IS短編集   作:魔法科学は浪漫極振り

31 / 51
セシリアがフレイに向けていた感情の理由が明らかに。あと、シャルロットの誕生日は非公式のものです。一部のキャラしか公式が設定してないのが悪い


IS×ガンダムSEED⑨

「説明! この状況の説明を要求しますわ!」

 

 

 一限終了と同時にセシリアが私とシャルを襲撃した。ちょっと目が怖い。周りも興味津々で聞き耳を立てている。授業中よりも生徒が出す音が無いって逆に凄くない? 

 

 

「姉さん、どうする?」

 

「ね、姉さん!?」

 

 

 私をシャルが姉呼びするとセシリアが悲鳴をあげたが、そんなに驚かなくても良いと思う。

 

 

「いろいろあったのよ、いろいろ」

 

「デュノア社の件は私も知っております! そうじゃなくてシャルル……ではなく! シャルロットさんをアルスター家が受け入れた理由ですわ!」

 

 

 そうは言っても、デュノア社の件を聞いて早めに動いた方が良いだろうとパパに連絡を入れたら、すんなり亡命の手続きとアルスター家への養子を認めてくれただけである。おそらくデュノア社を取り込んだアズラエル財閥から何か言われていたのだろう。

 

 政治家はお金がかかる。企業から活動資金の融資を受けて、要請があればそれに応じるのは資本主義の国ではよくあることだ。もっとも、シャルの身の上を話したら、涙ぐんで次の大型連休で家に連れてくるように言われたが。パパは人情家なのだ。

 

 姉、妹についてはシャル(9月10日)(3月15日)よりも学齢的に先だったから私が妹になる予定だったのだが、シャルロットから僕が妹がいいって言われて、それを受け入れた。確かに前世込みだと自分は年上だし、見た目が同年代の少女を姉呼びするよりは妹扱いの方が馴染みやすい。呼び方もシャルロットは他人行儀が過ぎるからシャルと呼んでほしいと希望されたからだ。

 

 

「私、今ほどオルコット家であったことを悔やんだことはありません……」

 

「アンタ、何言ってるのよ……」

 

「フレイさんの妹……なんて羨ましい……」

 

「ホントに何言ってるの!?」

 

 

 まさか友達のセシリアに私の妹が良いと思われているなんて想像すらしてなかったわよ! そもそも、セシリアには幼馴染にして優秀な専属メイドのチェルシーさんがいるでしょう! 前に姉のような人って紹介されたのは覚えてるんだから! 

 

 

「シャルロットさん! 私の方がフレイさんとの付き合いが長いのですわ! これで勝ったと思わないでくださいまし!」

 

「止めてよね。本気で妹ポジ争いしたら、セシリアが僕に敵うはずないだろ?」

 

「きぃぃいッ!」

 

「姉さん……フレイが姉さんか。確かにフレイの方が話しやすくていいな」

 

「箒、束さんが聞いたら発狂しかねないからやめろって」

 

 

 どこかで聞いたような台詞が聞こえたが、私はもう聞き流すことにした。それよりシャルの自己紹介後、通達された学年別タッグトーナメントの方が優先だ。これは先のクラスリーグマッチとは異なって学外から多数の来賓が来る。つまりアズラエル社のアピールチャンスである為、内輪で行うクラス代表戦とは異なり、私もこれにはきちんと参加しないと問題になるのだ。配布されたばかりの申請用紙を眺めていた私に気付いたのだろう。セシリアとシャルが我こそはと声をかけてきた。

 

 

「タッグマッチ! 私とやりましょう! テニス部でもダブルスを組んでいるのです! 相性は抜群ですわ!」

 

「姉さん、僕と組もうよ! 専用機はフランスに返還したけど、訓練機のラファールだって同じくらいやれるよ!」

 

「あー、ごめんね、二人とも。このタッグは組みたい人がいるの」

 

 

 こうも簡単に断られると思っていなかったのか、呆気にとられる二人をそのままにして席を立った私は、次の授業まで待機している一人の生徒に声をかけた。

 

 

「ボーデヴィッヒさん、私とペア組まない?」

 

