ロリなスコールにエンカウントした僕はなんやかんやでミューゼル家に五年近く世話になっていた。なんやかんやは、なんやかんやだよ。そんなことはどうだっていいんだ。重要じゃない。戸籍やら生活環境を整えてもらう為の条件として正体を明かしたり、オートマトン含めた軍事技術のデータをちょちょいとミューゼル家に流したくらいだから、うん。その功績でかの亡国機業の幹部ポジションが与えられて、お給料が定期的に用意された通帳に入るけど、特に仕事を割り振られていないから、何もしていない。いいのかな?
ちなみに最初は地球外生命体の僕に興味津々だった幼女スコールも、日々すくすくと成長し、今ではジュニアハイスクールの上級生。故に大した仕事もせずに日々を用意された別邸で過ごす僕をただのマダオだと気付いてしまったのだろう。最近は呆れた目で僕を見てくるのだ。悲しみ。あと、名前は借りているが、ディアッカ本人の物真似はやめた。僕では残忍で狡猾ではなく、残念で滑稽にしかならないのだ。それが原作通りとか言ってはいけない。
「スコール。僕はね、とんでもない事実に気付いたんだ」
「興味ないわよ」
「この世界、御大がいらっしゃらない……!」
「誰よそれ」
なんだかんだ言葉のドッチボールに応じてくれるスコールお嬢様のおかわいいこと。いや、そんなことよりも御大だ。今、1979年。つまり僕の知る歴史では『機動戦士ガンダム』が既に放送されているはずなのだ。それが、ない。IS世界には、ガンダムが無い……? 僕は、ガンダムになれない……?
「認められるかよ! そんな……‥‥そんな残酷なことぉ!」
どうせ原作介入するならアレやコレをやろうと思っていたのに、ネタを理解してもらう為の下地がまったく無い! もしかしたら他のロボットアニメも生まれない……!?
このままでは消化不良を起こしてしまう。だから! ……ならばぁ!
「俺が……」
「「俺達が……!」」
「「「御大だ!」」」
「家の中で増えるんじゃないわよ! 床が抜けるでしょ!」
善は急げとばかりに僕は待機中のELS分体を複数名分、日本へ送り込んだ。そう、人海戦術(僕一人)を用いてアニメ制作に取り掛かったのだ。俺の記憶を元にガンダムを含めた前世のあらゆるロボットアニメーションコンテンツをこの世界に呼び出す!
こうして生まれたアニメーション会社『御大プロダクション』。労基なんて知らぬとばかりに日夜アニメ作りに勤しむ職員(全部僕)が作る作品はすぐに世間から認められ、ゴールデン枠を恒常的に確保。日本のサブカルチャー文化、ロボットアニメ会社といえば御大プロとして世に浸透していったのだ。すべては来るべき対話(ネタ会話)の為に!
スコール・ミューゼルは頭を抱えていた。
偶然出会った男、エルスマンと名乗ったアイツは金属生命体、つまり異星人であると明かしたからだ。実家が世界の裏側を牛耳る亡国機業と繋がりがあることもあって情報の拡散は差し止めたが、彼が隠すまでもないと話した情報だと、エルスマンは分体であり、本体そのものは地球に向けて着々と侵攻を続けているらしい。
……そのサイズが既に月とほぼ同レベルのサイズに達していて、その異常な物量は更に現代技術を凌駕する科学技術を具現化できるという。下手に敵対すれば、そのまま人類は滅亡である。子供ながらに危機感を覚え、親や亡国機業の幹部達とも意見を幾度となく交えた結果、エルスマンが人類との敵対を考えないように懐柔する方針となったのだ。そして、その懐柔策を行う人材として最初の接触者スコールが選ばれることは、ある意味必然だった。
幸いミューゼル家の別邸で現在もぐうたらしながら日々を過ごすエルスマンに可及的速やかな対処は不要で、要求された戸籍や住環境を与えたことで満足しているようだ。最初は丁寧かつ慎重に接していたが、適当に相手しても怒らないことが分かってからは、気の置かない相手として対応している。基本的にコミュニケーションは向こうが求めてきた時に応じる形だが、こちらが忙しい時やイラついている時には不思議と近付いてこない。それなりに忙しい学業も兼ねているので大助かりではある。奇妙な共同生活はこうして数年間続いたが、ある日、あの馬鹿はやらかした。
『御大プロダクション』なるアニメーション会社を日本に立ち上げたのだ。急な行動活性化に慌てた亡国機業の面々は裏から手を回して、御大プロとの各種交渉権を勝ち取り、経営アドヴァイザーのポジションを確立して外部との折衝を担当、作品の宣伝や賄賂を使ってゴールデン枠を融通したりエトセトラエトセトラ……。それはもう、いろいろと手を尽くした。
完成した作品だが、エルスマンとの会話に乗らねばならない私は全て視聴した。時折細身になる敵のザクや縮尺がおかしいガンダムなどが出ることを除けば、物語はSFチックでありながら人間ドラマを中心としており、映像作品としての完成度は高いと言わざるを得なかった。賛否両論はあるだろうが完全否定されることは無いだろう。そんなくだらない事情の果てに人類滅亡など御免である。
今後も創作活動は続けていくらしいが、この出来栄えならば視聴を続けていくこともたいした苦行にはならないだろうと、少しだけ安心できた。
……この時のスコールの安堵は、のちに『無敵超人ザンボット3』『聖戦士ダンバイン』『伝説巨神イデオン』『機動戦士Vガンダム』『新世紀エヴァンゲリオン』『蒼穹のファフナー』『ぼくらの』『グランベルム』『鉄血のオルフェンズ』『閃光のハサウェイ』など、俗に言う欝ロボ作品を見せられる形で覆される。
世に女尊男卑が蔓延ろうとも、引かぬ媚びぬ顧みぬの精神で世に男の子を魅了するロボットアニメコンテンツを提供し続ける御大プロ。IS以上に男性人気が出そう。