IS短編集   作:魔法科学は浪漫極振り

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長い戦闘シーンはカロリー消費デカくてつらい



IS×ガンダムSEED⑫

 学年別タッグトーナメント決勝戦

 

 フレイ・アルスター      凰 鈴音

             VS

 ラウラ・ボーデヴィッヒ    更識 簪

 

 

 

 

 

 

「一夏! アンタはなんで初戦敗退してるのよ! 予定が台無しじゃないの!」

 

 

 私が決勝前の小休憩中に偶然遭遇した一夏につい小言を言ってしまうのもしょうがないだろう。パートナーのラウラは決勝で一夏を叩きのめして溜飲を下げるつもりでいたのに、相手がまさかの初戦敗退。彼女の目的が不完全燃焼で終わることが確定したのだから。

 

 

「んなこと言われてもなぁ……」

 

「……一夏の責任ではない。完全に私の力量不足だ」

 

「あ……ごめんなさい」

 

 

 一夏とペアを組めて喜んでいた箒は凰さんのパートナー、四組所属の日本代表候補生の更識さんが操る同型機と対峙して一方的に負けてしまい、その実力差を見せ付けられる形となっていた。専用機に負けるのは仕方ないと割り切れても、同型の訓練機同士で完全に負けては言い訳のしようがないのだろう。その後の試合は合流した更識さんと凰さんによってひたすらタコ殴り、反撃さえ満足にできず見るも無残な姿を晒す白式と一夏が転がっていた。

 

 

「ふん! 抜け駆けした罰よ!」

 

 

 噂をすれば影が差す。凰さんと更識さんが近くを通りかかったようだ。

 

 

「更識さん、こんにちは。決勝戦はよろしくね」

 

「……よろしく」

 

 

 彼女がこれから優勝を競う相手であるとはいえ、最低限度の挨拶くらいはしておくのが礼儀だ。あと、気になっていることも聞いてしまおう。

 

 

「ちなみに凰さんと更識さんが組むに至った経緯は聞いても?」

 

「一夏のバカを試合でぶん殴る為に私がわざわざ四組まで行って勧誘したのよ! とっても清々したわ!」

 

「私も個人的な事情で織斑君に思うところがあったから。……ちょっとストレス発散できて良かった」

 

 

 活発な凰さんと穏やかな更識さん、印象は違うが二人とも共通の目的の為に仲良く協力した様子。これはコンビネーションも警戒が必要ね。

 

 

「なぁ、更識さん。俺、何か君に嫌われるようなことしたのか?」

 

「……」

 

 

 更識さんは一夏の問い掛けを無視することにしたようだ。私も彼女が一夏を嫌う理由は知らないが、これまでの学園生活の経験上、こういう場合はたいてい一夏に原因があると推察する。

 

 

 

 

 

 

 決勝前にISを装備した状態での最終ブリーフィング。私はラウラと対戦相手の情報を見ながら意見を交わす。

 

 

「両方とも近接重視。ラウラのレーゲンは甲龍の衝撃砲と相性が良いからそっちを担当してもらいたいわね」

 

「日本の代表候補生の近接武装は基本兵装の葵ではなく、奴の未完成だという専用機から持ってきていたな。確か夢現だったか?」

 

「複合装甲用の超振動薙刀……。あの切断力は厄介ね」

 

「試合での動きを見るに、本人もあの武器は手慣れているのだろう。間合いに入れば斬り捨てられると思え。足を止めない射撃戦闘を続けて徹底的に踏み込まれないようにしろ。……だが大きく離れすぎるなよ? 私ならその場合はお前を放置してレーゲンを狙うだろうからな」

 

「二対一だとラウラのAICが十分に機能しない以上、挟み撃ちの妨害ができるよう、常に備えておけってことね。了解」

 

「……ふん、私なら一人でも問題無く倒せるが、僚機はいた方が戦術の幅は増える。それだけのことだ」

 

「はいはい」

 

 

 試合開始時間を知らせるアナウンスを聞いてラウラに続いてピットから飛び出す。ほぼ全学年、全クラスが見守る中、私達を待っていたのは、凰さんの甲龍と、本来両肩の盾がある部分に三角柱状のウェポンラックを搭載した更識さんの打鉄だった。

 

 

「……ここまで見たことがない装備だな。まさか決勝直前で装備を変えてくるとは」

 

 

 ルール上は問題ない。使用可能な武装が多彩なラファールを使う生徒がいることを考えれば対戦相手を考えた装備の変更は十分に考えられるからだ。でも打鉄を含め、学校の訓練機にはあのような装備は無いはず。つまり、あれは例の薙刀同様、彼女の専用機が本来搭載する武装の可能性があり得る。

 

 

「どんな兵装か知らないけど、注意しましょう」

 

 

 

 

 

 

