IS短編集   作:魔法科学は浪漫極振り

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IS×ガンダムSEED⑰

 大気圏上、地球の重力に引かれないギリギリの境界にて一隻の大型航宙艦が漂っていた。()()()()()()()()()()()()()()は開かれた両脚から機械の翼をいくつも吐き出している。翼は宇宙空間へ送り出されたところで、この航宙艦所属のISラファール・リヴァイヴによって牽引、指定座標へと続々配置されていく。この翼の正体は大気圏突入・大気圏内飛行用サブフライトシステムである。ラムジェットエンジンが両翼に各一基取り付けられ、腹の中にはバイザー型のメットを付けられた人型パワードスーツを纏った人間が一人横たわった状態で格納されている。

 

 航宙艦の艦橋では複数名の軍人達が現場との作業状況の報告や作戦空域に関する情報収集に明け暮れている。艦長席に座る黒髪の女性艦長は目を閉じて何も口を挟まない。

 

 

「ニュートロンジャマー展開完了。指定作戦空域下の広域ジャミングの有効化を確認」

 

「管制よりペイン2。パーティまで時間がないぞ。料理の準備はまだか」

 

「こちらペイン2。配膳は終了、ドレスの最終確認中だ」

 

「チェックシークエンス。SFSレイダー、オールグリーン」

 

「ダガー全機、固定を確認」

 

「各員、クラッカーとプレゼントの忘れ物は無いな」

 

「我らが愛しの天使様への献上品だ。たんまりと用意してますぜ」

 

「突入軌道、最終チェック完了。いつでもどうぞ」

 

「……艦長、全ての準備が整いました」

 

 

 管制官より経過報告を受けた黒髪の女性艦長が閉じていた目を開け、声を発する。

 

 

「オベーション・フォーリンエンジェル、開始せよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏と箒の強襲は想定通りに成功せず、後詰めとの合流を図ろうとしたタイミングで海域封鎖を運良く……いや、運悪く免れてしまった密漁船が見つかった。一夏と箒の紅椿を迎撃する為に福音の主兵装、大型ウイングスラスター兼広域射撃武器である『銀の鐘』から放たれたエネルギー弾の流れ弾から船を庇う為に、一夏は単身、密漁船の盾となったがこれにより作戦の成否に関わる零落白夜用のエネルギーを消費してしまった。暴走している福音がこの状況を好機と判断できたのかは分からない。ただ、福音は畳みかけるように船ごと白式を薙ぎ払う選択をした。同時発射数36発のエネルギー砲弾が降り注ぎ、箒も防御に回ったところで後詰めの私達が到着した。

 

 白式は動けているのが奇跡的なほど装甲がボロボロに、紅椿は白式の運搬と防御時の展開装甲に全力を出した結果、既にエネルギーが心許ない。追撃の可能性を考えれば二人と密漁船が安全域に達するまで遅滞戦闘に努める。私達にはそれしか選択肢は無かった。即座にブルー・ティアーズの大型レーザーライフル、スターダスト・シューターが福音の脚を止める為の偏差射撃を放つが福音はそれをウイングスラスターを噴かせて軽やかに避ける。その動きはとても滑らかで生物的な動作であった。余裕ある回避とも言える。

 

 

「初弾が当たるとは思っていませんでしたが……ああも簡単に避けられるのは腹立たしいですわね!」

 

「狙撃が駄目なら数で行くよ! セシリアは合わせて!」

 

 

 シャルのウィンダムはあえて福音よりも低空まで高度を落とし、ここまで使用していたジェットストライカーを量子格納、ガンバレルストライカーを展開する。通常であれば背面に対して垂直に接続されるガンバレルを平行、つまり背負う形で接続する。これによりガンバレルに搭載された照準レーダーと小型ミサイル、ガトリング機銃が各4基とガンバレルストライカー本体の機銃一基を合わせて単体での対空砲撃を可能とする。ガンバレルの本領である多方向オールレンジ攻撃は使わない。なぜなら相手は一対多を主軸とした範囲攻撃特化IS、わざわざ的を広げる必要は無い。

 

 シャルはウィンダムのマニュピレーターにデュノア社製の馴染みある五五口径アサルトライフル『ヴェント』を現出させ、ガンバレルと弾幕と合わせて福音の動きを制限する。セシリアのレーザーライフルの火力とシャルの弾幕の組み合わせは白式と紅椿を追って高度を下げていた福音へ着実にダメージを重ねていく。必要以上の被弾を嫌った福音は追撃の手を緩めて上空へ退避すべくスラスターを噴かせる。

 

 

「フレイさん!」

 

 

「任せて!」

 

 

 FFユニットを着込み、外観が一回り大きくなった私のルージュがステルス状態を解除して上空の雲から抜け出して逆落としを敢行。取り回し重視の為に両腕部に装備したコンポジット・ウェポン・ユニット──ビームサーベル、ビームライフル、グレネードを装備したバックラー状の複合兵装──と両肩部のビームバルカンから上昇中の福音へ光学兵器の雨をお見舞いする。

 

 上下から挟まれた福音は一瞬だけ動きを止めたが、私を認識すると即座に上昇を決めたようだ。被弾すら気にせず、突撃してきた。

 

 

「噓!?」

 

 

