プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
石像はターンを終えて、俺の10ターン目だ。
「ドロー。チャージ。コスト4で鯵テーターを召喚。ギロチンフェイスデビルの効果発動。ペルーダとさっきダメージを与えた火を吹く魔人。火を吹く魔人は破壊され、ペルーダの生命力は6となる。エネルギーヒーリングエクスキューション」
「じわじわと俺の切り札が減っていく」
「俺は火を吹く魔人に攻撃する。破壊。これで火を吹く魔人はすべて倒された。ターンエンド」
視界がかすんできた。そろそろヤベエかもな。
石像の10ターンエ目だ。
「ターンスタート。ドロー。響きの魔人でギロチンフェイスデビルに攻撃」
「ビーコンパラサイトの効果でペルーダに攻撃してもらう」
「反動がきついな。実際響きの魔人は弱っている。だがお前の体がこれに耐えられまい。ビートスマッシュ」
音の振動を感じる。
俺の口から赤く鉄臭い液体が噴出された。
「やべえ」
俺の手脚から力が抜けてカードがすり落ちる。
「やべえ。手が動かねえ。脚もだ。ターンエンド」
まずい。とうとう痛みが無くなった。
石像の11ターン目だ。
「ターンスタート。ドロー。チャージ。コスト8で癒しの魔人を召喚。癒しの魔人の効果でプレイヤーを選んで自分の場の魔人の枚数分生命力を回復させる。自分の生命力を3回復させる」
「これ……みよがしに……生命力回復しやがって」
「何か嫌な予感がする」
石像は首をかしげる。
石像はペルーダを指さした。
「この攻撃を打てば相手も響きの魔人も死に至る。音の衝撃からは逃れられない」
「卑怯じゃねえか」
「なんとでも言え。勝てばいいんだ。響きの魔人でペルーダに攻撃。ビートスマッシュ」
響きの魔人がペルーダの棘に刺さって破壊された。
そのあと俺の体に衝撃が走る。
「うえ」
「メイクファイト中に死に至れば棄権とみなされて、敗北扱いだ。ここで死に至ればすべてが奪われるぞ。がんばれがんばれ」
指に力を入れようとしたけど、力が入らない。
これは気合でどうにかなる問題じゃねえ。
「あっ……あっ」
右の視界が赤く染まる。
「うぁぁぁあああ」
でも自棄でどうにかなる問題ではあった。腕は動かせる。
石像はあごの下に手を当てた。
「むむむ。ちょっと脅せばひるむと思ったが、ひるまないなんてな。ここまで芯の強い奴は見たことがない」
「買いかぶりすぎだぞ。自棄を起こしてるだけだからな」
いきなり場からモンスターと魔法が消えた。でも地面はちょっと焦げてるな。俺の服も焼けたところ戻ってねえ。
あのままやってりゃ俺の勝ちだったのに。
「維持が不可能になってメイクファイトが強制終了したらしい。おおかた本体が目覚めたからだろうが、助かったな」
「いいや。助かってねえ。これはだめだ」
人生は短いようで長いと見せかけてやっぱり短いものなのだ。これで亡くなるのも二度目かな。
体温がどんどん下がっていく。
「お前にそんな力があったのか。癒しの魔人を召喚」
俺の体がポカポカして力が沸き上がった。
「火傷も治ってる」
さっきまでの傷が噓みたいだ。でも一応服は焦げてるところがあるから噓じゃないんだよね。
立ち上がった。
「治してくれてありがとうな」
「貴様には次元の巫女の力がある。それをあっさり排除するのは勿体ない」
まるで俺本体がおまけみたいな扱いだな。
カシヨもカードファイトを終えたみたいだな。
「何とか勝てたぜ」
「そんなバカな」
カシヨは額の汗をぬぐう。
カシヨは石像から飛んできたカードケースを受け取った。石像は砂になって崩れる。
「文字通り全てを手に入れることができるみたいだな。デッキと財産はもちろんとして、姿も声も……んんっ記憶も寿命でさえも手に入れられるとは……んんっちょっと想定外だな」
「声が変わってる」
ちょっとせき込むふりをするだけで声が変わるのか。マジで全部ゲットできるのかよ。
カシヨは二つ目のデッキケースを服のポケットにしまった。
「手に入れる記憶は新しいデッキの回し方の記憶だけでいい」
「まあ人一人分の記憶とかすさまじい情報量だからね」
「気を付けろ。メイクファイトはお前らの言う古代ビートダウンズ文明が滅びた原因でもある。やりすぎない方がいい」
「何でそんなこと知っているんだ。というかいきなりなんなんだ」
この石像はなんで口もねえのに口を利けるんだ。
石像は胡坐をかく。
「理由は単純。古代ビートダウンズ文明の住人だからだ」
「遺跡を住処にしてるのか。なんかバチあたりだな」
「違う。滅びる前から生きて暮らしているんだ。さっき地上に出したのは地下から地上に上がるためのモノだ」
「そんなわけあるか。どう新しく見積もっても二千年前に滅びたはずだ。末裔ならまだ納得はできるがな」
そんな前の物なのか。
石像は地獄の門の上にいる人みたいなポーズをとる。
「この石の姿はメイクファイトによる弊害だ。身体が石なおかげでなんとか腐らず生きていけた。さっきのは人の姿を手に入れるための戦いだったのだ」
人の姿ほしさに俺を倒して負けさせようとしたのか。卑怯な奴だ。