IS短編集   作:魔法科学は浪漫極振り

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IS×ガンダムSEED⑤

 凰鈴音。1組のクラス代表決定戦後に2組へ編入された中国の代表候補生。どうやら一夏のセカンド幼馴染という謎ポジションを有するらしい。そして彼女も一夏に対して恋慕を患っているようで、箒は凰さんの積極的行動にピリピリしている。もっとも、最大の問題は二人に挟まれている一夏が異性に興味が無いのではないかってくらい二人のアピールに気付かないことだ。一部の女子間で同性愛者疑惑が出ているのも致し方無いと思う。

 

 クラス代表決定戦前は一夏と箒に話しかけていた私も今のあの三人には極力近付かないようにしている。相談されたならともかく、他人の恋路に首を突っ込んで馬に蹴られたくはないし、私が一夏を狙っているなんて思われるのも勘弁。なにより、今の私は入部したばかりのテニス部やアズラエル社への定時報告書の作成で忙しいのだ。

 

 

 

 

 第三アリーナでストライクルージュを起動した私はセシリアと共にルージュの最大の特徴であるストライカーシステムを使ったトレーニングを行おうとしている。

 

 

 ルージュは両手足や肩、腰、胸部の装甲や額のツインアンテナなど、元になった私のデッサンに則したストライクのパーツが各部再現されている。ただし顔に装甲は付いていない。ISパイロットは謂わば国や企業の顔であり、見目麗しい女性操縦者の顔を全面に押し出すのが主流となっているからだ。他にもシールドバリアーや絶対防御がある為、コズミック・イラのストライクが持っていた実弾への耐性を持つフェイズシフト装甲は本体装甲では採用されていない。装甲は赤を主体としたカラーリングでまとめてある。

 

 

 共通武装として腰部両脇ホルダーに対装甲コンバットナイフ『アーマーシュナイダー』、射撃武装として高エネルギービームライフル、そのビームライフルを裏側にマウント可能な大型シールド、弾倉を四つ取り付けることで連射も可能な対戦車ロケット弾頭発射装置『ストライクバズーカ』。今は武装を全て拡張領域の中に格納してある。

 

 

「第二世代ISストライクルージュ。バックパックの装備換装機構によって兵装を切り替えることが可能、ですか」

 

「そうよ」

 

「……ラファールの劣化では?」

 

 

 セシリアが言ってはならないことを言ったぁ! 確かにラファールの拡張領域の広さなら各武装を収納しておけばバックパックシステムなんて不要だろう。だけど、ルージュはそういったISだけの視点で作られた代物ではないのだ。

 

 

「ストライカーシステムは増槽の役割もあるし、将来的にアズラエル社製の量産型ISを経てEOSにも搭載する予定よ。ルージュはその最初の試験運用が仕事なの」

 

「EOS!? アズラエル社はあの『産廃』に力を入れているのですか!?」

 

 

 EOS。エクステンデッド・オペレーション・シーカーと呼ばれる国連が開発したパワードスーツ。その実態は非力なパワーアシスト、鈍重な機体、ISのようなシールドバリアーも無いのに搭乗者の生身が露出、30キロものバッテリーを背負っても最大作戦行動時間が非常に短いなどの欠陥だらけだ。その問題だらけのEOSをアズラエル社では熱心に研究・開発している。

 

 

「今は問題も多いけど、高性能で軽量なバッテリーが開発されれば実用性はぐっと高くなると思う」

 

 

 コズミック・イラでは20m近いMSがバッテリー駆動で動いていたのだ。こちらでも実現する可能性はゼロではない。

 

 

「それでもISの代わりが勤まるとは思いませんわ」

 

「不思議よね。なんでそうやってみんなIS基準で考えてしまうのかしら?」

 

「……どういうことでしょう?」

 

「確かに個人単位で使用する機械だからISと比較してしまうのでしょうけど、世界規模で見て五百未満の数しかないISと最終的には数千……いいえ、数万機以上で様々な現場で使うだろうEOSでは要求すべき点が違うでしょう?」

 

 ISとEOSを比較する人はその観点を無視してEOSの存在を否定する。IS至上主義者、正確には女性権利団体にとって男性でも使えるEOSは実用段階に入って欲しくないのか。ま、その辺はお偉い人達が考えることだ。私はトレーニングを進めよう。今、ルージュに登録しているストライカーパックは三つである。今日使うのはその内の二つだ。

 

 

「エールストライカー装備」

 

 

 私の呼び出しで背中に戦闘機の後ろ部分を切り取ったようなカスタム・ウイングが拡張領域から出てくる。空中での中・近距離戦闘を主眼に置いたストライカーだ。取り回しの良いサイズのビームサーベルが追加武装。ビームライフルと合わせてIS同士の戦闘はこれが主兵装になるだろう。

 

 少し飛んで滞空。音声で呼び出したビームライフルを両手で構え、出現した遠方の的を狙い撃つ。近い的にまっすぐ飛んでいき、ストライカーから出したビームサーベルで真横に切り裂く。ライフル、サーベル共にビーム発振機能に問題は無し。