 ラウラのレーゲンのレールカノンによる砲撃から試合の火蓋は切って落とされた。元々当たるとは思っていなかったが、流石代表候補生。慌てることなく左右に散らばって避け、甲龍を先頭に二機が私に向けて突っ込んでくる。当然、私はこの対面を望まないので追い払う気でバズーカを連射する。

 

 

「そんなおっそい弾に当たるはずないでしょ!」

 

 

 バズーカの弾を掠めるように甲龍が間合いを詰めてくる。無駄の少ない回避マニューバの巧みさは彼女の腕前をよく表している。だけど正確さは時として読みやすいとも言える。一発目と二発目を楽々すり抜けた甲龍は三発目も同じように避けようとしたところで接触信管ではなく、近接信管になっていたバズーカ砲弾の爆風で横殴りに吹っ飛ばされた。真正面からのせめぎ合いでは私は勝てない。だから先読みと小手先で勝負させてもらう。

 

 

「ちょっ、やり口がこすいわよ!」

 

「戦いに卑怯も汚いもあるものか! 貴様の相手は私だ。来い!」

 

 

 ラウラが動きの鈍った甲龍へワイヤーブレードを絡ませ、強引にインファイトへ持ち込む。更識さんの打鉄はレーゲンと甲龍の戦闘には加わらず、標準射撃武装であるアサルトライフルの焔備を右手、左手に夢現を展開して焔備を乱射しながら私に迫る。

 

 流石に片手での反動制御は完全ではなく、多少のバラツキがある。もっとも更識さんはそのランダム性の高い散弾を利用して私の動揺を誘おうとしているのだろう。カス当たりでも被弾は被弾だ。不可視のシールドバリアーや絶対防御があろうと目の前に実弾が飛んでくる恐怖は無くならない。戦い慣れた代表候補生以外の一年生でこの恐怖を既に克服している人は少ないだろう。

 

 ……もっとも私はレイ主任にシールドバリアーの限界ギリギリまで身動きできない状態でIS用の火器を目先で撃ち込まれるという拷問一歩手前の訓練を受けているので多少は耐性がある。戦闘での怯えが中々抜けなかった私が荒治療として頼んだが、パパには心配させたくなかったので内緒だ。

 

 私が動揺を見せず、ビームライフルに持ち替えて間合いを着かず離れずの引き撃ちに移行したことで当初の目論見は外れたと判断したのであろう。焔備の大雑把な連射を中断し、夢現も格納、両手持ちでの精密射撃勝負に切り替わった。これで後はラウラが来るまで待つ、これまでの必勝パターンに入ったことで私は油断してしまった。彼女が新しく持ち込んだ兵装に割いていた意識が抜け落ちてしまった。

 

 

「試作『山嵐』! 発射!」

 

 

 偶然か必然か、私の慢心の隙を突いて更識さんのコールと共に打鉄が搭載していた三角柱のウェポンラックが空を駆ける。私は慌ててビームライフルで片方を狙い撃つがあのウェポンラックは想像以上に硬いらしく、軽く揺らすだけで終わってしまう。そして空へ舞い上がったウェポンラックの表面が次々とスライドし、その本性を私達に曝け出した。

 

 

「マイクロミサイル! ……避けて!」

 

「なにッ!?」

 

 ラックの中身は数えるのも面倒なくらい積載された小型ミサイルの群れ。正体こそ分かったが全てを防ぐには既に遅く、三角柱の側面から雨あられの如くミサイルが四方八方へと飛び出した。その全てが私ではなく、甲龍と戦闘中のラウラのシュヴァルツェア・レーゲンを包囲する機動で突撃する。小型のため、一発一発の威力は低いだろうが、多数かつ多方向からの強襲性は非常に高く、頼みのレーゲンのAICでも全方向には対応できない。次々と叩きつけられる爆風に煽られ、視界と集中力を削がれたラウラは対峙していた甲龍を見失う。

 

 

「その隙ぃ、貰ったぁあああぁあぁ!!」

 

「クッ!」

 

 

 ラウラの脚部寄り、下方向から爆風を突き抜けた甲龍が両手に分離した双天牙月を構え、レーゲンの懐に飛び込む。姿勢が崩されており、位置関係の都合上、レールカノンもプラズマ手刀もこれに即応できず、レーゲンの大きくシールドエネルギーが削がれる。このまま終わらせるつもりなのだろう。甲龍は衝撃砲の発射態勢に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(負ける!? 私が……半端な第三世代機と訓練機如きに!?)

 

 

《汝、より強い力を欲するか》

 

 

(わ、私、は……!)

