プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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百十三枚目 機構の獣

 盗賊たちが俺たちを見つめる。

「なんだこいつらすっげえくせえ」

「勝負の行方に熱中してたから気づいてなかった」

「失礼なこと言うんじゃねえ。二日ぐらい風呂入ってねえだけだ」

「そういえば臭い……スメルデスネー」

「ゾンビフランテスの臭いが移ったんだよ。なれたから気づいてなかったね」

 アレックスは鼻をつまむ。一瞬悲しそうな顔をしたのは気のせいだろうか。

 

 盗賊たちは逃げた。

「こんな臭い奴らに関われるか」

「人のことを臭い臭いと失礼なこと言いやがって」

 嗅いでも臭くない。まあ臭いになれたからな、

 

 アレックスは逃げない。意外だな。

「鼻をつまんだ程度で嗅げなくなる程度の臭いじゃないのに」

「それに俺はこう見えてさっきの奴らより質悪いぜ。逃げればいいのに逃げなかったのは運が悪かったな」

「そんなに強そうに見えないデース。まあそんなことよりもユーのようなNPCはカードジョブオンラインにいたなんて知らない……ドントノウデース」

 カードジョブオンラインとな。

 

 カシヨは首をかしげる。

「お前何言ってんだよ」

「アレックスさん。話があるのでちょっと耳貸してください。あとカシヨは聞かないでくれ」

「ガールズトークか。お前も口は悪いがそういえば女だったな。いいだろう」

「違うが」

「照れることでもないだろ」

 まあそういう解釈の方が都合がいいので、そういうことにしておこう。

 

 アレックスの右腕を引っ張ってしゃがませた。

「今カードジョブオンラインって言ったか?」

「言いましたが、それがワット?」

「ここはカードジョブオンラインの世界じゃないぞ」

 アレックスは目を閉じてから目を開けた。

 

 アレックスは俺の頭をポンポンと撫でる。

「これがゲームの中にいるレアなNPCという奴デースね。よく出来てマース」

「俺をゲームのキャラだと思ってるのか。じゃあログアウトできるか試してみろよ」

 アレックスは得意げな顔をして右腕を中指で叩く。

 

 アレックスは何度も右腕を中指で叩く。

「ミッシング。メニュー画面がオープンしマセーン」

「あとこのカードはカードジョブオンラインに実装されてない奴だ」

 ペルーダを見せた。

 

 アレックスはしばらくペルーダをじろじろ見てから、驚いたかのような顔をする。

「驚愕、アンビリーバボー!!! アイキャンノットログアウト!!!」

 うるせええええ。鼓膜が壊れるかと思った。

「いきなり大声出すんじゃねえ。うるさいだろ」

「ソーリー」 

「許してやるよ。わざとやったわけじゃないからね。次やったら許さねえ」

 次やったら指を折る。ハンマーで叩く。次やられる前にハンマー買うかな。

 

 大声出しやがって。

「ところでいきなり大声出してどうしたの?」

「アイアムが今エクスペリエンスしていることは、アナザーワールドトリップということデスネー。アイアムニュービー。ビコーズカードジョブオンライン内のそういうイベントかと思っていましたが、未実装カードを見せられれば納得シマース。アースに未練もナッシング」

「まあそういうことだな」

 所々英語が混ざって分からんが、多分そういうことだろう。

 

 アレックスは首をかしげる。

「ユウもアースからトリップしたのデースカ?」

「ああ。俺もこの世界に来たいわば異世界転生者ってやつだ。人型のカードの束的な奴にそういう話を聞いてなかったのか?」

「所々聞き流してマーシタ。彼の話は非常にロングアンドボーリング。いつの間にかトリップしてバンディットに囲まれてマーシタ」

 聞き流すんじゃねえよ。

 

 アレックスは俺をチラチラ見る。

「傷……スカーが痛々しいデース」

「治らねえし害もないからわりかしどうでもいい。そんなことよりもお前のこれからが問題だろ。当てもないし、この世界の常識も分からねえんだろ」

「イエース。バッドカードファイトで何とかなるっていうのは分かっているので、問題ナッシング」

 アレックスからいったん離れて、今までのことをだいぶごまかしてカシヨに話した。次元の巫女の力に目覚めるかもしれないって言ったら満面の笑みで許してくれた。まあ強いレアカードも持ってるからね。

 

 カシヨはアレックスに微笑んだ。

「カードハンターにようこそ」

「カードハンターとは?」

「カードハンターってのはカードファイトでカードを取る奴らのことだ。この世界そんな奴らたくさんいるから気を付けろよ」

 アレックスはやらかしたと言いたげな顔をする。

 

 アレックスは目をそらす。

「入るとは言ってマセーン」

「でも入らなかったらもっとひどい目に合うと思うんだよね。だって獣鬼というレアカードを持ってるんだぜ。盗まれるかもね。でもさ三人もいれば盗難被害から防げるかもしれないぞ」

 この世界じゃそんなことあり得ないけど。渡す側の合意がなければカードは渡せないらしいしね。

 

 アレックスは口を開こうとする。

「この世界はカードがないと三年は地獄を見る。言われずともそのくらいは常識だと思ったんだがな」

「仕方ないデース。悪の軍門には下っても、悪事をしなければ良いだけデース」

 騙せたぞ。

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