 

 新しい的が出現したところで次のストライカーパックに切り替える。

 

 

「ソードストライカー装備」

 

 

 最大の特徴は背部にマウントされた対艦刀『シュベルトゲベール』。大型の質量剣で、その刃にレーザーを纏わせて溶断性能を高めることができる。なぜ対艦刀なのかと言えば、かつて発生した『白騎士事件』においてISが軍艦すら相手取れる可能性を見せたからだとか。対軍艦な時点で完全に軍事方面での運用前提の代物だが、これが存在すること自体がIS運用に関する取り決めであるアラスカ条約が既に形骸化しているという立派な証拠と言える。

 

 次はソードストライカーに付いている増加アーマーの左肩にマウントされたビームブーメラン『マイダスメッサ―』。その名の通り投擲した後もビーム刃を保持したまま飛翔して、弧を描き、手元に戻ってくる……のだが、私はキャッチできない。だって考えてほしい。戦闘中に相手を意識しながらビーム刃を展開した状態で自分の元に飛んでくるブーメランを華麗にキャッチできるだろうか。どうやっても隙だらけにもなるし、私にはそのままでは有効利用できません。だから一定距離へ戻ってきたら拡張領域に自動的に回収されるようにしてもらった。これでも一回は奇襲効果が期待できるのだから十分だと思う。

 

 そしてロケットアンカー『パンツァーアイゼン』。左腕のロケット推進式アンカーを打ち込んでそのまま拘束部を破壊、もしくはシュベルトゲベールやマイダスメッサーでの両断に繋げる。ただ、これも扱いが難しい。アンカーは本体と強化高分子ケーブルで繋がっている為、本体の動き方次第では狙い通りの場所に届かない可能性もある。逆にケーブルを相手に巻き付けてしまうなど、可能性だけは無限大だ。これだって私に使いこなすことを期待されてはいないはず。

 

 エールと違って長物を背負う為、機動力がガタ落ちするが、それでも専用ISだ。訓練機よりはいい動きで各武装を用いて的を破壊していく。

 

 ちなみに三つ目のストライカーパックは使わない。他二つとは違い、量産は視野に入っていない技術研究用の完全な一品物だ。それを私の要望で搭載させてもらっている。雇われ操縦者の要求がこうも簡単に通るのは不気味だが、あの装備の機能は『もしもの時』を考えると他に比べて非常に魅力的だったのだ。

 

 訓練課程を終えた私はセシリアの横に戻ってきた。

 

 

「こんなものね。我ながら才能が無いわ」

 

 

 各装備を呼び出すのにコールが必要だったり、攻撃もワンテンポ遅い。特に接近戦は下手をすれば初心者の一夏以下かも。対艦刀のリーチが長くても当てられなければ意味はない。

 

 

「代表候補生ではない、企業お抱えの新人テストパイロットとしては十分だと思いますわ。そもそも先程のお話ですと、フレイさんでも使いやすいストライカー装備の方が量産型としては喜ばれるのでは?」

 

「……そうねー」

 

 セシリアがそこに辿り着いたなら現在欧州で行われている次世代機選定計画でイギリスがティアーズ型を推しているのは完全な迷走行為だといつか気付くかもしれない。でもその場合、ティアーズのデータ取りをしているセシリアの立場が無くなる可能性もあるので、イギリス本国は是非とも気付かないでほしい。

 

「でもある程度の成果は出さないと、私の後釜狙いが欲しい連中がうるさいのよね。はぁー面倒だわ」

 

「以前から思っておりましたが、フレイさん、あまりISでの戦闘がお好きではないのですね」

 

「好き嫌いというか、おかしいでしょ。宇宙服を重力圏内で着て、武装させて戦うなんて」

 

「今のISを宇宙服と考える人はとても少ないと思いますわ。ではどうしてISの専属操縦者になろうと思ったのです?」

 

 

 ISを得たのはアズラエル社長からの推薦が理由だけど、セシリアが聞いているのはそれを受けることにした動機の部分だろう。

 

 

「私がISに手を出したのは後悔するのが怖かったから、かなぁ……」

 

 

 ヘリオポリスから始まったあの日々のような非日常が訪れるとは限らない。でも、もう一度が似たような出来事があるとすれば、私は自分が何もできないと閉じ籠って、皆に任せきりにする選択だけは二度と取りたくない。あの頃の私は自分勝手で、我が儘で、他人を振り回し続け、『彼』がMIAになってようやく過ちに気付いた時には遅かった。彼が生きていたことに気付けても、すれ違い続け、遂に謝ることができなかった深い後悔が残った。

 

 今生で私はISに触れずに生きるを選べた。でも、前世の後悔を繰り返す恐怖が勝ったから私はISを手にする決断をした。ISに憧れて心から乗りたがっている人達からすればあまりに冒涜的な動機だ。それでも私はISを手放すつもりはない。今度は大事な人達を自分の意思で手助けたいから。今はまだ、この選択を私は後悔していない。




ランチャーストライカーは犠牲になったのだ。秘密兵装用の枠開け。その犠牲にな…
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