IS短編集   作:魔法科学は浪漫極振り

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FFユニットを出しても特に何も言われない…
つまり問題ないってことだな!(錯乱はアスランした)


IS×ガンダムSEED⑭

 見知ったアークエンジェル級の士官室。機能性を重視した殺風景な個室を彩る私物は何も無い。同型の部屋がたくさんある以上、これではアークエンジェルか、ドミニオンか、そして誰の部屋なのか。到底判別はつかない。

 

 

……違う、ここは『彼』の部屋だ。直感的に悟った。私が戦闘のたびに現実へ目を背けて閉じ籠っていたあの一室だ。

 

 ぼんやりと部屋の中を眺めるが、まだ頭が冴えない。とりあえず寝かされていたベッドに腰かけて自分の手足を確認する。今の私はアークエンジェルに乗っていた頃のピンクの地球連合規格の軍服を身に纏っているようだが、着替えた覚えはない。そもそも私は臨海学校へと向かうバスに乗っていたはずだ。誘拐の可能性もあるが複数の専用機持ちが同乗し、織斑先生や山田先生も乗り込むバスから私を誰にも気付かれず連れ出して、アークエンジェルの士官室に似た部屋を用意して軍服に着替えさせ、寝かせておくなんて非現実的だろう。

 

 つまり、これは夢だ。

 

 

「フレイ」

 

 

 そう、これは夢だ。

 

 

「フレイ、会いたかった」

 

「……ッ!」

 

 

 夢だから、『彼』はここにいるし、私に優しく声をかけ、触れてくる。

 

 

「ずっと一人にしてごめん、フレイ」

 

「キラ……」

 

 

 私の狭い世界を命がけで守ってくれていた青年。『キラ・ヤマト』が私を抱きしめ、微笑んでくれる。

 

 

「もう二度と君から離れたりしない。ずっと一緒にいよう」

 

「……」

 

 

 互いに見つめ合ったまま彼は私をベッドに再び横たわらせ、そっと顔を近付けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、アンタ誰?」

 

 

 私が問い質すと罰が悪そうに()()()姿()()()()()()()()は密着していた身体を離した。

 

 

「……なんで分かったの?」

 

「実際のキラよりだいぶ美化されてるわ」

 

「えっ。でも僕はフレイの記憶から再現されてるから間違ってないと……」

 

「乙女心という名のフィルター効果よ、察しなさい。……それに本物のキラは精神に余裕がある時は割とヘタレだから。私を押し倒す甲斐性なんて期待できないから」

 

「……うーん、記憶だとやる事はやってたみたいだけど、もうちょっと精査すべきだったか」

 

 

 いたずらがバレた子供のように振る舞う誰かさんはヘラヘラと笑い出す。先程の発言内容、『私の記憶から再現』という文言から推察するに、彼は私の敵対者では無いはずだ。

 

 

「ちなみに僕が誰だか予想はできてる?」

 

「……ルージュでしょ。ここはISコアの精神世界かしら?」

 

「正解だよ」

 

 ルージュはにんまり笑ってそれだけ言うと、床から沸いて出てきた椅子を掴んで私の対面に腰掛けた。顔はキラのままだ、自分の素顔が無いのか、それとも気に入ったのだろうか。

 

 

「やっと話せたね。フレイは同調率が低いせいか交感も上手くいかなくて、話し相手が欲しかった僕はずっと困ってたんだ」

 

「……不出来で悪かったわね。それがなんで今更繋がったのよ」

 

「FFユニットだっけ? あれには人間の脳波による感覚操作を補助・増幅する機能が付いているのさ。それを逆用して今回は僕から君に繋げたんだ」

 

 

 あの曰く付きが原因か。時間が経って多少心も落ち着いてきたのに、また気が重くなってきた。

 

 

「……それでアンタは私に何の用があるのかしら」

 

「手伝ってあげようかと思ってね」

 

「手伝う?」

 