 サイドスラスターを思い切り噴かせて福音との正面衝突ルートを回避、置き土産としてファンネルミサイルを二発放り込んだが、減速すらしない。福音は私の上を取ると銀の鐘をかき鳴らしてエネルギー弾を精製。その全弾が明らかに私に向けてばら撒かれた。

 

 

「待って待って……! もう! 待てって言ってるでしょ!」

 

 

 正面を上空の福音に向けて、FFユニットのサンドバレルから散弾を発射してエネルギー弾を迎撃する。エネルギー弾と散弾は接触と同時に爆発を起こし、私と福音の視覚を遮る。一息つこうとしたところで、ルージュから音声が届く。

 

 

「追撃、来るよ」

 

「はぁ!?」

 

 

 爆炎を抜けて福音が私に再度突撃を仕掛けてきた。再び緊急回避で距離を離そうとするが、まだ福音は追ってくる。私を執拗に狙う福音を抑えるべく、シャルがガンバレルストライカーからドッペルホルン連装無反動砲へ換装、ヴェントもマークスマンライフルに切り替えてとセシリアのブルー・ティアーズと連携して精密射撃を加えるが、これでもまだターゲットは私だけのようだ。ビームバルカンで接近を牽制するが、それすら無視だ。

 

 

「ねぇ! なんか私ばっかり狙われてない!?」

 

 

 私を認識してから明らかに福音は私だけを追っている。先程まで戦っていた白式や紅椿、現在支援射撃を行い続けてるブルー・ティアーズとウィンダムは視界に入っているのかすら怪しい。

 

 

「はは、末っ子はどうやら僕達が嫌いらしいね。コア・ネットワークも切断、応答なし」

 

 

 ルージュのいう末っ子とは福音のことだろうが、理由が分からない。

 

 

「なんで!?」

 

「FFユニットや僕は福音開発のライバルだったアズラエル社の機体さ。彼女が今の形になるまでアズラエル社から有形無形の嫌がらせはたくさん受けただろうからね」

 

「完全に……とばっちりじゃない!」

 

 

 軍用ISからのヘイト100%とか洒落にならない。先程からひたすら右へ左へ上へ下へと追われ続けているせいで身体への負荷が大きい。喋ることすらキツイ。

 

 

「フレイ、悪いニュースと更に悪いニュース。どっちを先に聞きたい?」

 

 

 ……どっちも悪いとか、正直聞きたくないんだけど。

 

 

「普通の、悪い、方から!」

 

「戦闘開始から五分でシールドエネルギー残量とサンドバレルの残弾数が共に六割を切ったよ。ついでに密漁船の完全退避完了まであと十分」

 

 

 福音とのドッグファイトは他二人の牽制があっても余談を許さない。銀の鐘から放たれるエネルギー弾は直撃しなくても爆風でこちらのエネルギーをじりじりと削っていた。私は機動の制御に集中していて、エネルギーや残弾に注意すら払えない。とにかく撃たれた弾の処理と激突を狙ってくる福音の回避だけでこちらは手一杯だった。

 

 

「……もうひとつは!?」

 

「FFユニット内から時間指定でロックが解除されたテキストデータが出てきた。中には時間と指定座標のみ。場所は日本の領海外、つまり公海上だね」

 

「……ッ!」

 

 

 嫌な予感は的中するもの。FFユニットの受け渡しは対福音を想定していた。つまり最初から筋書きの上だったのだろう。誰が考えたか、なんて決まっている。

 

 

「くたばれアズラエル!」

 

 

 あの胡散臭い上司を罵ってからシャルとセシリアにコア・ネットワーク経由でプライベート通信を繋ぐ。通常通信は先程から機能していない。花月荘の簡易司令部とも通信は繋がらない。暴走中の福音がジャミングなんてするはずがない。つまり、現状はアズラエルの盤面の上で間違いない。

 

 

「シャル! セシリア! 私が福音を引っ張るから二人は撤退して!」

 

「姉さん何言ってるの!?」

 

「そうですわ! お一人でどうにかなる相手ではありませんわよ!」

 

 

 当然、一番弱くて逃げ回ってばかりの私の意見なんて納得はされないのは分かっている。でも、このまま戦闘を続けていても埒が明かない。ここまで福音がしつこくては私は撤退すら満足に出来そうにない。だから、アズラエルが用意した策に乗るしか選択が無かった。

 

 

「逃げ回れば死にはしないわ! ごめんね!」

 

 

 通信を一方的に切り、FFユニットのリミッターを解除する。同時にグレネードランチャーとミサイルを福音へ適当に叩き付けて更にヘイトを稼ぐ。

 

 

「命懸けの徒競走よ! アンタは私についてきなさい!」

 

 

 FFユニットをフライトモードに切り替える。私は寝そべる形で身体を固定され、FFユニットは鳥のような形状となった。この状態になると音速を超え、福音の最高速度にも並ぶことができるらしい。脚部に収束させたスラスターの急激な加速で意識を持っていかれそうになるが、PICとISの操縦者保護機能で無理やり状態を戻す。気持ち悪さを感じながらも福音もまた銀の鐘のスラスターを全力で噴かせてこちらを追走しているのを確認する。福音をテキストデータの座標まで誘引する。鬼が出るか蛇が出るか。今の私にはわからない。

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