プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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百二十五枚目 拳銃

 シンズルもたもたしてるなぁ。

「時間稼ぎのつもりなら、無駄ですよ。そんなに長話して何がしたいのですか?」

「バレてしまってはしょうがない。上を見ろ」

 オメンオクと客は天井を見上げた。

 

 天井には大量の緑色のものが引っ付いていた。見た目からして粘着力高そう。

「あれはボマースライムですね。可燃性で触れれば爆発を起こしますよ。まさか……」

「あれに火を付ければ爆発して連鎖的に爆発を起こすかもしれないな。タクロウライターに行かせれば、今すぐこの場ごと木端微塵にできる」

「いつの間にそんなものを……」

「カードファイトしてしまったから周りのモンスター無効化結界が解けちゃったんだよなぁ」

 さっきまでなかったじゃん。急に現れたな。

 

 アカネの口角が上がった。

「仕掛けやすいくせして無理やり取ろうとしても取れない。この爆弾から爆発力をなくす方法は知っているが、お前らがそこから一歩でも動けばその方法を魔法カードで忘れてやる」

 アカネはデッキからカードを取り出した。

 

 シンズルは両手の縄を解き終える。 

「勝ったはずなのになぜ状況が不利になっているのですか」

「それはお前が周りをよく見ていないからだ」

 跡がくっきりしてんな。

 

 シンズルは両脚の縄を解こうとするも、中々ほどけないらしい。

「こっちの方が早いですね」

 シンズルは椅子ごと俺をお姫様抱っこした。

「え?」

「静かにしてください」

 シンズルは音を立てないように出入り口に近づく。

 

 シンズルは出入り口の近くまで移動して椅子を置いた。

「動くな。動けばどうなるか分かってるんだろうな」

 オメンオクは地団駄を踏んだ。

「これはハッタリですねぇ。こんな手に引っかかるなんて。二手に分かれて商品をかっぱらうとはなんと卑怯な」

「確かに卑怯だ。でも非合法で人間を売りさばいてきた奴よりは何億倍もマシ」

 正論だ。

 

 オメンオクの体が震える。

「まだ。まだ。まだ終わってないですよ。何故ならこのカードがありますからね。また創めればいいだけです」

「おいお前正気かよ。粉々になるぞ。ボマースライムはハッタリじゃないから」

「そうだ。我らはどうなるんだ」

「魔法発動。ウィークリーエフェクトジャマー。これで効果を無効化して魔法の矢筒でボマースライムを破壊します。最初からこうすればよかったんですよね。でも敢えて乗ったんです」

 オメンオクは俺たちを指差した。

 

 いや、同じ方向の人を指差してるだけだよな。

「正義の味方がもう一人くると思ったので、敢えて乗せられただけなのです」

「最初からバレていたんですか?」

「はい。これで騙せるんだから、私には舞台役者の才能もありますねえ」

 オメンオクの方が一枚上手だったか。

 

 オメンオクの仮面の下から、笑い声が聞こえる。

「子どもを助けに来た二人のヒーロー……良い娯楽になりました。商売人には切り替え力が必要なのです」

「勝手に人を見せ物にしやがって」

「こう返しましょう。勝手に人の商売邪魔しやがって」

 オメンオクはデッキケースをジャグリングする。

 

 シンズルは両脚の縄を解き終えた。

「通報しただのなんだのはどうせハッタリでしょうね。それに通報が事実だとしても自警団の上層部は私に弱味があるので、お目こぼしされますよ。権力者とのコネは愛情や才能や努力なんぞよりはるかに大事ですよ」

「さりげなく凄いこと言いましたね」

 脚を動かしてから立つ。無駄かもしれないが、エコノミー症候群の対策になるかもしれん。

 

 壁が出来た。

「カードファイトしたせいで壁が無くなりましたよね。補修してあげましたよ」

「余計なお世話だぞ」

「それはどうも。売り物は三人ですか」

 オメンオクはピンク色のリボルバーを取り出す。

 

 これはまずいぞ。

「降伏なさい」

「なんですかそれ。投げられてもあまり痛くなさそうですね」

「これはまずいぞ。早く逃げろ」

「かわいい色じゃないですか。アレのどこが危ないんですか?」

 シンズルはあまりピンと来てないといった様子。

 

 シンズルが倒れた。

「それ武器だったのか。お前なんてことしやがる」

「だから早く逃げろって言ったのに」

 この世界は攻撃面ならモンスター出せば何とかなるから武器関連はあまり発達してないのかもな。それに剣とかしか知らないと、拳銃はぱっと見強そうに見えない。だから警戒してなかったわけだ。

 

 オメンオクはリボルバーをくるくると回す。

「眠らせただけですよ。弾に使う睡眠薬も私自身で調合したので、そこらへん問題ないです。この武器も弾も傷がつかないように私が一から設計して製造したんですよ。今ならサービスしてお値段なんと金貨十枚」

「うへへ。もう食べられません」

 これは完全に眠ってやがる。

 

 アカネも眠った。

「あと三発ありますよ」

「最初からそれ使っとけよ」

「私は奥の手を最初から見せるバカじゃないんですよね」

 苦し紛れの手段だがこうするしかない。ちょうど財布に金貨十枚あるからな。

 

 金貨十枚をオメンオクに投げる。

「それ買うよ」

「まいどありがとうございます」

 オメンオクに拳銃を投げ渡された。

「商売人の鑑だな」

「あっ。しまった」 

 拳銃を懐に入れる。

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