IS短編集   作:魔法科学は浪漫極振り

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遅くなりました。プロットを再調整した結果、原作部分は学園祭で終了しそうです。


IS×ガンダムSEED⑮

 臨海学校初日は学園指定の旅館、花月荘へチェックイン後、生徒達は自由時間として海で遊べる予定だった。

 

 そう、だっただ。会話が可能なISという特異存在が突如発生したことで周囲の生徒達に質問攻めされた私は織斑先生によって引きずり出され、本来であれば明日、専用機持ち達がISの各種装備試験運用を行う為の入江へと強制連行された。他の生徒達は予定通りに海を満喫しているだろうが、私は休みなしが決定した訳だ。でも、それを嘆くことはしない、言い出せない。……不機嫌さを全く隠せていない織斑先生がすぐ隣にいるからだ。

 

 

「お、織斑先生、怒ってます?」

 

「別に怒ってはいない。最近の面倒事続きで少し羽を伸ばせるかと思った矢先に自由時間が消し飛んで、新しく買ったばかりの水着が無駄になっただけだ」

 

「やっぱり怒ってるじゃないですかぁ!」

 

「……なんだアルスター、私の休み時間が無くなったのはお前が悪いのか」

 

「どちらかといえば私も被害者です!」

 

「うんうん、フレイは悪くないよ」

 

 

 肩に止まっていたルージュが私達の会話にサラッと混じるが、そもそもこいつが新しく追加された会話機能を隠しておけば今頃は平和だったのだ。なお、現時点で分かっている事実はトリィのカメラアイが光っている時だけルージュとの会話が成り立つという点だけ。オンオフはルージュ側で自由らしい。

 

 

「諸悪の根源は黙ってなさいよ……」

 

「今夜は唐揚げにビールで飲むか」

 

「二人とも酷いね。それと引率の教師がお酒を飲むのは駄目だと思うよ、ちーちゃん」

 

「……次にその呼び方で呼んだら貴様のコアを握り潰すぞ」

 

「トリィ」

 

 

 カメラアイから光が消えた。つまりは引っ込んだ。……あとコアは特殊なレアメタル製でかなり頑丈らしいけど、織斑先生なら本当にやれそうで怖い。ともかく余計な差出口が無くなったので話を進めるべきだ。私はなぜこの場に連れてこられたのかを聞いていない。織斑先生に理由を問うと、溜息混じりで語ってくれた。

 

 

「私の伝手でIS専門家を呼んだが……旅館に呼ぶと間違いなく騒動が起きるのでな。仕方なくここを合流場所に指定した」

 

「専門家……?」

 

「……来たぞ」

 

 

 織斑先生が空を見上げた為、つられて私も空を仰ぐとそこには私達へ向けて落下してくる人参があった。いや、正確には人参型のロケットというべきだろう。ともかく製作者の度し難いセンスに唖然とさせられたが、そのロケットは外見に反して巧みなスラスター制御をかけ、私達に被害が出ない勢いと位置を計算して地表に降り立った。

 

 

「ちぃぃぃちゃぁぁぁん!!」

 

 

 そして人参ロケットから出てきた人物は更にイカレた恰好だった。エプロンドレスにウサギ耳状のカチューシャを付けたコスプレ紛いの二十代半ばの美女。……その顔はこれまでISについて学ぶ中で幾度か目にした覚えがある。ISの開発者にして現在の所在は不明とされた天才科学者、篠ノ之束だ。

 

 

「ちーちゃんの熱いラブコールに呼ばれて! 束さん華麗にとう……ヘブラバッ!」

 

「喧しい」

 

 

 織斑先生にジャンプ突撃を行った束博士は先生のアイアンクローで華麗に迎撃され、身動きを封じられた。

 

 

「イダダダダ……! いやー、すっごい久しぶりのスキンシップ! 嬉しさが溢れちゃうー!」

 

「このままだと溢れるのはお前の脳髄になるぞ」

 

 

 目を背けておこう。真ん前でのゴアは御免である。ようやく束博士が落ち着いたのか、二人は悲惨な結末を迎えずに済んだようだ。

 

 

「ふぅ……数年ぶりにちーちゃん成分が補充できて束さん大満足」

 

「こちらから連絡しなくとも明日になれば出てきただろうが」

 

「え? なんで」

 

「……箒の誕生日にプレゼントを渡しに来ると一方的な連絡を入れてきたのはお前だぞ」

 

「……………………あ、忘れてた」

 

「なに?」

 

 

 明日、七月七日は篠ノ之箒の誕生日、私も一応プレゼントは用意はしている。最近鈴と共に一夏への手料理を振る舞う機会が増えていると言っていたから、料理に使える便利なグッズを用意した。剣道関連の品はどうせ誰かが買うだろうと思ったのだ。……ともかく、そんな箒の誕生日を実の姉は忘れていたらしい。束博士は慌てて手元のウサギを模したと思われる連絡用端末を弄り、何処かへと連絡を取り出した。

 

 

「もしもし、くーちゃん? 束さん、うっかり忘れ物してさー。前に作って倉庫に突っ込んどいた紅椿、パッケージングして指定座標に送ってくれる? ……これでよし!」

 

「お前、本当に束か……?」

 

「そだよー? 最近は上ばっかり見てて足元お留守だけど正真正銘本物の篠ノ之束だよ!」

 

 

 織斑先生は妹の誕生日を失念していた束博士に違和感を感じたようだが、私はこれまで耳にした束博士にまつわる話と今の短い会話の中でなんとなくだが目の前の天才科学者の人となりを理解した。この手の人種は倫理や一般論よりも自分の興味がある対象がなにより優先なのだ。おそらく箒よりも気になる関心事があったに違いない。

