プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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百二十二枚目 人間は中身

 オメンオクが教会から出た。

「オメンオクって何の用で教会に来たんだろうね」

「ここの神父様と気が合うんだろ。同じような性格と同じようなうさんくささだからな」

「そう言えばカードハンター被害者の会もオメンオクが来てから現れたんだよな」

「そう言われるととことん怪しい奴だ」

「それにあいつが来た日の翌日に必ずガキどもが一人減ってるぞ」

 純度1000‰の怪しさがある。

 

 目つきの悪い子はセーターの女の子に肩を叩かれた。

「何変なこと話しているのですか? そろそろ行きますよ」

「どこにだよ」

 セーターの女の子は目付きの悪い女の子にひそひそ声で話す。

「わかったわかった」

 目付きの悪い女の子とセーターの女の子は走り出してあっという間に見えなくなった。カードハンターの事情があるんだろうな。

 

 オメンオクの後をそっと尾行する。尾行のコツはついてきてると悟られないことだ。偶然同じ道を歩いている体なのだ。

「オメンオクが消えた」

 肩に何かが落ちた。

「ヒッ」

「どうもこんにちは。とてもいい天気ですね」

 振り向くとオメンオクがいた。

 

 オメンオクは後ろに下がる。

「探偵ごっこですか」

「いつから分かってたのさ」

「割と初めからですね。仕事が見たいなら、そんなことしなくても大丈夫ですよ」

 尾行する意味なかったな。

 

 オメンオクは指で×を作る。

「しかしながら仕事の内容は他の方々には内緒ですからね」

「なんでさ」

「大っぴらにされると困るんですよね。貴女以外ではあの神父様しか知らないことですから」

 オメンオクは体をくねらせる。

 

 ……うーん気持ち悪い仕草。

「まあ気持ち悪い仕草をさせるぐらいには秘密にしたい事なんだもんね。秘密にしてやるよ」

「ありがとうございます。これどうぞ。喉が乾いたら飲んでください」

 水の入った瓶を渡された。嬉しい。

 

 足が棒になるまで歩いた。

「もう疲れた」

「まだですよ。何しろまだ人目がありますからね」

「ここいっぱい人いるもんなあ」

 獣のごとく目を光らせている人がたくさんいる。

 

 でもデッキケースを見ているから、多分俺たちのことは襲わないだろ。相手が武器持ってるのに素手で襲うようなものだからね。

「たとえ襲われなくても、ここにいる間はここにいる人達の監視は受けてますからね」

「当たり前のことをもっともらしく言うなよ」

 変な奴だ。

 

 オメンオクは自分の仮面を右手の人差し指でつつく。

「それに諸事情により恨まれてますからね。まあ恨まれても問題はないんですけど」

「なんか言った?」

「何でもないです」

「そうなんだ。なんでもない事をボソッと呟かないでほしいな」

 聞いてないフリしたけどちゃんと聞いたぞ。聞いてるとわかったら手がかりが得られなさそうだからね。

 

「行きますよ」

 空間に穴が開いた。

 

 空間に開いた穴に入ると、殺風景な部屋に出た。

「仕事現場です。先ほど渡したお茶でも飲んで待っててください」

「わかった」

 瓶の中にあるお茶を飲んだ。

 

 なんだろう……急に眠い。

「最近睡眠不足ですよね。うっすらとですが、目の下にクマがありますよ」

「眠い」

 やたらと重い瞼を閉じた。

 

 なんかうるさいなあ。

「50ですか。もうちょっとないですか」

「60」

「60。ちょっと安いですねえ。この子はこう見えても元貴族付きのカードファイターで、とある邪教団の幹部だった子なんですよ」

「75」

「75」

 足を動かそうとしたら、ちっとも動かなかった。

 

 目を開けた。人がたくさんいた。やたらと薄暗いところだな。

「ここどこ?」

「ここは奴隷市場ですよ。貴女みたいな逸材を臓器にしてバラすのも勿体ないかなと思いまして」

「なんで人を勝手に売ろうとしてるんだよ」

「懐具合が悪いからです」

「金のために人を売っていいと思ってるのか?」

「悪いことです。でも人って自分が得するなら悪いことをやりたい生き物じゃないですか」

 頭のネジが取れてるだなんて言葉はコイツには見合わない。コイツには元からネジを入れる穴がないんだからな。

 

 コイツから感じるうさん臭さってこういうことだったのか。檻に閉じ込められた怪物の尻尾を見ていたんだね。

「80」

「80。普段は臓器売買をしているのですが、高値で売れそうな方を選びました。他にも怨みの亡霊を集めて操る商売もしてますよ」

 何て奴だ。

 

 オメンオクは俺の肩を叩く。

「いてえ」

「この通り未調教なので、調教する楽しみがありますよ」

「なんで未調教なんだ。85」

「時間がなかったんです」

 人を売り物としか考えていない。

 

 爆発音がした。

「大丈夫です。この部屋はあらゆるモンスターへの攻撃にも耐えられますから」

「90」

「90ですか。レアなのでもうちょっとほしいですね」

「100」

「100ですか。これ以上いませんか?」

「120」

「120。どうやら決まりのようですね」

 クッソー。

 

 何かが倒れてバスンという音が鳴り響く。

「今日もいい天気だね。まあこんな薄暗い地面の下でこそこそ悪事を働くような奴には分からないだろうけどね」

 目付きの悪い女の子がいた。

「シンズルが自警団に駆け込んで、通報しに行ってる。出入り口も塞いでる。お縄につくまで待ってておけ。ペインターウォール結界発動」

 目付きの悪い女の子の後ろに壁が現れた。

 

 オメンオクは舌打ちをする。

「なぜここが分かったのですか?」

「お前が攫った奴にこっそりと居場所を教えてくれるモンスターを貼り付けたからだ」

 人をダシにしたんか。

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