プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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百八枚目 奪う

 カシヨに錠剤をもらった。

「傷が治る痛み止めだ。俺は誰かさんが腹に落ちてきたせいでめちゃくちゃ腹が痛い」

 カシヨは錠剤を飲む。

「気が利くじゃねえか」

 痛みが引いた。今までひそかに耐えてきた痛みが消え去る。あと傷も跡しか残ってないな。火傷は跡すら残ってねえ。

 

 カシヨが俺の肩を叩く。

「なぜかちょっと残ってた石像の記憶によるとメイクファイトは命を奪うか姿を奪うかデッキを奪うか姿を奪うか細かく決められるぞ。すべてを奪うと言っても、それは奪いつくした結果ってだけで、要らないもんは切り捨てられるらしい」

「なるほどね。じゃあ命だけもらうか。コイツなんぞのデッキも姿もいらねえ。親友の仇を取れずに亡くなれ」

 悪役みたいなセリフだな。 

 

 ……やっぱやめておこ。よくよく考えれば命を奪うより屈辱を与える方がより悔しがるな。俺としてはそっちのほうが嬉しい。

「やっぱやめておこ。二度と俺に逆らえないようにカードを全部貰う」

「この世界でカードが使えないって酷だぞ。最低でも三年は地獄を見ると思うぜ」

「カードが使えないと地獄を見るとか、カードハンターの常識で一般人の非常識ですよね」

「まあ苦しんでもいいんだよ。命奪って楽にしてやろうだなんて俺が甘すぎた」

「ひっでぇな」

 本当はそんなこと知らなかったけど、見栄を張った。

 

 カードが何十枚も飛んできた。工具箱が現れてカードが全て工具箱に入る。

「それにしてもお前よく生きてるな。服とかもうボロボロだぞ」

 お腹の部分も焼けこげてるし、袖の部分もないし、あちこち切れてるから、相当ワイルドなデザインになっていることだろう。

「じゃあ服も貰うかな。上着だけでいいか。もういいや」

 もらった上着の袖をカシヨに切ってもらってアレンジを加えてから着た。

 

 経営コンサルタントが歯ぎしりをする。

「それ高かったんですよ」

「そっか。まあ知ってたけどな。親友の仇の同類に見逃されて、カード全部取られて、高い服も奪われるなんてどんな気分か、教えてく欲しいんだけど。教えて教えて」

 へいへーい。勝った瞬間馬鹿にするイキリ人間だ。

 

 経営コンサルタントは俺をにらみつける。

「ピエッ」

 こっわ。見て目が怖いからね。

 

 経営コンサルタントはその場を去った。

「次元の巫女の力は相当量あるな。まあ死ななくてよかったよ」

「良かった」

 俺は座り込んだ。

 

 なんか今日は三回も命のピンチを体験したんで、精神的に疲れた。それに脚もくじいてる。

「カシヨ~おんぶして~。足くじいてるから歩けな~い」

「ったくしょうがねえなあ」

 ツンデレだな。需要がない。

 

 しばらく歩かせていると洞窟を見つけた。

「洞窟があるぞ」

「今日の宿はそこにしよう」

 洞窟の中に入る。

 

 洞窟の中は明るい。

「ファントムホタルか。ゴースト系モンスターを食べるコイツらがいるってことは、この辺いっぱいゴースト系モンスターが出るんだろうな」

「き、聞いてねえよそんなの」

 おばけは勘弁してくれ。

 

 い、いやカシヨが噓を言ってるだけかもしれないしな。だだだ大丈夫だろ。

「何怖がってんだよ。さっきまでゴースト系モンスターの仲間入りしそうだっただろ」

「そういうことサラッと言うんじゃねえよ」

 無神経すぎる奴だ。さっきまでゴースト系モンスターになりそうだったからこそ、なおさら怖いと想像できないのか。

 

 コツコツと音が聞こえた。

「誰か人がいるのかな?」

「ゴースト系モンスターかもしれないぞ」

「い、いや。それは絶対にないね。絶対絶対あり得ないから。捕食者の近くまで聞こえるように足音を立てる被捕食者なんてただの間抜けだから。知性的に考えようね。それにね、仮に、もしも、万が一、ゴースト系モンスターだったら、俺は気絶することしかできん」

 上から水滴が落ちてきた。

 

 上を向くと、口からだらだらと涎を垂らしている蜘蛛がいた。

「上にデッカイ蜘蛛がいるんだけど」

 カシヨは急に動きを止める。

「そいつは人食い蜘蛛だな。人食い蜘蛛は視力が悪いから動かない方がいい。人食い蜘蛛は動くものを何でも食べる」

 上に人食い蜘蛛がいる状況でガッツリ動いていたから、もう手遅れだね。

 

 人食い蜘蛛は後ろに歩いてゆっくりと地面に降りた。

「キォシャアアアアア」

「襲い掛かってきてるじゃねえか」

「人食い蜘蛛に食われないようにするためには三つの方法がある。まずは他のエサで満腹にさせること」

 まさか俺を差し出そうとしてるんじゃ……

 

 カシヨはデッキからカードを出した。

「次にフィールドファイトでコストを支払って捕まえること」

 でも今はフィールドファイトじゃない。

「実力で平伏させること。アルカナンバーナイン ハーミットを召喚」

 ボロボロのローブとボロボロの杖が現れて宙に浮く。

 

 杖の先から火の玉が出てきて人食い蜘蛛を焼いた。

「ルール上攻撃できないはずなんだけど」

「たぶんそれはお前の勘違いだよ」

 勘違いか。

 

 杖とローブが消えた。

「キォシャア」

 人食い蜘蛛は洞窟の奥に逃げる。あれで生きてるのか。

「これで安心だな。近くで休もう」

 カシヨはあっという間にテントを張った。俺はテントの中で休む。

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