TS転生悪役令嬢は、自分が転生した作品を勘違いした。   作:ソナラ

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ミリアズレポート:人々の暮らしと残された文化

>人々の暮らしと残された文化

 ・宿痾の出現と、戦姫の登場からめちゃくちゃざっくり百年。実際には宿痾が現れたのが八十年ほど前、戦姫の出現が七十年ほど前でしょうか。おばあさまが十六のころに戦姫になったそうなので、そこから今の年齢を逆算すると判断できます。えーと。

  ・ミリアさん?(アルミア)

   ・うわぁお祖母様!! ごめんなさい、お祖母様が年齢を気にするとは思わなくて……

    ・気にしてはいませんが、マナーとして注意させていただきます。(アルミア)

 

 ・とにかく結構な時間が経って、多くの文化が失われました。私にしてみるとびっくりなのですが、メイドさんという文化は忘れられた文化なのです! 私の家の使用人さんたちは、皆中央本部の制服を模した、フォーマルかつ動きやすい服に身を包んでいます!

  ・まずどうしてミリアさんがそのメイドさんという文化を知ってることに、私達は突っ込んだほうがいいのかしら……(カンナ)

   ・あはは……(シェード)

    ・このなんか知ってそうな感じ、ははぁん、つまり一線を越えたか。(ローゼ)

  ・ちょっと資料を取りに行こうとしたらローゼ先生の形をした穴の空いた壁があったんですがこれは……

 

 ・さて、この大項目で話すことは、この世界に今残されている文化と、今の人々がどのように暮らしているかについてです。本で色々とのこっているんですが、私もこういうのは残したいと思いました。

  ・ミリアさんの不思議知識がどこから来ているのかは置いといて、その知識自体は正しく、また貴重なものね。私も気になるわ(カンナ)

  ・まぁ、当然私の認識で書くので、内容については普通に本を読んだほうがいいものもあります!

 

 ・まずは、今の人類圏における暮らしについて話していきましょうか。

  ・大前提として、今の人類は衣食住を魔導機による生産に頼っているわ。なので、それを生産する職業というものは存在しないわね。魔導機が生産したものを分配して、管理する人はいるけれど。(カンナ)

   ・もっと言えば、現在魔導機で作ることのできる生活必需品は、全人類に行き渡らせるに十分な数だから、人類はただ暮らすだけなら、労働は必要がないの。(ローゼ)

    ・つっても、本当になんの労働もしないと、配給されるのはエネルギーを補給できるだけのアイテムで、味も何もあったもんじゃねぇがな。(アツミ)

  ・つまり、この世界は資本主義的なお金の社会ではなく、本人の労働に応じて指定された報酬が配給される管理社会というわけですね。

 

 ・これ、私の感覚だと正直考えられないくらい整った環境なのですよね。魔導によって働かなくても生きていける環境ではあるけれど、そのことで人々は腐ることはなく、適度に労働しながら適切な環境で生活ができるという。

  ・私達からしてみると、それが普通なんだけどね。(シェード)

  ・これに関しては、一番大きいのは宿痾という人類が団結せざるを得ない存在がいることと、トップが果断に意思決定をしているからだと私は思うわ。(ローゼ)

   ・つまりアルミア先生ね。ああ、素晴らしいです……(カンナ)

    ・皆がソレに協力してくださるおかげですよ。(アルミア)

  ・学校で死人が出たって言われて慌てて駆けつけたら、カンナが固まって動かなくなっていたのを見せつけられた私の気持ちがわかる……?(ローゼ)

   ・お、お疲れさまです……(シェード)

 

 ・じゃあ、働くといって何をするのかと言えば、主に三つの分類に分けられますね。一つは「魔導機の管理」。もう一つは「魔導機の製造」。そして最後に「戦姫のサポート」、この三つです。

  ・私の故郷は魔導機の管理をしてたよ! 大きい農園なんだけど、すぐに魔導機ってダメになっちゃうから。(ランテ)

   ・魔導機は、戦姫が使うような杖でも、毎日のメンテナンスを欠かすと即座に故障してしまう精密機械よ。戦姫だったら魔導で直してしまえばいいけど、戦姫のいない場所はそうも行かないのよね。(ローゼ)

    ・衣食住は魔導機がまかなえる、っつうけどようは、今の人類が生きていけるだけの量を魔導機が生産できるってだけで、その核である魔導機はそこそこの人数で面倒みねぇといけないわけだ。(アツミ)

  ・「魔導機の製造」ってのは、単純だな。魔導機はいろいろなモノを作ることができるが、作るスピードは作るモノによってマチマチだ。一番時間がかかるのが魔導機そのものってわけだ。(アツミ)

   ・だったら、いっそ部品だけ造って組み立ては人間がやった方が早い。魔導機は消耗も激しいから、製造は欠かせない仕事の一つになるのね。(カンナ)

  ・「戦姫のサポート」は言うまでもないですね、戦姫が関わることで、戦姫がやらなくてもいいことは、だいたい全部このサポートさんたちがやります!

