プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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百枚目 記憶

 目を覚ますと知らない部屋だった。

「どこだよここ」

 ……だんだん思い出してきたぞ。ゴブリンに襲われていたところを、でかいカブトムシにぶっ飛ばされて記憶喪失になったんだっけ。

「そっからどうなったんだっけ」

 思い出せねえ。

 

 うぐっ。

「頭いてえ」

 何かを思い出そうとすれば頭痛がするのかな。しばらく頭は使わんとこ。

 

 そういやなんでカシヨがいるんだ。なんで俺は柱に縛られているんだ。

「きつく縛りやがって。起きろカス。さっさと解け聞いてますかー。起きてますかー」

 縛られている脚を地面に何度も叩きつけて音を鳴らす。

「うるせーーー。おとなしく寝かせろ」

 カシヨが起きた。

 

 解こうとしたけど、痛いだけでほどけない。

「あのー。解いてくれませんかね」

「やだね。解いたら襲われる」

「よくわかってるじゃねえか。今にも襲いたくなりそうだよ」

 勝手に俺を縛りやがった怒りでな。

 

 問題は体格的に力じゃ勝てねえところだな。

「だからだよ。だから縄を解きたくねえんだよ。お前なんかカード出す能力がなければ関わりたくねえ……あっ!」

「なんだよ人をカード製造機みてえに扱いやがって。関わりたくねえのはこっちも一緒なんだよ。まあそれはそれとしてこんな事したんだから一発殴らせろ」

 カシヨが首をかしげる。

 

 なんで首をかしげているんだろう。

「なんかわからないことでもあるのか?」

「どうしても聞きたいことはある」

「へぇ」

 興味ねえ。

 

 カシヨがじっと俺を見る。

「どうしたんだよ。俺は男に興味ねえぞ」

「そうか。ならいい。疑問は解決した」

 何なんだよコイツ。

 

 カシヨは笑顔になった。

「ようやくアイツから解放された。まあお前は俺に付き従うようなタマじゃないからな」

「ずっと前からそうだろ。なんで人のことを」

 もしかして俺に動かれるとカードハンターとして都合が悪いから俺を縛ったのか。

 

 なるほどね。

「状況を分かっていないようだから教えてやる。お前は記憶喪失の間ずっと俺に片思いしてたんだ」

「そんなバカな」

「今のお前はまるで少しクズな成人男性みたいな精神だ。だがな記憶の無いときは見た目相応の精神だった。白馬の王子様を夢見る年ごろなんだから、一応命の恩人である俺に惚れてもおかしくないだろ」

 だとしたらチョロすぎるだろ。

 

 でも美女が命の恩人をしてくれたら惚れるかもしれないな。そういうもんだな。

「お前にはカードを生み出せる力があることが分かった。だから記憶がよみがえるまで連れまわして、記憶が戻らなかったときのために一流のカードハンターにしたてあげることにしたんだ。しかし計画は今ものの見事に失敗した。人の記憶なんて不確かなもの頼らなきゃよかった」

「今更後悔してもおせーよ」

 人の記憶なんてあやふやなものなのだ。

 

 カシヨは縄を解いてくれた。

「跡が付いてるじゃねえか」

「お前はこのあとどこに行くんだよ。当てはなさそうじゃねえか」

「お前が当てをなくしたんだろ」

 カシヨはうなづいた。

 

 カシヨは何かを思い出したような顔をした。

「そう言えばお前を襲ったゴブリンは野生のじゃなかったぞ」

「知ってる」

「お前をゴブリンに襲わせた奴の計画をちょっと聞いてみたんだ。そうしたらどっかの国が、この国を衰退させるために何十人も刺客を放っているんだとさ」

 コイツ相当マズいもの聞いてるだろ。

 

 カシヨはベッドを椅子代わりにした。

「このことは事前にハントマスター様に伝えた。我らカードハンターとしても国が貧しくなるのは困るからな」

「なんでだよ。火事場泥棒すりゃいいじゃん」

「人々が富を持てば持つほど、レアなカードが手に入りやすくなるからな。火事場泥棒なんぞで手に入る利益よりも長期で絞った利益の方が高い」

 そこらへんちゃんと考えられているんだな。

 

 窓から入ってきたスピードラットがミルオクルパラサイトを置いた。

「協力しようじゃないか。今すぐ他のカードファイターたちにも伝えよう。カードを集めることが出来て国も守れるだなんていいことづくめだよね」

 カシヨ一人に信用しすぎ。

 

 噓だったら大赤字になって、カシヨはカードハンター組織を滅ぼした英雄になる。

「噓だったらどうするんだか」

「ハントマスター様は噓を見抜く能力を持っている。たとえ言った側が本当だと信じていたことでも噓ならばちゃんと噓だとわかる」

 カシヨが様付けをするほどの人物と言うことなのかもな。噓が分かる能力はありがたい。

 

 スピードラットはミルオクルパラサイトを回収して出て行った。

「俺たちはあのお屋敷に侵入して、あの新人を倒させてもらうか」

「ああ。あいつは俺を仕事場から追い出した大罪人だからな」

 あいつさえいなければ今頃縛られてもなかったし、カード産めるから一緒にいると言う理由も知らないままだった。知らないままの方がよかった。

 

 出かける準備をして宿を出た。

「元気がないように見えるが、どうした?」

「元職場に侵入すると思うとなんか気まずい」

 実家が代々仕えているところに侵入するよりは気まずくないけどな。

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