 

 

「まだ終わってないわ!意地見せなさいよ!ラウラ!」

 

 

 

 

 

 

「えッ!?……きゃあっ!?」

 

 

 衝撃砲の発射直前に甲龍とレーゲンの間に何かが割って入った。咄嗟の出来事に凰さんは反応が遅れて、割り込んだ物体に衝撃砲を叩き込む。……それは私がルージュから分離させ、独立稼働・飛翔させたエールストライカーだ。エネルギーの増槽としての役割もあるストライカーパックは衝撃砲によって破壊され、爆発を引き起こす。

 

 

「……ッ! うるさいッ!! 私は強いのだ!! 黙っていろッ!!」

 

 

 一瞬呆けていたラウラは何かを振り払うかのように叫ぶと爆炎の先にいる甲龍の推定位置へとレールカノンの残弾を盲撃ちする。これまでバズーカの爆風、ラウラとの戦闘、強引に山嵐を抜けてきた際のダメージ、ストライカーの爆発など、数々の被弾で残り少なかったエネルギーが完全に切れた甲龍はこの射撃の直撃で戦闘不能。同時にラウラのレーゲンもレールカノンの乱射で残余エネルギーを使い果たして機能停止に陥る。

 

 ……要するに、私と更識さんの一対一の状況になってしまった。

 

 

「どうしようかしら……」

 

 

 ソードストライカーを出すか悩むが、彼女相手に隙の大きい得物では勝てない。機動戦の要であったエールストライカーが無くなった以上、引き撃ち戦法も不可。鈍重なフォビドゥンストライカーなんて論外である。

 

 

「ならこれね。ラウラ教官仕込みのナイフ格闘戦といきましょうか」

 

 

 ストライカーを出さず、腰のアーマーシュナイダーを二本抜く。更識さんは夢現を私に向ける。

 

 

「日本の代表候補生に凡人の底意地、見せてあげるわ!」

 

 

 薙刀の間合いの中に飛び込めばチャンスはある! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学年別タッグトーナメント

 

 

 優勝   凰鈴音 更識簪

 

 

 

 

 ……そりゃあ気合だけで勝てる訳は無いわよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 IS学園の行事参加を終え、本拠であるアズラエル財閥の本拠点デトロイトへと帰還するプライベートジェットの中でムルタ・アズラエルと秘書兼護衛のジプシーが密談を行っていた。

 

 

「ドイツの第三世代IS、あれ、ヴァルキリートレースシステムは間違いなく仕込まれていたんですよね?」

 

「はい。機体損害がレベルD、搭乗者C-0037のネガティブな感情の高ぶりで発動する設定だったそうですが、後者が不十分だったのではないかと」

 

「科学者連中め。感情なんて不確かなモノに制御を頼るから失敗するんだ」

 

「本国を出立する直前まで対象人物の精神は非常に不安定であり、発動は確実だと見込んでいたようです。学園への編入からこれまでの短期間で心境の変化でもあったのでしょう」

 

「……はぁ、せっかく周辺国が軒並みやらかして調子に乗り始めたドイツをあの()()()()()()()()()()()()()()ごと処分できる大義名分が作れそうだったってのに」

 

「代替案としてIS委員会にシュヴァルツェア・レーゲンへ搭載されたVTシステムの情報ごと研究施設をリークします。公の場で暴走させることに比べると実害が少ないでしょうが、他の欧州諸国に先んじたかったドイツの足は十分引っ張れるかと」

 

「それで結構。ま、今回の試合で()()()()()は見どころすらなく初戦敗退、軍仕込みの人形も多少腕の良い操縦者止まりだ。()()()()()以降、遺伝子操作に過大な期待を寄せていた連中も多少は大人しくなるでしょう。……ですが必要になればいつでも処理できるようにしておいてください」

 

「では今後に備え、欧州で活動中のモノクローム・アバターは日本の拠点へ移します」

 

「ええ、お願いしますよ。すべては『青き清浄なる世界の為に』ってね」

 




突っ込まれそうな部分に先に答えておくスタイル。

Q1:前にアズラエルは潔白ってあったゾ!この二次創作者、自分の書いた文章すら忘れてんの?
A1:二話の説明はフレイの主観によるものです。アズラエルは前世含めて百戦錬磨のビジネスマン。前世含めても社会経験極僅かな小娘に腹の内を簡単に晒す訳がないのです。逆にアズラエルはフレイが前世の記憶持ちだとしっかり把握しています。

Q2:試作『山嵐』ってなんだよ。捏造乙。
A2:そうだよ。マルチロックオン機能の無い普通の小型ミサイルを搭載してます。イメージはGP03デンドロビウムのコンテナミサイルをイメージしてもらえれば良いかと。ミサイルカーニバルです。

Q3:これVTシステムが起動してたらどうなったんですかね…?(震え声)
A3:ボーデヴィッヒさんはご家庭の事情(意味深)でドイツへ帰国されることになりました(無事帰国できたとは言っていない)


お知らせ:書き溜めが無くなったので、連日更新は保証できません。
また、SEED編を更新する場合は午後六時、それ以外の短編は午前零時で今後やっていきたいと思います。何卒よろしくお願いいたします。
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