「遠隔無線誘導ミサイル、全く使いこなせなかったでしょ? あれの制御を僕が代わってあげるよ」

 

 

 FFユニットに搭載された特殊兵装、試験起動で私がどれだけ動かそうと念じても浮かぶどころか転がりもせず、隣でガンバレル四基を自由自在に動かしていたシャルが苦笑いしていたアレをルージュ側で処理してくれる、と。

 

 

「それは助かるけど、なんだか努力して身に付けたセシリアに悪い気がするわね」

 

「ブルー・ティアーズもサポートはできるけど、セシリアの才覚ならいずれフレキシブルも含めて自分の物に出来るって信じているんだよ。……適性と才能が皆無なフレイと違ってね」

 

「キラの顔と声でディスられる日が来るとは思わなかったわ……」

 

 

 ちょっと泣けてきた。

 

 

「ハハハ、ごめんねフレイ。ようやく会話できてつい嬉しくってさ。お詫びに何か質問に答えてあげるよ。束博士が設定した禁止事項以外なら、なんでも」

 

「なんでも?」

 

「僕、面倒は嫌いなんだ。白騎士や白式みたいに意味深で思わせぶりな振りや会話だけで操縦者に察しろとか、無茶言わないよ」

 

 

 確かにISと話せる日が来たらと思ってはいたが、いざその時が来て、なんでも答えてもらえると言われてしまった。質問の優先順位を決めておかなかった過去が悔やまれる。……ひとまず、最初の疑念から拭うとしよう。

 

 

「……私がルージュに選ばれた理由ってなに?」

 

 

 私はISにすら適性の無さを指摘される凡人だ。どうして私は専用機を持たされているのか。

 

 

「あー、それね。薄々検討は付いてると思うけど」

 

「私に、前世の記憶があるから?」

 

「そうそう。普通の人間には無い特殊事例だからね。もしかしたらISの僕にも普通ではない影響があるんじゃないか、一種の実験だよ」

 

 

 私が前世を覚えていることを把握している人物、そしてその人物は同時に私をルージュの操縦者に推薦した人。

 

 

「つまり、私にルージュを託したアズラエル理事には記憶があるのね……」

 

「そうだね」

 

 

 最初にパーティで出会った時は違うと判断したが、やはり彼は一枚も二枚も上手だったようだ。あの人が記憶持ちならフォビドゥンを始め、連合の兵器情報は持っているだろう。詳細な設計図は引けなくとも、大まかな開発の方向性だけ技術者に告げればいい。アズラエル・インダストリには部分的な才能では束博士に匹敵する優秀な開発スタッフが大勢揃っているのだから。

 

 

「……でも、この世界にはコーディネイターはいないし、大丈夫かしら」

 

 

 ブルーコスモスの盟主が記憶を持っていた事実に一抹の不安を覚えたが、あの戦争で見せた狂気はコーディネイターへの憎悪が原因だ。コーディネイターが存在しない今の世界では問題にはならないと信じるほかない。そう考えていた私をルージュの言葉が否定した。

 

 

「いるよ、この世界にもコーディネイター」

 

「は?」

 

「プロジェクト・モザイカとその派生のアドヴァンスド。ちなみにフレイの周りにも該当者三人だよ」

 

 

 さんにん? 三人も遺伝子操作で作られた人間がいると……? 思い当たる節は……

 

 

「未成年で、あり得ない軍籍持ちのラウラ……」

 

「正解。彼女はドイツ製。派生の方だね。確かコーディネイターって遺伝子調整によってあらかじめ強靱な肉体と優秀な頭脳を持った新人類と定義されているんでしょ?」

 

「強靭な肉体……人間離れした身体機能……まさか、織斑先生が」

 

「またまた正解」

 

「……つまり、一夏も?」

 

「そうだよ」

 

 

 本来、私が知れるはずもなかった世界の暗闇は、覚悟も信念も不十分な状態でルージュによって開示された。

 

 

 

 

 前世においてファースト・コーディネイターと呼ばれた人物がいる。

 

 

