IS×ガンダムSEED①~フレイ・アルスター編~
IS学園一年一組。クラス代表を決める話し合いの中、金髪縦ロールが特徴的なイギリス出身の少女と学園でたった一人の男子生徒のやり取りが徐々に不穏な熱を持ち始めたタイミングでそれは現れた。
〈トリィ!トリィ!〉
プリセットされた特徴的な鳴き声と共に緑と黄色で彩られた小鳥型ロボットが空を舞う。漂う嫌な空気を裂くように大きく金属の羽根を上下させ、、生み出した気流に乗って悠々と飛び回る。必然、教室中の視線はそちらに集まった。
「ペットロボット?」
「かわいー」
「あれ誰の?」
耳目を惹いた小鳥型ロボットは役目を終えたとばかりに窓際最後列に座る赤髪の少女の肩に舞い降りた。
「えっと、すみません織斑先生。私の『トリィ』が話し合いを邪魔してしまいました」
「……以後気を付けるように。アルスター」
担任の織斑千冬に注意を受けた少女、フレイ・アルスターは軽く頭を下げて謝罪の意を示した。彼女の肩に止まったトリィは我関せずといった様子で首を右へ左へ動かし、赤い瞳に周囲を映し出している。
「ではクラス代表を決める試合を一週間後に行う。オルコットと織斑の両名はそれまでに準備を整えておけ。以上だ」
千冬の一声でその場の話し合いは終了となった。
「ホンッッット!! 勘弁してよねー! もー!」
「返す言葉も御座いませんわ……」
時は放課後。男子生徒と言い争いをしていた金髪縦ロールの少女セシリア・オルコットは寮の同室であるフレイからお叱りを受けて項垂れていた。
……この二人、実はそれなりに長い付き合いがある。フレイは父親がアメリカの外務事務次官ジョージ・アルスター、セシリアはイギリスでも由緒ある名門貴族の現当主であり、数年前に彼女の両親が事故で他界するまでは米英間の外交パーティで何度か顔を合わせ、以降も交流を続けていた。
「イギリスの国家代表候補生が初日から話題の男子生徒に暴言を吐いてマウント取ろうとするとか、スキャンダル間違い無しじゃない。私が織斑先生に睨まれること覚悟で妨害しなかったら……このお転婆な口はいったい何を言い出していたのかしらねー? んー?」
「ふへいはん、いひゃいです……」
全面的に見てセシリアが悪いのだが、これはある意味仕方が無いことでもあった。
彼女は両親の急死後、オルコット家の財や名誉を守る為に魑魅魍魎蔓延る政財界で孤軍奮闘する必要に迫られた。その手段として『女尊男卑主義』という毒沼を選択した。どっぷりと肩まで毒沼に浸かってオルコット家に近付く外敵を寄せ付けず、時間を稼いでいる間に彼女は誰もが認める実績――イギリスの国家代表候補生という立場――を掴み取ったのだ。
こうして財と名誉は無事に維持できたのだが、女尊男卑主義という猛毒で磨き上げられてしまった男性蔑視の考え方と口撃癖は中々抜け落ちなかったのである。
「……ま、これからも大変だろうけど頑張んなさい。困った時は手を貸してあげる」
「ふぇ?」
フレイはお仕置きとばかりにセシリアの柔らかい頬をムニムニと弄っていた手を彼女の両頬に添えて、彼女の蒼い眼をまっすぐ見つめながら微笑んだ。
「両親が突然亡くなったのに自暴自棄にならず両親の遺した大事なものを守り抜いたアンタは……
「は、はい。ありがとうございます……?」
セシリアはこの同い年の少女が時折垣間見せる大人びた雰囲気と、どこか寂しげな眼差しが何を意味しているのか分からなかった。フレイ・アルスターという少女はセシリアを通してその灰色の瞳の奥底で何を見ているのだろうか。
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