プレイしていたVRカードゲームの世界にTS転生したらしい ~カードゲーマーは異世界でもカードから離れられない~   作:黒点大くん

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百五十八枚目 人工カードファイター生物

 よく練られた設定と言うのはね、よく考えたらこの娯楽施設で考えられた設定かもしれないからだ。だってここ以外で言及されてないもん。シャチという実物がいるから説得力がマシマシだが、本当にそうなら野生動物なんてどこにでもいるので結構広い範囲で言及されててもおかしくない。

「よく考えれば地下に埋まっている建物に水の動物がすれ違うなんて奇妙さ全開だな」

「ようやく気が付いたのか」

 そもそも俺たちより遅く来て俺たちに気が付かれないように俺たちよりも早く迷路を進まなきゃならないなんて無理があるのだ。

 

 シャチがゲームマスターの元までぴょんぴょこ跳ねる。

「良く気が付いたね。この子は人工カードファイター生物カードファイターシャチなのさ」

「人工カードファイター生物だとぉ」

「カードファイトロボット制作技術の応用で作れるよ。これをうまい具合にすればカードファイトのできる人間がもうちょい増えるかな。実のところ野生動物カードファイターのほとんどが人工カードファイター生物の子孫なのさ。これは本当の話」

「なんでいきなりそんな事実をベラベラと」

 いきなり溜めていたものを吐き出すかのようにしゃべりだしたぞ。なぜなんだ。

 

 ゲームマスターは考えるしぐさをした。

「このことがバレたら問題追及されてここが潰れるんで黙ってたけど、文明が潰れてもうそんなこと気にする必要なくなったってことさ。秘密を抱え続けるのって相当ストレスがかかるから洗いざらい話したかったのさ。君にも心当たりはあるだろ。秘密は心を蝕むんだよ」

「そういうことか」

 半年間秘密を抱えてたこともあったけど、心は一マイクロも蝕まれなかったぞ。

 

 カシヨはゲームマスターを指さした。

「じゃあ生まれつき意志の力を伝えられるってのはなんなんだ」

「身体に無害なマイクロチップを仕込んで意思を伝えられるようにしたのさ。有料オプションだから銀貨七枚ね」

「有料オプションを押し付けやがって。傷つけたくないだのなんだの言って小さい子から金をとりたくなかっただけだろ」

 カシヨは銀貨を七枚ゲームマスターに投げ渡した。

 

 ゲームマスターからカードパックを投げ渡される。

「踏破した記念にこれをやろう。強いカードが入った厳選パックだぞ」

 カシヨはパックを開封した。

「なんだこれ。今は使えねえよ。カードの強さも跳ね上がってるんだよなあ」

 カードゲームのインフレは凄いもんなあ。

 

 パックを開封してみた。

「磁力魔導のマグネタン。攻撃誘導能力があってステータスもそれなりにある。俺のデッキにとっちゃ大当たりだな」

 しかも相手にだけ攻撃を強制できるから鯵テーターとビーコンパラサイトの上位互換なんだよね。

 

 早速デッキに混ぜて色々と構築を変えてみる。

「お気に召したようだね。そっちの彼は気に入ってないみたいだけど」

「まあな。俺のデッキにも弱いし、俺のデッキじゃなくても弱い」

「インフレって悲しい事なの」 

 昔の環境カードが今は使われていないみたいな感じだな。

 

 塔が揺れた。

「地震じゃないからね。ただ大勢の人が駆けつけてるだけだからね」

「今まで来なかったのに何で今更来たんだよ」

「カードファイトロボットに追い返されてたけど、攻略法分かって何とかなったとかじゃないの。ワンショットキルされて実質初見だったしね」

 なるほどね。

 

 ゲームマスターはシャチを指さした。

「そのシャチをあげるよ。君たちのことを気に入ってるみたいだしね。それじゃそろそろ出ようか」

 俺たちはいつの間にか外に出ていた。あれだけいた人たちがいない。痺れてる人たちしかいないぞ。

 

 黒覆面が彷徨いている。

「なんでこんなところにいるんだ」

 黒覆面がカードを掲げると雷が降って、爆音が響く。

「お前が仕事をすっぽかしたからだ。仕事すっぽかしやがって。俺が苦労するんだぞ。今回の仕事よりも古代文明の遺跡から得られた利益の方がデカイから不問だろうが、なんか納得いかん。お嬢様に言い訳するのも面倒だし」

 どこぞの貴族の令嬢に仕えているのだろうか。

 

 黒覆面も辛いんだね。あっ。

「いつまでも黒覆面なんて呼び方じゃ寂しいから名前を教えてくれないかな」

 本名を聞き出せると良いな。

「エルタスト・アクイ。もちろんこれは偽名だが、そう呼べ」

「偽名とはね」

 世の中そう甘くはなかった。

 

 空間に穴が開く。

「雷で聴力を落として聞かれないにしたが、ここらが限界だ」

 穴をくぐると空気穴しかない部屋に着いた。

「デスコロシアムの閉じ込めるときの部屋だ。まるごと持ってきた。魔法使わないと入れないから何を話してもバレない」

 ここに行くなんてやましいことしかないのかな。

 

 エルタストは床に座る。

「単刀直入に言う。なんだそのシャチもどきは。嫌な予感しかしないぞ」

「キュキュ」

「心外だってよ」

 シャチはヒレで床を叩く。

 

 黒覆面はシャチを指でつつく。

「カードハンターについてはどう思ってるんだ?」

「くそったれだってよ。こいつ床に叩きつけるかな」

「いったん預からせろ」

 触りまくってる。

「何だかんだ理由をつけてもふりたかっただけか?」

 素直じゃないやつだ。

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