プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~ 作:黒点大くん
拳銃を両腕で構えてオメンオクに向ける。
「変な使い方ですね」
「こうすると反動が抑えられる」
オメンオクのお面に一発ぶっ放した。あれ、意外と反動がないな。これは片手でも使える。
オメンオクのお面がパックリ割れる。お面も貫通できねえとは弱い弾だ。
「私の顔を明かすなんて……許されないことをしてしまいましたね」
オメンオクのお面が地面に落ちた。
「なんだその顔は」
オメンオクの顔は何もなかった。
鼻も目も口も最初からなかったような顔だった。殻をむいた玉子のようにつるつるしている。
「のっぺらぼうか」
耳だけはあるのがちょっと異質だな。
「この傷だけは見られたくなかったです」
あっ。よく見れば傷があるじゃねえか。
そんな傷は誤差だろ。
「お前モンスターだったのか……」
「れっきとした人間ですよ。あなたたちとの違いは魔海に呪われているか、呪わていないか。ただそれだけです。こう見えても魔海に呪われる前は誰もが振り返る美男子だったのですよ。しかしこの傷のせいで泣く泣くお面を被ることになったのです」
傷が問題じゃないと思うんだけどなあ。振り返っていたのは顔があまりにものっぺらぼうに似てたからだろ。
でも今のあいつにそれ言ってもめんどくさくなりそうだし、話を合わせておくか。
「顔だけが取り柄だったのに、それすら奪われたのか。かわいそうな奴だ。同情してやるよ」
「それだけではありません。名前もデッキも奪われました。魔海の呪いにかかることと引き換えにただひたすらに知識を求めただけなのに、なぜこのような目に合わなければならないんですかね」
うーん自業自得。
この煮卵の話をこれ以上聞いてやる必要もないな。
「もうお前は眠っとけ。秘密ばらされて慌てる気持ちも分からなくはないけど、見苦しいぞ」
オメンオクに拳銃の弾をぶち当てた。
オメンオクは倒れる。
「寝息もないし、瞼もないから眠ったかどうかわからん。まあ体の動き的に息はしてるんだろうが、分かりにくい」
なんでのっぺらぼうなんぞになってしまったんだ。
「まあいいや」
アカネを叩き起こす。
客どもが俺たちを囲んでいた。
「こんな上玉三つみすみす逃すわけがない」
「しかも無料だぞ。ここで逃がす方がマヌケ」
ピンチなのは変わってねえか。
カードを出した。
「そこまでだ」
「来るのが遅いぞ」
鎧を着てデッキを構えた人たちがやって来た。中々シュールな絵面だ。
アカネはシンズルを背負った。
「本当に通報してたんですね」
「ハッタリだと思ってたのか。おめでたい奴だ」
オメンオクが何でもないかのように立ち上がった。ちゃんと当てたはずだぞ。
お面が合わさって浮いてオメンオクにひっつく。
「私は魔海の呪いにかかってから眠らなくても大丈夫な体質になったのですよ」
「本当何でもありだな」
鎧を着た人たちはモンスターをたくさん出した。
檻型のモンスターだのなんだの捕獲に特化したモンスターばっかだな。
「君たちも確保」
手錠をかけられた。
「なぜ」
「不法侵入及び器物損壊の疑いがかかってる」
俺は割とそういうことをした覚えが……
あったわ。一回だけやってた。暗黒邪教団に入ってた時、お嬢様の家に不法侵入してた。
「なんでそんな疑いをかけるんだ」
「カードハンターにとって不法侵入と器物損壊は基本だからな」
一見すると偏見だけど、事情を知っていると割とその通りである。
俺たちは自警団の所まで連れていかれた。因みにオメンオクはいつの間にかいなくなっていた。
「俺は物を壊したことないぞ。まあそっちのアカネさんとかシンズルさんとかはやってたかもしれないけど」
「私は法律を破ることは悪い事だと思っています。ですからちゃんと確認を取ってから、トバクファイトをしております。ちゃんと確認を取らずにトバクファイトを行ったのは無法地帯だけでしたので、何ら問題はありません」
「てめーは勝手に水に沈む油かよ」
人を無いもの扱いしやがって。精神的な視野狭窄だ。
シンズルは顔を伏せて泣き声を出している。
「カードハンターどもの事情は知らんが、事情なんて聞くまでもなく牢屋にぶち込んで更生させればいいんだ。カードハンターなんてみんな楽をして生きていきたいというクズの考えを見えるようにしたものだからな。カードハンターはクズしかいない」
「俺は俺を殺そうとしたやつのカードしか取ったことがない」
「わたしはどの職も長続きしなかったから、生きるために仕方なくカードハンターやってる」
「そんなよくある理由だ。だが実のところ奪うことに味を占め、働く気を起こさないだけの人のクズだ。経験上この考えはなにも違わない」
俺は違うだろ。全く独断と偏見の凄まじい奴だ。
コイツカードハンターになんか怨みでもあるのか?
「なんでそこまでカードハンターを怨むんだよ」
「そーだそーだ」
「話してやろう。あれはまだこの俺がまだ非力な子どもだったときの話だ」
「凄く長くなりそー。聞かせろと言った手前聞くしかないのが、とてもつらい」
聞かせろなんて言わなきゃよかった。