『ジョージ・グレン』

 

 

 僅か17歳で大西洋連邦MIT博士課程を修了、オリンピックの銀メダリスト、アメリカンフットボールのスター選手、海軍に入隊後、空軍のエースパイロットとしても活躍。さらに理工学の分野においても様々な業績を掲げ、世界中から万能の天才と評された。彼は自身が開発した探査船と共に木星探査へ向かう前、己の出生の秘密を世界に明かした。自らが遺伝子調整を受けた人間『コーディネイター』である事を告白したのだ。

 

 この時、同時に遺伝子操作の詳細なマニュアルを地上に向けて公開した結果、全世界は否応なしに遺伝子操作の是非を問う混乱の渦に叩き込まれ、世界各地で非合法な遺伝子操作による生命の乱造が社会問題となった。……その果ては私が経験した遺伝子操作を行っていない人類『ナチュラル』とコーディネイターの生存戦争だ。

 

 

 

 

 織斑千冬のモンド・グロッソ優勝は輝かしい。IS至上主義とも言える現代社会でもっとも著名な人物だろう。

 

 ……もしも彼女が自身の出生の秘密を公開すればどうなる。知れば誰もが望むだろう。彼女のようになりたいと、彼女のようでありたいと。

 

 そして一夏だ。彼がISを動かせる理由が仮に遺伝子操作によるものだとしたら……

 

 世界中が女性にしか使えないISへ依存している状況で遺伝子操作を行えば男でもISを動かせる。そんな話が広まれば、その結果は言うまでもない。

 

 私が知るムルタ・アズラエルならば二人を間違いなく殺すだろう。コーディネイター憎しで民間人が住む宇宙コロニーに核ミサイルを喜々と撃ち込む狂人達の元締めだ。遺伝子操作技術の普及とコーディネイターの蔓延、かつての二の舞は絶対に避けたいはず。気になるのは織斑姉弟が世に出てからそれなりの月日は流れている点。まだ二人に手を出していないなら、彼には知られていないとみるべきか。それとも殺せない理由でもあるのか。

 

 

「……こんな情報教えて、どうする気?」

 

「フレイは周りの人達を守りたいんでしょう? だったら先に知っておいた方が今後動きやすいかなと思って」

 

 

 ルージュにあっけらかんと言われてしまったが、正直なところ私の手には余るレベルの難題だ。アズラエル理事から彼女達を守るなんて出来るのだろうか。今後の対応に悩んでいると急な眠気が襲ってきた。夢の中で眠くなるという不思議な経験は思考を鈍らせ、私はそのまま瞼を閉じる。

 

 

「そろそろ起きる時間だね。フレイ、また後で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

「フレイさん、お目覚めですか?」

 

 

 バスに揺られて眠っていたようだ。隣席のセシリアがこちらを覗き込んでいる。

 

 

「よくお眠りになられていましたわ。ほら、珍しくトリィもずっとお傍に控えておりましてよ」

 

 

 普段なら勝手気ままに動き回っているトリィが私の膝上でこちらを見上げていた。先程の世界が夢でなければ、私と交感を行っていたということか。

 

 ……あの場で得てしまった情報を考えると全部夢だったと忘れたい。

 

 

「……まぁ、途中までは良い夢だったわ。ね、トリィ」

 

「そう言ってもらえると僕も嬉しいよ、フレイ」

 

 

 トリィからキラ……いや、ルージュの声がした。

 

 

「キャァァァァァァシャベリマシタワァァァァァァァ!?!? 」

 

「静かにせんかオルコットォ!!」

 

 

 お客様の厄介事には慣れているはずの熟練バス運転手が僅かに手元を狂わせてしまうくらいには、セシリアの悲鳴と織斑先生の叱咤は苛烈であった。




ちょこっと弄れば、コズミック・イラと同じ状況になりそうなくらい、闇が深いIS世界の設定。
トリィ(ルージュ)はアストレイの8みたいなサポート枠だと思ってもらえれば。
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