「待てアルスター。この流れに私を巻き込むのはやめろ」

 

 

 まさかボーデヴィッヒさんも妹にするのかなんて悲鳴が聞こえるが誰がするか。私の実績作りには腕利きのパートナーが必要で、彼女の性格を考えるとこれが良いのだ。

 

 

「だってあなたと他に組みたがる人、私以外いないでしょう?」

 

「……私は一人でも勝つ。パートナーはランダムでも構わん」

 

「各国の来賓が大勢来るのよ? ドイツの代表候補生は連携すらまともに取れないのかって内外に評価されたくないでしょう?」

 

「ぐ……」

 

「はい、私の名前は書いたから織斑先生に提出よろしくね」

 

 

 織斑先生との接点が増える。それだけで提出用紙が貴重な品に早変わりしたのだろう。ボーデヴィッヒさんは大事そうに用紙をしまい込んだ。

 

 

「し、仕方がないな。そこまで言うなら付き合ってやる。だが半端では許さんぞ! 今日の放課後から扱いてやるからな!」

 

「お手柔らかにね」

 

 

 

 

「……シャルロットさん、私とパートナーを組みましょう?」

 

「ふふふ……そうだね、やろうか」

 

「い、一夏。わ、私と組まないか」

 

「ん? ああ、いいぞ」

 

 

 流れでセシリアとシャル、一夏と箒がペアを作ったが、普段だったら箒は奥手で自分からは中々言い出せなかっただろう。こういうのは勢いが大事よね。

 

 

 

 

「ハックシュッ! ……風邪かな? ふふん、昼休みになったらあたしとパートナーを組もうって一夏を誘いにいかなきゃね!」

 

 クラスが違う。その一点が致命的だったと後に凰鈴音は語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴミだな」

 

「もっとオブラートに包んでよ。辛辣過ぎるわ」

 

 

 ボーデヴィッヒさんに出されたISや生身での評価試験を実演してみせた感想がこれである。自分でも十分理解しているがそこまでバッサリ斬り捨てなくても。

 

 

「私はドイツ軍の基準しか知らん。そしてアルスター、お前の能力は新兵以下だ。……ただISをファッションとしか考えていない他の一年連中に比べれば遥かにマシだな」

 

 

 おや、まさかフォローが入るとは予想外。

 

 

「特に思考から動作への反映の速さと射撃時のリコイル制御は群を抜いている。前者はある程度の時間をIS搭乗に割けば自然と成されるが、後者はそうはいかん。貴様、誰に射撃訓練を指導された?」

 

 

 そうだろうか? 当時はボロクソに言われ過ぎて私は駄目なんだと思っていたが、まさか現役の軍人から褒められる出来栄えとは思わなかった。

 

 

「開発主任のレイさんだけど……」

 

「レイ……アズラエル・インダストリ所属の?」

 

「そうだけど知ってるの?」

 

「なるほど理解した。あの男から教導したなら凡人の射撃がマシになるのも納得だな」

 

「え……レイさんって有名人なの?」

 

 

 射撃技術が研究畑の人にしては異常に高く、ビームライフルやゲシュマイディッヒ・パンツァーを含む光学兵器関連の技術開発に携わったやたらと気難しい人、今は量産型ISとEOS開発を行っているが、プライベートについては優しい奥さんがいるくらいでアズラエル社に来る前の話など聞いたことがない。……とても気になる。ボーデヴィッヒさんが知っているなら聞いておきたい。

 

 

「これ以上無駄な時間を過ごす暇はない。……だが、私の走り込みについてこれるなら教えてやろう」

 

「えぇ!? 待ってよ!」

 

 

 そう言って陸上用トラックへと走り出してしまったボーデヴィッヒさんを追いかける。ややペースは速いが私が運動部に入っているのは伊達ではない。ちなみにトリィは直上をゆったり飛んでいる。私が問題無く並走できていることを確認すると先程の話を続け始めた。

 

 

