プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
少し歩くときれいな湖が見えた。
「湖が見えた」
「じゃあそこで体をウォッシュした方がグッドデース」
「ここに湖なんてないと思うが。でも土地勘があまり定かじゃねえからなぁ」
「おっそうだな。でも現に湖が見えてるからあるぞ」
湖の近くを歩いていた人が湖から出てきた巨大な水製の手に引きずり込まれる。
無抵抗で引き込まれたから、相当な力があるんだろうな。モンスターかよ。
「あの湖はモンスターだ」
「ボーリングジョークデース」
「湖に擬態できるモンスターの中であんなデカイモンスターはいないぞ」
冗談じゃねえぞ。こいつら視力低いのか。まあ現実逃避してるからかもしれないけど。湖
湖に向かって走る。
「スタミナが……切れそう。少しは……改善できた……と思ったんだけどな」
濃い霧が出てきた。後退りすると濃い霧が出て来て、前のめりになると濃い霧が現れる。
「この霧は幻か。幻の霧を出すモンスターか。魔霧の使い手さんかな」
魔霧の使い手さんはカードジョブオンライン実装当時の環境でもコストの割にステータスが低くて効果も弱いくせに、このモンスターは幻の霧を操って敵を倒すというフレーバーテキストがあるからネタ的な意味で印象に残ってる。
でも魔霧の使い手さんは湖のように大きくないからなぁ。
「ということは透明化できる方法があるってことだな」
下手したら近くにカードファイターがいるかも。いや、カードファイターじゃなくてカードハンターかもしれない。
後ろから肩を叩かれた。
「きゃっ!」
何だ今の声。俺の口から出てたよな。
「か、髪型が崩れるじゃねえかよ。やめろ」
「ヘアーはタッチしてまセーン。サプライズさせてソーリー」
認めたくないけど、この体になって半年以上経ってるから精神がなじんだんだろうなぁ。
……理屈は正しいかもしれないが、認めたくはないんだよなぁ。重要だから繰り返したぞ。
「ストップしてくだサーイ。いきなりランされれば、ロスサイトしてしまいマース。ロスサイトすれば非常にウォーリー」
「まず前提としてそういうことはないから平気平気。だって俺遅いしスタミナないし歩幅もないし目立つ格好だから見失う方が難しいぞ」
普段は合わせてもらってるけど、幼女とスタイルの良い女性の歩幅はだいぶ違うからなぁ。
おっと脱線したな。
「おそらく魔霧の使い手がいるかもしれない」
「このワールドにはモンスターがいるのデスネ」
「まあそうだけど。下手すればカードハンターもいるぞ」
「まあ魔霧の使い手みたいなウィークモンスターならノープロブレムデース。カードハンターならばカードファイトでビクトリーすればノープロブレムデース」
まあそれもそうだな。
霧の中に入っていった。
「そう言えばカシヨは?」
「カシヨというのは一緒にいたヒーのことデスネー。いないってことはエスケープしたと思いマース」
「肝心な時に逃げやがって。やっぱ運ゲー野郎は違うな」
アレックスは人間が出来てるね。
風がそよぐ。
「ギ……」
「いきなり変な声出すなよな」
「マイはスピークしてないデース」
「じゃあ一体誰が変な声を出したんだよ」
嫌な予感がして顔を右にずらした。
石と石がぶつかり合う音が聞こえた。
「よくもさっきは俺のことをザコって言ったな」
「俺は言ってないぞ。あとウィークモンスターって言っただけだから誰も言ってないぞ」
霧の向こうから魔霧の使い手のイラストを立体化させたような奴が現れた。
「この魔霧の使い手様は幻の霧で敵を倒せるんだぞ」
「本当にそうだったら誰もが四枚投入してるぞ」
「モンスターがムーブしてマース。さっきのようなビジョンじゃナイデース」
攻撃力も防御力も低いから、幻の霧を操っている間に敵に倒されるっていうフレーバーテキストにした方が正確なんだよね。
霧の向こうから大きなものの影が見えた。
「俺が強いという証拠を見せてやる。行け、湖の邪精霊」
「自分の強さを証明する所で他人任せとかギャグかな」
「ボーリングギャグデスネ」
大きな水製の手が襲い掛かってくる。
俺はそれに掴まれた。
「くそぉ。全然抜けねえぞこれ。水の抵抗力と握力両方持ってやがる」
「コイツを賭けて俺と戦え。分からねえようなら教えてやるよ。コイツは人質だ」
魔霧の使い手はデッキを構えた。
アレックスは嫌な顔をした。
「これにビクトリーすれば、魔霧の使い手をゲットマスネ」
そう言えばカードジョブオンラインでモンスターをゲットする方法の一つに、野生のモンスターとカードファイトして勝つってのがあったっけ。
「まあゲットしたところで要らねえからな。まあ俺の命のおまけだと思えばいいさ」
「デスネ」
「トゥルーファイトエントリー」
「トゥルーファイトエントリー」
トゥルーファイトか。確実に抹殺する気だな。でもアレックスの実力なら大丈夫だろ。ここで変に事実を教えあら手加減しそうだし、秘密にしておこ。
魔霧の使い手のカードデッキが赤く光った。
「チャージ。ターンエンド」
「やはりウィークネスデース。すぐにリベレイトデキマース」
もう一人誰かの気配を感じる。きのせいであってほしい。