐ為、日本の自衛隊と米国の在日米軍が協同を図ったが、何者かのクラッキングによりその機能を十分に発揮できず、撃破できたミサイルの数は1割程度であった。
…この時の無力感、事後の日本の惨状から両組織は多数の自主退役やPTSDの発症者を生み出し、更なる世情不安を招く事になった。
迎撃に失敗したミサイル群は日本の主要都市、ダムや発電所などのインフラへ次々と降り注いだ。国民の避難は間に合わず、直接的・間接的被害により日本は当時の人口の約6割が死亡または行方不明、都市機能は軽くても麻痺または完全な消滅。主導すべき政府機関も避難先に着弾したミサイルの影響で壊滅した為、無政府状態へと陥った。以後、かつて日本と呼ばれた地は数多の国家や企業、個人の思惑によるゼロサムゲームの舞台として再利用されていく。
そしてミサイルをテロで利用された国とそれぞれの責任者もまた、安全管理面の不足を国際世論によって総叩きに逢い、各地で大小様々な暴動に発展しようとしたが、その中でとある情報が世に放たれた。
「ミサイルテロは篠ノ之束による日本学会への報復行為」であったとする情報だ。
実際に束が軍事基地や監視衛星へのクラッキングに使用した端末や彼女が日本へミサイル攻撃を計画する証言が録音されたデータなどの物的証拠が国連に送られてきたのだ。何処から流出した情報かは定かでは無かったが、世情の無秩序な混乱を嫌った各国はこの情報に便乗した。
『史上、最も多くの人命を奪った個人』として現在行方不明の篠ノ之束を国際的重犯罪者として指名手配。発見次第その場での射殺すら許可された。
それほどまでに篠ノ之束という個人への世界からの恨みは膨れ上がっていた。
束が暮らしていた篠ノ之神社は事件後もかろうじて原型を残していたが、生き残った被害者達によって見るも無残な姿へと変えられた。
彼女の家族も存在していたことは分かっているが、幸運にも誰も見つかってはいない。もしも見つかれば、私刑の対象になることは免れないだろう。
そして……彼女の発明品にして事件の発端であるインフィニット・ストラトスはその名前すら侮蔑の対象として話題にすることすら許されず、二度と世に出ることは無かった。
10年後。かつて日本と呼ばれた地。
「すみません、この写真の人を見ませんでしたか? あの事件の後から姿が見えなくて」
「ええ、もう諦めろってよく言われます。でも絶対生きてるって思うんです。死んでも死なないような強い人だったから」
「戻らないのは多分、何か理由があるんだって思うんです。だから、たった一人の家族の俺が迎えにいってあげないと」
「……千冬姉。俺が絶対に見つけてやるからな」
続きそうだけど続かない。
足りない要素はフロム脳で補ってほしい。