「これは私が織斑教官に指導を受ける前、指標とすべき人物を探していた際に独自に調べたもので、絶対の証拠があるわけではないことを告げておく。……レイという男はイギリス出身の研究者だったが突如アメリカへの移住を決め、在席していた研究所へ違約金代わりにIS用レーザーライフルの設計図を提供したらしい」

 

 

 レイさん、イギリス出身だったんだ。でもイギリスのIS用レーザーライフル? それはつまり……

 

 

「そうだ、イギリス代表候補生が使っている『スターライト』だ」

 

 

 なるほど、レイさんはアメリカに来る前にセシリアが使っているレーザーライフルの雛形を作ったのか。

 

 

「違うぞ。奴が設計した『スターライト』が今の『スターライトmkⅢ』だ」

 

 

 はい? どういうこと? 

 

 

「アメリカに行った男の遺物をそのまま使うことを嫌ったイギリスの女性権利団体が設計図を参考に作った代物が初代の『スターライト』と『スターライトmkⅡ』にあたる」

 

 

 ……そうか。IS用兵装が開発されているということは女性権利団体の活動も加熱しているはずだ。優秀な研究者の成果も男というだけで弾かれるような暗黒時代。実際、多くの男性研究者が最先端技術開発の現場から居場所を奪われた。アズラエル社はそういう人材に糸目をつけずに声をかけて引き込んでいったらしく、私が使うビームライフル以外の武装名の多くがドイツ語なのもドイツから流出した開発者が手掛けたからだとか。

 

 

「結局元の性能以上のモノを作ることが出来ず、次世代機選定計画へ間に合わせる為に三代目と捏造して数年前、奴に設計された原型機を『スターライトmkⅢ』として登録した。そういうカラクリだ」

 

 

 うーん、闇が深い。でもレイさんが聞いたら鼻で笑ってからさっさと忘れ去りそう。ところで私が一番聞きたいのはあの謎の射撃の腕前に関してなんだけど。

 

 

「そう先を急かすな。設計図を提出した当時の事だ。その才能の流出を嫌ったイギリス軍部高官が身柄を拘束する為にお抱えの特殊作戦部隊を派遣したらしい」

 

 

 片や排除しようとしたり、片や囲おうとしたりと無茶苦茶だなぁ。それでどうなったのだろうか。どう考えても切り抜けられそうにないけど。

 

 

「……派遣された部隊は全員テムズ川で魚の餌、指示を出した軍部高官も推定三キロ以上は離れた地点からの長距離狙撃で死亡したそうだ」

 

 

 ヒッ……なんか急に血生臭い話になった。というか狙撃三キロってほぼ世界記録じゃ……。

 

 

「実際に奴個人が手を下したとは限らん。もしかしたらアメリカのエージェントが協力した可能性も十分にある。ともかく容疑者にこそあがったが確たる証拠も見つからず、レイという男は予定通りに渡米、その後アズラエル・インダストリに入社、翌年同社の女性研究者と結婚した」

 

 

 長年の謎が解明されたと思ったら更に謎が増えた……。い、意味が分からない。

 

 

「ただ、私個人は奴の仕業だと思っている。それだけの話だ。……よし、走り込みは終わりだ。格闘戦の訓練に移るぞ」

 

「ISは、使わないのね……」

 

「生身でなければ恐怖を感じられんだろう。これは一種の度胸試しだ」

 

 

 ランニングの熱が冷める間もなく刃引きされたナイフを投げ渡してきた。たしかに基本武装のアーマーシュナイダーを使うならナイフ戦も慣れておくべきだとは思うが、直接斬りつけ合う行為は正直怖い。

 

 

「やめても構わんぞ。貴様も他の連中同様に口先だけだと見下げ果てるだけだ」

 

「……嫌よ、私がアンタを選んだんだから。失望なんてさせないわ」

 

 

 他人を傷付ける行為に慣れたいとは思わない。だけど、大切な誰かを守る為に必要なら、どんなことだってやってみせる。私とボーデヴィッヒさんの訓練の日々はこうして過ぎていったのだ。




レイ主任はアズラエル社の光学兵器技術開発設定の為の捏造キャラです。本編には直接出しませんのでこの場での明言は避けますが、元ネタはガンダムではありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。