…この短編、セカン党へのフォローのつもりで書き始めたはずなのに、書き終えた時には鈴が不憫設定になっててフシギダネ。
あと、双方の時系列は完全に無視です。そして続きはない。
IS×ゆるキャン△
静岡県にある富士山の麓キャンプ場で一人で冬キャンプを満喫している『志摩リン』は学校での出来事を思い出していた。
(一人キャンプの時間が脅かされるのがなんか嫌で、つい顔に出てしまった……)
以前ひょんな事から出会った『各務原なでしこ』と再開し、野外活動サークルという同好会に誘われたが、検討すらせずに断ってしまった事をちょっぴり後悔していた。
(ちょっと悪い事したな……はぁ……)
「リンちゃーん!」
(もう分かったって……)
「リンちゃーん!!」
(なによーうっさいわねぇ……)
「リーン! ちゃーん!!!」
「だから分かったって!!
「何度も呼ばなくても聞こえてるわよ!!」
「「ん?」」
「凰鈴音よ」
「各務原なでしこ! です!」
「えっと、志摩リンです」
三人の少女はなでしこが持ってきたレジャーシートの上で自己紹介していた。
「いやーまさか探していたリンちゃんの傍に同い年の別の鈴ちゃんがいるとは思わなかったよー」
「こっちも隣で一人キャンプしている子の名前が『リン』とか想定してなかったし、別に良いわ」
「なんかごめん」
別にリンは悪くないのだが、呼びかけていたなでしこと関係がある為、申し訳ない気分になっていた。
「私は二人をどう呼べばいいかなぁ。……リンちゃんとセカンド鈴ちゃん?」
「それやめて」
ファーストにしてやられた身としてセカンドの文字が辛すぎた。
「私のは愛称だけど、そっちは本名でしょ。『リン』は譲るわ。鈴音でいいわよ」
「おやまぁ、すまないねぇ」
「いなかのおばあちゃんか」
呼び方が定まったところでなでしこは持参した大きなバスケットを二人の前にずずいと押し出した。
「せっかくだし、三人で鍋しよう!」
「坦々餃子鍋! へいおまちー!」
なでしこが用意してきた具材をどんどん鍋に突っ込んでいき、完成したのは真っ赤なスープの鍋であった。野菜と浜松餃子がたっぷり50個入り。大ボリュームである。
「辛そうで辛くない、少し辛いお鍋だよっ奥さん方!! おいしいよっ!」
「スーパーの実演販売か」
「これでも中華料理屋の娘よ。辛い物にはうるさいわよー?」
「はいはい鈴音ちゃんもたーんとおあがり」
「だからいなかのおばあちゃんか」
「そうだ。これも良かったら食べてよ」
唐辛子のピリリと効いた坦々餃子鍋に舌鼓を打っていた鈴は甲龍の拡張領域に突っ込んでいたタッパーを取り出した。中身は勿論あれだ。
「わー! 酢豚だー!」
「……今どこから出したの?」
「ま、まぁ、手品みたいなものよ。あたしが作った酢豚。食べてみて」
リンとなでしこは深く追及せず、差し出された鈴の酢豚を摘まみ出す。
「肉の旨味と野菜のシャキシャキ感を餡のとろみが包み込んで、最高……ご飯が欲しいぃ」
「あああぁ……! シメのご飯を忘れたのが悔やまれるぅ!」
「ふふん、そうでしょう? あたしの酢豚は絶品なのよ! ……本当に食べさせたい相手には食べさせられなかったけどね」
旅の恥は搔き捨てとばかりに鈴はこの酢豚にまつわる事情を吐き出し始めた。
「私が家庭の事情で離れ離れになった好きな男に食べてもらいたくて作ったの。だけど、再開したそいつには彼女が出来ててね」
「おぉう……」
「別れる前に『料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?』なんて伝えたけど……意図がサッパリ通じてなかったことが何より辛かったわ」
「美味かった酢豚が急にしょっぱくなった気がする……」
失恋を暴露した鈴は勿論、話を聞いた二人にも彼女の失意は伝播し、場はしんみりした空気に包まれた。
「ここにいるのも傷心旅行中って訳。ごめん、誰かに聞いてもらいたくって……」
「……うん、旅は日常を忘れるのに最適だから、鈴音も普段のことは忘れてリフレッシュするといいよ」
「そうだよ、鈴音ちゃんは悪くないよ!」
キャンプや旅が本当に好きなのだろうリンと恋とかさっぱりなんだーと朗らかに笑うなでしこ。二人のゆるくも暖かい心をを感じた鈴は決意した。
「決めた! 今日あたし達が出会えたみたいに、あたしはアイツよりいい男を絶対に見つけてやるわ! そんでもってあたしを選ばなかったことを将来後悔させてやる!」
「鈴音ちゃんならできるよ!」
「おーがんばれー」
「なでしこはありがとう! リンはもうちょっと応援してよねぇ!」
こうして冬空の下、富士山の麓で偶然出会った三人の娘の夜は更けていったのだった。
鈴音で文章書いてたら今度は堀北鈴音が頭に浮かんだけど、そっちにはさすがに繋がらないよ。