   ・ローナフ家の使用人さんたちも、このサポート役になるんだよね(ランテ)

 

 ・上に挙げた仕事の他に、ごくごく例外的に個人的な技術で仕事をする人もいます。「写本」を作る人と、中央都市で活躍する「芸能人」ですね。

  ・元の世界の文化を残すために、少しでも本で情報を残す必要があって、それを専門にする人がいるんだよ。実は私もこの写本をする家系の出なんだ。(シェード)

   ・シェードちゃん、本を読むのに慣れてましたからね、納得です。

  ・芸能人ってのは、まぁミリアの言葉だな。要するに、中央都市で人々に娯楽を提供するための人員だ。歌、踊り、劇、他色々なものに携わるエンターテイナーだ。(アツミ)

 

 ・中央都市についての話を少ししておいた方がいいですね。

  ・セントラルアテナを中心とした、残された人類の中心。この世界において、唯一文化が残された最後の都。ここには、人々が生きていくための活力につながるものが無数にあるわ。(ローゼ)

  ・この世界では、主に二つの娯楽が生活の中心になっています。一つは人々は主に自宅でできる簡単な娯楽……例えば家庭菜園とか、サッカーとか。そういうもの。もう一つが、この中央都市に遊びにくること、です。

   ・中央都市に行くのは、皆の憧れなんだ! 十歳くらいになると、一度はお母さんとかに連れて行ってもらえるんだけど、私はその頃におねえちゃんの森を引き継いで、ずっとそこに集中してたから、最近まで行ったことなかったけど。(ランテ)

   ・中央都市では、多くの娯楽を楽しむことができる。例えば、現代ではほとんど失われてしまった食事という文化を体験したり、劇や歌を楽しんだり。スタジアムで戦姫達の模擬試合を観戦したりもできるわね。(カンナ)

    ・一番の人気はやっぱスタジアムですねぇ。

 

 ・ある程度説明されたとおり、中央都市とはかつての人類の文化を残しておくためのモノなのですが、同時に今を生きている人類が活力を失わないためのものでもあります。

  ・そんな中央都市でできることは、主に「食事の体験」、「観劇を楽しむ」、「ファッションなどを楽しむ」、「本を読む」、そして「スタジアムを観戦する」です。

   ・他はいいとして、スタジアムだけ説明すると、スタジアムではスポーツ観戦ができるんだけど、そこではかつての文化圏で存在していた普通のスポーツの他に、戦姫たちの模擬試合っていうのも存在するわ。基本的に、人気なのはこっちね。(カンナ)

    ・懐かしいなぁ、昔はカンナとなにかある度にそこで模擬試合をしていたっけ。(ローゼ)

     ・一番くだらない理由で戦ったのは、誕生日のケーキでカンナさんがローゼさんに自分の分より相手の分の方が大きいといちゃもんをつけたことでしたね。(アルミア)

    ・あの、なんか悲鳴が聞こえたと思って行ってみたら、ローゼ先生とカンナ先生が二人纏めて死んでるんですが。

 

 ・人々の生活と、中央都市について話をしたので、少し今この世界にのこっている文化について。多くの場合、この世界に残っている文化とは、「残すことに手間がかからないもの」と、「形にして残しておかないと忘れてしまうもの」の二つです。

  ・この世界の文化で、馴染まなくなって久しいものの代表は「料理」ですね。形にして残そうにも、腐ったりしてしまうので残せないため、現在は魔導機にレシピを記録させて自動調理できるようにする形でなんとか文化を残そうという動きがあります。

   ・でも、これもやろうと思えば必要なものが少ないから、趣味にしている人もいるよね。お母さんとかそうだったよ。(シェード)

  ・消えてしまった文化は主に二つ。まずは本に書き記しておけば問題ないもの、です。料理もそうですが、それがどういうものだったかを記録に残して置けば、後から読み返して再現するだけでいいですからね。魔法にはそれだけの力があります。

  ・もう一つは、自然由来のモノ。今、この世界は宿痾のせいで人類以外の植物や動物が絶滅しちゃったの。のこっているのは、宿痾が現れてから確認された、今の自然に適応した存在だけだよ。特徴として、これらはどうやっても人間が食べられないの。なんていうか、それまでの生物とは根底に生態系が異なってる感じ。(ランテ)

 

 ・残すのに手間がかからない文化は、ほそぼそと日常の娯楽としてのこっていますね! 具体的にはサッカーやガーデニング! これらは道具さえあれば一人で生活の合間にできるのが大きいです。子供ごころにどうすればいいのかわかりやすいというのもあります。

  ・サッカーはよく院でやったな。実はカナのやつが、サッカーに関しては天才だって言われててな。誰もあいつに勝てねぇんだ。(アツミ)

  ・お花はいいよね! 今はいろいろなことに挑戦してるけど、私の原点はやっぱり鉢の中のお花だよ。初めて花が開いた時の感動はわすれられないな!(ランテ)

 

 ・とまぁこのように、現在の人類は魔導機に生活の殆どを頼りながら、その製造とメンテナンス、そして魔導機を扱う戦姫のサポートをしながら暮らしています。

  ・日常の合間には、色々と娯楽を楽しんだり、長い休みには中央都市へでかけたりと、かつての人類のそれと比べることはできませんが、それなりに充実した生活を送っています。

   ・そんな生活を守り、かつての文化を取り戻すためにも、戦姫の力は必要不可欠。皆さんの協力を期待していますよ。(アルミア)

    ・お祖母様、そうやって気軽に降臨されると、カンナ先生とローゼ先生が浄化されて昇天してしまいますよー!

     ・あら。(アルミア)


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