メディカルチェックが終了したハヤトはコウタとともにツバキ主導の凄絶とも言える訓練を耐えて晴れて実戦の参加を認められた。周囲の人間からは異例の早さということらしいが背景にこれから増加するであろう新型のデータを得たい上層部の指示が働いたのは間違いない。そして出撃当日、ハヤトは整備場でメカニックの楠リッカからアドバイスを受けていた。
「もう実戦かあ。流石は新型ってとこかな?」
「よしてくれよリッカさん。たまたま日程が早まっただけだって。それにこれもテストみたいなもんだろ?」
「けど初陣で帰らなかった人もいるからね。油断は禁物。ま、調整は万全だから思う存分やってきていいよ。」
油まみれの顔をほころばせリッカは自信たっぷりに宣言する。苦笑したハヤトは初めての任務が迫る不安を無理に押し殺しながら神機を担いでゲートをくぐった。
荒涼とした風が吹きすさび、大穴が空けられたビル郡の隙間から夕日が顔を覗かせる中、二人のゴッドイーターが神機を片手に任務の開始を待っていた。
「ここもすっかり荒れちまったな。」
くわえていたタバコを地面に落とし揉み消した長髪の男が呟く。男は雨宮リンドウと言った。極東支部の第一部隊を務め、この道10年の肩書きを持つ大先輩だ。今日はハヤトの教官として同行しているはずだが、
「ハヤトって言ったな。今回の任務はお前一人でやれ。」
「はい…えっ!?」
「そろそろ時間だな。行くぞ。」
「ちょ、ちょっと待ってください。リンドウさん何て言いました?一人?」
「大丈夫だよ。何かあったらヘルプしてやっから。それに横でとやかく言われるより自分で身に付けるほうが早いだろ。」
「それはそうッスけど…」
「じゃあこれから命令する3つのことは必ず守れ。死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ。運が良ければ不意を突いてぶっ殺せ。あ、これじゃ4つか。」
イカンイカン、と頭を掻くリンドウ。とても10年生き残った威厳が見当たらないがそれは返ってハヤトに不思議な安心感をもたらした。さっきまでの緊張も緩み、いいコンディションで戦えそうだ。ハヤトは軽く息を吐いて初めての戦場に飛び降りた。
「気をつけろ!針が飛んでくるぞ!」
リンドウの声が鼓膜を震わせる。ハヤトはオウガテイルの正面から外れ、オラクル細胞を凝縮した弾丸を浴びせた。苦しいのかオウガテイルが怯んだ瞬間に懐に飛び込み立て続けに刃を振るい、血を飛び散らせる。そして離脱際に神機から黒い顎のようなものを引き出し、噛み付かせると敵から奪ったオラクル細胞がハヤトのそれを活性化させる。より素早く動きオウガテイルを翻弄するハヤトにリンドウは観察の目を注いでいた。どうやらセンスは悪くないようだ。体捌きや神機の扱いはまだ荒いものの、物怖じせず適度なタイミングで痛撃を加えている。こいつは手伝わずに済みそうだな。
帰投の連絡をするために通信機を取り出したそのとき、リンドウは目を疑うものを見た。尻尾を叩きつけようとするオウガテイルに対し、ハヤトは真っ向から直進したのだ。
「バカ、やられるぞ!」
しかしハヤトは止まらず相手の射程に突っ込む。そして尻尾が激突する直前に刀身を反らせていなし、中の肉をさらけ出した箇所に深々と突き刺した。オウガテイルは少しばかり身を捩ったが食い込んだ神機から抜けるのは叶わず絶命した。
「フウッ。」
ハヤトは大きな息を吐きながら、痙攣している死体から臓物がこびりついた神機を引き抜く。もちろんコアの回収は忘れない。リンドウが呆れたような顔で近づいてきた。
「無茶するなあ。久しぶりに見たぞ、お前みたいな新人。」
「そうスか?行けると思ったから行ったんですけど。」
「機会を逃さずってのはいい心掛けだけどな。普通ならもっと…まあいい。結果としては上々だ。」
曖昧に打ち切ったがリンドウの内心は疑問と驚愕に渦巻いていた。敵の攻撃を見切り、更にはそれを受け流し即座にカウンターをかますなど新兵の技術ではない。訓練の評価でも覚えは早いようだったが期待の新人で済ませるわけにはいかない話だった。新型の導入に関わっている支部長ならば何か知っているのだろうか。どちらにせよ、ゴッドイーターの運用に関係するのだから調べるに越したことはない。面倒な仕事が増えたことに落胆した第一部隊隊長は空に向かって一筋の煙を吐いた。
主人公の神機はレーヴァテインです。
今後の展開では変えることも予定しています。てか、します。