 

 

「で、ちーちゃんが言ってた子はどこかなー?」

 

「トリィ。……こんにちは束博士。今日も相変わらずのぶっ飛び具合、生みの親の惨状に僕も溜息が出ます。ちょっとコアネットワーク経由で確認してきましたけど、紅椿はカンカンですよ? 私は砂時計やシリンダーより価値が無いのかって」

 

「うーん、そんなことはないけど、早めに基礎設計しとかないと後々面倒だからねー」

 

「熱中し過ぎて黒鍵所持者の少女に四六時中実質的な介護をされてる現状はコア一同ドン引きです。あ、黒鍵から連絡が。保護者を気取るなら自己管理くらいしろだそうです」

 

 

 引っ込んでいたルージュが再び表に出てきた。そして同時に発覚するISコアにすら呆れられたり怒られたりしている束博士の実態。聞いている織斑先生も頭が痛そうだ。

 

 

「まあまあまあ! それは置いといて! ほら、そこの凡人はサッサとIS展開して私にデータを見せる!」

 

「あ、はい」

 

 

 私はルージュを展開し、ISコアの管理システムのロックを解除する。束博士は慣れた手付きでルージュの状態を確認していく。

 

 

「フラグメントマップは……ほほぅほうほう……」

 

 

 独り言を呟きながら尋常ならざる速度でデータを流し見しているが、あれで分かるのだろうか。凡人には天才の能力や限界なんて分からない。しばらくして束博士はデータと睨めっこを続けていたが、結論を出したようだ。

 

 

「外的要因はあれど、自我が発芽したのは搭乗者の人生経験が鍵だろうねー。当然、この現象は第二次形態移行ではないよ」

 

 

 だが織斑先生はその結論に待ったをかけた。

 

 

「齢十五の少女の経験がここまでISに影響を与えるだと? そんなことがあり得るのか?」

 

「そりゃあ誕生から死まで実体験した操縦者なんて今のところ他に誰もいないからね!」

 

 

 一瞬、言われた意味を呑み込めなかった。……束博士は、私の秘密を知っている? 

 

 当然、事情を知らない織斑先生も困惑するしかない。

 

 

「その言い回しだとアルスターが一度死を経験しているように聞こえるが」

 

「その辺はプライバシーって奴だよ、ちーちゃん!」

 

「……気が向けば誰にでも何処にでもハッキングを仕掛ける奴がプライバシーなんて単語を知っていたとは驚きだな」

 

「はっはっはー。それじゃあ紅椿の準備もあるから束さんは一度この場所を離れるよ」

 

 

 織斑先生の質問には答える気が無いのか、笑って誤魔化した束博士はそそくさと人参型ロケットへと戻っていった。

 

 

「あ、そうそう」

 

 

 タラップに足をかけたところで、束博士は私の方を振り向いた。何を言われるか身構えたが、その口から出てきたのは意外な言葉だった。

 

 

「そこの凡人、箒ちゃんを守ってくれたことは感謝しておくよ!」

 

 

 束博士が言っているのは、私が無人ISによる箒への攻撃を防いだことについてだと思う。確定ではないが、あの事件そのものは博士の関与が濃厚だ。だが、箒への攻撃は意図的した行為では無かったということか。

 

 

「ちーちゃん! また明日ー! それと紅椿の件は箒ちゃんにまだ内緒でねー!」

 

 

 博士の感謝の言葉に対し、何を言うべきか悩んでいた私の返事を待つことなく、織斑先生へ一時の別れを告げた束博士はロケットに搭乗し、来た時と同じように空へと飛び去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「アルスター」

 

 

 花月荘へ戻る道中、静寂を保っていた二人の空気を織斑先生が裂いた。

 

 

「そのISの特異性はお前の個人的な事情に由来しているのは理解した。その上で問う。お前の事情は余人に知られると困るものか?」

 

 

 無言で頷く。少数の人間に既に知られているからと公にしてよい情報では無いと思う。

 

 

「……ならば情報は偽造するか。そのコアが束が実験的に弄った特殊な代物だったとでもしておけばいいだろう」

 

「えっ!? 大丈夫なんですか、それ?」

 

「あの束が原因ならどうしようもないと諦めも付くだろうさ。希少性から欲しがる奴もいるだろうが、アメリカやアズラエル財閥が容易く手放すとは思えんしな」

 

 

 確かに良からぬことを考える人間がいたとしても、強国アメリカを相手に正面切って喧嘩を売れる組織は多くないだろう。

 

 

「ルージュ、お前は日常的な会話ができるだけでISに関する重要情報は一切開示できない、そういう事にしておけ」

 

「勿論さ。今更フレイ以外のところになんて行きたくないし、強行した場合は自動的にコアが初期化して機能が無くなるって報告書には明記しておいてよ」

 

「ああ。それとこれも言っておく。……もしもお前が抱えているモノを誰にでもいいから打ち明けたくなった時は相談しろ。これでもお前の担任だ。悪いようにはしないと約束する」

 

 

 ……ここまで織斑先生に言ってもらえたのだ。先生と一夏、ラウラに迫る私だけが気付いている危機を伝える為にも、私も一つ覚悟を見せるべきだ。

 

 

「IS学園に帰った後、防諜能力の完璧な部屋を用意してもらえますか? 学園内外、どんな勢力にすら知られてはいけない。完全に、二人だけで」

 

「……そこまでする必要がある情報か」

 

「はい」

 

「……わかった。お前が夏季休暇でアメリカに戻る前には準備しよう」

 

 

 これまで誰にも明かすつもりが無かった前世の記憶と情報。私は流されるだけの運命に抗う為、織斑先生に過去を明かす決心をした。




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